大庭みな子全集

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大庭みな子全集 表紙
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未発表『大庭利雄との往復書簡』を含む大庭みな子文学が、全集になってついに刊行

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大庭みな子全集の内容

生命の根源に触れる視点は、なお生き続ける。言葉を信じ、言葉に生きた女性作家の全軌跡。
1990年代初めに刊行された講談社版全集以後の作に加え、同社版全集及び単行本に収録されなかった文章・対談はもちろん、夫・利雄との953通に及ぶ往復書簡をも収める本全集は、21世紀の現代文学にとって欠くべからざる文学遺産として継承されるものと確信します。全25巻購読の方には、特製の〈ドローイング・ブック『大庭みな子さんの絵』〉(A4判、50~60頁を予定)を全巻刊行後に進呈します。※第1~3巻に挿み込みの応募専用ハガキに全25巻分の応募券を貼付の上、ご応募ください。
大庭みなこ全集
大庭みな子 (おおば・みなこ)
著者紹介:大庭みな子(おおば・みなこ)

 昭和5年(1930年)東京生まれ。本名は椎名美奈子。海軍軍医の父の転任に伴い海軍の要地を移り住む。広島県西条市で終戦を迎え、救援隊として入った原爆後の広島の惨状に強い衝撃を受ける。30年、津田塾大入学の年に出会った大庭利雄と小説を書き続けることを条件に結婚。34年、利雄の勤務のためアラスカ州シトカに移住、以後米国に滞在し大学で美術を学び小説を執筆。アラスカから応募した「三匹の蟹」が群像新人賞、芥川賞を受賞し作家活動に入る。45 年、帰国。以後、小説から、詩、評論、戯曲、翻訳まで執筆活動は多岐にわたった。代表作に『ふなくい虫』、『浦島草』、『寂兮寥兮』(谷崎潤一郎賞)、『啼く鳥の』(野間文芸賞)、『王女の涙』、『津田梅子』(読売文学賞)、『風紋』など。川端康成文学賞受賞の短編に「海にゆらぐ糸」、「赤い満月」。 62年、河野多惠子とともに女性初の芥川賞選考委員となり、各文芸誌新人賞や野間文芸賞などの選考委員も務めた。平成3年、日本芸術院会員。8年、病に倒れ車椅子生活となるが、利雄の協力で口頭筆記により精力的に作品を発表し続けた。19年、76歳で逝去。

大庭みな子全集 全25巻 推薦の言葉
瀬戸内 寂聴
夫婦愛の産物       瀬戸内 寂聴

 作家にとって生きている間に個人全集が出版されるということは、非常に幸福な出来事である。大庭みな子さんは三十八歳で「三匹の蟹」をひっさげ突如文壇に登場した時から、たちまち「これまでにない大型新人現わる」と激称された。幸運な前途を予約されて以来、続々と休みなく発表される小説は、息を呑むような新鮮な詩情にみちており、読者を圧倒した。
たちまち女流作家の先頭を走りつづけ、常に首位を保っていた。
大庭みな子全集十巻が講談社から出版されたのは一九九〇年、六十歳の時であった。
それからも作家活動は益々盛んだったが六十六歳の時、小脳出血で倒れ、つづいて脳梗塞併発で左半身麻痺し車椅子に頼るしか行動が適わなくなった。その病体の大庭さんを献身的努力で支えつづけたのは、大庭さんが十九歳でめぐり遭い、結婚生活を全うしてきた生涯の伴侶利雄さんであった。利雄さんは自分の仕事を投げ打って小説家大庭みな子の実質的秘書となり、妻に尽し通した。これ以上の夫婦愛はないと感動していた私は、みな子さんが七十六歳で亡くなった後、利雄さんが後追自殺をするのではないかと脅えた。幸いみな子さんの全集が新しく編み直されて第二回目の全集が全二十五巻となって日本経済新聞出版社から発行されることになってほっとした。利雄さんとみな子さんの愛の便りも収められるという。利雄さんは全巻の解説も務められると聞く。「これが終るまでは生きていますよ」
利雄さんの力のこもった声を聞き、私はみな子さんのまるで童女のような愛らしい笑顔を思い浮べた。「トシとふたりで書いたのが私の作品のすべてです」いつか聞いたみな子さんのしみじみした声もありありよみがえってくる。

