ニューフードインダストリー 発売日・バックナンバー

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さとうきび抽出物の風味改善効果と退色抑制効果
塩見 和世,陸浦 美月
さとうきびは,イネ科に属する多年草で,熱帯・亜熱帯地域で広く栽培され,日本では沖縄県や奄美諸島を中心に栽培されている。主として蔗糖原料となるが,ラム酒や黒糖焼酎の原料,燃料用アルコールの原料などにも使用されている。また,沖縄ではサーター(黒糖湯)として薬のない時代に民間薬とされてきた歴史もあり,さとうきびは人々の健康にも寄与してきた。さとうきび茎皮のオクタコサノールや黒糖中の抗酸化物質など,さとうきびには蔗糖以外に種々の有効成分が含有されていることが知られており,これまでさまざまな機能性が研究されている。
 当社でも20年近くさとうきび中の有効成分に関する研究に取り組み,有効成分の効果の違いにより「食品用(風味改善効果)」,「消臭用(消臭効果)」,「飼料用(生理機能)」の3種類の“さとうきび抽出物”を開発し,販売してきた。また近年では「黒糖芳香回収液(マスキング・風味付与効果)」を塩野香料(株)と共同で開発し販売を始めた。何れの商品も製糖工程で発生する未利用資源の有効活用になっている。
 日本人は味に敏感であり,低コスト品や異味のある機能性素材配合品においても,美味しさの追求が課題となる。この課題を解決する天然由来の風味改善素材として,食品用さとうきび抽出物はさまざまな食品用途に採用されてきた。これまでに,さとうきび抽出物の風味改善効果は,官能により評価してきたが,より客観的なデータを取得するべく,機器分析による味改善効果の数値化にも取り組んでいる。本稿では,味認識装置である味覚センサー((株)インテリジェントセンサーテクノロジー)を用いたさとうきび抽出物の味改善効果の評価について紹介する。
 一方,美味しさの追求には見た目も重要であり,美味しそうに見える鮮やかな色の保持も商品開発における課題となる。食品用さとうきび抽出物は,さとうきび由来のポリフェノールを含有し,抗酸化力を持つことが確認されている1)。本稿では,近年明らかとなった,さとうきび抽出物の抗酸化力による退色抑制効果についても紹介する。
ブラックジンジャー・キトサン含有食品摂取による体脂肪低減効果の検討
三宅 康夫
要旨
ブラックジンジャー(Kaempferia parviflora)とキトサンの体脂肪減少効果を調べるために,12週間の連続摂取によるヒト試験をプラセボ対照比較試験にて行った。その結果,ブラックジンジャー・キトサン含有食品(試験品)群は,全体脂肪面積において,摂取前と比較して有意に減少した。一方,プラセボ品群は有意な変化は認められなかった。体重の変化においては,試験品群が摂取6週後および12週後において摂取前と比較して有意に低下した。摂取12週後においては,相対値においてプラセボ品群との間に有意な差が認められた。以上の結果より,ブラックジンジャー・キトサン含有食品には,体脂肪減少,体重減少効果が認められ,肥満解消に役立つ食品であることが示された。
フグ毒が毒となるしくみ ― ゾンビとフグ毒 ―
村上 りつ子,野口 玉雄
フグは,猛毒をもつ魚として知られているが,わが国では,フグ料理は高級料理として珍重され,好んで食されている。しかし,世界中でフグを食べるのは,日本をはじめ,中国,台湾,韓国,シンガポール,タイなどの東南アジアの少数の国々に限られ,欧米人にとっては,日本でなぜ危険なフグが愛好されているのかは理解されにくいらしい。
 ところが,日本から遠く離れた中南米の国ハイチに伝わるゾンビ伝説にはフグ毒「テトロドトキシン」の関与が疑われているという。
 最近,英国BBCのリサーチャー,次いで同国mediaから,中南米ハイチで昔から言われている“死者を生き返らすゾンビパウダー”がフグ毒,といわれているが,フグ毒にはそのような作用があるのかの問い合わせが,魚介毒研究をしている著者らにあった。
 フグ毒をマウスに致死量投与すると四肢の麻痺,呼吸停止,その後フグ毒投与に特徴的な症状であるしばらくの心臓の鼓動(仮死状態)が続いて死亡する。ヒトのフグ毒中毒死の場合も同様で,呼吸停止後の心臓の鼓動(仮死状態)はマウスより遥かに長い。フグ毒を使ってのハイチの熟練魔術師の“死者を生き返らす神業”そして日本で昔からフグ中毒者が人里離れた医院に無事にたどり着ければ生存できる“からくり”もフグ毒ならばで推測してみる。
CO2センサーを用いたγアミノ酪酸製造工程の簡便なモニタリング技術
渡部 保夫,河田 航貴
 筆者らは,大麦類「はだか麦」の一種「もち麦」(ダイシモチ)を用いて,多機能性アミノ酸であるギャバ(GABA)を効率よく製造する技術を開発してきた。本研究では,基質であるL-グルタミン酸からGABAが生成した時に副生成されるCO2の量を安価な市販のCO2センサーで計測すれば,GABA製造工程を簡単にモニタリングできること,さらにこの技術が,GABA商品開発の分野で利用可能であることが分かったので,ご紹介する1)。
更年期障害とピクノジェノール
A randomized, double-blind, placebo-controlled trial on the effect of low-dose French maritime pine bark extract on climacteric syndrome in 170 peri-menopausal women
小濱 隆文
Abstract.
Objective— To evaluate the efficacy of a relatively low daily dosage of Pycnogenol French maritime pine bark extract for improvement of climacteric symptoms.
Study Design— In a double-blind, placebo-controlled study 170 peri-menopausal women were enrolled and treated with 30 mg Pycnogenol or placebo twice daily over a period of three months. Climacteric symptoms were evaluated by the Women’s Health Questionnaire (WHQ) and by the Kupperman Index, accompanied by an investigation of sexual hormones and routine blood chemistry.
Results and Conclusion— Seven women dropped out of each group due to non-compliance or personal reasons, but not as a result of treatment. A significant placebo effect was apparent in this study, suggesting an improvement of a majority of the Women’s Health Questionnaire (WHQ) categories. Compared to baseline Pycnogenol significantly (p<0.05) improved all symptoms with the exception of formication sensation and abnormal perceptions. Pycnogenol was found to be especially effective for improving vasomotor and insomnia/sleep problem symptoms which were significantly better after four and twelve weeks than with placebo (p<0.05). Total Kupperman’s index for peri-menopausal symptom severity score decreased significantly by 56% as compared to placebo (-39%) after twelve weeks treatment (p<0.05). Symptom score was also significantly better already after four weeks treatment with Pycnogenol as compared to placebo.
This study applying a relatively low daily dose allows for identifying those climacteric symptoms which respond particularly well to supplementation with Pycnogenol.

