巻頭論文
問われる減価償却制度の意義と今後のあり方
税制研究会幹事・前平成帝京大学教授 藤野信雄
減価償却のあり方が今、問われている。情報分野を筆頭に科学技術は総じて日進月歩にある中で、税法の減価償却制度だけが旧態依然のまま取り残されている感がある。実状に見合った改正を望む声は寄せてはかえす波のように年々経済界を中心に挙がっては消えてきたが、経済産業省が今年、固定資産の取得価額の全額を償却することを認める「100%減価償却」を要望するに至り、いよいよ潮時を迎えたといえよう。減価償却制度の改正すべき点、今後のあり方を検証する。
税務論文
違法所得に係る支出の経費性の認定
明治大学教授 川田剛
窃盗、強盗、横領詐欺、脅迫等の違法な行為による取得があった場合、税法では違法所得も担税力を有することから、課税対象となるとする判例学説で解釈されている。ところが、違法な行為により得た所得に係る支出については、控除を認めるべきとする説と控除を認めるべきでないとする説がある。最近の判例では、脱税協力金や仮装経理の見返り謝礼について経費性を否認する判例が出ている。しかし、脱税協力者の従業員への賞与の損金性や、交際費的な要素のあるみかじめ料などその射程距離や区分は明確でない事が多い。
問われる環境税の意義と必要性
日本大学教授
立川正三郎
地球温暖化防止京都会議で採択された京都議定書で、日本は温室効果ガスの排出を基準年(1900年)の6%減を2012年までに実現することが義務づけられた。環境省は、目標達成に向けて、さらに削減のスピードを進めなければならないが、そのため環境税を導入することを提唱し、10月25日その具体案を示した。ガソリン、LLP、灯油等燃料の精製段階と、消費につき課税をすることを提案している。その理由にエネルギーの代替や技術改良、温暖化対策の税収を上げているが、これらの効果があるか、厳密に検証してみると疑問が残る。さらに、既存エネルギー諸税との重複もあり間接税全体の体系の立直しが必要とされる。間接税としては、消費税の税率アップが議論されているためその動向も見る必要がある。
事例研究
簡易課税の業種区分をめぐる最近の問題点
税理士
橋本守次
消費税簡易課税制度のみなし仕入率の適用においての業種区分で、歯科技工士が「製造業」か、「サービス業」かが争われた。課税当局の主張は、簡易課税適用上の業種区分は、おおむね日本標準産業分類を基礎として「サービス業」として判断するというものだが、この裁判で、名古屋地裁の加藤裁判長は、「日本語の通常の用語例によって判断すべきである」として「製造業」とした。業種区分について法令等による制度をみて、さらにこれまでの争いを検討したうえ、この裁判例の意義を確認するとともに、混乱の多い業種区分について提言をする。
特集/役員報酬・賞与・退職金の新傾向と税務問題
" CEO、CFO、執行役員等の新たな形態の役員が登場し、また業績・株価に連動した役員報酬・賞与がみられるなど、役員と役員費用をめぐる社会的な位置付けが流動化しているものの、税制は旧態依然の硬直化した取扱いを続けている。すなわち、役員費用をめぐる税務署のチェックは厳しく、役員報酬や退職金の過大認定、賞与認定、みなし役員に関する否認事例は跡を絶たず、最新の注意が求められる。
そこで、本特集では、役員報酬・賞与をめぐる最新動向を踏まえた上で、役員に関する過去の判例・裁決例を紐解き、税務トラブルの未然防止策を検討していく。
新形態の役員の登場と業績連動型役員報酬の支給
税理士・椙山女学園大教授 林仲宣
1.新会社法は、役員の定義を明確に定めているが、業績連動型役員報酬の対象となる役員は、取締役であることに変更はない。
2.社外取締役は、非常勤であっても取締役としての責任はあるから、その責任に対する報酬の支給は当然といえるが、このことは中小企業であっても同様である。
3.執行役員は、経営に関わる意思決定を行う取締役会の決議に基づき業務を執行する代表取締役等の指揮監督の下で、事業の執行を専ら行うことが職務であるから、経営に参画する立場にはないので、みなし役員と認定されるケースは少ない。
