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芥川賞作家の羽田圭介氏が発表した最新作『滅私』。
主人公の男は必要最低限の物だけで暮らす“ミニマリスト”です。
日本でこの言葉やスタイルが広まりだしたのは2015年ごろで、根強いブームがいまだ続いています。
羽田氏はなぜ“ミニマリスト”に着想したのでしょうか。
ミニマリストの考え方にウンウンと頷き、学んでいた人にとっては驚くインタビュー記事かもしれません。
ミニマリストの言葉に違和感を覚えた
「ミニマリストたちの極端な生活スタイルそのものよりも、メディアやSNSで彼ら彼女らが発している言葉に違和感を覚えたのがきっかけです」
『人生を最大化する』
『物より経験』
こういった言葉をみな一様にコピーしたように単語レベルで同じフレーズを多用していることに違和感を覚えたそうです。
「どこかで見聞きした他人の言葉を、咀嚼しないでそのまま自分の言葉として発信している」
SNSの登場以前には、メディアで発言する権利はある程度の知識を持った人か人気者にしかありませんでした。
それが誰でも発言が可能になったことで、伝播する知識レベルが下がったのが、
似たようなフレーズが蔓延する一因だと羽田氏は言います。
「それ以前の時代には、理解できない高尚なものに出会ったとき、自分の不勉強への最低限の謙虚さはあったように感じます。今は、知識人の発する難解な言葉を理解しようと背伸びをする姿勢がなくなり、『俺にも分かるように説明しろ』という態度が可視化され、定着したまま10年くらいたってしまった」
羽田氏が一部のミニマリストたちの発言を見て感じたのは、
徹底的に物を減らす暮らしをすれば悟りを開けるのとかといえば、そうでもないということ。
「SNSやブログに『執着を手放そう』と書く一方で、誰かからちょっとした小物やお菓子程度のプレゼントをもらったことに対して、『ミニマリストを公言している自分に、物を送りつけてくるなんて!』と激怒する。全く悟れていません(笑)」
『滅私』は2021年11月30日に発売されています。
《あらすじ》
必要最低限の物だけで暮らすライターの男。物だけでなく人間関係にも淡泊で、同志が集うサイトの運営と投資で生計を立て、裕福ではないが自由でスマートな生活を手に入れた。だがある日、その人生に影が差す。自分の昔の所業を知る人物が現れたのだ。過去は物ほど簡単には捨てられないのか。更新される煩悩の現在を鋭く描く。
インタビューの続きは本誌にてお読みいただけます。
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