女性の卵巣機能は10歳前後からエストロゲン分泌が上昇し初潮を迎え,その際エストロゲン濃度は20〜30歳代頃にピークとなり,40歳を超えると徐々に低下し始め,50歳頃に閉経を迎え。したがって更年期とは生殖期と非生殖期の間の移行期で年齢的には45〜55歳頃をさし,卵巣機能が低下して消失する時期に相当する。更年期障害の症状は,疲労感,頭痛,頭重感,肩こり,腰痛,のぼせ(ほてり),冷え,不眠など多彩である1)。
 人間のからだを維持する機能として,ホルモンの分泌をつかさどる内分泌系と,内臓や各種の分泌腺,血管などのはたらきを自動的に調節する役目をはたす自律神経系の2つの系統がある。この2つの中枢は,両者とも間脳にあり,お互い影響しあっているため,卵巣機能(内分泌系)に異常がおこると,自律神経系にも異常がおこり,おのおのの支配下にある臓器のはたらきが悪くなることになり,自分の意志では調整不可能な状態となる。一般的には,更年期障害とは,更年期におこる卵巣機能の低下を契機として発症する,このような内分泌‐自律神経系の適応障害に基づく症候群といわれている。
 更年期障害の治療としては,卵巣機能の低下によって不足したホルモン(エストロゲン)を補充することは意味のあることと考えられている。しかし,自律機能系の失調としてみた場合は,中枢のある間脳の機能の回復をはかる治療が必要となり,したがって,治療には,①ホルモン療法,②薬物療法(鎮静薬の使用),③心理療法(精神療法・説得療法)の3つの柱があるとされている。どれがいちばん必要な治療かは,各個人で効果が異なるため,ある意味試行錯誤的な決定も行われるのが現状である。
 治療においてもっともたいせつなことは,閉経後の人生を快適に生活できるよう,医師が十分配慮することであろう。
 ホルモン療法はホルモン補充療法ともいい,不足したホルモンを補う治療法で,医療的には効果が最もよいとされているため,これまで治療選択肢の筆頭に挙げられてきてきた。しかしながら,生理様の出血,子宮筋腫の腫大,子宮癌の発生,消化器症状,乳房に張りや痛み,乳癌の発生2),血栓症3)といった副作用を抱えており,極めて優れた治療とは言いがたいものである。
中鎖脂肪酸含有油脂(MCT)の新たな食品機能特性
− パン焼成時にともなうメイラード反応との関係 −
豊﨑 俊幸
 油脂の主成分は,三つの脂肪酸がグリセロールに結合したトリアシルグリセロールであり,一般に中性脂肪として知られている。三つの脂肪酸は炭素数の違いから分類すると,炭素数が8〜10結合した中鎖脂肪酸と炭素数が12以上結合した長鎖脂肪酸とに分類される。中鎖脂肪酸は牛乳脂肪中に約4〜5%含まれる。また,母乳中にも約1〜3%含まれる。植物性固体脂では,パーム核油に約7%,ヤシ油には約14%含まれている。
 ところで,中鎖脂肪酸のみで構成されている中鎖脂肪酸含有油脂(以下MCTと略す)に関しては1950年に最初に,迅速な吸収で引き起こされた吸収不良症候群の食事療法で使用されたのがきっかけで,それ以来多くの優れた報告がなされた1-22)。
 MCTの特徴の一つとして,通常の食事に含まれている油脂(長鎖脂肪酸含有油脂;以下LCTと略す)に比較して,消化・吸収されやすく体内で酸化分解されやすい性質を明らかとした。この現象はLCTに比較して非常に特異的であり,この効果は抗肥満作用として考えられることから,現在では特定保健用食品として様々な用途に使用されている。
 MCTに関する報告のほとんどは臨床栄養学分野あるいは生化学的分野から主に追跡されてきたが,食品科学分野からの報告は筆者が知る限りに於いてはほとんど見あたらないのが現状であることから,今後は食品科学分野からの追跡が必要不可欠である。  
 ところで,MCTにかかわらず食物はすべて最終的には人間が摂食する食物の生体に対する効果がin vitro系で優れた結果が得られても,in vivo系で優れた効果が証明されなければ全く意味をもたないものになってしまう。また,基本的に摂食するためにはその食物が美味しくなくてはならない。このような要因をすべてクリアーして,初めてその食品の優れた機能特性が利用できることになる。
 著者はここ数年にわたり,製パンにおけるMCTの新たな食品機能特性について追跡してきた結果,興味ある知見を得た。それらの知見の中で,特にパン焼成時にともなうメイラード反応とMCTとの関係については,ほとんど報告されていないのが現状であり,製パン業界に多大なる知見を提起できるものと自負している。ここでは,メイラード反応とMCTとの関係について,著者が明らかとした結果について紹介する。
組織の活性化と人材の育成:
Improving the working environment and nurturing human resources :
−創る 造る 作る− より良い製品を目指すために
MONOZUKURI ―In order to better products
賈 俊業
Abstract
「monozukuri」is a Japanese word. The word simply means making things, but is infused with a deeper impression of skilled craftsmen pouring heart and soul into their work, striving for perfection regardless of time or cost. The word「making」 in Japanese has a lot of meanings. I would like to introduce 3 meanings,「create」,「build」,「produce」.

 日本は,「ものづくり大国」である。しかし,21世紀に入り我々を取り巻く社会環境は常に変わり続け,環境破壊,温暖化,高齢化社会,テクノロジーの進歩やグローバル化が進み,市場では厳しい競争状況が続いている。企業淘汰の現在,今を生き抜いていくために,積極的な取り組みが不可避な課題となっている。いわば文化・知識・環境総合力で時代に立ち向かうため,今一度,ものづくりの「つくる」ということを考え直してはいかがだろうか。
健康食品のエビデンス 第2回 黒酢
濱舘 直史
黒酢は,糖化とアルコール発酵に加えて酸発酵を営みながら酢を造るという200年来の伝統的技術によって,今もなお鹿児島県福山町に伝わっています。原料には米,麹,水のみを使用して,発酵の全工程を薩摩焼の壺の中で行います。製造上の特徴としては,庭先や畠の中に壺を置き,自然の微生物によって発酵させることや最後に振り麹という特殊な技術を用いることが上げられます。昼間の太陽光,夜の冷気を受けて温度調整が行われながらの発酵は3ヶ月かけて進んでいき,熟成期間は通常3〜6ヶ月ですが,さらに1〜2年熟成させて製品とする場合もあります。麹は昔から味噌用の種麹である黄麹菌に属するAspergillusを用います。麹は麹菌の繁殖によって種々の酵素を含み,主として澱粉の糖化とタンパク質の分解に関与します。壺の中では乳酸菌,酵母,酢酸菌などの増殖,減少がタイミングと量の両面において,まるで仕組まれたかのように素晴らしくフローラを形成していきます。このフローラには,酵母が266株,酢酸菌が318株など,多種の微生物が検出されることが報告されています。黒色は糖とアミノ酸によるアミノカルボニル反応によって生じ,味は酢酸分子と水分子との会合によってまろやかに変化すると考えられています。成分には普通の酢に比べてアミノ酸の中でも特に必須アミノ酸,ビタミンB1,B2,Cが多く含まれていて,含まれるタンパク質については分子量5,000〜10,000のものが60%を占めるといわれています1)。
野山の花 — 身近な山野草の食効・薬効 —
マムシグサ Arisaema serratum (Thunb.) Schott(サトイモ科 Araceae)
白瀧 義明
 なんとも不気味な感じのする植物です。4〜6月頃,少し野山に入ると薄暗いスギ林の下などにヌーと生えていて幽霊でもいるような印象を受けます。その上,茎(偽茎)がまだら模様で,その様子が蝮(マムシ)に似ていることからマムシグサの名がついたそうです。秋には真っ赤な実をつけ,それがまた何とも異様な感じです。地下の芋(球茎)はテンナンショウ(天南星)と言い,デンプン,サポニン,アミノ酸類,安息香酸,シュウ酸カルシウムなどを含み,漢方で去痰,鎮痙薬とし,民間で腫れ物,肩こり等に外用します。

本誌、写真2の説明において、マムシグサの雄花断面(左)とありましたが、正しくはマムシグサの雌花断面となります。ここに訂正をさせていただきます。
ベジタリアン栄養学 歴史の潮流と科学的評価(第4節 健康的なベジタリアン食への提言)
13章 ベジタリアン食の栄養問題
ジョアン・サバテ(Joan Sabate,訳:山路 明俊
バランスの取れたベジタリアン食は,心疾患,がんやⅡ型糖尿病のリスクを低下させる健康効果があります1)。 ベジタリアン食は,飽和脂肪とコレステロール摂取の低下,果物や野菜摂取の増加を推奨するのに適しています。ベジタリアン食は幅広いので,彼らの栄養状態は極めて多様です。献立がうまく出来ている場合には,伝統的ベジタリアン食の殆どは,栄養学的に適切です。厳格なマクロビオティック等のある種のベジタリアン食は複合的な栄養欠乏の問題を生じます。
 西欧のベジタリアンは,主に3つに分類されます。ラクト・オボ・ベジタリアン(LOVs),ビーガン,他のベジタリアンです。LOVsは,乳製品や卵を利用しますが,肉や魚は摂りません。セブンスデー・アドベンチスト等の多くの人は,1800年代の中頃からLOV食を摂るようになりました。彼らは,他のベジタリアンより,ビタミンB12とカルシウムの摂取が低いようです。
 西欧の伝統的ビーガン食を取り入れている人は,幅広く,果物,穀類,ナッツ,豆類や野菜を摂りますが,肉,魚,卵や乳製品は摂りません。このことは,通常,雑食者やLOVsよりも低い飽和脂肪やコレステロール摂取に繫がっています。結果的に,ビーガンの心疾患のリスクは低いのです2)。 ビーガン食は,ビタミンB12のサプリメントが必要以外は一般的に適切なのです。ビーガン女性は,適切な骨密度にする為にカルシウム摂取に注意する必要があることをいくつかの研究が示唆しています。このことは,カルシウムが強化された食品やサプリメントが必要ということです3)。
酒とアロマでアンチエイジング
Drinking alcoholic beverage and sniffing aroma make us anti-aging
佐藤 和恵
Abstract
In the recent stressful society, aroma and alcoholic beverage are essential to scavenge harmful radicals and reduce the stress, and finally make us happy.

