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今号の週刊エコノミストでは、中国を離れ、日本に拠点を移す「潤日(ルンリー)」と呼ばれる中国人富裕層が、日本の中学受験戦争にまで参入しているという新たな動きについて紹介しています。
中国の過熱競争が日本で再現される!?
安藤大介(編集)
受験シーズンの余韻も冷めやらぬ3月下旬。
東京都心から電車で30分ほど離れた中学受験の大手進学塾「SAPIX小学部」の校舎前には、20人を超える中国人の母親たちの姿があった。
大声で中国語を話す集団の横を、ビルから出てきた人たちが不思議そうな顔つきで通り過ぎる。
この日はSAPIXの定期的な保護者会。母親たちは日ごろから同じSNSグループで情報交換しており、校舎前は、出席した母親の「オフ会」になっていた。
ジャーナリストの舛友雄大氏によると、こうした大手進学塾のSNSグループは、子供の偏差値に応じて、保護者もグループ分けされている。
子供がテストの結果次第で、所属クラスが昇降するように、親のSNSグループもメンバーの入れ替えが行われる。
ノルマをこなさないと、グループから外されることもあるという。
日本に「逃げる」富裕層

中国人が子供の教育に熱心なことは、よく知られる。特に、富裕層は幼い頃から子供を塾に通わせたり、習い事をさせたりして、有名大学に入れようと躍起になる。
そして、そうした富裕層が今、日本に拠点を移す動きが広がっている。
「潤日(ルンリー)」と呼ばれる人々だ。
中国を離れて海外に移住、脱出する富裕層は「潤(ルン)」と呼ばれる。中国でも「うるおう」が本来の意味だが、発音が英語の「run」に近いため、「逃げる」という意味で、隠語的に使われる。世界に「潤」する人のうち、日本を目指すのが「潤日」だ。
中国から来日する富裕層は、増加傾向をたどっていたが、新型コロナウイルス禍の都市封鎖(ロックダウン)以降に急増した。
政府への不信、長引く不動産不況と、政治や経済の将来に対する悲観が「潤」を加速させた。子供に良い教育を受けさせたいとの思いも、移住を後押しした。
日本に移住するのは、世界的にも「安価」だ。
500万円を元手に起業するなどすれば、長期滞在ビザを手にすることができる。
こうした富裕層の一部は、子供への教育を重視する「教育移住」により、日本に中国の教育熱を波及させた。日本の都市部で過熱する中学受験の世界に子供を投じるのは、むしろ自然な流れだった。
開成、筑駒、灘→東大ルートがメインシナリオに
「中学受験で全勝。しかも三冠校にすべて合格した」
今春、中学受験の大手進学塾が掲載した合格体験記が話題を呼んだ。開成、筑波大学付属駒場、灘という名だたる進学校(三冠校)に合格させた中国系とみられる男児の母親は、こう記した。
「息子は1年生の時、日本に来た。その時、五十音図さえ知らなかった」。
ひらがなを一から覚えるハンデを乗り越え、最難関校を総なめにした。
中学受験における中国系の児童の存在感は高まっている。ある教育関係者によると、「大手進学塾の上位クラスに、中国系児童が複数人在籍するのは珍しくない」。
「御三家(男子は開成・麻布・武蔵、女子は桜蔭女子学院・雙葉を指す)」と称される東京都内の難関私立中高一貫校を目指す成績上位層も相当数いる。
ある「御三家」校では、この春に入学した生徒のうち、名字で「中国系」と推察される割合は目算で15%前後だった。
米国に流れていた富裕層がトランプショックにより、この先日本移住がさらに進む...に続きます。
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