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親のために「よかれと思って」したことが、実は親は望んでいないことがあるといいます。
PRESIDENTでは、5つの典型的な失敗例から、親も子もしんどい毎日から抜け出す出口を探っています。
【失敗-1】介護を機に仕事を辞めてしまう
親の介護が必要になった場合、仕事を辞めて必死に面倒をみようとする人が少なくありません。
厚生労働省の調査によると、2021年に『介護・看護』を理由に職を離れた人は、
約9万5000人(男性約2万4000人、女性約7万1000人)。
老親のためによかれと思って下した決断でしょうが、介護離職はふたつの点で問題があります。
(1)介護こそがその人の生き甲斐になってしまう
(2)収入がなくなる、または激減する
特に2は深刻で、たとえ転職したとしても、年収を転職前と後で比較すると、
男性556万円→341万円、女性350万円→175万円(ダイヤ高齢社会研究財団の調査。2015年)と、
大幅な減収となります。
1、2のために子は精神的余裕をなくし、親を怒鳴ったり、親に手をあげたりしてしまうこともあります。
最悪の場合は親が亡くなった後に、人生の目標を失ったこと+経済的困窮で、
自殺する介護者もいるといいます。
介護離職は極力避けるべきだというのは、『自分らしい生き方を支援する会』代表の蔵持信朗さん。
「平均寿命と健康寿命との差は、男性で約9年、女性で約13年。これが介護期間だという報道がされています。介護がそんなに長く続くのなら、自分が退職して面倒をみないといけないと思い詰めてしまう方がいますが、介護期間は、実は平均で5年程度です。この数字を知れば、『少しの間だから、今はきついけれども仕事を辞めずに頑張ろう』と思えるのではないでしょうか」
生命保険文化センターの2021年度調査によると、介護の期間の平均は5年1ヶ月。
「5年経つと、ケアマネジャーが担当している利用者リストがほぼ入れ替わる印象ですので、妥当な数字だと思います」
5年のために、安定した会社員人生を捨てていいものか。
介護の現場を知る人たちから実際に介護離職をした場合の例を紹介してもらいます。
「ウナギを食べたい」とせがんだ母に

夫に先立たれた高齢女性は認知機能の低下もあって、住んでいた築70年の一戸建てはゴミ屋敷に。
くわえてその女性は糖尿病も患っていたため、見るに見かねた長男が、公務員の職を辞して母親の住む地域に移住。
実家で同居したかったのだが、あまりの量のゴミのために住むことができず、近くにアパートを借りる形に。
要介護認定の申請を出し、要介護1の認定が出ました。
ヘルパーが来てくれ、デイサービスの利用も始まり安心したので、
息子はゴミ屋敷の片付けを担当したうえで職を探しましたが、希望する条件での採用はなく、
不本意ながらパートで働くように。
ですが、低い年収などから仕事人としてのプライドを保てないこともあり、
介護者である息子のストレスが増大。
息子は献身的にインスリン注射を打とうとしますが、母親が嫌がります。
「自分は仕事を捨ててまで介護しているというのに」という思いが強いため、
言うことを聞かない母親との言い争いが続きました。
母親の認知機能と体調は悪くなっていきますが、息子はその事実を受け入れることができません。
2人の間で穏やかな時間が流れることはないまま、母親は亡くなりました。
介護期間は2年半でした。
また、経済的困窮から老親に供与するべきものを満足に与えることができない人もいます。
尿漏れパッドやおむつの購入を控え、ペット用シーツを切って代用する人もいます。
こういう例もあります。
母親が「夏になった。ウナギを食べたい」とせがんだところ、
「贅沢言うんじゃない。どれだけ生活を切り詰めているかわかっているのか」と怒鳴った息子がいました。
実際に経済的な余裕がないことはもちろん、
貯金がどんどん減っていくことによる介護者の精神的消耗も著しい。
老親のちょっとした一言に対して、「贅沢言うな」とキレてしまうのです。
母親はその後一度もウナギを食べることなく、亡くなってしまいました。
子はこのときの言葉を深く後悔しているそうです。
「あれがもしかしたら、ウナギを食べる最後のチャンスだったのかもしれない。なのに俺は……」と。
蔵持さんは言います。
「介護期間をしんどいと思うのではなく、親と過ごせるのはあと5年しかないととらえ、思い出に残る豊かな時間を送れるよう、時間も労力も費やしてほしいと思います。その意味でも精神的金銭的余裕が必要なのです」
本誌では、他にも介護の失敗例を4つ紹介しています。
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