津島 佑子
「女」という謎、「性」という謎       津島 佑子

 大庭みな子さんが亡くなってから時間が経てば経つほど、不思議な小説家だった、という思いが深まる。
どの作家も独自の謎をその作品世界に秘めているものだとは思うけれど、大庭さんの場合、とりわけ魅力的な謎がいつも読者である私を誘い、幻惑さえして、それでいて、決して自分の正体を見せてくれず、手を触れることも許してくれない、だから私はますます気になって、謎の手がかりを追いつづけずにいられないのだった。
それは「女」という謎だったのかもしれない。「性」という謎。「命」の謎。繊細なのに、力強さもある、真夏の朝の光のような美しさを放つ謎。
この全集で、私にとって得がたい先輩の女性作家でもあった大庭さんの謎を再び、大きな喜びとともに心ゆくまで追いかけたい、と期待している。

多和田 葉子
突き放された人間の寂しさ       多和田 葉子

 「三匹の蟹」は複数の声の重なり合う立体音楽。わたしが今考えていることに呼応し、読み返す度に別の音楽が聞こえてくる。水鳥のガラスをひっかくような声や、鴎の不思議な目玉に、意識の奥に隠れた鳥的な部分を遠く目覚めさせられつつ、同時に動物には突き放された人間の寂しさを感じさせられる。由梨の家族、そしてその家に集まって来る客たちの交わす会話に緊張感があるのは、それが国際関係を映し出しているからだけでなく、誰もが性欲という他者を抱えてピリピリしているからだろう。その日だけ家庭を捨てた由梨の関係する男は、鮮明な桃色のイメージを持ってふわっと現れ、その出会いによって学生時代の同性の恋人の熟れた苺の唇が思い出される。大庭文学は、肌触りや色彩や響きで世界をとらえながら、社会や文化の仕組みまでとらえてしまう。

角田 光代
いつまでも新しい小説       角田 光代

 私の本棚には、「三匹の蟹」の文庫本が三冊ある。一冊目は十代のときに買って読んだ。二冊目は、二十代半ばのとき、旅行に持っていくために買った。三冊目は、三十歳を過ぎたころ、友人が「きっとこれ、好きだと思う」と言って、くれた。毎回、自分がその本をすでに読んだと気づかず読みふけり、ラストのあたりでようやく「あれ」と思う。それは、「三匹の蟹」が、年齢を重ねていく私にとっていつまでも新しい小説であり続けるからなんだろうと思う。
未完となった「七里湖」もまた、「三匹の蟹」同様、私には新しい小説だった。この作家は、書くことでつねに思考してきたのだと思う。その思考が、毎回私の閉じていた部分を開かせるのだ。私はこれからも、この著者の本を、十代のときひもといた気分で幾度も読み返すことになるだろう。

道浦 母都子
未生以前の言葉       道浦 母都子

 大庭さんの作品から聞こえてくるのは、未生以前の音楽、いえ、楽といっていいかもしれない。姿かたちは言葉という体裁をとっているが、それは言葉として立ちあがる前のやわらかな水の流れを思わせる楽の調べである。
私たち日本人が、生を授かる前の、ずっと遠い昔から、この地に響き、生き物のように流れ続けていた楽。それらがいつしか言葉と結びつき、歌謡や歌となって、日本人の記憶となって染み込んだもの。それが、大庭さんという肉体を通して文字化され、物語となる。私は、大庭さんの作品を、そうした思いで読み続けている。
──森の中で耳を澄まして聴きとった言語以前の言葉が、勝手に歌っているのを、わたしはただ譜に写しとっただけだ。──
大庭さんご自身が、そう語るように。

梅原 猛
人間観察が生んだ現代の叙情詩       梅原 猛

 私は大庭みな子の「三匹の蟹」を読んで、その文章が誌面から浮き上がってくるような不思議な感覚を覚えた。私がそのような感覚を覚えたのは、太宰治の「人間失格」及び大岡昇平の「野火」を読んだとき以外にはない。
大庭の異常とも思われる鋭い人間観察の眼は、彼女の少女時代の原爆体験と、主婦時代に住んでいたアラスカでの異文化体験によって生れたものであろう。大庭はそのような眼で、現代日本にうごめく人間の実相を実に的確に眺めていた。そして晩年の作品「浦安うた日記」は、どこかに王朝文学の面影をたたえながら、強い反戦意識をもつ不思議な現代の叙情詩である。
私は、このような大庭みな子こそ現代の日本を代表するもっともすぐれた女流作家であると思う。このたび本格的な全集が刊行されるとのこと、改めて全作品を読んでみたいと思う。

大庭みな子全集全25巻
大庭みな子全集全25巻画像造本体裁:判型四六寸延(130ミリ×190ミリ/上製本(クロス装・カバー掛け
本文基本組13・5級 45字×20行/平均予頁540頁))

全25巻購読の方には特製の<大庭みな子ドローイング・ブック「大庭みな子の絵」(A4判、50~60頁を予定)を全巻刊行後に進呈します。>

大庭みな子全集の商品情報

商品名
大庭みな子全集
出版社
日本経済新聞出版社
発行間隔
月刊

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