【負の感情に負けない『脳と心』のトリセツ】限りある脳の容量にストレスをためない方法

  • 更新日
  • 有効期限 2024.01.25

この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。
記事の有効期限以降は本誌は非公開となります。ご了承ください。

 

楽しい時間と負の感情、どちらも処理しているのは脳です。

脳のことをよく知ることで、負の感情をうまく処理できるかもしれません。

PRESIDENTでは、上手な脳との付き合い方を、脳科学者・篠原菊紀先生が解説しています。

 

限りある脳の容量にストレスをためない方法

 

誰しも、つらいことや思い出したくないことが1つや2つあると思います。

こうした『心の痛み』は、脳のはたらきとしては物理的な痛みに近いものがあります。

そのままにしておくと危険な目に遭うので、脳がそれを知らせるために、痛みを伝えるわけです。

 

しかしながら、現代社会では放っておくと命にかかわるような危険はあまり多くありませんから、
「防衛本能で嫌な気持ちを感じるのは、なんだか割に合わない」と思う方もいるでしょう。

 

そうしたつらさを軽減するために、脳との付き合い方を少し考えてみましょう。

 

たった数枚しかない脳のメモ帳の何枚かを
ストレスの処理に使う…?

 

 

大前提として、嫌な記憶やストレスによって精神的に負荷がかかっている状態は、
脳にも負担がかかっています。

脳内にあるワーキングメモリ、いわば脳のメモ帳は、3~4枚程度の枚数しかなく、
一度に扱える情報の数(チャンク)も同様に3~4個程度です。

ストレスによって脳に負担がかかっていると、
たった数枚しかない脳のメモ帳のうち何枚かがストレスの処理に使われてしまうわけです。

そうなると考えるためのメモの枚数が減ってしまうので、頭が働きにくくなります。

これはよい仕事をするうえでよろしくない状態なので、
ストレスに対処することはあなたの仕事にも役立つでしょう。

 

嫌な思いをした人にかける言葉として「早く忘れなよ」「飲んで忘れようぜ」というものがあります。

気遣う言葉としては嬉しいものですが、
これは脳科学の観点から見ると、
残念ながらあまり有効なアドバイスとはいえません。

 

 

なぜなら、記憶エングラムという記憶のネットワークが最も不安定化する(変化しやすくなる)のは、
記憶を再生した時、思い出したときだからです。

ですから、記憶を思い出したときにその記憶のネットワークに何かを付け足し、
構造を少し変えてしまうほうが建設的です。

 

たとえば、営業先に資料を持っていくのを忘れてしまったことを
「思い出したくもないつらい失敗」だと思っているのなら、
それを「誰でも一度はある、ありふれた失敗」という形に変化させましょう。

 

『嫌な記憶』を変化のさせ方

 

では、どのように『嫌な記憶』を変化させたらいいのでしょうか。

 

そのヒントになるのが、世界24カ国で実施されたトラウマに関する調査です。

スウェーデンにあるウプサラ大学の心理学教授、エミリー・ホームズ氏は
自動車事故に遭ったばかりの人に
コンピュターゲームの『テトリス』をプレイしてもらう実験を行いました。

 

すると、事故から数時間以内にテトリスをプレイした人は、プレイしなかった人よりも
その後1週間でフラッシュバックを起こす回数が62%も減ったという結果が出たのです。

 

同様にPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療を受けている患者さんに対しても
トラウマになっている記憶を思い出しながらテトリスをプレイしてもらうと、
トラウマがフラッシュバックする回数が平均で64%現象したという結果が出ています。

 

いっけん、テトリスとトラウマには何の関係もないように見えますが、
先述の通り記憶というのは呼び起こした瞬間、
つまり思い出した瞬間が一番不安定化しやすい状態になっています。

トラウマを思い出した瞬間に余計な行動を付け足すことで、
嫌な記憶がそうでもない記憶に変化する可能性があるのです。

 

この実験は深刻なトラウマに対してのアプローチであり、
あまりに大きなトラウマやショックに対しては専門家の指導を仰ぐ必要がありますが、
「思い出せる程度の、ちょっと嫌なこと」の扱いを変えたい程度であれば、
それを思い出しながら散歩や筋トレ、ゲームなどをするだけで
記憶の扱いを変えられる可能性があります。

もっと簡単なところでは、手のひらで太ももを叩きながら嫌なことを思い出す程度でもOKです。

 


 

本誌ではこの記事の続きをお読みいただけます。

この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。
記事の有効期限以降は本誌は非公開となります。ご了承ください。