韓国で詩がブーム!韓国のMZ世代の詩人が語る『読み継がれ、受け継がれる、人々を癒やす美しい叙情詩』

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韓国の20~30代のMZ世代にとって今は、生きていくのが困難な時代。

エル・ジャポンでは、愛した時間と別れの深い悲しみの余韻を描いた詩集が話題の
若手詩人、イ・ジェヤさんにインタビューしています。

 

読み継がれ、受け継がれる
人々を癒やす美しい叙情詩

 

1980年代、韓国の詩は最盛期を迎えます。

軍事独裁政権、言論統制など社会的な抑制の下で、詩はその苦痛や鬱積した感情を表現する手段でした。

MZ世代と呼ばれる詩人のイ・ジェヤさんは、その時代の詩を読み継いでいる若者のひとりです。

 

「韓国を代表する詩人、キ・ヒョンドの『口の中の黒葉』は、まさに韓国の歴史を記録した詩集です。長い年月を経てもなお、人々が詩を求めているからこそ、韓国の詩は豊かなのです」

 

もうひとりの重要な詩人、チェ・スンジャの『この時代の愛』は、
ジェンダーに対する固定概念を打ち破る重要な詩集です。

 

「私たちは今でも『この時代の愛』に心を揺さぶられます。斬新なチェ・スンジャの詩の登場を境に、多くの女性たちが詩を発表しました。それは韓国文学史にとって大きな意義がありました」

 

MZ世代にとって今は、就職難や経済的困難など、生きていくのが難しい時代。

詩は、そんな現実からの逃避や自己表現の手段として新たな役割を担っています。

 

「MZ世代にとって詩は、自分の感情をひもとき、現実を忘れさせてくれる心の避難所のような存在。また、この世代は自分のアイデンティティーを大切にします。自分の考えや感情感情を言葉で表現するとき、詩の形式がしっくりくるのかもしれません。SNSのなかでも特にインスタグラムの利用者が多く、詩の一節を引用掲載することで自己表現と共有文化を育み、詩への関心がさらに高まっています

 

韓国では詩人が書いたエッセイも多く出版され、詩への入り口にもなっています。

イ・ジェヤさんもエッセイでデビューし、12年かけて詩集を出版しました。

 

「悲しみ、むなしさといった人の感情は、誰の心の部屋にもあるものですが、私たちは日々の生活に追われ、その部屋の存在を忘れがちです。私はそのさまざまな感情を、韓国詩の神髄である詩人の金素月や朴木月が書いたような美しい叙情詩で伝えていきたいのです」

 

イ・ジェヤさんの『ある種の心』は重版に。

SNSや朗読会の様子からもその人気ぶりがうかがえます。

 

「私が大切にしている詩は『ロマンの役割2』です。亡くなった祖母の部屋の引き出しのなかに、彼女が生前大事にしていた素朴なものたちを見つけました。『溶けていくロマンを また引き出しに入れて眠りにつく』。別れを詩にすることで、自分の思いを祖母に届けられた気がしました」

 

ほかにイ・ジェヤさんが大切にする詩に、申庚林(シン・ギョンニム)の『貧しい愛の唄』があります。

 

「5月に亡くなった申庚林さんは、貧しい人々のために詩を書き続け、韓国中に愛された詩人でした。次に紹介する一節は、貧しさゆえに愛や夢を諦めるむなしさが、美しい言葉でつづられています」

 

貧しいからといって

知らないわけがない

貧しさのせいで

それらすべてを

すべてを捨てねば

ならないということを

 

詩人とは、心を語り、慰める人のこと。そして詩はリズムです。私たちはお互いのリズムを理解することはできないかもしれません。けれど、そのリズムを見つけたくて今日も私は詩を書いています」

 


 

本誌ではKカルチャーに見る詩の大切さも紹介されています。

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