 ストレスの多い現代社会において,アロマテラピ-に対する関心が高まり,病気の治療効果が期待されています。最近,アロマテラピーに興味をもち,少し研究も始めました。アロマオイル(精油)の抗酸化能については,化学的にきちんとした測定が余りなされていないので,老後のライフワークにと思っています。ラベンダーやティートリーの香りを嗅ぐと免疫活性の指標であるイムノグロブリンAが唾液中で増加します。ラベンダーは,個人の香りに対する好き嫌いに拘らず,リラクゼーション効果のある脳波のα波の出現率を高めます。
築地市場魚貝辞典(イシダイ)
山田 和彦
月日はめぐり,築地にまた夏がやってくる。以前にも書いたのであるが,築地市場の水産物仲卸店舗には空調設備がない。水産物は旨味成分を多く含む反面,鮮度の低下が早い。気温が高くなればなおさらである。仲卸店舗では氷を使っているが,店舗に出せなかったものなどを保管するために,築地市場でも大きな冷蔵庫が立ち並ぶ。
今回は夏の魚,石鯛を紹介する。

New Food Industry 2015年 5月号
低分子米ぬかアラビノキシラン(オリザロース®)の恒常性維持作用を介する体調改善効果
前田 浩明
要旨
 低分子米ぬかアラビノキシラン(オリザロース®)は紫黒米の果皮部を原料とする免疫強化作用を持つ機能性オリゴ糖として開発された。免疫力低下が原因と考えられる健康不安や栄養状態の改善に効果的な機能性食品として評価を受けている。免疫力の強化作用との因果関係を2-deoxy-D-glucose投与に対するストレス抵抗性による評価系で検討し,ストレスによる免疫機能の低下,即ちTh1細胞性免疫のダウンレギュレーションの抑制作用が認められた。この結果から,ストレス抵抗性による恒常性維持が自律神経の活性化に影響を与える可能性があると考え,代表的な体調不安である,睡眠と冷えの改善効果をそれらの不満を訴える成人女性を対象に検討した。睡眠関連はアンケート調査,睡眠中の心拍記録によるR波のゆらぎを介する自律神経の活動状況の検討を行い,睡眠障害の改善と睡眠内容の改善が認められると同時に自律神経の活性化が示唆された。冷えについては冷えに関するアンケートによって,身体の冷えや外気温の変化による冷えの体感程度の減少が認められるとともに深部体温の上昇が観察され,冷水負荷後の体温復活試験では体温復活速度が速まる結果が得られ,毛細血管の血行の促進作用が示唆された。オリザロース®のストレス抵抗性を免疫機能低下防止作用と自律神経強化作用で検討し,有効性を確認した。この結果からオリザロース®は恒常性維持に貢献し,体調不安を改善しQOLを向上させる作用があることが推定された。
分散ヘスペレチンの製造と特徴
宅見 央子
 ヘスペレチンは,柑橘類の果皮に多く含まれるフラボノイドの一種であるヘスペリジンのアグリコン(非配糖化部分)である(図1)。天然には,活性の中心と考えられるヘスペレチンに,グルコースとラムノースが結合したヘスペリジンとして存在している。
 ヘスペリジンは,血管壁を柔軟にし,血管透過性を改善する作用をもつ成分として発見され1) ,Permeability(透過性)の頭文字をとって,ビタミンPとも呼ばれている。ヘスペリジンは,漢方薬の陳皮(ちんぴ)の主成分でもあり,欧州では医薬品として使用されており,毛細血管の強化作用のほか,血清脂質改善作用や抗炎症作用などの多くの生理機能があることが報告されている2)。しかし,みかん缶詰のシロップを白濁させる原因物質でもあるように,水への溶解性が低いので,使用用途は限定されていた。
 現在までに,ヘスペリジンを食品に利用しやすくする試みが実施されている。サイクロデキストリン合成酵素により,ヘスペリジンにα-1,4結合でグルコースを転移させた構造である糖転移ヘスペリジンは,ヘスペリジンに比べて水溶性が著しく高く,食品に加工しやすい成分になっている(図1)。我々は,糖転移ヘスペリジンの血流改善作用に着目して研究を行ってきた。
その過程で,逆に,ヘスペリジンから骨格となる構造であるヘスペレチンを取り出した新しい素材の開発を目指し,分散ヘスペレチンの開発に至った。今回は,分散ヘスペレチンの製造方法,血中動態および冷えや血流の改善作用等の生理機能について紹介する。
キチンオリゴ糖ならびにキトサンオリゴ糖経口摂取による抗腫瘍および抗炎症効果
Anti-tumor and anti-inflammatory effects oforal administrations of chitin and chitosan oligosaccharides
東 和生,大﨑 智弘,村端 悠介,柄 武志,今川 智敬,伊藤 典彦,岡本 芳晴
要旨
 キチンオリゴ糖(NACOS)ならびにキトサンオリゴ糖(COS)は,それぞれキチンおよびキトサンを工業的に分解することで得られるオリゴ糖である。これまでに,NACOSおよびCOSに関して数多くの生体機能が報告されている。特に最近では,機能性食品としての利用に注目が集まっており,経口摂取による評価が行われている。筆者らはこれまでに,NACOSおよびCOS経口摂取の抗腫瘍効果ならびにCOS経口摂取の抗炎症効果を実験的に証明している。本稿では,その概要を紹介するとともに今後の展望に関して記述する。
イネ科植物含有成分“Tricin”による抗ヒトサイトメガロウイルス作用機序の解明
Study on action mechanisms of anti-cytomegalovirus activity by tricin of material in the rice family plants
村山 次哉
Abstract.
It has been reported that treatment with tricin (4’,5,7-trihydroxy-3’,5’-dimethoxyflavone), a material in the rice family plants, after human cytomegalovirus (HCMV) infection significantly suppressed infectious virus production in the human embryonic fibroblast cell line (HEL). In this paper, we examined the mechanisms for the anti-HCMV activities of tricin in HEL cells. Exposure of fibroblasts to tricin inhibited infectious HCMV production, with concomitant decreases in levels of transcripts of the CXC chemokine (CXCL11) gene. We also found that the transcripts of the HCMV immediate early (IE) gene and replication of HCMV were lower
in CXCL11 gene-knockdown cells. These results suggest that tricin is a novel compound with potential anti-HCMV activity and that CXCL11 is one of the chemokines involved in HCMV replication. In addition, it is possible that CXCL11 is the one of the targets of tricin of material in the rice family plants. It seems that this identified material as anti-virus food component is very attractive to development of health functional foods.


