巻頭論文
交際費課税の本質と今後の方向
成蹊大学名誉教授
武田 昌輔
交際費課税について、事業との関連性や、どこまでが不相当に高額な支出であるかにより、課税対象になるかならないか争われることがよくある。その区分の曖昧さが指摘されるところだが、こうした交際費課税のあり方は「平成17年度税制改正大綱」でも検討事項に挙げられ、課税の明確化が求められている。交際費課税の指摘される問題点と、改正の方向について、交際費課税の成立の事情から検討していただく。
税務論文
興銀事件最高裁判決から読み解く
貸倒損失の認定における社会通念基準
明治学院大学教授
渡辺 充
昨年末、最高裁は、旧日本興業銀行に対する課税処分の取消しを命ずる逆転判決を下した。債務者側の事情のみならず、債権者の事情も踏まえて社会通念に従って判断すべきとした判決は、損金算入を極めて限定的にしてきた課税実務に対しどの程度影響を及ぼすか。本稿では、筆者が関わった具体的適用例を紹介しつつ、社会通念の意味を分析・検討する。
消費税仕入税額控除における帳簿等の「保存」の意義
立命館大学教授
三木 義一
税務調査に際して帳簿や請求書の提示を拒否することは、仕入税額控除制度における「帳簿等の保存要件」の不備に当たるか否か。これまで、多くの事例で争われてきたこの「帳簿不提示訴訟」に関し、最高裁は昨年12月に初判断を示し、国側勝訴を確定した。本稿では、「帳簿の不提示」と「保存」の関係を従来の学説からひも解き、今回の二つの最高裁判決を評釈するとともに、租税法律主義の観点から批判を展開する。
事例研究
受贈財産の譲渡における取得費の範囲
~ゴルフ会員権の名義書換料に係る最高裁勝訴判決を基として~
税理士
右山 昌一郎
受贈ゴルフ会員権を譲渡したケースで、受贈時に支出した名義書換手数料が取得費になるか否かをめぐって争われた事件で、最高裁判決が取得費に当たるとした納税者逆転勝訴判決に関して、税理士補佐人である著者が、事件の経緯の説明や問題点の所在、そして当該判決をめぐる評釈を行う。本判決を受けて、国税庁は従前の取扱いを変更している。上告申立書、最高裁判決、国税庁による取扱変更文書など、関係資料も盛り込んでいる。
特集/これからの中小企業の人材政策と税務の留意点
最近、企業では社員に代えて、派遣社員やパート等を活用することが多くなっている。企業側の固定費を抑え、経営環境の変化にも即応するためである。だが、一方で、熟練者の定年等で失われることが危惧される企業独自の技術の伝承のためにも、人材の確保・育成の必要がある。中小企業に求められる人材政策と税務留意点を検討する。
中小企業の人材状況とこれからの人材政策
中小企業診断士・経済評論家
荒 和雄
1.雇用市場は、不況の長期化の中でも市場優先の原則が生きている。採る側もきちんとした人事政策採用方針を確立したい。
2.労働形態も多様化している今日、社員の半数以上が非社員になる日も遠くない。彼らが管理職、幹部として働ける環境、勤務体制が大切だ。
3.採用は、社長の最大の仕事。陣頭に立って募集要項を作り、自ら面接に立ち会うことが大事だ。
<人材戦略とその効果>
派遣社員・契約社員・パートの活用
税理士
三上 広美
1.パート社員、契約社員、派遣社員の活用には、それぞれメリット、デメリットがある。
2.パート社員は、短時間労働や短期間労働が可能なので、仕事量の変動に応じた人員確保が可能となる。
3.契約社員とは、契約書で必要とされる知識、能力、業績の水準を明示し、担当業務を特定しておく。
4.派遣社員は直接雇用関係がないので、企業秩序維持について直接誓約書等で同意をとることはできない。
5.パート社員については、勤務日数、雇用期間によって給与所得の源泉徴収税額表の適用欄が変わる。
高齢者・退職者の活用
税理士・公認会計士
三上 清隆
1.高年齢者雇用安定法の改正により65歳までの継続雇用が義務付けられた。
2.高齢者の活用はこれからの企業経営にとって避けられない。
3.再雇用の場合の賃金額の設定に当たっては、公的給付との併用を重視して設定している例が多い。
