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東京からおよそ4時間、周囲を山々に囲まれた東北の地・遠野。
かつて馬の産地として知られ人々が集まる賑わいある城下町でした。
この地に伝わる119の短い物語からなる柳田國男の名著『遠野物語』、
水木しげるが独特のタッチでこれを漫画家した『水木しげるの遠野物語』。
これら2つの作品に描かれるのは、かつての遠野の人々の暮らしと風景、
そして日常と非日常の間を行き来する人間や妖怪たちの姿でした。
今回は『水木しげるの遠野物語』について紹介したいと思います。
『水木しげるの遠野物語』とは?

民俗学の父と称される柳田國男の名著『遠野物語』。
物語の舞台は岩手県南東部、遠野地方。
かつて湖だったという説もあるように、四方を山に囲まれた盆地であり、
江戸時代には内陸と沿岸を結ぶ交易の要衝として栄えました。
遠野にはオシラサマ、河童、座敷童子、山男に山女など、さまざまな民話が語り継がれてきました。
明治時代に柳田國男がこれを一冊にまとめたものが『遠野物語』です。
そして、妖怪研究科として名を馳せ、民俗学にも造詣が深い水木しげるさんがこれを題材に
『水木しげるの遠野物語』を描き、2008年から2009年にかけてビッグコミックに連載、
その後2010年に単行本化されました。
水木しげるさんといえば、『ゲゲゲの鬼太郎』などで知られ、
愛らしいキャラクターや緻密でリアルな背景と共に、おどろおどろしい独特の世界を表現してきました。
作品を通して、妖怪文化を世に広めてきた水木さんは、江戸時代の絵師や浮世絵師などに影響を受けていました。
水木さんがなぜ妖怪という存在にここまで魅了されたのか。
生前に水木さんは「目に見えない世界を信じる」ことの大切さを説いていますが、
水木さんにとって目には見えない“感じる”存在がまさにこの妖怪だったのでしょう。
そして、その存在を信じるがために生涯をかけて、妖怪を描き続けたのではないでしょうか。
柳田國男の遺した『遠野物語』が水木さんによってビジュアル化されたことで、
原作を知らない人でも気軽に触れることができるようになり、より多くの人に『遠野物語』の世界観が伝わりました。
また、これら遠野に伝わる物語はおおよそオチがなく、淡々と語られるのが特徴です。
その無情さが妙にリアルで、もの哀しさをも誘います。
遠野の自然は豊かな恵みをもたらす一方、時に厳しさ、理不尽さをもたらしてきました。
自然の脅威を前に、人々はただ耐えることしかなく、その中で生まれた怒りや哀しみ、
喪失感を癒すために、遠野の人々はこの物語を語り、生きてきたのではないでしょうか。
自然について、生死について、社会のありようについて、遠野に伝わるこの物語にはさまざまな先人たちの知恵が詰まっています。
今日自然との共存という問題に直面している我々にとって、柳田國男が後世に残し、
水木しげるさんが漫画化したこの切なくも哀しい物語は、新時代を切り拓くためのよすがともなりうるでしょう。
本誌ではさらに詳しく『水木しげるの遠野物語』についてご覧いただけます。
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