41巻8号(2012年8月号) 特集/行動療法の技法と治療効果
◇精神科治療における非薬物療法・心理社会的治療法への関心とニーズが高まっており,若年者や高齢者における向精神薬の副作用の問題が指摘されたり,向精神薬治療効果の限界も改めて認識されるなか,認知行動療法がうつ病に薬物療法と同等の効果があるという知見も広く知られるに至っています。そのほかにも,薬物療法の効果が乏しい強迫性障害への行動療法の効果も報じられています。行動活性化療法などの新しいタイプの認知療法/行動療法も登場しており,これらの治療法への関心や治療法を習得したいというニーズは大変大きくなっています。独立行政法人国立精神神経医療研究センターに,「認知行動療法センター」が設置されたことは,それに応える動きです。
◇今,どのような対象病態には,どのような技法が,どんな治療成績を期待できるのか,また治療技法の習得は,どこでどのように可能なのかの詳説が求められていると思います。
今号では,各治療法についてその分野の識者に最新の情報を含んで詳述していただくことにしました。読者の皆様の臨床のお役に立てると幸いです。
目次
認知行動療法センター設置の意義と課題
(国立精神・神経医療研究センター)大 野 裕 …953
認知行動療法のルーツと歴史
(早稲田大学)熊 野 宏 昭 …959
認知療法尺度─改訂版の活用
(千葉大学)清水 栄司・他 …969
行動療法
(弓削病院)松岡 弘修・他 …981
二人の精神科医の往復書簡─認知行動療法の技法と治療効果をふまえた症例検討─
(原田メンタルクリニック)原田 誠一・他… 991
行動活性化療法
(早稲田大学)鈴 木 伸 一…1001
認知行動療法と薬物療法の併用効果
(広島大学)吉野 敦雄・他…1009
認知・行動療法と家族療法の併用と治療効果
(高知大学)藤田 博一・他…1017
Computer-aided CBT
(国立精神・神経医療研究センター)田島 美幸・他…1023
ニューロフィードバックとCBT
(国立精神・神経医療研究センター)守 口 善 也…1031
❖研究報告
ラモトリギンとバルプロ酸の併用が奏効した急速交代型双極性障害の1例
出口 裕彦・他…1043
難治性幻聴にブロナンセリンが有効だった「特定不能の精神病性障害(DSM-IV-TR)」の3症例─2つの薬理作用からの考察─
深津 尚史・他…1049
❖論説
精神科認知症入院医療の機能分化と認知症の将来予測による政策立案のあり方
石 井 知 行…1055
❖総説
炎症としてのうつ病
井原 裕・他…1065
❖短報
偽性甲状腺中毒症に伴う抑うつ状態の1症例
江原 嵩・他…1075
❖海外だより
北京の邦人メンタル医療事情─最近の変化─
勝 田 吉 彰…1079
❖書評
専門医のための精神科臨床リュミエール30『精神医学の思想』 (神庭重信,松下正明 編)
原 田 憲 一…1083
41巻7号(2012年7月号) 特集/精神疾患の生物学的検査法の近未来
◇基礎研究に携わる筆者が本誌の編集委員を担当するにあたり,精神科臨床の未来を見据える役回りだと理解して,検査法の近未来の特集を企画した。
◇通常は,研究として執筆されているところ,このタイトルに合わせて,感度,特異度,標準化,他の疾患との比較など,検査としての利用を念頭に置いてご紹介していただいた先生方に,感謝申し上げたい。
◇本特集では,近い将来日常臨床で用いられることになるであろう,アミロイドPETにおける未発症者の陽性所見の扱いのような,喫緊の課題も見えてくる。
◇一方,精神疾患の検査法についても,感度,特異度をみる限りでは,実は内科疾患や神経疾患と変わらないレベルにあることに気づかされる。面接診断に頼っていると言われがちな精神科臨床でも,これらの検査法をすべて利用すれば,現状でも,より客観性の高い診断が実現可能なのかもしれない。こうした検査が臨床検査に用いられていない医学的・社会的要因を乗り越えて,科学的精神医療の実現を目指す必要があるだろう。
◇一方,すでに先進医療として認められ,さらなる研究が進められている近赤外スペクトロスコピーにおいては,むしろ患者側が強く検査を希望している一方,検査法として乗り越えるべき課題も多く残されている現状が浮き彫りにされている。
◇本特集が,近い将来の精神科における生物学的検査法の応用に向けての課題を整理し,今後に備える機会となることを祈っている。
目次
MRIによる脳形態解析の精神疾患への応用可能性─VBM,皮質厚など─
