
この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。

日本の宝である『温泉』。
季節を映し出し、土地の美味でもてなし、
心身のくつろぎをもたらあしてくれる『温泉宿』は、日本最高の贅沢のひとつと言ってもいいでしょう。
今回の婦人画報では、温泉を愛し、豊富な温泉体験をもつ“温泉賢者”の方々に、
本当に推薦したい温泉宿を教えてもらいます。
これまでの温泉宿特集の総括・決定版ともなるべき珠玉のラインアップが出揃っています。
【蟹の宿】あらや滔々庵

歴史と伝統が培ってきた底力
“湯通”も“食通”もうなる名宿
加賀温泉郷のひとつ、山代温泉を代表する老舗宿『あらや滔々庵』。
加賀前田家、北大路魯山人ゆかりの宿として知られ、湯、食、空間どれを取っても一流と言われる名宿ですが、
今回は『蟹の宿』として選者の票を最も多く集めました。
石井宏子さんが「一度食べたら忘れられない」と語る焼き蟹は、
濃厚で甘みのある身が詰まった青タグ付きの加能蟹。
「炭火の七輪でほどよく火入れした蟹の身をそのままかぶりつく瞬間が至福です」
坪田三千代さんは
「おいしい料理に花を添えるのが、須田菁華窯をはじめとする趣味のいい器使い。これぞ日本旅館!という実感が湧きます」
と、料理と器の調和を称えます。
山代温泉は約1300年前に開湯。
小山薫堂さんはこう話します。
「大正時代にドイツで開催された万国鉱泉博覧会では金賞を受賞した名湯。文化の薫り漂うなかで最高の湯と蟹を味わえます」
地下数十メートルから湧き出す源泉は一日約10リットルという圧倒的な量で、
「やわらかな湯に包み込まれる感触が心地よく、肌がしっとりうるおう美人の湯です」と
石井さんも絶賛します。
日本文化の博物館のような佇まいはそのままに、新たな取り組みも。
ワインバーだった有栖川山荘が、2年の改装を経て2023年夏、
一棟貸しの露天風呂付きヴィラとして生まれ変わりました。
18代目当主の永井隆幸さんが一からデザインした空間には、
工芸の盛んな土地にふさわしく、若い芸術家の作品を取り入れています。
「魯山人の時代から変わらぬ気風です」という永井さん。
伝統と確信が約800年の歴史を未来につなぎます。
【泉質自慢の宿】山形座 瀧波

一滴も水を加えない“10割源泉”の宿
平安時代後期の開湯から930年余、長い歴史を誇る赤湯温泉は、
硫黄・ナトリウム・カルシウムなどを含み、古来、戦で傷ついた兵士たちを治癒、
その効能はいまも慢性皮膚病、アトピー性皮膚炎、五十肩などさまざまです。
皮膚に優しく、赤子の産湯にも使われ、
飲泉すると糖尿病や慢性消化器病などにも効果がある泉質として有名です。
『山形座 瀧波』は、そんな赤湯温泉の恵みを最大限堪能できる宿。
2017年に19部屋すべてに露天風呂を設え、源泉からじかに温泉を配湯するシステムにリニューアル。
徒歩5分ほどの源泉からは60度の湯が毎分800リットル噴出しますが、その湯がじかに各部屋に届きます。

宿には『湯守』と呼ばれる特別な客室係が5名常駐、各部屋の湯の温度を加水せずに40度程度に調整し、
チェックインからチェックアウトまでゲストが快適に赤湯温泉を楽しめるように努めます。
湯守のひとり、須藤清市さんは、かつてこの宿の社長でもあった方。
曰く「ゲストの方には、到着直後、お食事前、お食事後、就寝前、朝一番、朝食後といったペースで、滞在中に最低6回は温泉に浸かっていただきたいのです。
地球の恵みともいえる源泉、一滴の水も加えず“生まれたて”の源泉に浸かると生き返る心地になります。100パーセント、10割で赤湯を楽しんでいただけるようにその日の天候・気温に合わせて24時間体制で湯船の調整をいたします」
小山薫堂さんは「源泉の純度を守ために、源泉から空気に触れさせることなく足元に湧出している、
蔵王石の岩風呂の部屋が最高」と推薦。
石井宏子さんも「地中からダイレクトに各部屋の湯船まで運ばれる泉質へのこだわり同様に、
料理やホスピタリティも素晴らしい!」ということで、推薦しました。
料理は、和食とイタリアンを融合したフュージョン。
県内の契約農家から仕入れるオーガニック野菜をはじめ、厳選食材をふんだんに使用し、
地産地消にこだわった料理の数々を中川強シェフが仕上げます。
「一日の寒暖差が大きいここ置賜盆地で育った野菜や果物や米沢牛は、味が濃く、力強く感じます。歩いて10分ほどの場所にワイナリーもあり、農家や豆腐店、製粉所まで地元の方々と山形の食を盛り上げたい」と語ります。
湯よし、味よしの総合力がグランプリたるゆえんの宿です。

本誌では、他にも親孝行の宿や、雪見の宿も紹介しています。
この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。






