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一度使用した水をその場で循環できるシステムで水問題の解決に挑む
WOTA代表取締役兼CEOの前田瑶介氏は、コロナ禍の2020年に『Forbes JAPAN 30 UNDER 30』を受賞しました。
今や日本に欠かせない企業に成長したWOTAを率いる、前田氏が見据える未来とは。
水問題を解決するためには
全世界のメーカーに対するオープンソース化が必要
前田瑶介氏は、2024年元旦に発生した能登半島地震の翌日から現地入りしました。
発災日の夜に石川県の西垣淳子副知事から支援要請を受けたからです。
前田氏は、同社のプロダクトである水循環型手洗いスタンド『WOSH』と、
個室の水循環型シャワーとして使えるポータブル水再生システム『WOTA BOX』を計300台提供。
被害が甚大だった珠洲市を皮切りに1月末には県内ほぼすべての断水エリアに提供しました。
前田氏は次のように語ります。
「発災直後、手元にある在庫では能登半島をカバーするには足りなかったのですが、すでに保有していた自治体や企業が協力してくださり、十分な数を用意することができました」
WOTAは『水問題を構造からとらえ、解決に挑む。』を理念に、
『小規模分散型水循環システム』を手がけるスタートアップです。
『小規模分散型水循環システム』とは、
一度利用した水の98%以上をその場で再生・循環利用することができる、
いわば水処理場の機能を10万分の1のもち運べるサイズで実現した技術。
例えばポータブル水再生システム『WOTA BOX』では、
6本のフィルターによるろ過、深紫外線照射、塩素添加によって水の再生処理を行い、
その工程を自律制御しています。
能登半島自身の初期対応で迅速にこれだけの数を導入することができた背景には、
前田氏が大事にしてきた『誰もが運用できるプロダクトづくり』があります。
過去の災害現場での経験から、
早期展開と支援の継続のためには被災者自身に運用してもらうことが重要だと考え、
プロダクトの改良と運用マニュアルの作成を進めてきました。
能登ではそれが功を奏し、大人だけでなく中学生の被災者がシャワーを運用する場面も見られました。
運用のために必要なアクションは、シャワーテントやタンクなどと水処理機能をもつ『WOTA BOX』とをつなぎ、
タンクに水を注いだ後、コンセントにプラグを差して電源を押すだけ。
難しい工程はなく、シンプルな設計です。
こうしたWOTAの活動は、天皇陛下にも伝わりました。
天皇陛下は24年2月の記者会見で
「能登半島地震の被災地では、日本の優れた水処理技術とAIを結びつけた自律制御型のポータブル水再生(小規模分散型水循環)システムの活用により、入浴や手洗いのサービスが提供され、厳しい状況にある被災者の方々の助けとなっています」
と話し、期待を寄せました。
ただ、今回の対応でも手応えと同時に課題が残りました。
前田氏は
「1ヶ月足らずで能登半島全域をカバーすることができたのは大きな成果です。しかも被災者やパートナーの方々、全国の自治体と一緒に成し遂げられたので感慨深い。ただ、被災地のニーズ把握や自治体との合意形成などをスムーズに行えるよう事前に仕組み化できていれば、1~2週間ですべての避難所に提供できたはずです」
と悔しがります。
そこで、次なる巨大災害に備えて、災害時に全国から被災地へと
『WOSH』や『WOTA BOX』を集める仕組みを事前に整えようと、
さまざまなステークホルダーとともに動き出しています。
本誌ではインタビューの続きをお読みいただけます。
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