4.新会社法は、不確定金額の報酬や非金銭的報酬に関する平成14年改正商法を踏襲しているが、役員報酬と同様に役員賞与を株主総会の決議という規制の対象としている。
5.業績連動型報酬の損金算入は、役員賞与を、全額無条件で損金算入を容認することで可能になると考えるが、今後の処理方法については税制改正を注目したい。
役員賞与の費用処理をめぐる会計の新動向
神戸大学教授 桜井久勝
1.役員賞与は伝統的に利益処分方式で会計処理されてきたが、新会社法の施行後は費用処理に一本化されようとしている。
2.費用処理方式のもとでは、決算期末に次の株主総会で承認を得て支給される役員賞与の金額を見積もって、役員賞与引当金を設定し、引当金繰入額を費用として損益計算書に計上する。
3.新会社法で役員報酬と役員賞与が同様の手続で決定され、また両者とも費用処理を求める会計基準の出現は、役員賞与の損金不算入規定の再検討の論拠となる。
会計参与の就任と報酬の決定
税理士 上西左大信
1.会計参与は、会計法上の役員であり、法人税法上も役員となる見込みである。
2.会計参与は、使用人兼務役員やみなし役員には該当しない。
3.会計参与の報酬は、職務遂行の程度等に応じて支払うのではなく、定時定額に支払うべきである。
4.会計参与の報酬は、その職務の範囲・深度等を総合的に勘案して当事者間で合意された金額であるから、過大役員報酬が認定されることは稀であろう。
5.顧問税理士報酬と会計参与報酬は、それぞれの金額を独自に算定すべきである。
役員報酬・退職金の過大認定
税理士 福島基
1.過大報酬の認定基準は実質基準、形式基準の二つがある。
2.役員の職務内容に実体がない場合は、役員報酬の対価性がないので全額損金不算入となる。
3.株主総会で役員報酬の総額を決議し、変更がない場合は、その決議が有効なものとして次年度以降、引き継がれるので注意する必要がある。
4.役員の職務内容等の事実認定を有利に展開するために、日常から細かな資料、証言等を収集・保存する必要がある。
役員報酬・退職金の未払い・後払い
税理士 山元俊一
1.役員報酬の損金性の要件については、定時・定額支給が原則となる。
2.役員報酬については、年俸制支給の場合、処理の仕方によっては役員賞与とされることもある。
3.役員報酬・役員退職給与については株主総会の承認等により支給をするに当たり、その適正な手続が求められる。
4.役員報酬・役員退職金ともに経営上の合理的理由のない租税回避目的の未払計上は否認される。
役員の死亡に係る弔慰金の支給
税理士 野中孝男
1.弔慰金の支給額については,裁決・判決上では相続税法の弔慰金通達が援用されている事案がほとんどであるが,労働基準法の遺族補償の規定とともにこの相続税法基本通達の存在をその根拠としている。
2.労働法の分野における判例及び行政解釈では,業務上の死亡かどうかの判断は業務遂行性と業務起因性により行われるが,相続税の取扱いにおいてもこれに準拠して行う。
3.弔慰金を退職慰労金と併せて支給する場合,退職慰労金と弔慰金のそれぞれの規程により,区分をして支給すべきであると考える。
分掌変更による退職金の支給
税理士 玉ノ井孝一
1.役員の分掌変更等による退職金の打切り支給について、役員退職給与として損金算入が認められるためには、当該役員が実質的に退職したのと同様の事情にならなければならない
2.分掌変更後の報酬が必ずしも変更前の50%以下になる必要はないが、報酬が激減しない場合には、その分の報酬について税務上注意が必要になる。
3.役員の分掌変更等に係る証拠資料については、その時期が明確に分かる資料を残しておくべきである。
4.原則として、分掌変更等による役員退職金のうち未払いのものは損金算入が認められない。
役員への経済的利益の付与と賞与認定
税理士 苅米裕
1.課税サイドによる経済的利益の認定に対して、一時所得に該当する旨の余地はない。
2.対価性のない役員の親族への金銭の交付は、寄付金とはならず、役員賞与と認定される。
