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今号のPreciousでは、北陸をはじめ、日本各地の名店から注目の新潮流店まで鮨店が登場!
その中でも、作家・山内マリコさんが推す富山の名店『鮨 大門』をピックアップします。
海の幸が豊かで、そのおいしさを引き出す職人がいる
その幸せをかみしめています
奇をてらいすぎない
誠実な鮨に心踊る
ブリの幼魚を富山では『フクラギ』と呼びます。
山内マリコさんにとって、それは少女時代の好物でした。
「母が、さもごちそうの体で出すんです(笑)。それが本当においしくて。今思えば、スーパーで1パック200円くらいなのですが、富山は何気ない魚が本当においしいのだと、大人になって気づきました。東京で鮨屋に行く機会を通して、改めて、富山の鮨のおいしさを実感しています」
亡き父に連れられて行った『美乃鮨』、「何度でも行きたくなる」という『SOTO』など地元でも鮨を堪能する山内さん、
今回は魚津の名店『鮨 大門』へ。
富山市から電車で20分、蜃気楼で知られる魚津市は海と山が近く、
立山連峰からの雪解け水や大地や海を潤し、豊かな食材を育みます。
地元出身の大門太郎さんが構えた『鮨 大門』は、2回連続でミシュラン1ツ星を獲得し、県外からの常連客も多いです。
この日はマグロのヅケ、白エビなど、まずはつまみが8品。
「マグロには芽ねぎとごまを散らしたり、白エビにはだしのジュレとしその実を合わせたりと、素材の魅力が引き出される絶妙な組み合わせ。煮アワビは残った肝のソースにシャリを混ぜていただきました。緊張しがちな高級鮨店で、『これがおいしいんですよね』と教えてくださる大将のお人柄も、おいしさを何倍にもしてくれている気がします」
続く握りは、真鯛、剣先イカ、バイ貝、ノドグロなど、12貫。
大門さんが「3秒待つと崩れるくらいに」握る鮨は、口の中で心地よくほどけていきます。
「トキシラズは、たっぷりのった脂がとろりとシャリにまとわり、はっとするおいしさ!握りは魚の脂が静かに溶け出し、体にすっと入っていく温度感も素晴らしかったです。心踊る構成で、この時間が永遠に続いて欲しいと思うほど大満足でした」
子どもの頃泳いだ富山の海では、砂浜からほんのすぐでも、深海のひやりとした流れを足先に感じます。
「海の幸は地形という人間にはコントロールできない大自然の結晶。その恩恵を受けているのだなぁというありがたみは、年々増していきます」
本誌では、他にも日本全国各地の鮨店が紹介されています。
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