はるか8km先の麓まで温泉を届ける湯守の仕事『安達太良山と生きる』

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温泉で人々が悦楽に満たされているとき、陰で湯を守っている人がいます。

『湯守』

いわば湯の番人です。

 

一個人では、はるか8km先の麓まで温泉を届ける湯守・武田喜代治さんをインタビューしています。

 

湯花流しから生まれた白濁の『ミルキーデイ』

 

たわわに実った稲穂が黄金色に輝く棚田を抜け、
名峰安達太良山を望むのは開湯から1200年の歴史を誇る福島県・岳温泉。

全国でも珍しい酸性泉は美肌の湯として知られます。

そんな岳温泉で近年注目を集めるのが毎週月曜日の『ミルキーデイ』。

普段は無色透明の温泉が、牛乳のような乳白色になるといいます。

 

「源泉は硫黄成分が強く、空気に触れると『湯花』ができて湯管が詰まってしまいます。そのため、湯守が週に1度『湯花流し』を行うのですが、流れ落ちた湯花が温泉を白濁させるわけです」

 

そう教えてくれたのは、湯守歴23年の武田喜代治さん(73)です。

 

不屈の精神を持つ温泉街で湯守という仕事が誕生

 

「安達太良連峰の鉄山の中腹にある源泉から8km先の岳温泉まで、約40分かけて温泉を引いています。引き湯としては日本有数の長さです」

 

開湯当時は源泉のそばにあった温泉街。

しかし、江戸時代に土石流に飲み込まれ、その後も戊辰の戦乱、大火事に見舞われ、3度も消滅しました。

それでも人々は温泉と生活することを諦めず、不屈の精神で新たな温泉街を移転再建してきたのです。

 

そんな背景のなか、源泉から離れ、引き湯をするようになった温泉街には湯守の仕事が必然的に生まれました。

現在は、隊長の武田さんを含め20~70代の6人が岳温泉を守っています。

 

江戸時代から続く作業で乳白色の湯があふれ出す

 

 

作業日の集合時間は朝7時。

大きくうねる登山道を、武田さんが運転する四輪駆動の自動車が思い切りよく進みます。

山道は草木がすげっているかと思いきや、意外にも整っていました。

 

「山腹まで車で資材や人を運べるように横木やブロックを敷いて、登山道を整えました。温泉も通っているので、湯管の状態を確認するために歩いて登ったり、草刈りもします」

 

40分かけて源泉近くに到着。

源泉の湧出口は全部で15ヶ所。

各口に湯管をつなぎ、麓へ温泉を流します。

 

「湯管には20mごとに点検口をつけています。湯花流しの日は上流の点検口からロープを通し、下流の点検口から引きます。すると、ロープの先端につけた針金のたわしが湯管の内側にこびりついた湯花をかき出すんです。のぞいていてくださいね」

 

武田さんが開けた点検口からは、湯気とともに硫黄のにおいが立ち込め、サラリとした透明の湯が顔を見せました。

しばらくして、たわしが湯管を抜けると、途端に湯量が増え、ボコボコと音を立てながら乳白色の湯があふれ出しました。

湧きたての湯は硫黄成分が強いですが、山肌を流れながら適度に湯もみされ、柔らかな泉質となって温泉街へ届くといいます。

 


 

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