目次
『注射糖尿病製剤 -インスリン/GLP-1受容体作動薬-』
≪はじめに≫
東邦大学医学部内科学講座糖尿病代謝内分泌分野(佐倉)
東邦大学医療センター佐倉病院糖尿病・内分泌・代謝センター 教授 龍野一郎
1921年,カナダのF.G.バンティング,J.J.R.マクラウドがインスリンを発見する以前は糖尿病,特に1型糖尿病の治療には飢餓療法しかなく,多くの人々が糖尿病性ケトアシドーシスによって亡くなる暗黒の時代であった.インスリンは直ちに臨床応用され,この人々を救った成果によりバンティングとマクラウドは1923年にノーベル医学生理学賞の栄誉に輝いた.
しかしながら,これで糖尿病の治療は完結せず,次の戦いは糖尿病の慢性合併症である糖尿病網膜症,糖尿病腎症,糖尿病神経症といった細小血管障害をいかに抑制するかの戦いになった.そのためには血糖変動をいかに正常人に近づけるかが課題となった.生体内でインスリンは常時分泌され,肝臓での糖新生を制御している基礎分泌と,食事のたびに分泌され,急な血糖の上昇を抑える追加分泌に分けることができ,次のインスリン療法の課題はインスリンアレルギーの改善を目指すヒト型インスリンの開発に加えて,作用時間の面からは基礎分泌を担う長時間作用型インスリンの開発と,追加分泌を担うための注射直後に効き始め,効果の比較的短い速効型インスリンの開発の歴史であった.その結果,1980年後半,遺伝子組み換え製剤が開発され,2001年にはインスリンアナログ製剤が登場している.さらに,腸管から分泌されるGLPやGIPと言ったインクレチンのインスリン分泌に対する重要性が明らかになり,インクレチン関連注射製剤が開発された.これらの製剤は血糖コントロールだけでなく,食欲抑制効果も認められ,欧米では抗肥満薬としても使われている.
このようにインスリンの発見以来,過去100年の間にインスリン製剤は大きく進歩・改良され,さらにインクレチン製剤が加わることにより,糖尿病の診療は大きな変遷を遂げてきている.本特集ではインスリン製剤を中心に糖尿病治療における注射製剤の位置づけや導入の適応,その使用量や注射のタイミングについて実際の臨床例に基づいてわかりやすく解説いただいた.
≪薬物治療の本質を理解するための基礎知識≫
1.注射糖尿病製剤が処方される患者のからだ
・糖尿病の2つの病態とくすりの関係
・高血糖状態が形成する悪循環と血糖コントロールの指標
・糖代謝に欠かすことのできないホルモン「インスリン」
・インスリン製剤が適応となる患者のからだ
・インスリン分泌をサポートするホルモン「インクレチン」
・GLP-1受容体作動薬が適応となる患者のからだ
2.インスリン製剤の「かたち」「はたらき」「うごき」
・インスリン製剤の個性を紐解く2つの視点
・添加物に注目! ヒトインスリン製剤
・化学構造の異なる部分に注目! インスリンアナログ製剤
3.GLP-1受容体作動薬の「かたち」「はたらき」「うごき」
・DPP-4による分解を回避したカタチ
・同一成分でも作用時間が異なる理由
・GLP-1受容体作動薬とインスリンアナログ製剤のコンセプトは似ている!