 我々の研究室では,生薬を中心とした代替医療薬の中から,抗ウイルス活性を持つ成分の検索を行っており,これまでにアフリカ・ケニアに自生する植物成分(トリテルペン骨格を有するPristimerin),種々の漢方薬の中では特に小青龍湯,およびクマザサ中の成分等が強い抗ウイルス活性を示すことを明らかにした1-3)。特に,イネ科植物のクマザサからの熱水粗抽出液とそこから分離・精製した5種の成分( trans-p-Coumaric acid,Vanillin,p-Hydroxybenzaldehyde,3-Hydroxypyridine,Tricin)が,DNAウイルスのヒトサイトメガロウイルス( Human cytomegalovirus:HCMV)および RNAウイルスのインフルエンザウイルスに対して抗ウイルス活性を示す事を報告して来た 4, 5)。その成分の中でもフラボン誘導体である 4',5,7-trihydroxy-3',5'-dimethoxyflavone “Tricin”に強い抗ウイルス活性があることが明らかとなったので,ここでは主にtricinの抗HCMV活性とその作用機序について紹介する。
 Tricinは,クマザサの他に,米,小麦,トウモロコシ,大麦,ライ麦,ハト麦,サトウキビ,ススキ,ヒエ等多くのイネ科植物に含有されており,抗ウイルス作用 5),抗炎症作用 6),抗腫瘍作用等 7)の生理活性を持つ事が知られている。クマザサ(学名:Sasa albo-marginata)は,Gramineae familiesの一種で,日本や千島列島,サハリン島の一部に自生し,日本をはじめアジア諸国などでは古くから伝統的な民間薬および食物を包む材料として用いられてきた。また,クマザサの水溶性画分から得られた成分は抗腫瘍作用や抗炎症作用を有することが報告されている 8, 9)。このような生薬成分がもつ様々な生物活性を利用した補完代替医療に漢方薬があり,これらの成分の一つにフラボノイドがあげられ,多くの研究報告があるが,抗ウイルス活性についての詳細な研究は少ない。
イヌトウキの生物活性と今後の展望
Biological activity and future prospect of Angelica shikokiana Makino
坂上 宏,佐藤 和恵,金本 大成,寺久保 繁美,中島 秀喜,牧 純,白瀧 義明,三間 修,斎田圭子
Abstract.
Close inspection of previous reports demonstrated that both Angelica shikokiana Makino and Angelica Furcijuga Kitagawa showed comparable amounts of isoepoxypteryxin, suggesting that this substance may not be suitable for classification of these two plants. Angelica shikokiana Makino extract showed comparable anti-HIV activity with lignin-carbohydrate complex, and scavenged superoxide and hydroxyl radical as well as NO radical.

要旨
日本山人参は,セリ科に属する多年生植物であり,イヌトウキとヒュウガトウキの2種が知られている。過去の文献を精査したところ,これらはほぼ同量のイソエポキシプテリキシンを含むことが判明し,この物質は,2種の山人参の区別に有効ではない可能性が生じた。イヌトウキは,リグニン配糖体と同程度の抗HIV活性を示し,NOラジカル以外にも,スーパーオキシドアニオンおよびヒドロキシルラジカルを消去した。
高リグナン含有「リグナンリッチ黒ごま®」の素材紹介
− 焙煎油の抗酸化性とマイクロパウダーの香り分析 −
内田あゆみ
 ここ数年,胡麻といえば「ああ,セサミン」といわれるほど,大手企業の商品力の影響により,胡麻の機能性成分セサミンの名前は認知されてきた。ただ,世界各地において数千年にわたる食歴をもつ胡麻の種子であるが,機能性成分セサミン,リグナン類の研究はこの30年余りといわれ1),セサミンがリグナンという胡麻ポリフェノールの1つであるという消費者の認知度は低い。
 2007年以来,胡麻リグナンの含量が多いミャンマー産の黒胡麻の種子について,搾油,ペースト,マイクロパウダー(微粉末)等の素材展開をしてきたので,その素材の紹介と合わせて,焙煎胡麻,搾油の抗酸化性,香りの強い微粉末の香りの成分についても報告したい。
低水温飼育下でのシロザケ飼料への魚油添加効果
大橋 勝彦,酒本 秀一
著者らはシロザケ稚魚を用いた一連の研究1-7)で淡水での飼育試験,絶食試験,絶食からの回復試験および海水馴致試験と海中飼育試験等を行い,以下の事を明らかにした。
 飼料:同じシロザケ用飼料であってもメーカーの違いによって飼育された魚の体型,飼育成績および体成分組成等が可也異なる。これらの違いは飼料の原材料や栄養バランスの違いによって生じているものと思われる。夫々のシロザケ稚魚生産場に適した飼料を選択して使用すべきであろう。
 飼育成績:魚油を添加した飼料で飼育した方が生残率,成長,飼料効率(増重量×100/給餌量),タンパク質効率(増重量×100/給与タンパク質量)等の飼育成績が良い。更に絶食耐性,絶食からの回復能力,海水への馴致能力も魚油添加区の方が高い。
 餌付け:餌付け時から魚油を添加した飼料を与えると摂餌性が悪く,飼育成績に可也長期間悪影響を及ぼす。餌付け時には魚油無添加の飼料を用いるべきである。3-4日間魚油無添加飼料で餌付けを行った後魚油添加飼料に切り替えれば摂餌不良による悪影響は認められない。能勢ら8)の報告に有る様に餌付け時の魚のエネルギー源は主としてタンパク質であることと関係しているのであろう。シロザケ稚魚では未だ十分に卵黄が吸収,消費されない時期から給餌を開始するのが一般的である。卵黄には高濃度に脂質が含まれている。餌付け時にはまだ魚体の脂質量に余裕が有るので,卵黄脂質の利用を優先させる為に魚油を添加した飼料の摂取を抑制している可能性も考えられる。
野山の花 — 身近な山野草の食効・薬効 —
カタクリ Erythronium japonicum Dence.(ユリ科 Liliaceae)
白瀧 義明
 皆様ご存知の片栗粉ですが,今ではバレイショデンプンの袋詰めが店先に並んでいることが多いですね。しかし,もとは写真のようにまるでバレーリーナが踊っているような花を咲かせ,春の妖精とでも言えるこの植物の鱗茎から得ました。手で引き抜くと茎の途中で契れてしまいますから掘り取ってデンプンを得るには大変な手作業が必要ですが,最近は山菜として地上部(葉)がスーパーマーケットなどで売れられています。若葉を熱湯にさっとくぐらせ浸し物,和え物にすると美味しいそうです。
健康食品のエビデンス 第1回 健康食品について考える
濱舘 直史
 この連載を通して、サイエンスを用いた「エビデンス」に基づきながら、健康食品について読者の皆様と一緒に考えていければと思っています。不足な点もあるかと思いますが、ぜひご意見などをいただきながら、連載を進めていけたらと思っています。記念すべき第1回目は、健康食品について大きな枠組で執筆させていただき、第2回より健康食品の各素材についてご紹介していきたいと考えています。
管理栄養士 てるこ先生の家庭の食文化 第3回 口腔環境と食事
中村 照子
五月,二十四節気ではもう立夏となります。そしてゴールデンウイークは楽しい休暇のはずですが何かと行事の多い月でもあり,あっという間に終わってしまいます。
 つい先頃,娘が結婚し,マザーブルーとでもいうのでしょうか,少し感傷的に子育てに関連した行事をあれこれ思い出していました。子供の日,お誕生日会,入学・卒業式,運動会,遠足,発表会,そして成人式などなど。こうした行事には祝膳やお弁当が欠かせませんでした。我が家にとって大イベントだった娘の結婚披露宴では,いっぱい泣かせてもらったおかげでせっかくのシェフの祝膳はほとんど食べられませんでした。それでも結婚式前夜には母として精一杯のささやかな祝膳を用意しました。娘の好物ばかりをたくさん食卓に並べ,バラバラで妙な献立ではありましたが母の気持ちを祝膳に込めたのです。

人体への寄生虫感染を警戒すべき食材(13)
刺身・寿司からの感染が怖いアニサキスの予防策の背景となる基本的知見
牧 純,田邊 知孝,畑 晶之,坂上 宏,中村 円香,大西 俊輔,関谷 洋志,玉井 栄治,舟橋 達也
ABSTRACT
The infection of man with Anisakis spp responsible for the severe abdominal pain and measures to be taken for the prevention.

