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梅田駅から歩いて20分の中津商店街。
さびれたシャッター街というイメージを持たないで!
中津商店街はレトロとモダンが交わり進化中なのです。
あまから手帖では、大阪・中津商店街を大特集。
かつてこの場所で働いていたというライターのスズキナオさんが思い出を辿りながら、新店も覗いています。
たまに様子を見に行きたくなる中津商店街

文:スズキナオ
週に数回、中津商店街に通っていた時期があった。
大阪に引っ越してきたばかりの10年ほど前、仕事がまったくなかった頃に「シカク」という名の小さな書店で店番のアルバイトをしていた。
その書店が中津商店街にあったのだ。
自分にとって未知の土地だった大阪。
梅田から20分ほど歩いてたどり着く中津商店街は昼間でも薄暗くて静かで、正直、ちょっと怖かった。
今は撤去されているが、当時は、あれをアーケードと呼んでいいのか……高い位置に天幕が張られていて、そのせいで暗く感じたのかもしれない。
最初は心細く感じていた商店街も、じっくり歩いてみると意外な発見が数々あった。
「プーケット」という不思議な名のコインランドリー。
学校帰りの子どもたちが立ち寄っていく古い駄菓子屋「丸繁商店」。
一見するとシャッター商店街に見えなくもなかったが、営業しているお店は意外と多かった。
大正時代に創業した酒屋「三河屋加藤万治酒舗」の脇の自販機でよく缶チューハイを買って飲んだ。
「シカク」の店長に頼まれて、私は「商店会費」を集金してまわった。
店長が人見知りだという理由で頼まれるのだが、私も負けず劣らずの人見知りだ。
馴染みのない店や個人宅をまわってお金を集めるのにはかなりの勇気が必要だったが、知らない街に少し近づけた気がして嬉しくもあった。
2017年に「シカク」が此花区に移転することになり、中津商店街に行く機会はめっきり減ってしまった。
それでも、たまに様子を見に行きたくなる。
中津商店街は私が最初に出会った“大阪”なのだ。
かつて「シカク」があった場所は鮮やかなグリーン壁の美容院「BUNKA」になり、駄菓子屋は「福本商店」と屋号を変え、すっかり新しくなった店舗で営業を続けている。
自分が通っていた頃にはなかったお店が、ずいぶんたくさんある。
「FoTan」もその一つ。
2022年に服部天神からこの商店街に移転してきた広東風中華粥の店である。
「お粥のお米は滋賀で作っています」と店長の堀田さんが教えてくれる。
長浜の「みたて農園」を運営母体に、そこで収穫された「みずかがみ」という米を使っている。
「口福セット」は食べごたえ十分。
トッピングは7種でも「塩鯖」は茨城県波崎の「越田商店」の鯖の文化干しを丁寧にほぐして使っていて、鯖の深い旨みがお粥と柔らかく溶け合い、「今、いいものを食べているぞ」と贅沢な気分になる。
そこからほど近い「月と太陽」は2018年オープンのネパール料理店。
古民家の風合いを残した落ち着いた雰囲気で、プレートの上にバスマティライスを囲むようにカレーやダルなど10種類のタルカリ(惣菜)が並ぶ「ダルバート」が名物だ。
混ぜ合わせて食べるとひと掬いごとに味わいが変化して楽しい。
店主のガイレさんが流暢な日本語で「ジンブーというハーブが味の決め手です」と教えてくれた。
夜にお酒を飲みながらゆっくり過ごすこともでき、「こんなお店があの頃あったら、通っただろうな……」と、思わずにはいられない。
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