寒風でも旅情満点!海道三昧 潮風紀行
もう一つの熊野古道を往く
季節はもう冬。年の瀬も近くなり、本格的な寒さが身に凍みる時期。
しかし、空気の澄むこの時期だからこそ行っておきたい場所は沢山ある。
どこまでも続く大海原と共に走る海道旅は、夏とはまた違った趣が魅力だ。
今回は、そんな海道旅のベストスポットを総力特集した決定版。
明るい陽光の中、温暖な海岸ロードを存分に楽しもう!
伊勢湾一望! 天駆ける海道
~伊勢志摩スカイライン~ 伊勢市
まるで空撮のような展望!
伊勢湾一望の垂涎ロード
今回のテーマは“もう一つの熊野古道”。熊野古道と絡めるとなれば、やはり伊勢・志摩は外せないクルージングスポットだ。そこで今回は、旧来の足跡を辿りつつ、この季節にお勧めの絶景海道ルートを走ってみたぞ!
その皮切りは何と言っても伊勢神宮のある伊勢市だ。世界遺産でもある神宮周辺は国内屈指の観光地。休日は観光客も多く、周辺道路は常に渋滞ぎみだ。しかし、そんな市内と対照的な超絶景海道がこの伊勢志摩スカイラインなのだ。
自動二輪以上でないと通行不可な上、通行料は880円と比較的高額な為、地元ライダーは決して多くない。しかし、標高約550mのピークから見下ろす伊勢湾の風景は一生に一度は見ておきたい絶景だ。その展望たるや、まるで飛行機から見下ろすような風景。県外よりせっかく訪れたなら、絶対に走っておいて損はないぞ。
煌く陽光が眩しい熊野灘
~パールロードシーサイドライン~ 伊勢市~志摩市
国内有数の超絶景海道!
ここを走らずには帰れない
伊勢神宮より南下し始めると道は2つの選択を迫られる。熊野古道の名残である国道42号と、旧有料観光道路パールラインシーサイドロードだ。今回は“知られざる熊野古道”を探訪する旅。距離的には遠いが、絶景が連続するパールロードへとバイクを走らせる。
このルートは、国内有数のリアス式海岸地帯を俯瞰しながら一気に駆け抜ける、大定番ながら国内有数の絶景海道ロードだ。紺碧の太平洋に反射する太陽と真珠の如く煌めき、陽光溢れる明るい熊野灘。東側が太平洋の為、朝日を観賞するにも絶好のポイントだ。
総延は約23㎞。概ね海岸に沿って走っているが、海面よりの標高は比較的高く、全体的に海を見下ろしながら山肌をトラバースするイメージだ。海面目線はほぼ無いない為、一見すると山岳道的な雰囲気ではあるが、常に太平洋を一望できる為、海道雰囲気が大変印象深い。何と言っても地域ライダー一番の定番ルート。これを見逃すのは非常に勿体無いぞ!
複雑に入り組んだリアス式海岸と点在する漁村の風景が印象的。穏やかな海面には牡蠣養殖のイカダが無数に浮かぶ。時期は今。道沿いには牡蠣小屋も点在。獲れたての生牡蠣を腹一杯食べて1000~2000円程度と驚く程安価に頂ける。シーズン中はこれを目当てに来る車で渋滞も発生する程だ。ぜひ食べておこう!
知られざるもう一つの熊野古道
~国道250号線 熊野脇道~
世界遺産の影に潜む裏街道今に生きる熊野古道を走る
さて、世界遺産にも認定されている熊野古道とは古来よりの熊野三山参拝ルートの事だ。ガイドブックには様々な見所が記載されている。しかし、僕は目線を変えてその裏道を探索してみる事にした。
通称“熊野脇道”と呼ばれる裏街道。一般的な“熊野古道”は現在の国道42号線をトレースする内陸ルートだが、かつては海岸沿いにも参拝ルートがあったのだ。現在、その多くは線形改良され国道となっているが、一部旧来の道が残っている事を発見した。そう、これはバイクで走れる熊野古道だ。
但しこの熊野脇道、残念ながら世界遺産ではない。しかし、熊野参拝の歴史と共に、険しい断崖に阻まれた漁村の文化交流に多大な影響を及ぼしてきた陰の立役者である事は間違いない。
現在、舗装化されてはいるものの、ほぼ古来より変わらぬ線形。路盤は苔蒸しガードレールは倒壊寸前。バイパス建設のおかげでこのルートが廃道になる日は遠くない話だろう。しかし、この道はまだ生きている。人・馬・馬車。そして今日はバイク。まだ走れる。往来する者を見守る熊野脇道の息吹を一度感じてみるのも悪くない。
マニア垂涎!?