4.要点整理! 注射糖尿病製剤「薬学管理ファイル」
・薬学管理に必要な視点
・注射糖尿病製剤のプロフィル
・GLP-1受容体作動薬のプロフィル
≪処方のねらいと考え方≫
1.糖尿病注射療法が開始されるまでの病院での診療
・注射糖尿病製剤治療が必要となる検査前の診察でわかる所見・検査でわかる所見
・経口血糖降下薬から注射糖尿病製剤へのターニングポイント
・合併症からみた注射糖尿病製剤開始のタイミング
・入院での注射糖尿病製剤導入にするか外来での注射糖尿病製剤導入にするかの判断
2.入門! 注射糖尿病製剤の使い方
・インスリン療法の目的と適応
・1型糖尿病のインスリン療法の基本
・2型糖尿病のインスリン療法の基本
・1型・2型糖尿病のインスリン療法の導入
・インスリン投与量の調節が必要となるケース
・GLP-1受容体作動薬の適応と使い分け
3.処方の引き出し─さまざまな患者に対応する
・インスリンのハイミックス製剤の使い方
・糖尿病注射療法を離脱できる目安
・肥満患者へ処方する注射糖尿病製剤
・小児・思春期に処方するインスリン製剤
・妊娠・産褥期に処方するインスリン製剤
・高齢者に処方するインスリン製剤
・透析患者に処方するインスリン製剤
・不安定糖尿病に処方するインスリン製剤
・シックデイ時のインスリン製剤の投与設計
・注射針の選択方法
≪処方例から学ぶ! 糖尿病注射療法≫
・case1 病歴10年の2型糖尿病にGLP-1受容体作動薬導入となる処方
Scene 1 GLP-1受容体作動薬導入
Scene 2 BOT療法開始(Scene 1から3年後)
Scene 3 混合型インスリン製剤開始(Scene 1から7年後)
・case2 強化療法となった1型糖尿病の18歳男性
Scene 1 インスリン導入
Scene 2 持効型製剤の切り替え(Scene 1から5年後)
≪コラム≫
一見2型にみえる1型糖尿病 「緩徐進行1型糖尿病」
インスリン製剤に亜鉛が 添加されている理由は?
インスリン製剤の注射以外の 剤形は?
インスリン製剤の温度管理 ─「変性」ってなに?─
トルリシティ®の「8位アラニン」と,GLP-1の「N末端から2番目の アラニン」は同じ?
ビデュリオン®皮下注の マイクロスフィアに用いられる特殊な素材とは
バイオシミラー
≪Series≫
・ハマゾン.co.jp
魚インスリンと吸入インスリン
・エビデンスと実臨床の架け橋~臨床疑問のゆくえ~
1型糖尿病ではインスリン治療で厳格に血糖コントロールすべき?
≪book review≫
・薬物動態のイロハ(南山堂)
≪巻末付録≫
・医薬品集 カスタマイズツール
GLP-1受容体作動薬
次号予告
「統合失調症と抗精神病薬」
・抗精神病薬は統合失調症にどのように効くの?
・第一世代抗精神病薬と第二世代抗精神病薬の違いと使い分けは? など
≪はじめに≫
東邦大学医学部内科学講座糖尿病代謝内分泌分野(佐倉)
東邦大学医療センター佐倉病院糖尿病・内分泌・代謝センター 教授 龍野一郎
1921年,カナダのF.G.バンティング,J.J.R.マクラウドがインスリンを発見する以前は糖尿病,特に1型糖尿病の治療には飢餓療法しかなく,多くの人々が糖尿病性ケトアシドーシスによって亡くなる暗黒の時代であった.インスリンは直ちに臨床応用され,この人々を救った成果によりバンティングとマクラウドは1923年にノーベル医学生理学賞の栄誉に輝いた.
しかしながら,これで糖尿病の治療は完結せず,次の戦いは糖尿病の慢性合併症である糖尿病網膜症,糖尿病腎症,糖尿病神経症といった細小血管障害をいかに抑制するかの戦いになった.そのためには血糖変動をいかに正常人に近づけるかが課題となった.生体内でインスリンは常時分泌され,肝臓での糖新生を制御している基礎分泌と,食事のたびに分泌され,急な血糖の上昇を抑える追加分泌に分けることができ,次のインスリン療法の課題はインスリンアレルギーの改善を目指すヒト型インスリンの開発に加えて,作用時間の面からは基礎分泌を担う長時間作用型インスリンの開発と,追加分泌を担うための注射直後に効き始め,効果の比較的短い速効型インスリンの開発の歴史であった.その結果,1980年後半,遺伝子組み換え製剤が開発され,2001年にはインスリンアナログ製剤が登場している.さらに,腸管から分泌されるGLPやGIPと言ったインクレチンのインスリン分泌に対する重要性が明らかになり,インクレチン関連注射製剤が開発された.これらの製剤は血糖コントロールだけでなく,食欲抑制効果も認められ,欧米では抗肥満薬としても使われている.
このようにインスリンの発見以来,過去100年の間にインスリン製剤は大きく進歩・改良され,さらにインクレチン製剤が加わることにより,糖尿病の診療は大きな変遷を遂げてきている.本特集ではインスリン製剤を中心に糖尿病治療における注射製剤の位置づけや導入の適応,その使用量や注射のタイミングについて実際の臨床例に基づいてわかりやすく解説いただいた.
