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2025-02-06 発売号 (2025年3月号)
今号のサッカークリニック特集では、サッカー技術の言語化を紹介。
そのイントロダクションとして、現代フットボールにおける言語化の進み方、そして、言語化の重要性を綴ります。
目次
体が勝手に動くレベルへ引き上げるために言語化が大いに役立つ
現代のフットボール界において、言語化が極めて重要なファクターとなっています。
その中身は、ポジションからの個々の技術、チーム戦術に至るまで実に幅広いです。
欧州初の新たなジャーゴン(専門用語)が日本に次々と輸入されるようになって久しい。
その背景にはグローバル化やIT化の進展があります。
事実、世界中の人々がインターネットを介して最先端の情報にアクセスしやすい環境が整っています。
また、ジャーゴンの英訳が急速に進んだのも大きい。
21世紀に入ってから莫大な放映権料を背景に一大帝国を築いたイングランド・プレミアリーグにスペイン人のジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ監督)やドイツ人のユルゲン・クロップ(前リバプール監督)をはじめとする当代の名将たちが続々と集まり、その哲学、理論、戦術が英訳され、世界各国に広まることになりました。
日本人はしばしば英会話が苦手と揶揄されるが、母国語以外でなじみが最もある言語は英語。
しかし、フットボールに関するジャーゴンは野球と異なり、さまざまな国の言語が複雑に入り混じってきました。
例えば、バックスの手前に陣取る2人のMFを表すダブル(英語)ボランチ(ポルトガル語)などがそうです。
ブラジル人が聞いたら卒倒しそうだが、ドイスボランチと言われたところで、そもそもポルトガル語になじみがない日本人にはわかりにくい。
戦術用語なら、なおさら。
クロップ戦術の代名詞であり、一大トレンドにもなったゲーゲンプレス(ドイツ語)は思いのほか定着しませんでした。
現在では、その英訳であるカウンタープレスが一般的に使われています。
現在とは異なり、20世紀におけるイングランドのフットボール界は保守的でした。
基本布陣はフラットな「4−4−2」で、ゲーム自体は「急がば急げ」の肉弾戦という時代が長く続きました。
そうした事情から目立った進展がなく、数多くのジャーゴンを持つブラジルやイタリアといったフットボールの超大国と比べて、その数には限りがありました。
現在ではポルトガル語やイタリア語、あるいはドイツ語やスペイン語だったものが広く英訳されて伝わり、日本人にとって理解しやすくなった面があります。
本来は、英訳よりもむしろ、日本語に翻訳してしまったほうが良いのかもしれません。
俳人や歌人として名高い正岡子規によって、ポジションから戦術に至るまで数多くの用語が翻訳された野球のようにー。
いや、21世紀の今となっては、英訳をそのまま受け入れるほうが効率的でしょう。
【深堀解説】そもそも「ゲーゲンプレスとは」?
サッカー界を席巻した戦術の基本
ここで改めて、当時のトレンドとなったゲーゲンプレスとはどのような戦術なのかを整理しておきましょう。
ゲーゲンプレス(Gegenpressing)とは、ドイツ語で「逆(Gegen)」+「プレス(Pressing)」を意味する言葉です。
攻撃から守備に切り替わった瞬間、自陣に引いて守備ブロックを形成するのではなく、「ボールを失ったその場で即座に相手に圧力をかけ、奪い返す」戦術を指します。
高い位置で奪い返すことができれば、相手の守備陣形が整う前に、一気にショートカウンターでゴールに襲いかかることができます。
「ゲーゲンプレス」と「ハイプレス」の違いとは?
よく似た言葉で「ハイプレス」戦術がありますが、この2つには明確な違いがあります。
- ハイプレス: 相手のビルドアップを制限するために、チーム全体を高い「位置(エリア)」に押し上げてかける組織的なプレス。
- ゲーゲンプレス: ボールを失った瞬間に、陣形が崩れている隙を狙って即座に連動してかけるプレス。
つまり、ハイプレスが「高い位置」に基準を置くのに対し、ゲーゲンプレスは「ボールを失った瞬間」に基準を置く戦術であるという違いがあります。
なぜ「ゲーゲンプレスは時代遅れ」と言われるのか? その致命的な弱点
近年、ネットや指導者の間では「ゲーゲンプレスは時代遅れなのではないか」という議論がなされることがあります。かつて世界を席巻したこの戦術がそう囁かれる背景には、いくつかの明確な弱点があります。
1. 選手への肉体的・精神的な負荷(タスク)が大きすぎる
90分間、ボールを失うたびにスプリントを繰り返すため、選手には超人的なスタミナと規律が求められます。
過密日程となるシーズン後半の失速や怪我人の続出など、選手の消耗が激しいことが最大の弱点です。
2. 相手チームの回避技術(ビルドアップ能力)の向上
現代サッカーでは、GKを含めた後方からのパス回しの技術の向上や・偽サイドバック(サイドバックが自由な立ち位置をとって捕まえづらい位置にポジショニングする役割)の導入により、相手チームが冷静にパスを回してゲーゲンプレスの「最初の波」をいなした場合、前がかりになっている分、ディフェンスラインの後ろにスペースを晒したままカウンターを食らうため、大ピンチを招くことになります。
3. 「引いて守る・ボールを持たない」相手に対して効果が薄い
相手が最初から自陣に引きこもり、ロングボールを多用してくる場合、敵陣でのトランジション(切り替え)自体が発生しにくくなり、ゲーゲンプレスをハメる機会を失ってしまいます。
このように、戦術の進化に伴って弱点が対策されたため、「ゲーゲンプレス一辺倒」のサッカーは時代遅れと捉えられるようになりました。
現在では、ゲームをコントロールするポゼッションと組み合わせた「ハイブリッド型」の戦術が主流となっています。
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