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脳の老化を防ぐのに、難しい脳トレは必要ありません。
日常の行動を工夫するだけで、衰えに抵抗できます。
今号のPresidentでは、いつまでも若い脳でいるために今日できる新習慣を、脳科学者が教えます。
目次
脳内で使う部位が多いほど若返る
脳の萎縮と新たなつながり「スパイン」
できたことができなくなる、覚えられなくなる――日常の「できなさ」という形で脳の老化を感じる方は多いでしょう。
「脳の老化」とは、物理的に脳が萎縮することです。若いころの脳は頭蓋骨いっぱいに詰まっていますが、年を重ねると隙間ができます。
考える働きそのものを担う表面も、表面同士をつないで信号を伝える内側も縮んでいきます。使われない神経細胞は生きたまま小さくなって働きを失っていきます。
では、なぜ縮むのでしょうか。原因の一つが、神経同士のつながりが新しく伸びなくなることです。
神経の先端からは、刺激を受けると新しいつながりが伸びてきます。
スパインと呼ばれるもので、増えるほど脳は強くなりますが、年を重ねると出にくくなります。
固定化された日常が脳を老けさせる
なぜ出にくくなるのでしょうか。新しいつながりは、新しい経験をしたときに生まれるからです。同じことの繰り返しでは増えません。人生経験を重ねるほど、初めての経験は減っていくものでしょう。
同じ道を通り、同じ人と話し、同じやり方で仕事をする……固定化された習慣を繰り返していると、脳の同じ部位ばかりを使うことになります。それにより、脳の使われない部位はどんどん老けていきます。
ぼんやり散歩するのではなく、あることを意識して歩くことが重要
歩くことは体にいい。その通りです。ただ脳に対しては、「歩き方」の工夫が必要です。そもそも歩くこと自体が脳からの指令ですから、脳を使っていることには違いありません。そこからさらに「脳の切り替え」を行うには、ちょっとしたコツがあります。
片足立ちでチェックする「脳の反応速度」
脳を若返らせる歩き方として私が注目しているのが、バランスです。体の重心のバランスを取っているのは、実は筋肉ではなく脳です。片足で立つと、体はバランスを取ろうとして微妙に揺れています。左へ右へと重心をもっていくように、前頭前野が高速で指示を出し続けています。この信号が遅くなると、体を支えきれずに倒れるのです。
私は講演でよく、目を閉じた片足立ちを試していただきます。目を開けていると視覚でバランスを取ってしまうので、目を閉じます。すると本当のバランス感覚がわかります。2秒で倒れる人は、それだけ普段使っていないということです。脳が若い方はいつまでも立っていられます。この差が、そのまま脳の反応速度の差だとお考えください。
面白いのは、筋肉を鍛えてもこの能力はあまり改善しないことです。体を鍛えている方でもすぐ倒れてしまいます。
脳を鍛える「一本線ウォーキング」
では日常でどうバランスを使うでしょうか。おすすめは、平均台の上を歩くように、一本の線をまっすぐたどる歩き方です。普段私たちは、無意識のうちに足を左右に開いて歩いています。そのほうが安定するからです。そこであえて、左右の足を一直線上に運んでみます。まっすぐ直線に歩こうとするほど支える面が狭くなり、体はバランスを取ろうとします。ふらつきながらも脳が、右へ左へと重心の指示を出し、脳の働きが活性化します。
右脳・左脳の両方を活性化させる脳トレをさらに効果的にするには?

身体と思考をフルに働かせる「音読」のパワー
読書は、右脳と左脳の両方を活性化させる最高の脳のトレーニングです。とくに私がお勧めしたいのが、音読です。
音読は文字を目で追う視覚の働きに加えて口を動かす部位(運動野)、聞く部位(聴覚野)と、脳内の複数の部位をより大きく刺激します。
もちろん大抵の場合、黙読でも文章の意味を理解する処理は音読と同様に行います。
黙読でも運動野や聴覚野の働きがゼロというわけではありませんが、実際に発声して声を聞き、その音と意味を結びつける音読のほうがより活性化するのです。
音読では、声を出して抑揚やイントネーションを調節する認知機能を使いながら、内容も同時に理解します。そのため、黙読よりも多くの認知負荷がかかります。また、文の大意をつかむだけでなく、映像を思い描くことにもつながります。
声に出すという負荷が、結果として脳の身体機能をつかさどる部位を使うだけでなく、脳の注意の制御や実行機能など広い部分の活性化を促します。まるごと一冊を音読する必要はなく、一段落だけでも構いません。気になった箇所を声に出して読んでみてください。
本誌ではさらに続きがご覧いただけます。
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