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2025年の秋に公開が予定されている映画版『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』。
GQ JAPANでは、本作で監督を務めるオダギリジョーさんと、主演の池松壮亮さんが『俳優監督』について語り合っています。
役者が監督をするということ
「流行っているものは、基本的に疑ってかかるようにしている」
これは数年前、俳優・オダギリジョーさんから聞いた言葉です。
彼はトレンドを追わず、かといって自身のスタイルに固執せず、軽やかに表現の海を泳いできました。
ひょいと海外作品や合作映画に参加し、かと思えば朝ドラに登場してお茶の間を沸かせ、攻めた社会は映画からオフビートなコメディまで出演。
そして、キャリア初期から継続的に監督作を発表しているのも、オダギリの特徴です。
『さくらな人たち』(2007)はロッテルダム国際映画祭でワールドプレミアされ、『ある船頭の話』(2019)はヴェネチア国際映画祭に選出。
トルコの第56回アンタルヤ映画祭の国際コンペティション部門で最優秀作品賞を受賞しました。
ボーダーレスに活躍する男が次に何を行うかと思えば、まさかのNHKと組んでテレビドラマ『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』を制作。
オダギリさんが脚本・演出・編集・出演を手掛けた本作は、ドラマ2シーズン&映画とシリーズ展開を見せています。
日本の俳優における特異点であるオダギリさんは、俳優の活動が一層多角化してきた今をどう見ているのでしょうか。
彼を「日本映画のゲームチェンジャーのような人であり、心の師匠のような方」と慕う継承者で、『オリバーな犬』では主演を託された池松壮亮さんとの濃厚な対談が始まりました。
テーマは、「俳優が監督やプロデュースを行うことをどう見るのか?」です。
オダギリ「役者が監督をすることが真新しい事件とは感じていません。映画史を振り返れば、チャップリンやキートン、ウッディ・アレン、ロバート・デ・ニーロ、ショーン・ペンと、挙げればきりがありませんよね。ただ一方で、時代性と言うべきか、容易に映画が作れる側面はあるのかもしれません」
お気に入りの俳優による監督作に、ヴィンセント・ギャロの『バッファロー’66』(98)を挙げます。
オダギリ「俳優の枠を超えて映画や絵画、そして映像も作るギャロに対して、共鳴する部分を感じていたのは確かでしたが、だからこそ余計に『バッファロー’66』でその才能に強く嫉妬したことを覚えています。映画という総合芸術に落とし込んだギャロの多角的才能に、驚きを超えて怖さにも似た感覚を抱きました」
池松さんは、「オダギリさんの『ある船頭の話』はまずおさえておきたい」と前置きしつつ、マギー・ギレンホールの初監督作にして第78回ヴェネチア国際映画祭で脚本賞に輝いた『ロスト・ドーター』(21)、マチュー・アマルリックの『彼女のいない部屋』(21)、池松と同い年のマーゴット・ロビーが主演・プロデュースして世界的ヒット&アカデミー賞7部門8ノミネートを果たした『バービー』(23)といった近作をチョイスしました。
池松「俳優が監督するとはどういうことか、ずっと考えてきた。たとえばこの国では、独立プロ(自己資本で映画を企画・制作する組織。日本では1950年代に隆盛)時代は俳優の多くがプロデューサー的立ち位置を務め、自身の作品に責任を負っていました。そして昨今、俳優がプロデューサーや監督をすることで、ある境界線を越えられるようになっているのは、そのことによる他の影響も含めてとても良いことだと感じます」
本誌ではさらに、俳優監督の難しさなどについても語っています。
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