4.定年延長奨励金や高年齢者雇用確保助成金は支給決定を受けた時点で収益計上をすればよいが、職業訓練費等の経費を補てんするための給付金は、職業訓練等のあった時点で支給を受けるべき金額を見積計上する必要がある。
外国人の活用
税理士
川村 紳悦
1.外国人の雇用に当たっては、関係法令を遵守しなければならない。
2.外国人労働者にも日本人と同様の労働法・社会保険が適用される。
3.給与等の源泉徴収は「居住者」・「非居住者」の区分により異なる。
4.外国人雇用に関する知識を熟知することは優秀な人材確保につながる。
社内人材の活性化策と組織づくり
税理士
加藤 武人
1.人的配置では、人材の育成とその有効活用という視点で捉え、業績評価システムによりその効果を確実なものとする。
2.グループ制等組織づくりでは、組織を機能別・事業部別・カンパニー制に分類し、おのおの効果がいずれにあるかを明らかにした。
3.事業部別・分社化では、自律性の欠如が高収益部門に影響を与えていないかどうかに触れている。
4.外部人材の利用・委託では、アウトソーシングを行うに当たってのポイントを明らかにした。
軽量化を目指した労務戦略と税務
木全 美千男
1.リストラは企業存続の重要な戦略である。
2.リストラは経営計画に基づき、手順を踏むこと。
3.出向・転籍の実行に当たり、労働法や税務通達を遵守すること。
4.退職金制度の変更は労働条件の不利益変更に注意し、メリット・デメリットを検討する。
役員報酬の支払いと役員構成の見直し
鈴木 雅博
1.中小法人における役員報酬の決定基準は、税務基準だけでなく経営基準も十分に考慮する。
2.伝統的な日本型の終身雇用体制に早く見切りをつけ、業績連動型報酬制度への移行の可能性を探る。
3.役員報酬の税務対応につき裁判例も検討する。
4.「会社法制の現代化」の動向を注視し、変化にはすぐに対応できる準備をする。
<人材の雇用・育成策>
中小企業の人材獲得と採用活動の税務
税理士・社会保険労務士
安田 大
1.新規学卒者採用等に関連する企業PR活動等の費用は、原則として損金算入されるが、損金算入時期に気をつける必要がある。
2.会社訪問等の費用については、交際費等に該当するものがないか確認する必要がある。
3.紹介予定派遣制度が普及しつつあるが、派遣会社に対して支払う費用は、損金に算入されると同時に、消費税の仕入税額控除の対象となる。
4.ヘッドハンティング会社への紹介手数料は損金算入されるが、個人的な紹介料については、慎重に取り扱う必要がある。
5.ヘッドハンティング等によって新たに社員となる者に支払う支度金等については、所得税の課税関係に注意する必要がある。
優秀な人材を残す・活かす社内人事・労働条件の設定
税理士・社会保険労務士
中川 幸治
1.就業規則を整備し、労働者との権利・義務関係を明確にすることは、トラブルを防ぐと同時に、優秀な人材の育成・定着など人材政策のためにも不可欠である。
2.人事管理規程にはいくつかの種類があるが、給与関係の規程から「業績連動型賞与」「発明報奨金」、退職金関係の規程から「前払退職金」「中小企業退職金共済制度」をピックアップして解説した。
3.本文では特に触れていないが、定年延長や育児・介護休業に関する法改正に伴い、関連する諸規程についても整備が必要と思われる。
技術を伝承・発展する人材の育成・向上策と税務
税理士・公認会計士
立野 晴朗
1.高度成長期を支えてきた団塊世代の引退時期を控えて、社会基盤を構成する技術・技能の伝承問題がにわかにクローズアップされている。
2.効率化・標準化のためのマニュアル等によるOFFJTマネジメント中心の現状に対して、今後は「コアスキルワーカー」による「心」の伝承に価値を見出していくことが望まれる。
3.日本企業の弱点といわれている管理職の技能に対しては、個人的スキルの向上のみならず、企業文化の醸成の観点から経営者のDNAを刷り込むための動的な伝承活動が不可欠である。
