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ソニーグループがKADOKAWAの株式取得に向けた交渉を進めています。
『買収』の報道が出た11月19日以降、KADOKAWAの株式は急上昇。
11月18日の終値3045円から、足元は4000円台で推移しており、株式市場は熱を帯びています。
今号の週刊東洋経済にてピックアップされている『ソニーとKADOKAWA“買収”で直面する3つの壁』について一部抜粋します。
交渉は初期段階
ディール成立までには幾多の難題が待ち受ける
両社のタッグで期待されるのは、ソニーのエンターテインメント事業と、KADOKAWAのIP(知的財産)とのシナジーです。
例えば、ゲーム事業。
ソニーは家庭用ゲーム機『プレイステーション5』を販売するほか、定額ゲーム配信サービス『プレイステーションプラス』を運営しています。
ソニーは同サービスで、高額プランの加入者を増やそうとしています。
一方、KADOKAWA傘下には『エルデンリング』『ダークソウル』など、2000万本以上の大ヒットを記録した、ゲームソフトメーカーのフロム・ソフトウェアがあります。
フロムが開発するゲームソフトを期間限定でもプレイステーションで独占配信することができれば、会員の獲得・維持に貢献する可能性が高いです。
ライバルとの差別化も図れます。
アニメビジネスでも、相乗効果は大きいです。
今年5月の経営方針説明会でソニーの吉田慶一郎会長は「アニメは世界に通用するエンターテインメントだ。ソニーもクリエーションで貢献していきたい」と語りました。
ソニーのアニメ事業の中核には、制作会社アニプレックスと、2021年に買収した海外向けアニメ配信プラットフォーム『クランチロール』があります。
ただし、コンテンツの原石を掘り起こすノウハウには乏しいです。
一方のKADOKAWAは、ライトノベルや漫画の編集者からアニメのプロデューサー、関連グッズの企画まで、垂直統合型のビジネスモデルを強みとしています。
これらはソニーに不足する“ピース”となりうります。
期待される両社のシナジーですが、実現には越えなければならないハードルが少なくとも3つあります。
買収スキームは?
1つは、株式取得のスキームです。
買収と報じられていますが、交渉は初期段階。
ソニーが完全子会社化を目指すのか、一部株式を取得するのか判然としません。
KADOKAWAの株主構成を見ると、韓国IT大手カカオが約9%、中国IT大手テンセントが約7%などと、買収を阻むような大株主はいなそうです。
とはいえ、完全子会社化ならば相応の資金が必要となります。
TOB(株式公開買い付け)の想定価格は、マッコーリーキャピタル証券の試算によると4600円、完全子会社化なら買収総額は6400億円以上です。
ソニーは26年度までの中期経営計画で、自己株式取得を含めて1.8兆円の投資枠を設定しています。
足元では楽曲版権の取得費用として、英ロックバンド『ピンク・フロイド』や『クイーン』の権利取得に数百億円から数千億円単位で資金を投じていると報じられています。
ゲームのスタジオ買収費用なども考えると、懐に余裕はありません。
単に連携関係を強化するだけなら、持ち分法適用会社化では株式15%以上、子会社化でも50%前後の取得でよく、全株式を取得する必要はありません。
KADOKAWAが上場を維持する選択肢もあるでしょう。
2つめのハードルは、TOBが成立するか否かです。
ソニーは今年だけで、主に価格を理由として複数の買収案件を断念しています。
電子コミック配信サイト『めちゃコミック』を手がけるインフォコムの買収案件でソニーも買い手候補でしたが、米投資ファンドのブラックストーンが約2800億円で買収しました。
米映画大手パラマウント社の買収合戦にもソニーは名乗りを上げましたが、価格などの条件面で折り合わず断念。
ソニーの十時裕樹社長は「パラマウントという企業はかなり大きい。リスクや経営資源の配分の観点からフィットがよくない」と8月の決算説明会で語りました。
3つ目のハードル、記事のつづきは本誌にてお読みいただけます。
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