Jun Maki 1), Tomotaka Tanabe 2), Masayuki Hata 3), Hiroshi Sakagami 4), Sonoka Nakamura 1), Toshisuke Onishi 1), Hiroshi Sekiya 1), Eiji Tamai 1) and Tatsuya Funahashi 2)

1) Department of Infectious Diseases, College of Pharmaceutical Sciences, Matsuyama University;
2) Department of Hygienic Chemistry, College of Pharmaceutical Sciences, Matsuyama University;
3) Department of Physical Chemistry, College of Pharmaceutical Sciences, Matsuyama University;
4) Division of Pharmacology, Department of Diagnostic and Therapeutic Sciences, Meikai University School of Dentistry.

This paper describes the infection with Anisakis spp responsible for the abdominal pain and measures to be taken for the prevention.
Many Japanese people are daily infected with Anisakis spp belonging to the parasitic nematode after eating many kinds of the sea fish raw. Although this species is close to that of the human roundworm, there are a lot of differences between them. Most of the sea fish eaten in Japan will often harbor the larvae of the anisakis whereas the tuna fish are almost free from the infection problem.
When they are infested, their lavae will parasitize in our stomach for less than week. During the period, however, they are responsible for the severe abdominal pain.
Medical treatment for the anisakis infection remains to be established. The most important thing to be considered is the prevention from the infection. No raw fish frozen for 3 days and thawed, or heated or grilled fish are free from any problems caused by the anisakis nematodes.


要約
 現代日本の若い世代にとって,寄生虫は馴染みが薄い。年配の層には,最早過ぎ去った時代のイメージが濃厚である。せいぜい認識するところ,海外の衛生状態の芳しくないところに出かけ,日本にいる時と同じような気持ちで“生もの”を摂取した場合に感染すると思われがちである。しかし,現実には,現代の日本においても,寄生虫感染は少しも稀でないどころか,日常茶飯事である。お茶とか炊いた米飯では,もちろん問題がないが,おかずの海産魚介類で寄生虫に感染する危険がある。要は,寄生虫に対する認識が大切である。その典型例のひとつに,寄生線虫類に分類されるアニサキスがある。
 本筆者らは,海産魚介類を生食することで激しい急性腹症をもたらす本虫の感染に長い間関心を持ち,その感染源,症状,診療などに関して文献調査を継続してきた。この感染症は日本では昔から存在していたと推定されるが,感染源が多種多様の海産魚介類であることが判明したのは1960年代のことである。日本では刺身を好む人が多いので,特に気をつけねばならない。更に海外で日本食が好評を博している昨今,海外旅行者がよく出かける都市とか日本の都市と姉妹都市関係を結んでいる海外の都市などにおいて,現地の方々も警戒の念を緩めるべきでない。
 アニサキスの成虫は,同じく線虫に属するヒトの回虫(成虫はヒト小腸に寄生)と分類上は近縁で外見的な形態が似ているが違いも多い。海産魚の刺身・寿司などの日常的な生食でアニサキス幼虫の感染がおこり,激しい腹痛などに見舞われる。しかし,決して慌てるべきでない。ヒトの胃腸にも一時的に寄生するが,ヒトはこの寄生虫にとって好適な環境ではなく,その幼虫が人体内で成虫にまで発育することはない。実際には数日から1週間弱程度しか寄生していられない。
 その感染予防のためには,生鮮魚介類に関して言えば凍結融解した食材が望ましい。十分に熱を通したものなら問題はないが,少々酢に浸した程度では感染性は損なわれない。これは,本虫が何日間か胃酸に耐えられることからも想像される。
 症状が出たなら,そのような魚介類の生食を直ちに思い出して速やかに適切な診療を受けることが大切である。残念ながら,アニサキスに対する駆虫薬は未だに開発されていない。ふつうは胃内の虫体なら内視鏡で見つけて摘出することになる。胃腸,とりわけ腸管に寄生しているアニサキスに有効な治療薬の開発は,確かに重要な課題である。しかし,ヒトの胃腸内では長くても1週間しか寄生していられない事実に鑑み,対応の医薬品療法に虫体を殺すのではなくて腹痛を和らげて本虫の自然消滅に期待する選択肢も,地域によっては実際にありうる。
酒たちの来た道 酒造りの文明史②
古賀 邦正
 北半球で誕生し,ヨーロッパで育った主要な醸造酒はワインとビールだ。現代のワインとビールの基本的な製造法を図5-1に示した。ワインはブドウ果実を原料として発酵させた果物の醸造酒であり,ビールは主に大麦麦芽を原料とした穀物の醸造酒だ。果物の糖質は果糖,ブドウ糖,ショ糖であり,酵母がそのまま発酵することができる。一方,穀物の糖質はデンプンであり,酵母によって発酵させるには予めデンプンをブドウ糖や麦芽糖に分解しなければならない。
 ブドウは水不足に耐えることはできるが,厳しい寒さに弱く,日照時間が短いと糖度が上がらず,湿気が多いとカビによる被害を受けやすい。また,収穫した後も長期間の保存には耐えられない。麦は寒冷地に強いし,水不足にも耐えて生育する。収穫後も,乾燥した状態で置いておけば,長期間の保存に耐えることができる。
世界文化遺産ベームスター干拓地「ベームスターチーズ」の生産地を訪ねて
Beemster Polder (Home of Beemster Cheese) : A UNESCO World Heritage
深澤 朋子,坂本 静男
2014年夏,北ホラント州ベームスター干拓地を訪ねた。
 このベームスター干拓地は1609〜1612年に,当時世界経済の中心地として急成長中であったアムステルダムの投資家たちによって造られた最初の大規模干拓地である。果てしなく続くような広い平地に水路が張り巡らされ,風車のある光景はのどかで美しい。この地の牧草地で育った乳牛で作られた「ベームスターチーズ」は有名であり,オランダ王室ご用達の伝統の味となっている。
 今回,この干拓地の酪農家と伝統的な製造方法で上質の生乳から作られるチーズを製造するコノ社を訪問したので紹介する。
テアデノール含有茶がヒトの肥満改善におよぼす影響
鈴木 直子,山本 和雄,河村 傳兵衛,髙良 毅,池谷 翼,渡邉 知佳子,宮崎 均
要旨
 本試験では,ロゼ茶から抽出したテアデノールのヒトにおける肥満改善効果をパイロット試験にて評価した。BMI 25 kg/m2以上で健康状態に問題のない者10名を募集した。摂取前に検査1を,摂取開始6週後に検査2を,12週後に検査3を実施した。摂取期間は12週間であり,試験参加者は,1日あたり1本500 mLのテアデノール含有茶を2本摂取した。検査1と検査3の間,試験参加者はテアデノール含有茶を摂取する他は,それまでの食生活および生活習慣から逸脱しないよう通常通りの生活を送らせた。主要アウトカムはアディポネクチンであり,副次的アウトカムは臍部横断面の脂肪面積,血中脂質,体重,BMI,体脂肪率であった。検査1と検査3の間に,アディポネクチンは有意に増加し (p = 0.047),臍部横断面の全体脂肪面積は有意に減少した (p = 0.041)。本試験の結果よりテアデノール含有茶の継続摂取がアディポネクチンを増加させ,脂肪量を減少させる可能性があると考えられ,ヒトの肥満を改善することが示唆された。
キチンナノファイバーの機能性食品への応用
Applications of chitin nanofibers for functional foods
東 和生,大﨑 智弘,岡本 芳晴,斎本 博之,伊福 伸介
要旨
 近年,キチンの繊維径を細く(10-20nm)した,キチンナノファイバー(キチンNF)の作製が容易に可能となった。キチンNF経口摂取によって,実験的潰瘍性大腸炎の発症抑制が可能であることが明らかとなった。キチンNF経口摂取は大腸でのNuckear factor-κBの活性化を抑制させた。また,キチンNFの表面を脱アセチル化(キトサン化)させた表面脱アセチル化キチンNF経口摂取は,抗肥満効果を有することが実験的肥満モデルにて明らかとなった。特に,表面脱アセチル化キチンNFは体重増加,血中レプチン濃度の上昇並びに肝臓への脂肪滴沈着を抑制させた。これらの結果は,キチンNFあるいは表面脱アセチル化キチンNFが機能性食品として有用である可能性を示している。今後は,ヒトでの臨床試験や作用機序の解明が求められる。
スペクトルイメージングの食品検査への応用
蔦 瑞樹
 食品原料や最終製品に混入する異物は特定の部位,ロット,個体等に局在している場合が多く,「何が」のみならず「どこに」存在するかを検査する必要がある。また,出荷する商品を検査する場合は非破壊で検査を行わなければならず,X線検査装置や金属探知機が多用される。近年,消費者の食品品質に対する要求が高まるにつれ,従来は異物や異常とみなされなかった対象,例えば果実由来の微小な萼・果梗等についてもクレームが来るようになってきた。これらの新たな「異物」,特に生体由来の異物についてはX線検査装置や金属探知機では検知が困難である。
 食品や青果物の検査に用いられている手法の一つに,近赤外分光法や蛍光測定法等のいわゆる「光センシング」手法がある1, 2)。これらの手法は物質固有の光吸収に基づいているため,同じ生体物質でもタンパク質と糖分,水分と油分等を識別することが可能であり,例えば果実の糖度を非破壊かつ高速に推定することが可能である。しかしながら,これらの手法は通常対象の一点のみを計測対象にしており,局在している異物を検出するのは困難である。
 そのため,近赤外分光法や蛍光測定法を画像計測に拡張する「スペクトルイメージング」により,食品中の成分分布を可視化する研究が,近年行われるようになってきた3-6)。本稿では,スペクトルイメージングの概要について述べると共に,筆者らが取り組んできた食品検査への応用事例について紹介する。
ハナビラタケBIO MH-3のがん患者のリンパ球に対する作用
前原 賢一、中島 三博
要旨
 ハナビラタケMH-3(Sparassis crispa)は東京薬科大学の宿前名誉教授,大野教授らによって,動物実験で強力な抗がん作用が確認されている。我々は臨床においても免疫能の維持にハナビラタケMH-3が有効であるかどうかを確認するために,ハナビラタケMH-3摂取におけるリンパ球数の変化,及びNL比(好中球数とリンパ球数との比)の推移を計測した。
 その結果,ハナビラタケMH-3はがん患者の低下しているリンパ球数の増加作用やNL比のバランスを改善することが確認された。また実際にがん細胞の成長を抑制していることが確認された。更にがん患者の腫瘍マーカーに顕著な改善がみられた。
ポリエチレングリコール(PEG)鎖を有する多成分系高分子化合物の有用性
Functionalities of multicomponent polymers with Poly(ethylene glycol) chains for medical and industrial materials.
飯島 道弘
Abstract.
Multicomponent polymers with poly(ethylene glycol)(PEG) chains are very important polymer for various applications, such as medical and industrial applications. PEG has unique properties such as solubility, flexibility of the chains, and high biocompatibility.
Especially, block copolymers and graft copolymers with PEG have become very interested materials for medical and chemical materials, because they can combine different segments within one polymer chain. These amphiphilic polymers form aggregates, micelles, gels and they can modify various surfaces. They can find applications in various fields, especially in biomedical field. The properties of these polymers are affected the length and shapes of polymers, reactivity of functional groups, etc.
In this article, development and utility of these multicomponent polymers with PEG were reported. These PEG derivatives are promising for biomedical materials.


