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大人と子どもでは、どちらのほうが英語を習得しやすいのでしょうか。
実は脳科学的には大人のほうが効率よく英語を学べるといいます。
PRESIDENTでは、知識や経験に基づいた『大人ならでは』の英語学習法を、MRI脳画像診断の第一人者で『脳番地』を利用した効率のいい勉強法に詳しい加藤俊徳氏が解説しています。
大人の方が効率よく英語を習得できるワケ
文:加藤俊徳
皆さんの中にも、「英語などの語学を身につけるなら、早いほうがいい」「子どもならともかく、大人になってから英語を覚えるのは大変」と、考えている人が多いのではないでしょうか。
しかし、脳科学の観点から見ると、子どもよりむしろ、大人のほうが効率よく英語を習得できるのです。
なぜなら、大人は、英語学習をつかさどる脳の機能が発達していて、英語学習のプラスになる、さまざまな情報やノウハウを脳に蓄えているからです。
大人の脳の優れた機能は、英語を身につけるのに、大きな武器となるのです。
実際に、私も若い頃は英語が苦手で、医学部受験でも英語で失敗し、浪人を経験したほどでした。
小児科医になってから関心を抱いたMRI(磁気共鳴画像法)の研究のため、「米国に行きたい」と強く思うようになり、一念発起して自分に合った英語学習をし直した結果、英語のライティングをマスター。
国際学会で論文を発表できるまでになり、米国で6年間の研究生活を実現できたのです。
そして、私の英語の学習法を、脳科学のメカニズムに基づいて検証してみたところ、大人にとって理に敵った英語学習のメソッドだったことがわかりました。
私は、英語を操れるようになった脳を「英語脳」と呼んでいますが、ここでは、皆さんが自分の脳を英語脳にリフォームするにはどうすればいいのかを、ご紹介しましょう。
私たち人間の脳は、領域ごとに担当する機能が異なっていて、医学的には、英語などの言語情報の処理を行う領域が「言語野」、皮膚感覚などの動きを担う領域が「感覚野」、運動機能を担う領域が「運動野」などと呼ばれています。
例えば、脳卒中などの重病や大きな事故で、歩行できなくなったりするのは、脳の運動野が重度の障害を受けたというケースが多いのです。
私は英語脳の働きに応じて、脳を8つの領域に分類し、各パートに8つの「脳番地」をナンバリングしてみました。
英語学習では、英語の情報処理を受け持つ脳の領域が中心になるものの、その領域も視覚や聴覚、運動などを担うほかの脳番地とうまく連携できなければ、英語学習もはかどりません。
例えば、目が見えなければ、英語のリーディングができないし、耳が聞こえなければ、英語のリスニングができません。
口を動かせなければ、英語のスピーキングができないし、手を動かせなければ、英語のライティングができないのです。
つまり、8つの脳番地の働きがいいのか悪いか、脳番地同士の連携プレーがいいか悪いかによって、英語学習の成否も左右されるわけです。
子どもの場合、真綿が水を吸い込むように、新しい情報をどんどん脳に取り入れていきます。
しかし、経験値が少ないため、吸収した情報を生かす「脳のソフトウェア」を上手に使うことができません。
英語学習でも、英単語などはよく覚えますが、スムーズな英会話がすぐにできるわけではありません。
それに比べて、人生経験が豊富な大人の場合、知のソフトウェアを巧みに使うことができます。
英語以外の情報やノウハウも動員して、8つの脳番地をフル稼働させるので、英語学習での相乗効果を得やすいのです。
その典型例が、日本語と英語の翻訳という作業。
国語が得意で、日本語の単語や熟語をたくさん知っている人ほど、英語も上達しやすい傾向にあります。
なぜなら、日本語の単語や熟語を英語に置き換えればいいだけなので、言語の構造や意味がよくわからない子どもよりも、はるかに英語学習のスピードが速いからです。
つまり、8つの脳番地の働きを理解したうえで、英語のトレーニングをすれば、いくつになっても、どんな大人でも英語脳は成長し、英語力も高まっていくわけです。
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