ロックミュージシャンから蕎麦打ちの店主へ…西荻窪『蕎麦カネイ』

  • 更新日
  • 有効期限 2024.04.01

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手打ちそばの最先端をいくのは、何といっても東京でしょう。

ここ数年にわたるコロナ禍の中でも、
東京では多くの手打ち専門店がオープンしており、
高い評価を得ているお店も。

 

今回の蕎麦春秋ではそんな新進気鋭のそば店を紹介し、
東京におけるそばの最新の潮流を浮き彫りにしています。

 

東京の手打ちそば店における最近の潮流

 

東京の手打ちそば店における最近の潮流について、
一茶庵手打ちそば教室を主催する片倉英統さんは次のように話します。

「2000年代に入って全盛期を迎えているのは、『菊谷』(巣鴨)や『一東菴』(東十条)、『ほそ川』(両国)、『玉笑』(神宮前)等、ソバの原材料の追求や製粉といったそば屋のベースラインを飛躍的にレベルアップさせた店。

最近オープンした評判の店も同様で、多彩な産地のソバとその美味しさを自在に引き出す製粉とそば打ちの高い技術はいまや“標準装備”といえるでしょう。同時にそば前のクオリティが上がっているのも、最近の店の特徴です」

 

高い技術で多彩な産地のソバの美味しさを引き出す
JR西荻窪駅『蕎麦カネイ』

 

 

ロックミュージシャンからそば店主への転身

 

『蕎麦カネイ』は、JR西荻窪駅にほど近い裏路地にひっそりと佇む隠れ家的な店。

オープンして2年ながら、自家製分の手打ちそばと平日限定十食の在来そばで早くもそば通の評価を高めています。

店内はカフェのような趣で明るく清潔感にあふれ、思わず長居したくなりそうな心地よい空間です。

 

店主の池田暁史さんは同店と同じJR中央線沿線に立地する二つの有面店での修行経験を持ちますが、
そば店を開く前はプロのロックミュージシャンだったそう。

池田さんが属したバンドはメジャーデビューを果たしているだけでなく、
そのCDアルバムのプロデュースはロックファンなら
誰もが知るアメリカの有名バンドのメンバーが手がけたというから相当なもの。

ですが、バンドはあえなく解散。

その後、さまざまな仕事をしながらインディーズで音楽活動を続けるも、池田さん曰く「全く鳴かず飛ばずだった」といいます。

そして、音楽の道を断念した池田さんが、生涯の生業として選んだのがそば店でした。

 

「最初はラーメン店を考えたのですが、これには妻が興味を示さなかったこともあり、そば店を始めることにしました。もともとそばが好きだったこともありましたが、いまにして思えば中学生の頃に食べた『ふじおか』という店のそばがきの美味さが忘れられなかったことが何よりも大きいですね

 

長野市の飯綱高原にある『蕎麦ふじおか』は、石臼焼き自家製粉のそばで名高いだけでなく、
メニューはコースの一種類のみ、二名以上の完全予約制、十歳以下の子どもがNG等、
敷居の高さでも知られる名店です。

 

さまざまな産地の在来種を知ってほしい

 

 

池田さんが打つそばはかなり細いです。

江戸そばは俗に『切りべら二十三本』といわれ、麺線の切り幅1.3mmが常法ですが、
これよりもさらに細そうです。

甘川まで挽き込んだ、二四メッシュの粗挽き粉をを外一で打ちます。

細いながらもコシは十分で、暖かいそばにしても簡単に切れたり、のびたりしないところ
製粉とそば打ちの技術の高さを窺わせます。

 

定番のソバは群馬県産と秋田県産のブレンド、
平日限定の在来種は鹿児島県産、長野県産、岡山県産等、産地はさまざま。

 

産地の特性に応じた挽き方や打ち方でそれぞれのそばの美味しさを引き出すよう努めています。店によっては産地を特定して、そばの味を一定のものにしようとするところもあると思いますが、当店では日によって異なるそばの味を楽しんでいただきたいのです」

 


 

本誌では、『蕎麦カネイ』のインタビューの続きや、他の蕎麦店の記事も掲載されています。

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