《認知心理学コラム》話が通じない人は、なぜ話が通じないのか

  • 更新日
  • 有効期限 2024.12.25

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「話が通じない」のは、相手の理解力のせいでも、自分の説明力の問題でもなかった…!

どうすれば、自分の話が相手に伝わるのか?

PRESIDENTでは、認知心理学の専門家の今井むつみ氏がコミュニケーションの本質に迫っています。

 

話しても伝わらないのは当たり前のことである

 

文:今井むつみ

 

私たちの多くは、「話せばわかる」ということを「当たり前のこと」だと考えています。

 

たとえば、職場で新人に仕事を教えるとき。

その人が指示をうまく理解できなかったとしても「わかりやすく説明すれば、きっと理解してもらえるはずだ」と思うことでしょう。

このように考えるのは、私たちの根底に「話せばわかる」、少なくとも「話すことで、話す前よりは理解を深められる」という意識があるからではないでしょうか。

 

ですが、職場で上司に業務上の報告をしたものの、自分のイメージとは異なる形で伝わっていてモヤモヤした気持ちになったり、小学校の先生が伝わるよう精一杯工夫をして授業を行なっているのに、授業についていけなくなる子どもが出てくるなど、「話しても伝わっていない」ということは往々にして起こります。

 

わかるように話しているつもりなのに、なぜ伝わらないのか。

もしかすると、自分の意図通りに話が通じることのほうが珍しく、例外的なことなのかもしれません。

 

我々人間は、相手が話した内容を直接脳にインプットして話を理解するわけではありません。

相手の話す言語を受け取り、それを自分の頭で解釈することではじめて意味を持ちます。

しかも厄介なことに、話し手の思いと聞き手の解釈が一致しているのかは、お互いわからないのです。

 

たとえば、あなたは「ネコ」という文字を見て、何を想像しましたか?

動物のネコを想像した人もいれば、「トムとジェリー」や「ハローキティ」のようなアニメのネコを想像する人も、劇団四季の「キャッツ」のような、ネコに扮した人を想像する人もいるはずです。

しかし、相手がどんなネコを想像したのかを映像や写真などで確認することは、もちろんできません。

このように、たったひとつの「ネコ」という名詞でさえ、頭の中に思い浮かべるものは人によって異なります。

 

これは人によって「知識の枠組み」や「思考の枠組み」が大きく異なるためです。

こうした知識や思考の枠組みのことを認知心理学では「スキーマ」と呼ぶのですが、話し手と聞き手ではこのスキーマが異なるため、仮に情報をもれなく伝えたとしても、頭の中で思い描いているものを相手に共有することはできないのです。

 

つまり、あなたが話をして相手に何かを伝え、相手が「わかりました」と言ったとしても、それは相手のスキーマを通じての「わかった」ということであり、ある種の思い込みであるともいえますから、あなたが思い描いている理解とは異なるものかもしれないのです。

 

そして、仮に「わかった」としても、人間の記憶は非常に頼りないもので、注意を払わずに見聞きした情報については、情報を誤って覚えてしまうことが多々あります。

 


 

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