DIVER(ダイバー)の編集長インタビュー

編集長プロフィール

ダイバー
坂部多美絵編集長インタビュー

私はもともと『ダイバー』の読者で、将来は海に関わる仕事をしたいとずっと思っていたんですが、当時、編集経験者しか採用していなかったんです。それで、大学卒業後は広告代理店に勤務しました。毎日ヒールを履いて駆け回る営業の仕事に、どこかでずっと違和感を感じていましたね

ダイバー 坂部多美絵編集長インタビュー

私はもともと『ダイバー』の読者で、将来は海に関わる仕事をしたいとずっと思っていたんですが、当時、編集経験者しか採用していなかったんです。それで、大学卒業後は広告代理店に勤務しました。毎日ヒールを履いて駆け回る営業の仕事に、どこかでずっと違和感を感じていましたね

結局、海への思いが捨てきれなかった坂部さんは、2年半で代理店を退社、ハワイ大学への留学を決意した。

「ハワイでの2年間は、海洋学、イルカの研究、スキューバダイビングのインストラクター資格取得と、自分のやりたかったことをすべてやりました。だけど一度社会人経験があったので、どこかで社会と繋がってたいという思いもあったんです。ただの学生でいるのが物足りなかったんです」
◆イチオシの1冊◆『Beache』
◆イチオシの1冊◆
『Beache』

もともと文学少女で、大学時代は近代文学を専攻、国語教師の資格も持っている坂部さん。現地の日本人向けに発行される新聞に自ら売り込みを開始した。

「新聞に、日本人から見たハワイのおもしろいところなどをまとめたコラムを3本送ったんです。そしたら気に入られたようで、なんと翌週から連載がスタートしたんですよ。帰国後、今度はその新聞連載40回分を『ダイバー』に送りつけました(笑)。記事は、ダイビングについてだけでなく、イルカ、食、日系人など文化についても言及していたので、「オールラウンドに書けます!」というアピールをして、バイトからということで見事採用されました。5年越しの思いが実ったわけですから、その時は「やった!!」という思いでしたね」

こうして念願の『ダイバー』での編集人生が始まった。編集者のスキルはもちろん、海での経験も積んでいくことになる。

「『ダイバー』の場合、水に潜って自分のことは自分でできるのは当然のこと。他にも水中でのさまざまなスキルが必要になります。自然相手なので、ちゃんと理解していなければ事故になりかねませんから」

海について学ぶとともに、着実に編集スキルを積み、2年前に同誌の編集長となった。

「編集長になるとなかなか外に出られなくなると思うのですが、私は現場主義を貫こうと思って。読者のニーズが拾えるのも海ですし。だから外に出るという条件つきで編集長になりました(笑)。今でも多い時は1ヶ月に3回は海外含めて海に潜っていますね」
◆イチオシの1冊◆『ダイバー』別冊
◆イチオシの1冊◆
『ダイバー』別冊

編集長になり、今までやりたかったことをすべて形にするため、次々と企画を立ち上げた。環境問題へ取り組みもそのひとつだ。

「読者と一緒に海を通じて環境問題を考えようと『ラブオーシャン』いうプロジェクトを立ち上げました。環境問題に関する記事の連載、実際に読者を募って東京湾を潜ったり、アマモ(海藻)の観察会をしたり。海に潜っていると、色んな自然の変化に敏感になるんです。温暖化の影響で去年はあったサンゴ礁がガレ場になっていたりするのを目の当たりにして、環境問題に関心が強くなりましたね。海の美しさや感動だけではなく、怖さやもろさといった部分も伝えていきたいです」

大好きな海と憧れの雑誌での仕事。順調に夢を叶えているようだが、安定した仕事を捨てて留学したり、バイトから再スタートしたり、遠回りとも思える努力を惜しまなかった結果の今である。そこまでできたのは「海が好きだったから」に他ならない。

「よく"好きなことを仕事にすると辛くなる"という人もいますが、私の場合はむしろ、好きじゃないとこの仕事はできないと思いますね。中学生の頃、初めて潜水艦に乗ったとき、海の中にもうひとつの世界があることを知って「こんなに美しい世界を知らないなんてもったいない!」とダイビングを始めたんですが、思えば昔から行動力があったんでしょう(笑)。以来、ずっと海をライフワークにしたいと思っています。この仕事は、学者さんに会って自分の聞きたいことを聞けたり、世界中の海に潜って自分で体験したことを伝えられたり。新しい発見の連続、学ぶ事が尽きないんです。おばあちゃんになっても、なんらかの形で海に関わっていたいですね」

(2009年08月)

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