
この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。

日本はどこに行ってもその土地の人々の暮らしを支える郷土色と食文化があります。
これらを紐解くと背景には気候、歴史、人々の思いが詰まった魅力的な物語が存在していました。
ちょっとした観光スポット以上に興味深い話に出合えるなど、
郷土色って兎にも角にも、おいしくて、おもしろいです。
メトロミニッツローカリズムでは“郷土食”をもっと楽しめる情報を特集しています。
うまし土地のうまし郷土食
【つけあげ文化】

日々の暮らしはつけあげとともに
東京で口にしないことはないけれども、居酒屋で誰かが注文したものがあったら食べる程度。
それが鹿児島で『つけあげ』と呼ばれる『さつまあげ』に対する認識でした。
今回メトロミニッツローカリズム記者が訪れた『いちき串木野』で見方が一気に変わったそう。
『つけあげは、うきうきしながら食べるもの』だと。
【寺田屋】
伊達巻きのようで、予想以上に軽やかでふわふわ
つけあげ専門店『寺田屋』の寺田成弘さんはつけあげについてこう話します。
「いちき串木野のつけあげの特徴は甘さと豆腐を入れることです」
しっかりとした甘さは伊達巻きのよう。
さらに魚のすり身がきめ細かいからか、予想以上に軽やかでふわふわ。
ポイントは、材料のヒメジ、キントキダイなどの白身魚のすり身を20~30分、石臼で練って粘りを出すこと。
豆腐は全体の3割と多めに入れます。
さらには、鹿児島で『地酒』と呼ばれる灰持酒も欠かせない。
もろみの発酵途中で灰汁を入れた日本酒を勢いよくどばどばと加えます。
なめてみると、甘みやうまみ、酸味とともに古酒のような香りがあって、
つけあげを風味豊かにしている気がするほど。
【松下商店】
甘酒を入れることでさらなるうまみとコクを
灰持酒とともに甘酒を入れることでさらなるうまみとコクを出しているのが『松下商店』。
朗らかに笑いながら話すのは、松下育代さん。
「串木野市内でつけあげやかまぼこを加工販売している大手製造会社で社長をしていた父が定年した30年前にこの店を始めました。父の唯一の意味が“つけあげ”だったので」
名物はいも天。
多くの店がふかしたサツマイモを使っているところ、
松下商店では大きめにカットした生の紅さつまを、
スケソウダラとヒメジのすり身と合わせてじっくり時間をかけて揚げています。
できたてを頬張ると、香ばしく揚がったすり身から、ほくほくでジューシーないもが顔をのぞかせます。
1枚から販売していますが、5枚入り、10枚入りでパッケージされたときの存在感は素晴らしいもの。
【赤崎水産】
しっかりした甘みとともに魚のうまみが詰まって後口爽やか
『赤崎水産』のつけあげは、鮮魚店のお惣菜のひとつとして販売されています。
すり身にする魚は仕入れによって変わるため、食感は日によって違いますが、
青魚と白身魚の割合が1対3という分量は変わりません。
この日の魚はアジ、サバ、イワシ、鯛、エソ。
生の魚をさばいてすり身にして味付けした生地を、
赤崎ひとみさんは、目分量ならず手分量でひとつひとつ小判型に成形していきます。
水をつけて優しくなでつけ、形を整えてから鉄鍋へと投入します。
厚みがあるので、中火でじっくり揚げます。
豆腐とともに、みりんや薄口醤油、喜界島産粗糖、生姜の搾り汁が入ったつけあげは、
しっかりした甘みとともに魚のうまみが詰まっていて後口爽やか。
青魚率が高いのでつみれのような味わいかと思いきや、やっぱりしっかりつけあげです。
「40年前にレシピを考案したお母さんの味を忠実に再現しています」
そう快活に笑うひとみさんの向こう、カウンターの中ではつけあげ用の魚がどんどんさばかれていきます。
いろいろなお店を回ってわかったことは、
揚げたてのつけあげはもちろん最高ですが、冷えても十分おいしいということ。
冷蔵庫に入れておけば身がしまってより魚感が楽しめます。
温め直す必要はもちろんなく、醤油をつけなくてもいいほど味が完成されています。
本誌では、さらに他の郷土食も特集されています。
この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。






