映画字幕翻訳者・戸田奈津子が語る天職「夢が叶うまで20年以上、諦めや不安はなかった」

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映画字幕翻訳者として右を出るものはいないと言っても過言ではない、戸田奈津子さん(88歳)。

そんな彼女でも「夢が叶うまで20年以上かかった」と話します。

今号の日経ウーマンに掲載されている、戸田奈津子さんのインタビューをピックアップします。

 

夢が叶うまで20年以上
諦めや不安はなかった

 

 

映画字幕翻訳者を目指したのは大学生の頃。

どうすればなれるか分かりませんでした。

新卒で生命保険会社に入り、秘書として働きましたが、退屈だし、組織の中で働くのも苦手。

1年半で退職し、出版社などから翻訳の仕事をもらいアルバイト生活を送りました。

大学時代に会いに行った英米映画字幕の先駆者・清水俊二さんは、字幕翻訳の基礎を教えてくださった恩師。

でも、字幕翻訳の仕事をいただくことはなかった。

当時、この世界は男性中心で、日本で10人ほどの究極の狭き門でした。

 

10年ほどアルバイト生活を続け、映画のあらすじを訳す『シノプシス』の仕事をいただきました。

その後、来日した映画監督や俳優の通訳の依頼ももらいましたが、通訳経験はゼロだったので断ったんです。

でも、気がつけば記者会見の場に座らされていた。

必死に通訳をやり続けたことでコッポラと出会い、通訳を担当したのを機に彼から『地獄の黙示録』の字幕を任せてもらうチャンスを得ました。

この作品で字幕通訳者として認められ、仕事が途切れることがなくなった。

私はすでに40歳を超え、映画字幕翻訳者を目指して20年以上が過ぎていました。

 

夢を諦めなかったのは、字幕翻訳以外にやりたいことがなかったから。

戦後の焼け跡にいた幼い私が初めて映画を見たとき、人が動き、美しい映像が流れる別世界にカルチャーショックを受けました。

映像の中の人が何を話しているのかを知りたくて英語を勉強し、映画館に通い続けた。

この衝撃や感動は、サブスクリプションで映画を見る世代には分からないでしょう。

 

アルバイト生活を送る私に周囲は他の仕事を勧め、「嫁に行け」と言うこともありました。

でも、人に言われて進路を変えれば一生悔いが残ると分かっていた。

「諦めなければ夢は叶う」という言葉は、誤解を恐れず言うと危険な言葉。

そんな甘い話ではないでしょう。

好きなことを目指す以上、「かなわなくても仕方がない」という感覚が私にはあった。

誰に何を言われても平気でしたね。

 

年間50本ほどの字幕翻訳を担当し、納品はフィルムが届いてから1週間ほどのタイトさ。

でも、1日7時間は寝て徹夜はしません。

ものすごい集中力で1日中机に向かいます。

役者になりきり翻訳し、あらゆるキャラクターを脳内で経験させてもらえる。

楽しくて、仕事をやめたいと思ったことは一度もありません

今はデジタルで上映直前まで映像編集でき、納期はさらにタイトになって公開が迫る中、焦ることも。

AIが台頭し映画界も変化していますが、できる限り天職を続けたいです。

 


 

本誌では、戸田奈津子さんのインタビュー全文をお読みいただけます。

 

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