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『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』がベエストセラーとなったように、大人の読書離れが顕著な一方、図書館、マイクロライブラリー、ブックカフェなど、本に囲まれた美しい空間はなぜか増えている気がします。
特に近年の図書館は、建築的な美しさやダイナミックさはもちろん、本の陳列、選書、サイン計画、家具のセレクトを工夫し、カフェを併設するなど、本との出会いや本を読むという体験に重きを置いた新しい施設が続々と登場しています。
読書が非日常となりつつある現代、本に没入できる空間、人々の知性や歴史に囲まれた場所に身を置くことが重要なのかもしれません。
また、地域コミュニティの中心として、社会とは別の居場所としての役割も加わりました。
CasaBRUTUSでは、そんな新しい時代の全国の図書館、大小さまざまな書店を特集しています。
来場者数日本一!円形劇場のような図書館へ
石川県立図書館

世界がうらやむ図書館が、歴史と工芸の町・金沢にあります。
来館者は円形劇場のような空間を歩き回り、思いがけない知と出会います。
2023年度には来館者数が100万人を突破した、めくるめく知のアリーナへ!
新たな形に挑戦した図書館
「本をね、好きになってもらわないといけません」
建築家の仙田満さんが温かな声でそう話します。
数々の図書館や博物館を手がける仙田さんが、2022年に完成させたのは、金沢市の〈石川県立図書館〉。
本好きだけでなく、図書館に苦手意識を持っていた人をも足繁く通わせてしまうほど、おおらかな魅力を備えています。
場所は金沢駅から車で20分ほどの金沢大学工学部跡地。
本は別の場所にあった館の移転・新築が決まり、プロポーザルによって仙田さんが設計者に選ばれました。
「目指したのは、本を探して歩き回るのが楽しくなり、思いもよらぬ知と出会える図書館です。歩くことで脳は活性化され、興味が湧いたことに集中できる。ですから今回は、図書館の床は平らであるべきとか、黙って読書すべしといった従来の常識は横に置き、階段状のフロアをつなぐスロープや、おしゃべりOKのタイルなど、新たな形に挑戦したのです」

約110万冊を所蔵するこの館は、地上4階・地下1階。
地階には最大200万冊収納できる閉架式書庫があり、本の取り寄せを迅速に行うシステムも備わっています。
地上階は閲覧エリアと文化交流エリアに分かれているのですが、圧巻なのは閲覧エリア。
天井高を抑えたエントランスを抜けて中心部へ向かうと、突然、円形劇場のような『グレートホール』が現れて、一瞬で心が跳ね上がります。
周囲には階段状に配された書架と、3階までぐるぐる続くスロープ状通路。
歩き回りたくなること請け合いです。
ちなみにここでの選書は一般的な日本十進分類法(NCD)ではなく、館独自の12のテーマに基づくもの。
各テーマを担当する司書が、自分の本棚を作るように本を選んでいます。
ラインナップに担当者の読者愛や偏愛が滲み出ているのも面白いし、表紙を見せる面陳の手法で並べられているのもワクワクします。
気になる本を見つけたときにすぐ座って読めるよう、随所に椅子やソファが置かれているのもありがたい。
一方、市民広場的な役割を果たす文化交流エリアでは、飲食もできるし、展示やワークショップなどを行う体験スペースもあります。
「特別な目的がなくても立ち寄れる、公園のような図書館を目指しています。サードプレイス的に利用する人も多いんですよ」とスタッフ。
なるほど、コーヒーを飲みながら本を読んでいる人も、空に座っておしゃべりに興じている二人組もいます。
こんなにも笑顔の人が多い図書館、ほかにあるでしょうか。
〈石川県立図書館〉は、人々の交流や文化継承などのコミュニティ機能も備えた、新しい形の図書館です。
「ここに通いたいから」と、金沢へ移住する人がいるという話にも、心からうなずけます。
本誌では、石川県立図書館のさらなる魅力が特集されています。
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