4.暗黙知を中心とする知識を通じて個人と組織の相互作用が繰り返されて知の再生産が促進される。そのための仕組み・経営手法としてのナレッジマネジメントを理解し活用することが必要とされている。
5.経済的評価のサイクルの弊害が露呈された成果主義経営の思想とは別に、「仕事の報酬は次の仕事」、という内発的動機付けを志向した人材教育開発計画を策定し効果的に実施するため、人材投資促進税制を十分に活用し得るスキームの検討が急務である。
人材投資促進税制を活かした中小企業の人材投資・育成策
税理士・公認会計士
徳田 孝司
1.教育訓練費のうち税制適格の支出額が増加した場合、法人税から一定額を控除できる。
2.3年間の時限措置のため、向こう3年間の利益計画を踏まえ効率的な教育訓練費を支出する必要がある。
3.法人税額の10%を限度とするため、法人税額が少額な企業は適用メリットが少ない。
4.対象となる教育訓練費は外部支出したものとなるため、従来の教育訓練費を見直す必要がある。
5.補助科目の設定等を含め、会計処理は税制適格教育訓練費を別途把握する必要がある。
人材政策に活用できる補助金・助成金と税務
税理士
金子 寿一
1.助成対象となるべき要件の詳細を確認する。
2.助成対象・助成額も刻々と改定されるので、事前確認が必要である。
3.手続機関に「認定」を受けられるためのアドバイスを受ける。
4.従業員等が「給与課税」の適用を受けないよう計画する。
通則法実務
従業員・税理士等による不正行為と責任の帰属をめぐる問題
近畿大学教授・税理士・公認会計士
八ツ尾 順一
納税者である個人・法人に勤める従業員や関与税理士が売上除外等の不正を行い、結果的に過少申告・無申告になった場合、その「隠ぺい・仮装行為」、「偽りその他不正の行為」の責任は納税者に及ぶのであろうか。これについて争われた訴訟は数多く、判決は「納税者に責任あり」とする立場を取っているものがほとんどだが、従業員等の職務内容や関与の程度などにより、納税者の主張が認められた事例もある。本稿では、これまでの裁決例・判例を分析することで、納税者の責任が及ぶ範囲とその分岐点を探っていく。
法人税実務
中小会社の合併・営業譲渡等における消費税・留保金課税の留意点
税理士
清水 謙一
企業の再編・再生の一環として合併や営業譲渡等が行われることが多くなってきたが組織再編については、法人税法の適格要件や合併比率の算定、営業権の評価等多くの事項の検討と作業が必要な他、スキームの骨格づくりに注意が集まるが、実行上の落とし穴になるのが、消費税と留保金課税の取扱いだ。親会社が簡易課税選択だと、合併後もそのまま簡易課税の適用がいきていたり、資産の譲渡が多いために合併した事業年度で課税売上割合が大きく下がったりする。また、合併により自己資本比率が良くなり留保金課税の停止措置ができなくなることもあり、これら合併等に関連して起こりがちな税務留意点を示す。
複合的機械設備の償却・特例適用をめぐる税務判断
税理士
川端 雅彦
機械設備等の減価償却資産は、物理的な1単位を基準に償却を行うのではなく、その用途、購入目的、使用状況等を総合的に勘案した上で、一つの単位が把握される。いわゆる「総合償却資産」といわれるものだ。この総合償却資産について、耐用年数の設定や除却時の処理等の問題だけでなく、少額減価償却資産の特例やIT税制など、各種特例を適用する際の判断にもさまざまな疑問が生じている。本稿では、実際の判例や文書回答事例を紹介しながら、複合的機械設備に関する実務処理のポイントを探っていく。
会社の税務
建物の取得で注意したい附属設備の区分とその判定
税理士
矢野馬 通永
法人又は個人が業務用の建物を新築もしくは購入した場合、減価償却の実務として当該建物の内訳を種類ごとに分類し、その種類の異なるごとに減価償却の計算を適用することとなる。中古の建物では、その契約書等において建物と建物附属設備の内訳が明らかでない場合が多いため、その分類には困難を伴うケースが多いが、合理的な方法で区分することが要求される。国税不服審判所の裁決例を交え、合理的と思われる分類方法を検証する。
