■月刊フーガ 2009年1月号
大空を彩る花火。夜空に大輪を描く様はなんと人を昂揚させることだろう。花火を見上げるとき、ただその美しさに魅せられ、心が弾むばかりだが、その花火を作るために花火師がどれほど命を削っているか。
「人が美を感じるものは、頭と体の限界まで、犠牲を捧げたところに生まれる」と誰かが言っていたのを思い出すが、花火師の仕事はまさに頭と体を限界まで使い果たしているように思う。
花火師の仕事の醍醐味はなんであるか、足利の老舗、須永花火の田島浩氏を取材した。
地上何百メートルで開き、何百メートルの大きさになり、残火がどこまで伸びるか、花火はすべて緻密な計算がされている。そしてその花火を作るのは、人だ。大輪が美しく花開くかは人間の手作業にすべてゆだねられている。
その仕事には危険がともなう。取材中、田島さんの口から何度、「安全に」という言葉が出てきただろう。よい花火とはどういうものか、という質問にすら田島さんはまず「安全であること」をあげた。
私は花火を見ながら危険を感じたことがない。いつも心を満たすのは、感動や喜びばかりで、そこに死の恐怖を感じたことはない。しかし考えてみれば当たり前だが、花火は火薬を爆発させているのだ。事実、花火の歴史をみると、美しい花火を作るために花火師たちは危険な火薬を作ることも厭わず、多くの命が失われてきた。
爆発すれば人の体なんて簡単に吹っ飛んでしまう、その火薬の恐ろしさを誰よりも花火師は感じている。「火薬はきちんと扱えば危なくない」と言うが、しかしその安全性を確保できるかどうかは、人間の行う手作業のひとつひとつにかかっており、その危うさを常に田島さんは自分に、若い花火師たちに喚起している。
緻密で危険で身心を酷使する仕事だが、「お客さんの歓声が聞こえると、これで死んでもいいって、そのプレッシャーが大きな喜びになるんです」と田島さんは言う。
思えば大空を舞台に、一瞬にして数万人を感動させることができる芸術は花火のほかにない。ここに花火師、田島浩の仕事をお伝えしたい。
●企画・構成・取材・文/青木和子
●レイアウトデザイン/都竹富美枝
●写真/渡辺 幸宏
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