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私たちはなぜ人と同じように、もしくはそれ以上に、犬を愛したくなるのでしょうか。
なぜ、犬は人間にとって最良のパートナーになりうるのでしょうか。
フィガロジャポンでは、犬の健康を考えたフードやおしゃれなグッズ、
一緒に遊べるスポット、そしてパリの犬の暮らし方まで犬とのさまざまなライフスタイルを紹介しています。
今回は作家・辻仁成さんのコラムをピックアップします。
ぼくはなぜ、犬と生きる人生を選んだのか
10年ほど前に、ぼくはシングルファザーになった。
当時小学5年生だった息子を引き受けることになった。
離婚の直後、息子の口癖は、「パパ、犬を飼ってもいい?」であった。
「ダメだよ。ふたりになって、それどころじゃないのわかるだろ?」
ぼくは息子にそういった。
実はぼくも息子と同じ年の頃、両親に「犬を飼っちゃダメ?」と何度もお願いをしていた。
「ダメよ、うちは転勤族だから、犬がかわいそう」というのが、お決まりの返事であった。
「でもさ、パパ、ママがいなくなってパパ寂しいでしょ?犬の面倒はぼくがみるから、パパを元気にさせたいんだよ」
ぼくは息子の頭をさすって、いつかね、と言うのが精いっぱいであった。
大変だった離婚直後をなんとか乗り切り、中学生、高校生と、
それなりの反抗期や思春期を迎えながら息子は順調に成長を遂げ、
昨年、無事に志望大学に合格したのだった。
ぼくは知らせを聞いた瞬間、ガッツポーズをし、気を取り乱して、
どうだ、やったぞー、と叫んで道行く人々を驚かせたものであった。
そして、息子は入学と同時に大学の近くにアパルトマンを借り、ひとり暮らしを始めることに。
フランスでは親元を離れてこそ一人前なのであった。
息子も巣立っていった。
すると、ぼくは独りぼっちになってしまったのである。
「いつか、ぼくが家族を連れてパパを迎えに行くよ」とは、幼い頃からの息子の決まり台詞であったが、
個人主義が徹底したフランスで大家族というのはあまりない。
そこで、ぼくはこのことを先読みし、2年ほど前にノルマンディに小さなアパルトマンを購入することになった。
そして、そこでいま、ぼくは犬と暮らしている。
「パパ寂しいでしょ?」と幼い頃のあの子が言った言葉が、まさに三四郎との出会いをつくった。
昔は、パリ市内のセーヌ川河畔の通りに何軒ものペットショップがあったが、動物愛護団体などの運動もあり、
世の風潮的に、ペットショップで犬猫を飼うのが難しくなってきていた。
そして、法的にもフランスは2024年から犬猫のペットショップでの売り買いが禁止となる
(勢いで飼うのはいいが、動物を育てるのが大変で捨ててしまう人が多く、この結果となった)。
そういうこともあり、犬とどこで出会うかというのが最初の問題だった。
人伝てに、優秀なブリーダーがいることを聞きつける。
ノルマンディのはずれの山奥にぼくが勝手に名付けた「犬の館」があった。
ブリーダーは厳しい人で、誰にでも売らない、と最初に言った。
犬と生きる覚悟のある人にだけ、ぼくはこの子たちを譲るんだ、と最初に釘を刺されたので、
ぼくは拙いフランス語で、一生懸命、犬愛について語った。
むしろ、その内容よりも、ぼくの情熱が認められ、三四郎を預かることになった。
実は、売れ残った最後の一匹であることが後でわかった。
鼻の上に大型犬に噛まれた痕があり、そのせいで彼は引き取り手がいなかったのである。
かくして、ぼくと三四郎の人生がスタートした。
本誌では、辻さんのコラムから、愛する犬への思いや愛犬との生活が綴られています。
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