3.嗜好性が強いと思われるクルーザーやスポーツカーは、法人の事業用資産として認められる余地があるか。
4.役員と共に海外出張に同伴した親族に対する旅費は、役員賞与と認定される危険性が大きい。
5.豪華慰安旅行の賞与認定と不参加者に対して支給した金銭の参加者に対する影響を検討する。
みなし役員の認定
税理士 藤曲武美
1.経営に従事しているかどうかは、事実認定の問題であるが、重要事項等の決定権に関与しているかどうかが重要な判断基準と考えられる。
2.執行役員の税務上の取扱いについては、対立する2説がある点を考慮する必要がある。
3.法人税法上の「法人の経営に従事」という概念と執行役員との関係を個別的、具体的に検討することが重要である。
役員へのストック・オプションの付与
税理士・公認会計士 佐藤正樹
1.ストック・オプションの課税について、平成13年の商法改正後、所得税においても個人の課税タイミング・所得区分が明確にされている。
2.役員への無償のストック・オプションは、原則的に付与時であるが、株主総会の特別決議を経れば、ケイン離隔定時の課税となる。
3.税制適格ストック・オプションは、権利行使により取得した株式の売却時課税となる。
源泉税実務
Q&A 平成17年度分年末調整の実務ポイント
税理士
三好毅
12月といえば税理士事務所は年末調整の対応に大わらわだが、今年分の改正点と通常の実務の留意点をチェックするのが本稿。改正点では、老年者控除の廃止や、国民年金の保険料に係る添付資料関係の改正点を解説する。また、一般的な実務では、住宅ローン控除等のポイントを示す。
所得税実務
事例から探る 専従者給与をめぐるトラブル回避策
税理士
久保田和子
専従者給与に係る必要経費の特例を受けるには、その支給額や職務の内容等を記載した書類を税務署長に事前に届けることが求められている。ところが、この青色専従者給与の支給をめぐっては、支給の多寡、職務内容の実態等から税務否認される場合が多く、審査請求さらには訴訟にまで発展することが多い。そこで、青色専従者給与の支給をめぐって税務トラブルに発展した否認事例からトラブル回避策を検討する。
相続等による取得資産に係る付随費用の処理をめぐる税務
税理士 奥田周年
税理士 渡邉正則
今年2月1日の最高裁判決で、「贈与により取得したゴルフ会員権を譲渡する際、名義書換料は取得費に算入できる」という判決が下された。これを受けて国税庁は、質疑応答により過去5年内の同様の費用は更正の請求に応じる旨公表し、さらに所得税基本通達の該当部分を改正・新設した。相続・遺贈・贈与で取得した財産の付随費用をめぐっては、今後の実務に充分注意しなければならない。そこで本稿では、これら取扱いの改正ポイントを整理・解説し、実務上の留意点を検討していく。
資産税実務
建物建設中の相続発生と評価をめぐる問題点
税理士
齊籐忠彦
建物の建築中に相続が発生した場合は、その建物の建築にかかった費用現価の70%で評価することとされているが、この評価額は建物完成後の固定資産税評価額よりも高くなるケースが多く、トラブルのもととなっている。本稿では、建築中の家屋の評価について若干の考察をするとともに、相続税評価の実務において迷いがちな小規模宅地特例の適用や貸家建付地の適用等について整理する。
特例適用者の死亡に伴う相続人による特例の引継ぎと留意点
税理士
四方田彰
資産税関係の申告を行う場合,さまざまな特例を適用するケースが多い。しかし,特例の適用を予定していた者が,特例適用を行う前に亡くなってしまった場合や,たとえ申告後に死亡しても相続人が特例適用をできない場合もある。また,買換特例や小規模宅地など,申告後要件が付されているものも多く,相続人による特例の引継ぎを認める場合,注意すべき点は多岐にわたる。そこで、本稿では、特例適用(予定)者の死亡により、相続人が当該特例を引き継ぐ際の要件を整理し、留意点をまとめる。
消費税実務
委託販売・手数料収入が多い場合の課税計算上の留意点
税理士
清水謙一