≪薬物治療の本質を理解するための基礎知識≫
1.注射糖尿病製剤が処方される患者のからだ
・糖尿病の2つの病態とくすりの関係
・高血糖状態が形成する悪循環と血糖コントロールの指標
・糖代謝に欠かすことのできないホルモン「インスリン」
・インスリン製剤が適応となる患者のからだ
・インスリン分泌をサポートするホルモン「インクレチン」
・GLP-1受容体作動薬が適応となる患者のからだ
2.インスリン製剤の「かたち」「はたらき」「うごき」
・インスリン製剤の個性を紐解く2つの視点
・添加物に注目! ヒトインスリン製剤
・化学構造の異なる部分に注目! インスリンアナログ製剤
3.GLP-1受容体作動薬の「かたち」「はたらき」「うごき」
・DPP-4による分解を回避したカタチ
・同一成分でも作用時間が異なる理由
・GLP-1受容体作動薬とインスリンアナログ製剤のコンセプトは似ている!
4.要点整理! 注射糖尿病製剤「薬学管理ファイル」
・薬学管理に必要な視点
・注射糖尿病製剤のプロフィル
・GLP-1受容体作動薬のプロフィル
≪処方のねらいと考え方≫
1.糖尿病注射療法が開始されるまでの病院での診療
・注射糖尿病製剤治療が必要となる検査前の診察でわかる所見・検査でわかる所見
・経口血糖降下薬から注射糖尿病製剤へのターニングポイント
・合併症からみた注射糖尿病製剤開始のタイミング
・入院での注射糖尿病製剤導入にするか外来での注射糖尿病製剤導入にするかの判断
2.入門! 注射糖尿病製剤の使い方
・インスリン療法の目的と適応
・1型糖尿病のインスリン療法の基本
・2型糖尿病のインスリン療法の基本
・1型・2型糖尿病のインスリン療法の導入
・インスリン投与量の調節が必要となるケース
・GLP-1受容体作動薬の適応と使い分け
3.処方の引き出し─さまざまな患者に対応する
・インスリンのハイミックス製剤の使い方
・糖尿病注射療法を離脱できる目安
・肥満患者へ処方する注射糖尿病製剤
・小児・思春期に処方するインスリン製剤
・妊娠・産褥期に処方するインスリン製剤
・高齢者に処方するインスリン製剤
・透析患者に処方するインスリン製剤
・不安定糖尿病に処方するインスリン製剤
・シックデイ時のインスリン製剤の投与設計
・注射針の選択方法
≪処方例から学ぶ! 糖尿病注射療法≫
・case1 病歴10年の2型糖尿病にGLP-1受容体作動薬導入となる処方
Scene 1 GLP-1受容体作動薬導入
Scene 2 BOT療法開始(Scene 1から3年後)
Scene 3 混合型インスリン製剤開始(Scene 1から7年後)
・case2 強化療法となった1型糖尿病の18歳男性
Scene 1 インスリン導入
Scene 2 持効型製剤の切り替え(Scene 1から5年後)
≪コラム≫
一見2型にみえる1型糖尿病 「緩徐進行1型糖尿病」
インスリン製剤に亜鉛が 添加されている理由は?
インスリン製剤の注射以外の 剤形は?
インスリン製剤の温度管理 ─「変性」ってなに?─
トルリシティ®の「8位アラニン」と,GLP-1の「N末端から2番目の アラニン」は同じ?
ビデュリオン®皮下注の マイクロスフィアに用いられる特殊な素材とは
バイオシミラー
≪Series≫
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魚インスリンと吸入インスリン
・エビデンスと実臨床の架け橋~臨床疑問のゆくえ~
1型糖尿病ではインスリン治療で厳格に血糖コントロールすべき?
≪book review≫
・薬物動態のイロハ(南山堂)
≪巻末付録≫
・医薬品集 カスタマイズツール
GLP-1受容体作動薬
次号予告
「統合失調症と抗精神病薬」
・抗精神病薬は統合失調症にどのように効くの?
・第一世代抗精神病薬と第二世代抗精神病薬の違いと使い分けは? など
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