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文=松本 創 / 写真=佐伯慎亮
摩耶山のふもとに広がり、東西に10もの商店街や市場が連なる神戸・水道筋。
100年以上もの歴史を紡ぎ続けるこの街に暮らして四半世紀、私はその独特で温かな居心地のよさをどうにか言葉にしようと模索し続けてきました。
山の手と浜の手というふたつの文化が交わり中和された「汽水域のような豊かさ」や、絶妙にブレンドされたウイスキーのように調和する街並み。
何より、当たり前の顔をしながら当たり前をはるかに超える極上の味をさらりと出してくれる懐の深さがあります。
かつて商店街のエッセイ集『水道筋読本』を編んだ際には、「いわば『普通』のレベルが高いのだ」と表現しましたが、言葉を尽くしても語り尽くせない魅力がここには溢れています。
古い歴史を守る老舗も、新しく根を下ろした店も、根底に通底しているのはどこか温かく誇り高い「水道筋らしさ」です。
今号のあまから手帖ではそんな街の空気を鮮やかに体現する、魅力的な名店たちをご紹介します。
100年の歴史が息づく神戸・水道筋商店街で出会う「さりげない極上」
さりげない技。(寿し豊)
筆頭が、畑原東市場の「寿し豊」です。
週末の昼下がり、カウンターで刺身や一品物から始め、締めにその日おすすめのネタをいくつか握ってもらうのも至福ですし、買い物ついでに握りの盛り合わせや細巻きを持ち帰り、市場の惣菜と合わせるのもいいです。
「昭和22年頃、うちの両親が漬物屋を始めた時、この辺はまだバラックやったらしいわ。持ち帰りの寿司屋に変わったのは昭和40年」
にぎりは1貫150円〜。
この日は平目チリ、いわし、蒸し穴子に松前ずし(大)1600円を。オリジナルの鯵鳴門巻900円、定番の蛸やわらか煮650円はお酒のアテとなる一品です。坂田夫婦の軽快なおしゃべりを聞くのがまた楽しいです。
店舗情報:
寿し豊(畑原東市場)
・電話:内緒
・営業時間:11:00〜18:00
・定休日:火曜、第2・4月曜
・アクセス:王子公園駅から10分
串カツを買ってビール屋のイートインでかっくらう

今日は揚げもん。(ひので)
串カツ・フライの「ひので」に向かいます。
店主の米本涼子さんが、肉の職人だった亡き夫と始めて38年目になる持ち帰り専門店です。
「わたしはずぶの素人やったけど、主人の親戚がみんな肉屋さんやから揚げ方から食材の仕入れまで全部教わってね。今も素人やけど」と笑いますが、注文を受けると手早く細かなパン粉を付け、ラードでカラッと揚げる串カツは、どれを選んでも間違いないです。
丸ごと一匹にシソと梅肉を挟んだイワシ、さすが肉屋仕込みの牛肉、ほくほくのジャガイモなど私的定番を揚げてもらいました。
店舗情報:
ひので(畑原東市場)
・住所:兵庫県神戸市灘区水道筋2-23-5
・電話:内緒
・営業時間:10:00〜17:00
・定休日:火曜
・アクセス:王子公園駅から10分
クラフトの精神。(Brasserie a Route)
続いて向かった先は商店街に誕生して3カ月の新店、クラフトビールの「Brasserie a Route」です。
元鉄道マンの橋本壮平さんが構想10年、準備期間3年、うち1年は北海道での修業を経て開いた醸造所です。
アーケードの通りに面してずらりと並ぶタンクは壮観で、工事中から街の噂でした。
「醸造所をやるなら水道筋と決めてました。まず、摩耶山の伏流水がビール造りに適していること。それに市場や商店街に活気があり、クラフト、つまり職人の手仕事が残っているから」
醸造所と背中合わせの灘中央市場から井戸水を引き、さまざまな味わいを生み出しています。
水道筋商店街や市場の個人店で買った食べものを持ち込める「クラフトセット」は、Lサイズのビールが2杯ついて2800円です。
ソースや塩、醤油など調味料があるのも嬉しいです。「女性やお一人のお客様も多いですよ」と橋本さんです。
本誌では、「岡本・御影・六甲」観光案内などを紹介しています。
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