 現在の私たちの生活において,多種多様なニーズを実現するために,更なる材料の高機能化が要求され,精密な構造制御が重要視されている。特に,三大材料である無機,金属,有機材料の他に,複合材料のような他材料との境界領域で使われるものも注目され,用途もこれまでの医療,食品,繊維などのような特定の狭い分野に限らず,他用途に幅広く横断的に関連できる可能性の高いものが重要視されてきている。
 このような素材開発において,目覚ましい発展を遂げている一因に高分子化合物の利用がある。本稿では,機能性材料の開発のカギを握る多成分系高分子化合物,特に医療,製薬,化粧品分野などで注目を集めるポリエチレングリコール(PEG)を有する多成分系高分子化合物の詳細と有用性について述べる。
反社会的行動と脳の栄養
藤田 哲
要旨
 過去15年ほどの研究で,抑鬱,攻撃性,衝動性など反社会的行動が,脳での栄養不足の結果であることが示唆された。わけても油脂に関しては,魚油に多いDHAなどのオメガ-3(n-3)脂肪酸の摂取量が,犯罪などの反社会行動の防止に関わることが,米国の国立健康研究所をはじめ多くの研究結果から示された。魚食の多い日本は殺人その他の犯罪率が世界で最も少ない國である。


"You are what you ate" 「あなたはあなたが食べたものだ」との真理は,古代インドの賢人の言葉であるとされる。人の一生は受精後の母体からの恩恵に始まり,他の生物を食べることでなり立ち,人生は何をどのように食べたかに大きく影響されるはずである。また「健全な精神は健康な身体に宿る」とも言う。そして人生を通じて,無意識下と意識下の肉体と精神の働きの全てを脳が支配している。しかし,脳の非常に高度な作用に,日頃の栄養が影響するとはあまり考えられなかった。
 脳の重量は人の体重の2%強で1.2〜1.4 kgであるが,人が使うエネルギーの約20%を消費している。そこで脳機能の維持には,エネルギー源としての糖分が重要である。しかし脳の正常な機能には,単にエネルギーだけでなく,脳のための種々な栄養素が必要で,栄養素と脳機能との関連が重要であることが分かってきた。つまり「健全な精神はあなたが食べたものの結果」であると言えよう。
 最近のFood Technology誌に,種々の反社会的行為と脳の栄養状態との関連について,興味深い論文が掲載された1)。その概要を紹介するとともに,世界の国々と日本での犯罪,殺人などの不祥事との関連について考察してみた
低水温飼育下でのシロザケ飼料への魚油添加効果
大橋 勝彦,酒本 秀一
著者らはシロザケ稚魚を用いた一連の研究1-7)で淡水での飼育試験,絶食試験,絶食からの回復試験および海水馴致試験と海中飼育試験等を行い,以下の事を明らかにした。
 飼料:同じシロザケ用飼料であってもメーカーの違いによって飼育された魚の体型,飼育成績および体成分組成等が可也異なる。これらの違いは飼料の原材料や栄養バランスの違いによって生じているものと思われる。夫々のシロザケ稚魚生産場に適した飼料を選択して使用すべきであろう。
 飼育成績:魚油を添加した飼料で飼育した方が生残率,成長,飼料効率(増重量×100/給餌量),タンパク質効率(増重量×100/給与タンパク質量)等の飼育成績が良い。更に絶食耐性,絶食からの回復能力,海水への馴致能力も魚油添加区の方が高い。
 餌付け:餌付け時から魚油を添加した飼料を与えると摂餌性が悪く,飼育成績に可也長期間悪影響を及ぼす。餌付け時には魚油無添加の飼料を用いるべきである。3-4日間魚油無添加飼料で餌付けを行った後魚油添加飼料に切り替えれば摂餌不良による悪影響は認められない。能勢ら8)の報告に有る様に餌付け時の魚のエネルギー源は主としてタンパク質であることと関係しているのであろう。シロザケ稚魚では未だ十分に卵黄が吸収,消費されない時期から給餌を開始するのが一般的である。卵黄には高濃度に脂質が含まれている。餌付け時にはまだ魚体の脂質量に余裕が有るので,卵黄脂質の利用を優先させる為に魚油を添加した飼料の摂取を抑制している可能性も考えられる。
立効散の歯科領域への応用について
堀江 憲夫
 現在実践されている東洋医学には,中国伝統医学と西洋医学の両者を融合させようとしている中医学とともに漢方医学が含まれる。漢方医学は中国より伝来した中国の古典医学が,江戸時代より日本で独自の発展をとげたものである。したがって中国古典医学や中医学と同一のものではない。東洋医学と西洋医学の違いは,西洋医学では疾患の個々の症状を解剖学,病理学,生理学を用い分析的にとらえ病名を決定するのに対し,東洋医学では臨床経験をもとに疾患を総合的にとらえ,証を決定し治療方針を定めている。証をみるにあたり,漢方医学では陰陽,虚実,表裏,寒熱,気血水等の概念を基本理論としている1)。明治以降の日本の近代医学は西洋医学を中心に発展してきたため,その基本理論が明らかに異なる漢方医学は片隅に追いやられてきた。西洋薬で求められているエビデンスを漢方薬が提供できなかったことも漢方医学の発展を閉ざしてきたことと言える。
 しかしながら西洋医学の理論では治療できなかった患者が漢方医学の理論により投与された漢方薬で治療に奏功した症例は枚挙にいとまがないこと,また西洋薬だけでは治療に難渋していた疾患の中に漢方薬が目覚ましい効果を発揮するものがあり,漢方薬は再び注目を浴びることとなった。近年製薬会社が特に販売に力を入れている漢方薬は腸管運動亢進作用を有する「大建中湯」,消化管の運動機能を改善する「六君子湯」,認知症における神経の興奮を和らげる「抑肝散」である。最近はがん化学療法に伴って出現する口内炎に効果を発揮している「半夏瀉心湯」もその販売に力が入れられ,口腔疾患を扱うわれわれにも大変興味深い。これらの薬剤ではまた,漢方薬が西洋薬と対峙する上でいつも問われるエビデンスについても蓄積が進んでいる。
酒たちの来た道
酒造りの文明史①
古賀 邦正
酒はいつの時代に誕生したのか,そしてどのように育ってきたのかを考えながら酒を飲むのはなかなか楽しい。この愛すべき飲みものの誕生はけして華やかなものではなかっただろう。ひっそりと生まれたに違いない。しかし,ひとたび誕生した後の足取りは着実であり,しっかりしたものであった。その結果,いつの時代にも絶えることなく存在し続けて今も世界のいたるところで様々な酒が造られ,様々なかたちで人々を楽しませてくれている。時代時代の種々の状況を反映させながら,脈々といろいろな酒が造り続けられてきたのだ。種々の状況とは科学的状況であり,経済的状況であり,環境的状況であり,地政学的状況であり,“なんとしても飲みたい”という人たちの状況だ。こんなことを考えながら飲んでいたら,「そうだ,酒の来た道について学んでみよう」という思いに至った。もとより学びながらの執筆であり,どこまでまとめられるか甚だ心もとないところもあるが,しばらくお付き合いをお願いする次第です。
組織の活性化と人材の育成
Improving the working environment and nurturing human resources :
新たなスタートを迎えるにあたって
At the time of welcoming the new academic year
坂上 宏
Abstract
At the time of welcoming the new academic year, it is very important for us to reconsider why we were born in this world and what we should do for the society. In order to win the competition, we have to cultivate the individuality of ourselves, activate our organization by cooperating with other groups and perform anything that are beneficial to our society.