相続対策
生命保険を利用した生前贈与対策の新傾向とその留意点
税理士
土屋 清人
4月にペイオフが全面解禁となるが、そのリスクを避けるために、資産の組替えが求められている。そこで注目されるのが終身保険。始めに父母・祖父母が契約者になったものを、子どもや孫に精算課税を利用するなどして贈与することにより、より大きな資産シフトが可能となる。贈与を受けた子ども達は、契約者貸付制度を利用することで担保なしに融資が受けられる。この資産のペイオフ対策~世代間シフトという新しい流れを探る。
生産緑地を有する農家の相続対策
税理士
下地 盛栄
農地に係る相続・贈与税の納税猶予制度は、三大都市圏とその他の地域で異なる。三大都市圏では、特定市街化区域農地は、納税猶予の対象から除外されているが、生産緑地地区指定を受けた農地については、終身営農等の厳しい条件のもとに納税猶予が認められる。生産緑地を相続財産に含む農家は都市型農家でかなりの数になるが、生産緑地を相続した場合相続人が終生営農しなければならないことから、農業後継者がいるか、営農をできるかが相続時の判断として重要になる。営農できなければ、死亡を原因とした買い取り申請をするが、実際に買取られるには時間と手間がかなりかかる。さまざまな相続の形があり、営農を続けるために、営農ヘルパー制度を活用したり、買取請求の間に農地転用の届出をし売却をしたりとケースによりさまざまな相続税の対策が考えられる。
難問事例
内縁の妻が受け取った生命保険
税理士
山田 俊一
税理士会の相談室などによせられた税理士等プロからの相談について回答した例を題材に、現実世界の中で表われた税法適用の判断が難しい事例について、そこにある問題点と解決の方法を、税法ばかりでなく民法、商法の考え方、裁判例などを基に、検討していくもの。隔月掲載の第1回。
今回は,離婚状態にあり内縁の妻がある男の相続で、生命保険金があり契約書の受取人名義が戸籍上の妻であるが、本人は実の姉に内縁の妻に渡すように言っており実際内縁の妻に渡った場合の税務処理について検討した。
利益計画
メガネショップのモデル利益計画
中小企業診断士
平村 一紀
大手チェーンによる出店攻勢、安売り店の増加などメガネショップを取り巻く環境は大きく変化しており、中小店は特徴ある店作りを実現しない限り、生き残りは難しくなってきている。本稿では、地域商店街に立地する老舗店をモデルに利益計画を検討する。
ポイント・オブ・ビュー
西村ときわ法律事務所 弁護士 岩倉正和 氏に聞く
税理士事務所みてある記
池田陽介税理士事務所(関東信越税理士会西川口支部)
好調関与先にはワケがある!
ミュージックセキュリティーズ(株)(東京都港区)/吉田恵子 税理士(東京税理士会芝支部)
クローズアップ税務争訟
「酒類販売業における営業権の譲受日」上西左大信
クマオーの消費税トラブル・バスター
「建設仮勘定は控除できる?」熊王征秀
法律問題ワンポイント・レクチャー
「同族会社株式を特定の相続人に優先的に相続させるには?」服部弘
金融機関との上手な付合い方 実践編
「金融機関は決算書のココを見る!」甲賀伸彦
新時代の中小企業会計
「中小企業が税効果会計を適用する意義」長岡勝美
実務の焦点
「公募株式投資信託に係る税務」森部章
「取引相場のない株式に係る営業権の評価」杉山一紀
税務・会計相談コーナー
「相続税の更正の請求の特例(死後認知の場合)」(資産税関係)/伊藤正彦
「ストック・オプションの会計処理」(会計関係)/古内和明
ケース・スタディ 多税目取引の落とし穴~税目違えば、扱い変わる!
私のKeyword/植山純子
税理士の休日/峰岸恵子
別冊付録●平成17年度所得税法等の一部を改正する法律案・新旧対照表
巻末付録●税務情報(有限責任事業組合契約に関する法律案・ほか)
目次
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