(日本大学)阿部 修・他…813
自閉症における視線計測の臨床応用の可能性
(大阪大学)北 澤 茂…819
光トポグラフィーは精神疾患の診断に応用できるか
(山口大学)松 尾 幸 治…829
パーキンソン病の画像検査法
(獨協医科大学)鈴木 圭輔・他…837
近未来のアルツハイマー病の診断検査法─生化学的マーカー─
(大阪大学)武田 雅俊・他…853
アミロイドPET
(東京都健康長寿医療センター)石 井 賢 二…863
デキサメサゾン/CRH試験─うつ病の亜型分類に利用できるか─
(昭和大学藤が丘病院)尾 鷲 登志美…871
精神疾患の血液バイオマーカーとしてのBDNFの臨床検査への応用可能性
(千葉大学社会精神保健教育研究センター)橋 本 謙 二…879
精神疾患におけるゲノム検査法─染色体からCNVへ─
(横浜市立大学)宮武 聡子・他…885
精神疾患における神経病理学的検索の重要性
(東京都健康長寿医療センター)髙 尾 昌 樹…897
法廷に踊る生物学的検査
(慶應義塾大学)村松 太郎・他…907
V'研究報告
日本語版Strengths and Difficulties Questionnaireの構成概念妥当性の検証─1郊外市の全数コホートデータを用いた検討─
中島 俊思・他…917
小中学生における欠席行動と抑うつ,攻撃性との関連
髙柳 伸哉・他…925
V'短報
オセルタミビルリン酸塩にて夜間の不穏状態が再燃したレビー小体型認知症の1症例
宇田川充隆・他…933
V'書評
「うつ」の構造(神庭重信・内海 健 編著)
三村 將…937
41巻6号(2012年6月号) 特集/幻覚・妄想の神経精神医学
◇今回の特集は,昨年の冬,京都で行われた 「神経精神医学会」 のシンポジウム・一般演題などをもとに,それを拡充するかたちで企画してみました。読者の皆さんには,普段あまりなじみがないであろう稀な精神症状についても,踏み込んだ議論が展開されています。しかし,この特集を企画した意図は,それぞれの精神症状の症候学や病態機構の詳細についての知識を獲得してもらうということよりも,精神疾患・精神症状の病態理解にこのような方法もあるということを感じていただきたい,というところにあります。ですので,是非,読みやすいところから気楽に読んでいただければと思います。
◇臨床現場でみずからが治療にあたった一例の理解から,精神症状の発生メカニズムへと考察を進めていくこの学問領域は,臨床と研究がばらばらになっておらず,両者一体のものとして取り組むことができるフィールドです。これまで以上に多くの精神科医の皆さんが,神経学と精神医学の境界に位置するこのフィールドに関心をもち,研究会,学会,あるいは,専門誌で,皆さんが経験された症例を報告し,意見を交換していただけることを願います。
◇最後に,間違いなく多忙な日々の中,原稿の執筆を快諾いただいた諸先生方には,この場を借りて,心より感謝申し上げます。
目次
主観体験としての精神症状をいかに理解するか?
(京都大学)村 井 俊 哉…697
レビー小体型認知症症例におけるカプグラ症候群─症候学的経過に注目して─
(みつぐまち診療所)津野田尚子・他…707
ドネぺジル投与によってカプグラ症状が消失したDLBの1症例
─治療前後の脳血流SPECTの変化─
(山形大学)小林 良太・他…715
認知症と人物誤認─多数例研究からの症候学・神経基盤の整理─
(滋賀県立成人病センター)長 濱 康 弘…721
レビー小体型認知症の錯視・幻視─パレイドリア誘発課題を用いた検討─
(東北大学)横井香代子・他…731
音楽性幻聴─その発現機序─
(和歌山県立医科大学)鵜 飼 聡…739
シャルル・ボネ症候群
(慶應義塾大学)武井 茂樹・他…745
デジャビュ,ジャメビュ─その機構,妄想との関連─
(京都大学)深 尾 憲二朗…753
人生後半期精神病─内因性精神障害,認知症による幻覚・妄想の異同─
(足利赤十字病院)船 山 道 隆…761
神経精神医学の未来─ジャクソニズム,TNGS,セイリアンス─
(京都大学,周行会湖南病院)大 東 祥 孝…767
V'研究報告
抗精神病薬治療に対する主観的反応の評価尺度の作成とその臨床的意義
下平美智代・他…777
ひきこもりを主訴とした精神発達遅滞の症例に対する認知療法
小山 徹平・他…787
V'書評
精神医療の最前線と心理職への期待(野村俊明・下山晴彦 編著)
大久保善朗…795