桜の開花するこの季節は、新しい何かが始まろうとする期待に燃えていることでしょう。この世に生を受けたことは大変尊い。我々は人生に真剣に取り組まなければない。どのようにしたら、自己の能力を最大限に伸ばし、社会に貢献でき、そして、満足の行く人生を送ることができるだろうか?
New Food Industry 2015年 3月号
リン酸カルシウムの物質吸着能を食品分野で活用する
近藤 徹弥,石原 那美
リン酸カルシウム (CAP)はリン酸あるいはピロリン酸のカルシウム塩の総称であり,リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・H2O ),リン酸水素カルシウム(CaHPO4・2H2O,CaHPO4 ),リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2),ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)などがよく知られている。CAPはボーンチャイナのような陶磁器材料,人工骨や人工歯の医療材料,歯磨用基材,飼料,微生物固定化担体などとして広範囲な分野で利用されている。食品分野では,カルシウム強化剤,パンやケーキの品質改良剤 (膨張剤,イーストフード助剤),醸造用の発酵助剤,固結防止剤などに使われている。
 CAPの結晶構造中には,正に荷電しているカルシウムイオン (Cサイト)と負に荷電しているリン酸イオン (Pサイト)が存在している。CAPは,これらのサイト上でのイオン交換反応などにより,電荷を持つ様々な成分を吸着することができる 1, 2)。1956年にTiseliusらがCAPのタンパク質吸着特性を明らかにして以来3),CAPはカラムクロマトグラフィー担体としてタンパク質や核酸などの生体関連物質の分離に広く用いられてきた。さらに,重金属イオン,ウィルス,細菌など,様々な成分の吸着剤としての利用も研究されてきた4-7)。
 前稿では,清酒の潜在的な品質劣化要因であるタンパク質 (滓の原因タンパク質やグルコアミラーゼなどの酵素タンパク質)をCAPにより効果的に除去できることを報告した8)。今回は,溶液中のタンパク質の除去・回収や細菌の除去へのCAPの活用例を紹介する。
スペクトルイメージングの食品検査への応用
蔦 瑞樹
食品原料や最終製品に混入する異物は特定の部位,ロット,個体等に局在している場合が多く,「何が」のみならず「どこに」存在するかを検査する必要がある。また,出荷する商品を検査する場合は非破壊で検査を行わなければならず,X線検査装置や金属探知機が多用される。近年,消費者の食品品質に対する要求が高まるにつれ,従来は異物や異常とみなされなかった対象,例えば果実由来の微小な萼・果梗等についてもクレームが来るようになってきた。これらの新たな「異物」,特に生体由来の異物についてはX線検査装置や金属探知機では検知が困難である。
 食品や青果物の検査に用いられている手法の一つに,近赤外分光法や蛍光測定法等のいわゆる「光センシング」手法がある1, 2)。これらの手法は物質固有の光吸収に基づいているため,同じ生体物質でもタンパク質と糖分,水分と油分等を識別することが可能であり,例えば果実の糖度を非破壊かつ高速に推定することが可能である。しかしながら,これらの手法は通常対象の一点のみを計測対象にしており,局在している異物を検出するのは困難である。
 そのため,近赤外分光法や蛍光測定法を画像計測に拡張する「スペクトルイメージング」により,食品中の成分分布を可視化する研究が,近年行われるようになってきた3-6)。本稿では,スペクトルイメージングの概要について述べると共に,筆者らが取り組んできた食品検査への応用事例について紹介する。
トレハロースによる乳牛の酸化ストレス低減と高品質乳生産技術
佐藤 幹,青木 直人
要旨
 二糖類であるトレハロースは抗酸化活性を持つ物質として知られ,鶏や代用乳などの家畜用飼料添加物としての研究が進められているが,乳牛では摂取した飼料がルーメン内における微生物分解を受けることから,トレハロースの抗酸化活性が生産物である乳に届くことは難しいと考えられていた。本研究では,飼料へのトレハロース添加がルーメン発酵を促進し,乳量を増加させるばかりか,牛乳中の過酸化脂質濃度の低下と抗酸化活性の上昇を示すことを明らかにした。さらに,これらの作用はルーメン内の微生物を介した,これまでにない作用機作によるものと推測された。この結果は,乳牛へのトレハロース給与が付加価値を持つ抗酸化乳の生産に有効であるだけでなく,微生物を介した生体制御などの応用技術としての可能性をも提示するものである。
知っておきたい日本の食文化
その五 和食はどのように発達してきたのか
橋本 直樹
世界に誇ることができる日本の伝統的な食文化,「和食」が世界無形文化遺産としてユネスコに登録された。和食とは明治時代まで日本人が日常に食べていた民族伝統の食事であり,今日,料亭で食べる会席料理はその代表的なものである。町の食堂の刺身定食や焼魚定食,あるいは家庭で作る和風惣菜など,ご飯に,お刺身か焼き魚,人参,牛蒡,里芋などの煮物,ほうれん草や小松菜のお浸し,それに味噌汁とお新香が付く一汁三菜の料理は一般的な和食である。握り鮨,てんぷら,鰻の蒲焼,おでん,そばなどはすべて日本独自の料理であるから和食である。
 和食は日本料理と呼ばれることもある。多くの場合,和食と日本料理は同義語として使われているが,料理人が作る会席料理などは日本料理と呼ばれることが多い。そもそも,和食とか,日本料理という名称を使うようになったのは第二次大戦後のことである。それまで日本人が日常的に食べていた料理を戦後,急速に普及した欧米料理や中華料理と区別するために使われ始めたのである。
体色が異なる3種ニジマスの魚体内カロチノイド分布
酒本 秀一
ニジマスには普通のニジマスとは全く体色の異なるアルビノやコバルトと云われる突然変異体が存在する。
 アルビノは所謂白子で,メラニン色素が欠如した魚である。1956年に長野県で見出され,優性遺伝することが確認されている。養殖場ではそれ程珍しくない頻度で出現する。メラニンを欠くため目は赤く,体表は全体が薄いオレンジ色で,ニジマスの特徴である体側の虹の部分は濃いオレンジ色を呈し,目立つ色をしている。綺麗なのでアルビノを集めて飼育して観光の目玉にしたり,釣り場では特別のニジマスとして取り扱っていたりする。
