
この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。

「頭が悪いから騙されるんだ」
誰かに騙されている人を見て、そう見くびったことはないでしょうか。
しかし、脳科学者の篠原菊紀氏によれば、そういった考えがより脳を騙されやすい状態にしてしまうのだといいます。
人間は、誰もが騙されやすいようにできている…
PRESIDENTでは、『「騙されやすい人」は、なぜ騙されるのか』を特集しています。
人間の脳はもともと騙されやすくなっている
詐欺被害防止を周知するキャンペーンで
「“私は大丈夫”が一番危ない」というお決まりのフレーズを聞いたことがあるかと思います。
これは「詐欺を他人事として捉えていると、足をすくわれて騙されてしまうので気をつけましょう」と
注意喚起しているわけですが、実際のところあまりピンと来ませんよね。
特殊詐欺の被害に遭った人の報道を見るたび、
心のどこかで「詐欺は高齢者や情報リテラシーの低い人が引っかかるもの」と思い込んでいる人は
多いのではないでしょうか。
しかし、脳科学的な立場から紐解くと、基本的に騙されない人間というのはいません。
人間は他者を信じてしまう生き物なのです。
その理由は、人類が発展してきた歴史を遡るとよくわかります。
そもそも人類が生物学的に生き残ってきたのは、他者との共同生活を始めたからです。
人間は元来一人で生きられない生き物でしたが、集団行動で他者と行動を共にすることで、
効率的に生き残る術を会得したと言われています。
例えば、集団でいるときに動物や他の部族などの襲来があったとき、
他者の目の動きで相手がどっちを向いているか判断して危険を回避するなど、
人間は他人の動作から意図を汲み取る能力に長けています。
人の白目部分が大きいのはどちらを向いているのかすぐわかるためでもありますし、
ミラーニューロンシステムと言って他者の行動や意図を真似ようとする神経システムも持っています。
要は、人間は他者に同調してコミュニケーションを図る生き物であるがゆえに、
相手を信じやすく騙されやすい性質を帯びているのです。
こうした大前提を踏まえたうえで、特にどのようなシチュエーションで人は騙されやすいのか見ていきましょう。
そもそも特殊詐欺において、知らない人間から「キャッシュカードが不正利用されている」
「税金で未払いの料金がある」といった嘘を吹き込まれてお金を振り込んでしまうのは、
冷静に考えれば鈍感すぎますよね。
ただ、これは騙された本人に携わっている判断力が低いというよりも、
詐欺を働く側が判断力を鈍らせるスキームを展開しているのです。
いまでも被害件数が多いとされるオレオレ詐欺は、最近その手口が複雑化しています。
以前なら息子を装った人物が示談金を要求するという単純なやり口でしたが、
近年では息子だけでなく警察官や弁護士、会社の上司など、
多くの人物が断続的に電話をかけてくるスキームが常套化しています。
複数の人物が入れ替わり立ち替わり登場することから「劇場型」と呼ばれているこのスキームは、
多角的に情報を与えることで被害者を翻弄しているのです。
この「劇場型詐欺」は、脳科学的に見ても理にかなった手口です。
人間の脳にはワーキングメモリーと呼ばれる機能が備わっています。
ワーキングメモリーとは端的に言えば「メモ帳」のような機能で、
ちょっと前の出来事を記憶し、そのメモを使って判断したり行動したりするというもの。
一例を挙げると、広告で見た電話番号を覚えて電話をかけることができるのも、
ワーキングメモリーの働きによるものです。
ただ、ワーキングメモリーの容量には限りがあります。
実際に、電話番号を覚えた後に「“フジサン”を逆から発音してください」「100から7を引き続けてください」といった、
まったく関係ない別の作業を遂行してみてください。
一通り問題を解いて、さて広告で見た電話番号を思い出そうとしてみると、
頭が真っ白になってしまう人もいるのではないでしょうか。
このようにワーキングメモリーは、大体3~4つの事柄を同時並行するのが限界と言われており、
マルチタスクを強いられるとキャパシティーを超えてしまうのです。
本誌では、詐欺に遭う人間の仕組みについてさらに詳しく解説されています。
I LOVE MAGAZINES!キャンペーン2024

定期購読すると、テーマに沿った『〇〇の秋』抽選でプレゼント!
期間中に新規で対象誌をご注文をいただいたお客さまから抽選で合計100名様に
グルメカタログギフトや、Fujisanギフト券、Amazonギフト券などが当たります!
毎回ご自宅へお届けしますので外出の必要はございません。
上のキャンペーン画像をタップして詳細をご覧ください!
この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。