委託販売は、中古品、書籍、化粧品などさまざまな商品で行われ最近はインターネットを利用した委託販売が多い。また、広告の取次やパック旅行の販売を行って手数料を収受する販売形態も委託販売の一形態といえる。こうした、委託料・手数料収入が多い業種で問題となるのが、消費税の課税標準の計算において課税売上に計上すべき金額で、総額とするかあるいは手数料に相当する純額にするか、と言う点。課税上は、委託販売について、通達で示しており、総額だけでなく、委託販売等のすべてにおいて手数料の純額だけを計上しているときは、純額での消費税計算を認めている。注意しなければならないのは、一旦純額で処理したなら事業者免税点の判定や簡易課税制度の適用の判定も同様の基準でしなければならないし、総額で行えば総額で免税点・簡易課税等の判断をしなければならない。
難問事例
合併無効判決の遡及効と課税関係
税理士
山田俊一
甲株式会社は、乙有限会社を吸収合併した。吸収合併に際し、乙社出資者への甲社の株式の交付、乙社の清算をし、乙社の出資者はみなし配当に関する確定申告をした。ところが、これらの手続のあと、合併に反対していた乙社取締役の一人が合併を無効とする訴訟を提起し、裁判で勝訴した。合併は無効とする判決が下され、乙社の回復登記がされたが、判決以前に行った、乙社の清算所得に関する課税、乙社出資者の確定申告は、どうなるであろうか。
業種別税務
中古車販売業の税務と経営改善指導
税理士
矢野馬通永
現在、我が国の中古車市場が活況を呈している。その要因として、輸出が堅調という理由が挙げられるが、国内の需要ではネットオークションでの売買など、市場の変化も見られる。こうした状況の中で、中古車販売店は、競合他社と比べていかに経営改善を図る必要があろうか。また、税務では、自動車リサイクル法の施行により、関係費用の会計処理・税務処理が必要になっており、配慮しなければならない点も多い。
利益計画
旅館・民宿業のモデル利益計画
税理士・ITコーディネータ
崎山強
" 近年、予断を許さない景気動向や交通の利便さもあって、国内旅行の簡易化が進んでいる。また、「団体から個人へ」という流れや、インターネットによる旅行手配も進むなど、消費者動向が大きく変わりつつある。
本稿では、ここ数年、団体客が激減し、少人数旅行客が過半数を占めるようになった民宿をモデルに、近隣の名所や自然環境を幅広く取り込んだ観光の拠点となる宿づくりを目指すための戦略を提示する。"
連載
◆ポイント・オブ・ビュー
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 渡辺裕泰 氏に聞く
◆税理士事務所みてある記
中戸勝 税理士事務所(埼玉県入間市)
◆好調関与先にはワケがある!
(株)サンフリード (長崎県長崎市)/中込重秋 税理士(九州北部税理士会長崎支部)
◆クローズアップ税務争訟
企業組合の出資の評価/千田喜造
◆クマオーの消費税トラブル・バスター
軽油引取税にも課税される!?/熊王征秀
◆法律問題ワンポイント・レクチャー
滞納賃料を保証人に対して請求する場合の留意点/服部弘
◆金融機関との上手な付合い方 実践編
会計情報は、経営意思決定のためにある!/甲賀伸彦
◆新時代の中小企業会計 中小企業会計指針編
(3) 金銭債権と貸倒損失・貸倒引当金/長岡勝美
◆実務の焦点
LLPに係る消費税の問題点/在原一憲
社会保険料に係る罰金等と税務/塩島好文
◆税務・会計相談コーナー
「アスベストの除去に係る費用の税務取扱い」(法人税関係)/轟木洋二
「収用の特例と軽減税率の特例との併用適用」(資産税関係)/伊藤正彦
「中小企業会計指針における固定資産の会計処理」(会計関係)/西田俊之
◆ケース・スタディ 多税目取引の落とし穴~税目違えば、扱い変わる!
◆私のKeyword/森潤一
◆税理士の休日/三輪厚二
◆巻末付録●税務情報
◆類似業種目別株価一覧 平成17年7,8月分・ほか
別冊付録Ⅰ
月刊「税理」平成17年総索引
別冊付録Ⅱ
租税判例の回顧(平成16年下半期)
目次
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