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大人には、資格取得やキャリアアップとは別の、知的好奇心を満たし、心を豊かにする学びがあります。
学校に通ったり、留学に挑戦したりする人、ユニークな学びの場を提供する人に聞く、
知識がもたらす“豊かさ”とは?
SPURでは『学びを深める人々』をインタビューしています。
その中から、編集者・研究者・キュレーターの林 央子さんをピックアップします。
共感できて支え合える人に
学びの場へと導かれていく
アートとファッションの境界
人が自発的に動くことへの興味
林さんはICU卒業後、資生堂『花椿』編集室に所属。
後にフリーランスで雑誌などに執筆、2002年『here and there』を創刊します。
1996年『Baby Generation』展、2014年『拡張するファッション』展示を創出。
近著は「わたしと『花椿』」。
2019年夏に事情が重なり、英国に行くことになった林さん。
「長く関わってきたファッションやアートについて学校で何を学ぶかを決めるのは結構難しく、調べるうちにセントラル・セント・マーチンズに展覧会を研究するエキシビションスタディーズコースがあることを発見しました」
2011年に『拡張するファッション』を著した3年後に同名の展覧会を行い、
アートプロジェクトとしての参加型ワークショップを展開。
自分の発信活動と社会との出合いの場が展覧会だと気づき、
展覧会研究という珍しい学会に入ろうと手続きを進めました。
「イギリスの学位は特殊で、私が入ったのはエムレズ(MRes)という自分のやりたい研究がはっきりしている学生が、専門分野を研究し卒論にするという博士課程に近いもの。試験や資格のためではない、まさに大人の学びの対象のような位置づけです」
しかし学校に疑問を抱き、しかも残り1年は帰国後オンラインでと考えていたのに、
政府の方針が変わって対面でないと認められないことに。
「現地ではロンドン大学ゴールドスミス校やロンドンカレッジオブファッションなどで教えているファッションという概念を新しく広げ、もっと批判的に考えようというムーブメントを起こしかけていた。
私の活動を知っている人が多く、彼らと話していると自由で楽しいし、よく聞いてみると私が受けていた指導はずいぶんとクラシックだとわかったんです。
それでロンドンカレッジオブファッションのPh.D.(博士号)なら向いているとアドバイスされて、最終的に今秋から移りました。そこはファッションを批評的な視点で考える方針を強化しようとしていて、オンラインでもOKだったので」
若い学生からの社会人経験へのリスペクトが刺激に
新しい学校では、アートとファッションの境界線で考察してきたアーティストが指導教官になりました。
林さんもその境界線は常に意識しているし、さらに人が自発的に動くことに興味があるとのこと。
それを哲学、フェミニズム、社会構成主義など、どの理論を使って研究するのかを、これから決めていきます。
「テキストとプロジェクトを提出するPh.D.と、批評テキストだけのものがありますが、私の場合は前者の、人を巻き込むプロジェクトを作ったほうがいいかなという気がしています。
現在、浦安市と東京藝術大学が行う浦安藝大というアートプロジェクトにキュレーターとして関わり、学びの場を作ることになりそうなんです。ここでの実践が自分の研究と結びつけられそうです」
自らも学びを広げ、さまざまな人が参加できる学習の場を作ろうとする林さん。
ロンドンの学校で刺激的だったのは若い学生からの、社会人経験へのリスペクトだったといいます。
「哲学のテキストを熟読しているような、知識豊富な若い学生たちがたくさんいたのですが、私は社会人としての経験を積んできたこともあり、授業中の議論の中で質問すると、とても盛り上がることがありました。
終わってからも『ナカコのあの話、もっと聞きたい』と言ってくる人がいて、社会人として経験したことが学びになっていたんだなと気づきました。そこにはみんなが共有している何かがあって、年齢もあまり関係がない。そういう意味で、横のつながりが豊かになったと思います。
飛び込んでみてわかったのは、どれだけ共感できて支え合える人と出会えるかということ。そういう人たちがより多くいる場所に、自然と学びの場も移っていくのだと思います」
本誌では文筆家のひらりささんの『大人の学び』も掲載されています。
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