週刊東洋経済

高市早苗首相は就任演説で、防衛力強化を国家の最優先課題として掲げ、防衛費をGDP比2％へ引き上げる時期を前倒しし、今年度中に達成すると表明した。
併せて武器輸出制限「5類型」の撤廃を掲げ、装備品輸出の拡大を目指す。防衛相に小泉進次郎氏を起用し、海外への「トップセールス」を強調したことで、防衛関連株は急騰。特に三菱重工はオーストラリア向け護衛艦輸出で株価が倍増し、他国からの引き合いも増えている。

防衛産業はかつて「稼げないお荷物」とされ撤退が相次いだが、22年以降、防衛費拡大方針と「防衛生産基盤強化法」により急速に復活。契約額・利益ともに急伸し、大企業から中小まで恩恵が広がる。ただし、人材不足や輸出ノウハウの欠如、財源の不確定、国産化依存による非効率化など課題も多い。防衛産業の「熱波」は続くが、持続的発展には透明性と専門的議論が不可欠だ。

世界的な軍拡の流れの中で、防衛コンサルティング業界が急拡大している。防衛コンサルは軍事・安全保障に特化し、部隊運用、訓練、技術導入、装備品調達などを支援する点で経営コンサルとは異なる。顧客は国防機関や軍、メーカー、宇宙・サイバー関連企業まで多岐にわたり、時に訓練用の「仮想敵部隊」を編成するケースもある。
業界の系譜は、①装備品メーカー系、②傭兵業から発展した米英系民間軍事会社系、③経営コンサルの参入型の3類型に分かれる。民間向けでは、海賊被害で悩む海運会社への防護・撃退支援などが発展し、誘拐・テロ事件対応にも実績がある。例として英コントロール・リスクスは日本企業の誘拐・テロ事件で助言実績を持つ。近年は地政学リスクの高まりを受け、国外退避計画や危機対応要員育成など、「将来の危機」に備えた助言ニーズが増加。市場は2025年に356億ドル、2030年には508億ドルに拡大すると見込まれる。日本でもデロイトトーマツやPwCなどが参入し、企業の危機管理はもはやコストではなく「投資」として位置づけられる時代を迎えている。

弁護士の高田氏は約10年前、大川原化工機の金融案件を担当したことを契機に同社の顧問弁護士となった。警視庁公安部の家宅捜索が入った際、当初は「説明すれば理解される」と考え全面的に協力したが、任意取調べは1年以上続き、社長らが予想外に逮捕された。警察は外為法を国際的に採用されていない独自解釈で適用しており、弁護側は従業員とともに装置の殺菌能力を70回に及ぶ実験で検証。結果、警察の主張を裏付ける根拠は乏しいことを確認した。事件は会社存続を揺るがし、高田氏は毎日検察庁に通い、国際法令まで自ら調べた。長期化する中、従業員が社長の無実を信じて会社を支えたことが打開の力となり、最終的に起訴は取り消された。

それでも社会的信用は失われたままで、東京地検が「有罪立証に時間がかかる」と説明したことで誤った印象が残ったため、名誉回復を目的に国と東京都を相手に国家賠償請求訴訟を提起した。勝訴の見込みは1割だったが、事件の全貌を明らかにするため提訴を決意し、SNSなどを通じ世論にも訴えた。保釈請求は全て却下され、11カ月の拘束中に顧問を亡くすなど刑事司法の問題点も痛感。事件を通じ、弁護士が依頼者の熱量を超えてリードする必要性、公権力に対峙する覚悟を学び、チームで大事件を解決に導けることを実感したという。「正義感に合致した仕事」であり、弁護士としての使命を改めて確信したと語る。