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温かくても、冷たくても、美味しい蕎麦。
東京には町蕎麦のお店がたくさんあり、dancyuでは東京の美味しい蕎麦店を紹介しています。
今回はその中から2つの蕎麦店を紹介します。
【中清/吉祥寺】親子三人、唯一無二の店

ほっと寛ぎたいとき、ささやかに自分にご褒美したいとき、気の合う友人と話したいとき、
つい足を向けるのが吉祥寺の『中清』です。
この店の魅力は、なんといっても蕎麦の旨さ。
出前中心だった町蕎麦屋から、三代目の店主・清田治さんが独学で手打ちに変えたのは30年前。
その後、製粉機を導入して自家製分にし、さらに最近は手間と時間をかけて蕎麦を手挽きします。
しかも蕎麦が変わるごとにつゆも緻密に変化させ、とにかく旨い蕎麦への向上心が半端ありません。
いい蕎麦の実があると聞けばどこからでも仕入れ、それに合わせて挽き方を変え、
それでも「まだまだわからないことばかりだよー」と常に探究心を持ち続け、
それがまた楽しくて仕方ないようです。
蕎麦の話を始めたら止まらない、目をキラキラさせて話す77歳の治さんの姿は、まるで少年のようです。
そんな父の姿を見て育った四代目の泰允(やすみつ)さんが8年前から父に代わって蕎麦を打っています。
試行錯誤して築き上げた父の技術を忠実に学び、「後はお前の好きなようにやってみろ」と任された蕎麦は
日々進化し、父を超える旨さです。
二八の“さとそば”(田舎)に生粉打ちそば、透けるような更科に、手挽きの粗挽そばと、
粉の個性を見事に引き立てて打つ4種の蕎麦はどれもが実に旨いもの。
とはいえ「うちはあくまで町蕎麦屋だから」とメニューには豊富な種ものに
カツ丼や親子丼などの丼も健在。
来る客を選ばないのは、町蕎麦屋としての懐の深さです。
また、お酒の品揃えも驚くほど多彩。
希少な地酒を仕入れ、自家熟成するなど旨い酒の追求もやみません。
親子でアイデアを膨らませた多種多様の酒肴で、至福の蕎麦前となります。
旨い酒でゆるりと楽しみ、最後に手繰る絶品の蕎麦。
行けばきっとわかる、通うごとに『中清』の魅力にはまっていきます。
【長寿庵/青山】昼も夜も満たしてくれる

凍えるほどの嵐の日に暖簾をくぐると、「いらっしゃーい」と花番さんの優しい声。
『あおやま長寿庵』は陽だまりのようなお店です。
そもそも長寿庵という屋号の発祥は古く、江戸・元禄年間に遡ります。
暖簾分けで店は増え、多いときは関東一円に300店以上あったとか。
店主の渡邊龍太郎さんはこう話します。
「うちはかつて祖父が営んでいた『長寿庵 赤坂本店』の暖簾分けで、昭和26(1951)年に父が開きました。チェーン店ではないので長寿庵を名乗っていても、仕入れ先、味、店構えなどはさまざまなんです」
このお店の明るく広い客席やコの字のカウンターは先代の父が考えたもの。
毎週活け替える生花やピカピカに磨かれた床も同様で、亡き今も家族で守り継いでいます。
味もしかり。
北海道産の蕎麦粉で打つ蕎麦は細くしなやかで、機械打ちのイメージが変わるほど。
濃口のまろやかな汁が寄り添って、庶民的ながらどこかたおやかです。
丼物もバラエティーに富み、特に親子丼は早い時間に行かないと売り切れ必至。
鶏肉のプリプリと弾む歯ごたえが小気味よく、鶏の旨味がしみたご飯はかき込まずにいられません。
季節に合わせた日本酒と酒肴の数々を楽しむ夜に、ぜひ頼みたいのは鴨汁そばがきです。
土鍋で煮たそばがきは鴨の脂と旨味を纏い、酒のピッチが上がります。
本誌ではこちらの2店以外にも、東京のおすすめの蕎麦店が紹介されています。
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