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岩手県花巻市に生まれ、若くして法華経を信仰し農民救済に根差した創作を行なった作家・宮沢賢治。
多くの童話を残しましたが、その中には不思議な言葉が少なくありません。
今回は男の隠れ家に掲載されている宮沢賢治が愛した、岩手の風景と名作童話を紹介します。
銀河鉄道の夜

信仰心を童話に織り込んだ賢治の思いに心を馳せる
花巻駅の東方を流れる北上川西岸の一角を賢治はイギリス海岸と名づけました。
イギリスのドーバー海峡の白亜のプリシオン海岸を連想させる泥岩層が露出しているからです。
しかし現在のイギリス海岸は北上川水系のダムの整備によって推移が下がらないため、
泥岩層を見ることは難しいです。
それでもイギリス海岸を訪れる人が多いのは、この地が賢治の童話『銀河鉄道の夜』のモデルの一つと考えられているからです。
それを立証するにはJR釜石線の前身でかつてここを走っていた岩手軽便鉄道を登場させなければいけません。
この岩手軽便鉄道はイギリス海岸のそばを走っていました。
その光景を見た賢治の胸中によぎったものは何でしょうか。
賢治が少年時代から熱中した天体観測と瞬きながら夜空にたゆたう雄大な銀河。
賢治は童話に、よく花や鉱物や森や動物たちを登場させますが、『銀河鉄道の夜』での“星”はまさに圧巻といえます。
賢治の想像力は地面から天空へと舞い上がる鉄道を生み出し、さらに銀河を旅する鉄道の話を紡ぎ出します。
『銀河鉄道の夜』はジョバンニとカムパネルラの2人の少年の銀河鉄道の旅を中心に描かれていますが
銀河鉄道が白鳥の停車場で停まっている間に少年たちは列車を降りてプリオシン海岸に行き
クルミの化石を拾うという描写があります。
これはイギリス海岸での賢治の実体験の投影です。
一方、『銀河鉄道の夜』に織り込まれる大きな要素に
カムパネルラをはじめとするさまざまな人々との出会いと別れがあります。
イギリス海岸で出会った男性がこんな話をしました。
「ジョバンニの唯一の友であるカムパネルラは川で溺れた少年で、天上に行く途中だし、車中で出会った子どもたちも海で水死した精霊。愛する人たちとの楽しい時は泡沫でしかないってことだよね」
では賢治は『銀河鉄道の夜』で何を伝えたかったのでしょうか。
みんなの幸せを求めて生きていくことの貫さでしょうか。
「ぼくはおっかさんが、ほんたうに幸になるなら、どんなことでもする。
けれども、いったいどんなことがおっかさんのいちばんの幸なんだらう」
宮沢賢治記念館の学芸員・宮沢明裕さんはこう語ります。
「自然との共生の大切さを賢治は説きながら、若くして傾倒した信仰の大切さを童話に織り込んでいます」
その言葉を心にしまい、イギリス海岸に立ちながら賢治の想像の世界に思いを馳せてみるのもいいかもしれません。
本誌では他の作品と賢治の愛した風景を紹介しています。
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