働いていても本を読むには…?「こまめに開いて読む」がポイント、思索を深める読書術

  • 更新日

この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。

 

本、読んでいますか?

 

SNSやニュースサイトをはじめ、求めていなくても目に入ってくる情報を消化するだけで精いっぱい、
日々のルーティンに読書を加えることは至難の業……、そんな人も多いのでは?

Harper’s BAZAARでは、話題の『なぜ働いていると本を読めなくなるのか』の著者をはじめ、
識者の読書術から夢中になれるブックガイドまで、久しぶりに本を手に取りたくなる特集をお届けしています。

 

今回は、書評家・三宅香帆さんのインタビューをピックアップします。

 

「こまめに開いて読む」がポイント、思索を深める読書術

 

働いていると本が読めなくなる。

書評誌『本の雑誌』の発行人だった目黒考二も、
70年代に同じことを言って
何度も会社を辞めていたことは、往年の本読みたちにはよく知られている。

 

三宅香帆のエッセイ集『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、
そういった読書好きや、本を読みたいのにどうして、と思っている人の
長年の問いに答えてくれることから、話題の一冊だ。

日々多忙をきわめ、可処分時間がどんどん少なくなる現代社会で、どうすれば本が読めるのか。

著者の三宅自身も同様の体験をしたことからこの本を書き、自分なりの読書術を編み出している。

 

三宅「読書が好きだからたくさん本を買いたい。働いて給料をもらえば書籍代が賄える。そう考えて就職したのに、今度は忙しくて読む時間がなくなるし、少しの時間で読もうとしても、疲れていてSNSばかり見てしまう。

周囲からも同様の声が聞こえてきて、働きながら文化的に充実した生活を送ることが、当たり前に『無理でしょ』となっているのは、本当にいいのかと思ったことがきっかけで、この本を書きました。

日本は出版大国だったとき、つまり本がたくさん刷られ、売れていた時代があった。そのときはどう働きながら本を読んでいたんだろうと、労働と読書の関係を知りたくて、歴史をさかのぼりました」

 

そういう今の社会で日常を送る三宅自身は、これまでどんな読書体験をしてきたのだろう。

 

中学時代に恩田陸さんや有川ひろさんなどのジュブナイル的な小説にはまって、本格的に読書好きになりました。恩田さんの『光の帝国 常野物語』はファンタジーともSFともいえない、いろいろな物語が詰まっている連作短編集のようなシリーズ。少女漫画や映画などさまざまなジャンルからエッセンスを取り入れていて、全然飽きがこなかった。ジャンルを越境する感じがよかったんだと思います」

 

高知県に住んでいた少女時代は、ブログ等で本の紹介文を読み、そこで進められていた面白そうなものを読んでいた。

もっとも読者量が増えたのは大学から大学院時代。

小説以外にも、新書や人文書などフィクション以外の本にも手を出し、読書の幅が広がった。

 

「ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』は、海外文学への扉を開いてくれた一冊。遠い昔のイギリスの話なのに、今の日本と似た人間関係があって、自分たちのいる時代の感覚と意外と変わらないことに気づけたので、そこから英文学をよく読むようになりました。特にちくま文庫の海外文学の翻訳だとなぜか楽しく読めて。自分と相性のいい翻訳や訳者を見つけると、海外文学が読みやすくなると気づけたのは大きかったです」

 

しかし、前述のように就職するとともにどんどん読書量が減っていった。

 


 

本誌では、記事の続きをお読みいただけます。

この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。