がん患者を支える精神科医が教える『健康不安』との向き合い方

  • 更新日
  • 有効期限 2025.02.27

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現代では『がんは治る病気』と言われていても、いざ自分が診断されると他の完治する病気とは受け止め方が違います。

もし自分ががんと言われた時や、家族や大切な人が診断されたとき、どのように向き合っていけばいいのでしょうか。

 

PRESIDENTでは、4000人を超える患者との対話を通じてわかった、人生を豊かにする『折れないこころ』のつくり方を特集しています。

解説は、精神科医・医学博士の清水 研氏です。

 

ネガティブな感情はむしろ「心の栄養」である

 

文:清水 研

 

ビジネスパーソンの皆さんなら、就職の採用試験なら「面接でうまく答えられるだろうか?」といった具合に、不安を抱えながら、さまざまなビジネスシーンでのピンチを、切り抜けてきた経験があるのではないでしょうか。

そうしたピンチに直面した場合、ほとんどの人が不安と戦い、「何とかして消したい、克服したい」と、思っていることでしょう。

 

しかし、がん患者専門の精神科医である私は、「不安を無理に解消しようとするのではなく、味方につけましょう」と、患者さんにお勧めしています。

「ピンチはチャンスでもある」とよく言われますが、不安を味方にすれば、将来を切り開く原動力にもなります。

もっと言えば、不安は、人生を力強く生きるために欠かせない「心の栄養」ではないかとも、私は考えています。

 

そう言うと、多くの人が「ポジティブ思考が人生に役立つならわかるが、不安のようなネガティブな感情が、心の栄養とはどういうことか?」と、疑問を抱くでしょう。

心理学の観点から見ると、主な感情は、「喜び」「悲しみ」「怒り」「不安」の4つしかなく、ポジティブな感情は喜びの1つしかありません。

しかし、悲しみや怒り、不安といったネガティブな感情にも、実は人間にとって大切な役割があることがわかっています。

 

例えば、悲しみという感情には、実は、心の傷を癒す効果もあることをご存知でしょうか?

悲しむことで受け入れ難い過去と決別し、新たな人生をスタートさせる手助けとなっているのです。

 

怒りという感情にも、自分の大切な領域を守り、現在の問題を解決する力があるのです。

不安という感情は、「自分の身に危険が迫っている」と知らせる、脳からの警告でもあります。

 

人間がもし不安を感じなければ、向こう見ずな行動に走りやすくなり、生命を脅かすリスクが高まってしまいます。

不安という感情があったからこそ、人類は生存に関わるさまざまな危険を回避し、現在まで生き残ることができたとも言えるでしょう。

 

ただし、不安という感情は、大きな効能がある半面、人生を狂わせ、破滅させる危険性も併せ持っています。

皆さんにも、不安が心から離れず、「自由に楽しめる時間があったのに、無為に過ごしてしまった」といった経験があると思いますが、それ以外にも、不安によるマイナス効果はさまざまです。

 

例えば、仕事上の大きなミスで失業し、結婚を考えていた恋人に別れを告げられ、落ち込んでいる人がいたとしましょう。

将来への不安が抑えられず、雪だるまのように膨れ上がっていくと、悪い方にしか思考が向かなくなり、自分でも手をつけられなくなってしまいます。

不安が暴走する、そうした心理状態を、専門的には「破局的思考」と呼んでいます。

 

落ち込んだ人が破局的思考によって、ついには「生きる希望がない。自分の人生はもう終わりだ」と勝手に悲観すると、「恋人を道連れに心中を図る」といった、最悪のシナリオになるケースもありうるでしょう。

 

不安が高じるとさまざまな心の病、精神障害も引き起こします。

過剰な不安によって、日常生活に支障をきたすようになると、「不安障害」という病名の診断がつけられます。

不安障害には、めまいや息切れなど身体的な発作の症状を伴う「パニック障害」、人目が怖くなって外出できなくなる「社会不安障害」などもあります。

不安障害が募ると鬱を発症し、自殺につながる例も珍しくありません。

 

ネガティブな感情になってもいい
交流分析における本物の感情4種類

 

  • 喜び「この状態でいい」ということを教えてくれる
  • 怒り「自分の大切な領域を守り、現在の問題を解決する力になる
  • 悲しみ心の傷を癒やし、受け入れがたい過去と決別する力になる
  • 不安未来の問題を回避するため、危険を知らせるアラームのようなもの

 


 

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