精神科臨床リュミエール23 成人期の広汎性発達障害(青木省三・村上伸治 編)
広沢 正孝…797
DIEPSS: A second-generation rating scale for antipsychotic-induced extrapyramidal symptoms: Drug-induced Extrapyramidal Symptoms Scale(稲田俊也 著)
酒井 明夫…798
41巻5号(2012年5月号) 特集/精神科診断分類の改訂にむけて ─DSM-5の動向─
◇アメリカ精神医学会によりDSM-Ⅲが発表されてから30年以上がたった。DSM-Ⅲは操作的診断基準を導入し,診断の信頼性を向上した点で高く評価され,その骨格はWHOによるICD-10に受け継がれ,世界の精神医学会に大きな影響を与えた。
◇しかしながら,主に症候に基づき診断し,特定の理論や仮説を排した無理論主義というDSMの基本原則そのものに対する物足りなさや不満は根強く,内因性概念の復権を求める考え方も少なくない。
◇現在,アメリカ精神医学会はDSM-5,WHOはICD-11にむけての改訂を進めている。APAによるDSM-5改訂作業については2010年改訂草案が発表され,実地試行の結果を分析して,2013年にDSM-5に完成予定と聞いている。今回の改訂作業は,ウェブ上に公開されパブリックコメントを受け付けているが,日本語訳がないことから,わが国の精神科医へはいまだ周知されていないと思われた。
このような経緯から,各分野の専門家に精神科診断分類改訂の現状と今後の展望をさまざまな立場から論じていただくとともに,DSM-5ドラフトにおける各精神障害の改訂点について概説,論じていただきたく本特集を企画した。精神科診断分類の今後の動向を知るうえで役立てていただければ幸いである。
目次
総論 精神科診断分類の改訂にむけて
1. 精神科診断分類の変遷─DSM-III以前と以後─
(日本医科大学)大久保 善 朗…469
2. DSM-5ドラフトにみるパーソナリティ機能の正常と異常
(自治医科大学)加 藤 敏…473
3. 新しい精神の科学とケースフォーミュレーション, 分類診断
(埼玉医科大学)豊 嶋 良 一…483
4. 社会精神医学と精神科診断
(出島診療所)中根 允文・他…491
5. 分子生物学と精神科診断
(理化学研究所)高田 篤・他…501
6. 薬物療法からみた精神科診断分類学
(肥前精神医療センター)黒木 俊秀・他…507
7. 生物学的指標に基づく精神科診断
(東京大学)西村 文親・他…515
8. ICD-11作成の最新動向
(東京医科大学)丸田 敏雅・他…521
9. DSM-5作成の最新動向
(東京医科大学)松本ちひろ・他…527
各論 DSM-5 ドラフトにおける精神障害
1. 神経発達障害
(荏原病院)青木 悠太・他…535
2. 統合失調症スペクトラムおよび他の精神病性障害
(東京都立松沢病院)針 間 博 彦…543
3. 双極性障害
(北海道大学)井 上 猛…555
4. 抑うつ性障害DSM-5の動向と批判
(九州大学)本村 啓介・他…565
5. 不安障害
(パニック障害研究センター)貝谷 久宣・他…577
6. DSM-5ドラフトにおける強迫性障害の動向
(兵庫医科大学)松 永 寿 人…589
7. 身体症状障害
(久留米大学)前 田 正 治…597
8. 解離性障害
(東京女子大学)柴 山 雅 俊…603
9. 心的外傷とストレス関連障害─DSM-5ドラフトの紹介─
(昭和大学)山田 貴志・他…609
10. 哺育および摂食障害
(大阪市立大学)切 池 信 夫…621
11. 睡眠覚醒障害
(日本大学)内 山 真…631
12. 性同一性障害(性別違和)
(埼玉医科大学)塚 田 攻…645
13. 破壊性, 衝動制御, 行為障害
(クボタクリニック)中 谷 陽 二…649
14. 物質使用と嗜癖の障害
(国立精神・神経医療研究センター)松 本 俊 彦…657
15. 神経認知障害
(慶應義塾大学)三 村 將…665
16. DSM-5ドラフト(2011年6月版)における「パーソナリティ障害」
(自治医科大学)井上 弘寿・他…669
17. パラフィリア
(はりまメンタルクリニック)針 間 克 己…681
- 出版社:アークメディア
- 発行間隔:月刊
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