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デイリー・マネタリー・アフェアーズ 2025.06.30
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本日のフィナンシャル・モニター
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<国内モニター>
**日経平均は前日比566円21銭高
4日続伸で40,000円台回復、年初来高値を更新。
**米通商交渉は進展せず
赤沢再生相は帰国。トランプ大統領は「不公平」との認識反復、日本車
関税削減や期限延長に否定的。
**中国が日本産水産物の輸入再開
29日に即日実施、福島や東京など10都県は除外。
**金融庁がデータセンター設備の一部をREIT運用対象に
REIT投資の選択肢を拡大。企業の資本効率改善へ。
**トヨタ5月世界販売が過去最高に
前年同月比7%増の89万台。HVが牽引、海外販売は7%増。
**パイオニアが台湾液晶パネル大手の傘下に
イノラックスの子会社による買収を受け容れ。買収額は1636億円。
**ゼンショーが海外3000店出店へ
国内約3倍の店舗数に。
**三菱UFJ銀行子会社が電力小売り参入
メガバンク系で初。地銀では山陰合銀が先行。
**H2A最終号機打ち上げ成功
50号機で有終の美、H3にバトンタッチ。
**6月都区部消費者物価コア指数は前年同月比3.1%上昇
4か月ぶりに伸びが縮小、水道料金の基本料金無償化が押し下げ。
**3月末時点の家計金融資産残高は前年同期比0.3%増
株安や円高で2195兆円と伸び悩み。株式等は同3.9%減の268兆円、投信は
同8.8%増の131兆円。
**5月有効求人倍率は前月比0.02ポイント低下
1.24倍と3か月ぶり低下。インフレ対策で新たな収入源要求。完全失業率
は2.5%で横ばい。
<海外モニター>
**米S&Pは前日比32.05ポイント高
関税・中東懸念の後退で最高値更新。長期金利は4.28%へ上昇、2年・10
年利回り格差は53BPで横ばい。
**米5月PCEコア物価指数は前年同月比2.7%上昇
予想を上回り0.1ポイント加速、サービス価格が3.4%上昇。前月比の伸び
は0.2%。総合指数の上昇率は前月比0.1%、前年同月比2.3%。
**米5月個人消費支出は前月比0.1%減
増加予想を下回り消費不振が浮き彫りに。個人所得も同0.4%減と一転し
減少に。
**大手米銀がFRBのストレステスト合格
対象の22行すべてが厳しい環境でも強固な資本水準を維持。
**トランプ大統領「カナダとの通商交渉は即時終了」
デジタル税に反発、1週間以内に新たな関税公表と表明。
**米NY市長選民主党予備選で左派若手候補が勝利
イスラム教徒にして過激な社会主義者のマムダニ氏。草の根運動が奏功。
**中国5月工業部門企業利益は前年同月比9.1%減
前月までの2か月連続増加から一転大幅マイナスに。1-5月期でも前年同
期比1.1%減とマイナスに。
**EUがCPTPPとの連携強化へ
フォンデアライエン欧州委員長が表明、自由貿易体制維持へアジアとの
結びつき重視。
**フランスとスペインのインフレ率は小幅加速
フランス6月消費者物価指数はサービス価格加速で前年同月比0.8%上昇。
スペインは同2.2%上昇。
**メタがデータセンター建設へ290億ドル調達
FT報道。AI戦略巻き返しへ設備投資や企業買収協議を急加速。
**OPEN AIがグーグル半導体を使用
エヌビディア依存から脱却、同社クラウドサービスも利用へ。
<地政学モニター>
**トランプ大統領がイラン制裁緩和検討中止
ハメネイ師の勝利宣言に反発。ウラン濃縮能力が残っていれば再び空爆
する考えも。
**イランがIAEA核施設視察拒否の姿勢
IAEAは数か月で濃縮ウラン生産可能との認識。
**ウクライナが対人地雷禁止条約離脱
戦争の現実が要求、ロシアと対等に。
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現代金融の遠近法 スタグフレーションと長期金利
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中東不安が薄れ、AI関連需要への期待も蘇って、米国株が上昇気流に乗って
いる。S&P500とナスダックは揃って過去最高値を更新、利下げ観測や関税先送
りといった材料も加わって、慎重論は吹き飛んでしまった。日本株にもその流
れが押し寄せて日経平均は真空地帯を駆け上がるように4万円台を回復し、年末
に向けて一段の上昇を予想する声が強まってきた。株価上昇は大歓迎であるが、
世界各国の実体経済や地政学に不安がいくつも残る中での強気相場には常に留
意しておく必要もあろう。
相場牽引役の米国では5月のPCE物価指数が発表されたが、筆者が注目したのは
サービス価格の高止まりである。個人消費支出が1月以来の前月比マイナスと予
想に反して減少したのは、自動車の駆け込み購入減少に加えて、旅行や外食、通
信などサービス部門の裁量的支出が減少したことが響いているが、その割に価格
が下がっていないことは、米国内のスタグフレーション的傾向が強まっているこ
とを示唆しているように思われる。米雇用市場に関しても、失業保険継続受給者
数の足許の増加は明らかに環境の変調を示しており、物価高止まりと景気悪化の
並走という状況が定着してきたことが窺われる。
関税交渉でもトランプ政権の思い通りには動いていないことが明らかで、中国
には持久戦に持ち込まれ、日本とは交渉が行き詰まり、欧州に関しては対話の目
途が立たぬ状況だ。カナダとは喧嘩別れしそうな気配である。関税効果が表れぬ
うちに利下げが始まり、その後に相互関税発動で物価上昇という悲惨な状況にな
りはしないか、と懸念している人も少なくないだろう。減税法案自体は四苦八苦
しながら上院での可決を目指し、独立記念日までに下院で修正案を可決する姿勢
を維持しているが、これも承認されれば10年間で3兆ドル超の大幅財政赤字拡大が
確定である。さて後半戦の米長期金利はどう動くだろうか。株も為替もその動向
次第であろう。
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【MAFS Daily Magazine】
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