旧道にひっそりと残るカギ穴トンネル!
~南伊勢町 棚橋隧道(近代土木遺産)~
熊野脇道と呼ばれた国道250号線。現在、旧来の趣を残す道路様相は、大変少なくなっている。かつては漁村同士の連絡に船便を使っていた程、断崖に阻まれたこの地域に縦貫したルートを通すのは大変な難工事だった。そんな当時の面影を残す近代土木遺産がこのトンネルだ。竣工は大正3年。一部マニアの間では“鍵穴トンネル”とも呼ばれている特徴的な坑口形状が大変印象的だ。これは後年に天高確保の為、路盤を掘り下げた結果。この坑口形状は国内唯一。大変珍しい。坑内はコンクリの巻き立てと素掘りのハイブリッド。この激狭形状は一見の価値アリだ!
熊野脇道 海道絶景を巡る
大地が魅せる圧倒的造形
この迫力は一生の想い出だ
熊野脇道が走る南伊勢一帯は国内有数のリアス式海岸地帯。山岳地帯が海岸まで迫っている為、奇岩・怪岩や断崖絶壁が続く豪快な風景が見物だ。
これぞ、大地の内臓。太古の時代より地球が紬いできた創世記の記憶を大地と共有できる瞬間だ。
一部を除きマイナーなスポットも多い為、観光客に呑まれながら観賞等という事態とも皆無。しかし、観光地化されてないが故、ビューポイントへの道程が大変険しいスポットも点在する。
しかし、比較的波の静かな太平洋とは言え、冬の荒波と岩塊が魅せる波飛沫は圧倒的の一言。写真以上の迫力がキミを待っている事を責任を持って約束しよう。
観光地化されていない場所では人気も殆ど無く、少々寂しいかもしれないが、ソロツーリングの気分を満喫するには最高のロケーション。目前には果てしない太平洋。この風景を独り占め。孤独なバイク旅でしか味わえない最高の雰囲気をぜひ味わって欲しい。
世界遺産 鬼ヶ城
南伊勢のリアス式海岸終点にある世界遺産に指定された景勝地だ。地震によって隆起した階段状の地形上に、点在する荒波によって削られた無数の海食洞の異世界感抜群の風景は訪れる者全てを圧倒する。奇岩・怪岩が約1kmに亘り連続。ガイドロープ等は設置されているものの、スリル満点の海岸風景が魅力だ。現在残念ながら、崩落の為、遊歩道の大部分が通行止めになっているが、ハイライトである“千畳敷”(写真の場所)までは立ち入り可能。
楯ヶ崎
天然記念物に指定されているものの、周辺では比較的マイナーな景勝スポット。しかし、柱状節理の魅せる圧巻の雄姿は、間違いなく国内屈指の迫力だと断言できる。神武天皇東征の際の上陸地とも伝えられており、日本書紀にも登場する歴史深いスポット。駐車場より現地までは約2km程度歩く必要があり、アクセスの面からか観光客は皆無。この絶景を独り占めできる。松崎港より遊覧船も出ているが料金は高め。徒歩散策がお勧めだ。
世界遺産 松本峠
気軽に歩ける熊野古道険しい熊野古道探索の中でも松本峠は大変アクセスしやすいポイントだ。駐車場より歩く事数分。ピークからは七里御浜の絶景が堪能できる。こちらも観光客は少なめでお勧めだ。
熊野脇道終点。太平洋一望
~国道42号線 七里御浜~
街道を旅するマインドはバイクも人も変わらない
熊野脇道の名残を辿る旅。終点がここ七里御浜だ。リアス式海岸の断崖絶壁はこれにて終わり。景色は一変し、長大な砂浜が新宮市まで続く。熊野古道本道が合流する紀伊半島の大動脈は道幅も広くなり、交通量は一気に増える。
山間と海岸の入り混じった熊野脇道はこの松本峠(世界遺産、熊野古道として認定)で終点を迎え、熊野古道は浜辺を往く。
バイク旅人は、歩くより走る事を優先する事もあるだろう。しかし、同じ“道”を旅する者。古道の雰囲気を、我等ライダーなりの視点で楽しむ方法もあるに違いない。そんな思いつきで走ったこの旅だが、バイクである事はさほど重要ではなかったかもしれない。そこに有るのは旅人の心。道は誰にも平等にそこに在るのだから。
熊野大社はまだ先。熊野古道はまだ終わらない。しかし、ここからは先はまた別の物語。また誌面でご紹介する機会をお楽しみに。