 コバルトは脳下垂体の異常によってパーマーク(サケ科魚類の体側に見られる楕円状の斑点模様で,幼魚の時のみに存在するもの,成魚になっても存在するものと魚種によって色々である。ニジマスは幼魚の時のみに認められる。)や黒点が出現せず,体色がコバルトブルーを呈する変異体である。出現頻度はアルビノ程高くない。この魚も綺麗であるが,成長が遅くて病気にかかり易いとされているためか,数100gの大きさにまで育つのは稀である。また,生殖腺が発達しないので性成熟はしないと云われている。
 この様に体色が全く違うニジマスのカロチノイド分布は如何なっているのかに興味を持っていたところ,今回アルビノとコバルトの大型個体を調べる機会を得た。両者が普通のニジマスと如何違うかについて魚体内のカロチノイド分布を中心に報告する。
管理栄養士 てるこ先生の家庭の食文化 第2回 きれいな身体づくり
中村 照子
そろそろ春を感じる季節になってきました。私は毎年この時期になると,桜色のスカーフやブラウスで少し早めに季節を先取りして楽しみます。気持が華やいで女性に生まれてよかったなと感じる瞬間です。ビジネス街では男性の颯爽としたスーツ姿も目にする季節です。男性のさりげないシャツ姿も私は大好きです。でも重い上着を脱ぐと・・そう,やっぱり体型が気になってしまいますよね。
 最近は男性,女性にかかわらず多数の人から痩せたいけれど長続きしないと相談されます。話を聞いてみると,無理して極端なダイエット法を試みている人が意外と多いのです。また,リバウンドをしてしまう悩みも良く聞きます。みなさんダイエットに関する知識はたくさんあるはずなのですが,情報が多すぎて混乱しているのかもしれませんね。
 そこで,今回はきれいな身体づくりのために,無理のない私の簡単な実践ダイエット方法をいくつかご紹介しましょう。
人の心理状態を可視化する試み
− 脈波におけるカオス解析から判別する精神疾患患者の特徴と実践における新たな展望 −
三好 恵真子,胡 毓瑜,林 娟,雄山 真弓
心理学は,人の心的過程や行動の予測と制御を目的とする学問であるが,中でも,「生理心理学」は,生体信号に表出される生理的変化から,人の生理・心理状態の推定を行うものである。従来の生理心理学おいて,種々の生体信号(脳波,心電図,心拍間隔,血圧,呼吸,指尖容積脈波など)に関し,様々な手法を用いて解析され,多くの知見が得られてきたが,その大半は,線形理論に基づく解析手法が主流であった。しかしながら,生体信号には非線形的性質が含まれており,これらはカオス(chaos)と呼ばれる非線形的性質により変動することが知られている。
食行動記録システムによる農産物消費の実態把握
大浦 裕二、山本 淳子、小野 史、磯島 昭代
 農産物をはじめとする食品の製造,販売にあたっては,消費の実態やニーズを的確に把握しておくことが不可欠である。しかし,消費者のライフスタイルや価値観が多様化する中で,食品の消費行動は複雑化し,その実態を捉えることが難しくなってきている。
 そこで本稿では,食品の消費実態を詳細に把握するためのWebアプリケーション「食行動記録システム」注1)を紹介するとともに,この「食行動記録システム」を用いた分析例をもとに,複雑な農産物消費の一端を述べる。
ベジタリアン栄養学 歴史の潮流と科学的評価
(第3節 ライフサイクルと特定の集団から見た,ベジタリアン食の適正度)
12章 アスリートに対するベジタリアン食の有用性
ジョアン・サバテ、訳;山路 明俊
古代ギリシャ以来,アスリートやコーチは良い結果を出すためと,競争相手より優勢に成るために特別処方の食事を実践してきました1-4)。伝説的なギリシャのレスラー,Milo of Croton は途方もない肉を食べ,5回のオリンピックで屈服することはありませんでした。(532〜516 B.C.)ローマのグラデュエイターは,肉は彼らをさらに良い戦士にすると信じていて,現在でも,多くのフットボール,バスケットボール,野球の選手には根強い信念があります。1800年代の中期から後期にかけて,ベジタリアンのアスリートは,練習に耐えることを美徳とし,筋肉運動へのエネルギーはたんぱく質の酸化によって生まれるとという当時の普及した考え方とは反対に,植物性食品の優位性を証明しようとしていました3)。ベジタリアン社会はアスリートやサイクリングクラブを作り,メンバーはしばしば長い耐久レースで,肉食の対戦相手より優れていました3)。今日では,トライアスロンのDave Scott, ボディビルダーのBill Pearl, 長距離ランナーのPaavo Numi, テニスプレーヤーのMartina Navratiova, Billy Jean King, オリンピックレスラーのChris Cammpbell, オリンピックフィギャースケーターのSurya Bonalyらのエリートのアスリートは,ベジタリアン食はアスリートが練習を継続するのに適していることを表明し続けています。
“地域密着でキラリと光る企業”
漬物市場にブランドマーケティングを最初に導入した『東海漬物株式会社』
田形 睆作
東海漬物株式会社は昭和16年(1941年)9月に設立,愛知県豊橋市に本社を置き,包装漬物を主体とした製造・販売を営んでいる食品メーカーである。代表的なブランドは最初に経営の柱になった『きゅりのキューちゃん』である。昭和37年(1962年)に発売を開始したが,そのマーケティング手法は当時の漬物業界としては驚くべき手法であった。その方法とは漬物市場に初めてブランドを導入し,かつ,個別の包装をした画期的な商品であった。さらに,広告手法としてはテレビ宣伝を積極的に放映した。
 テレビ宣伝の内容も熟慮され,人気上昇中の坂本九をCMキャラクターに起用し,爆発的に売れた。今年で発売開始から52年になる。まさしくロングヒット商品である。第二の経営の柱になった商品は平成16年に発売された『こくうま』キムチである。『こくうま』の包装は透明プラスティックの箱に入れ,店頭では良く目立ち,商品の内容も分かりやすい。漬物業界でプラスティック箱型容器に入れた草分け的商品である。東海漬物株式会社は常に漬物業界に新風を吹き込み業界をリードする会社としての責任を果たしていると感じる。
伝える心・伝えたいもの
— 雪に晒す 天然角寒天を訪ねて —
宮尾 茂雄
 2013年の春から夏にかけて田子節の故郷,西伊豆の田子や安良里を訪ねた。港の駐車場や浜辺の空き地一面に広げられた天草の天日干しは海の豊かさを感じる光景だった。江戸時代から伊豆は紀伊と並ぶ良質な天草の産地として知られていた。幕末には遠く信州諏訪地方に運ばれ1),農家の冬の副業として始められた寒天作りに使われた。盛夏の太陽に晒される天草を目にして,冬の厳しい寒さを利用した伝統的な凍乾式角寒天製造法を継承している茅野を一度訪れたいと思った。
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