目次
やぶがらし
野坂勇作 作
■内容のご紹介
ヤブガラシは植え込みに紛れ込み、伸びていくことができる「雑草」です。繁殖力が強く、いちど定着するとなかなか駆除は出来ません。
嫌われることの多いヤブガラシですが、可憐な花をいくつも咲かせて、その蜜で多くの昆虫を養います。
駆除しようとしても、地中に根が残っている限りまた伸びます。ヤブガラシは、嫌われても強く生きる人生のお手本のような植物です。
■編集部より
ヤブガラシは植え込みの中をすっくと伸びていき、植え込みを突き抜けて花を咲かせていく雑草です。繁殖力が強く、いちど定着するとなかなか駆除出来ません。他の草を枯らしたり、庭が貧相に見えたりと、嫌がられがちなヤブガラシですが、可憐な花を咲かせて、多くの昆虫を養います。最初は小さな昆虫がやってきて、徐々に大きな昆虫がやってくる様子を見ていると、ヤブガラシが小さくて弱いものを優先する慈母のようにも思えてきます。
道ばたや植え込みをよく見ると、どこにでも咲いているヤブガラシは、人間に切られても切られてもまた伸びてきます。嫌われても強く生きる人生のお手本のような植物です。園の行き帰りに植え込みがあったら、ヤブガラシもいないか見てみましょう。
■作者のことば
「藪を枯らすもの」 野坂勇作
2020年4月9日と日付の入っているスケッチ。ぼくが暮らす小さな団地の一角にある公園から持ち帰って描いた、やぶがらしのスケッチです。ちなみに「やぶがらし」という名は、藪(雑木が繁っているところ)を枯らしてしまうほどの勢いがあるというところから、付いたようです。
この作品は2026年の6月号として出版されましたから、初スケッチから6年余りがたったことになります。では、あえてこれほどまでの年月をかけて作ったのかと問われれば、そうではなく。それならば、かかってしまったのかと尋ねられると、そういうわけでもありません。どうやら作品というものには、その作品ごとに、世に出るまでに定められた『時』というものがあるようです。
ただ一方で、年月をかけることに意味のあることも事実です。6年余り、毎日手を動かしていたわけではありません。やぶがらしの枯れる冬場には手を休めることも多く、この間は一度作品を手放し、他人事としているので、その結果再び手を動かす時には、客観的に俯瞰して見直すことができるのです。また別の言い方をすると、この間はいわば「寝かせている」状態にもなるわけですから、そこでは静かに熟成、発酵が進んで、作品に深みや味わいがでてくるのです。
この「寝かせては起こし」をくりかえす作品の作り方、仕方は、やぶがらしの生命力のリズムに似ています。あれほど繁茂していても、秋の深まりとともに訪れる霜の朝には、すっかりしなびて、まもなく地上から姿を消してしまいます。けれども地下の根はしっかり栄養を蓄え、太り、縦横に伸ばして、前の年よりも多くの春芽を準備して『時』を待つのです。
そうそう、言い忘れてはなりません。この作品の中に登場した花の特徴について、知っておいていただきたいことがあります。植物の専門的な言葉では、本文中の「はなの ふさ」と表現したところは「花序」といいます。
雑草とひとくくりに呼ばれているどの植物にも、じっくり目をこらして見つめると、地球上の生命全体のサイクルの中で、それぞれがしっかりその役割を果たしていることに気づかされます。これらのものを厄介者だと遠ざけている人間のほうが、案外このサイクルから、はみ出しているのかもしれませんね。
■著者情報
1953年、島根県松江市生まれ。広島で育つ。多摩美術大学工業デザイン科を卒業直前に中退。その後、佐渡ヶ島で農業に従事するかたわら、ミニコミ誌「まいぺーす」を創刊。地域雑誌にもかかわらず全国から購読者が現れる。絵本『ちいさいおうち』(岩波書店)に再会することで絵本を描きはじめる。主な作品に『にゅうどうぐも』『しもばしら』『あしたのてんきは はれ? くもり? あめ?』『どろだんご』、「かがくのとも」に『うきくさ』(2020年10月号)『もやし』(2018年5月号)、「たくさんのふしぎ」に『津津浦浦』(2023年3月号)、「こどものとも年少版」に『ちいさなショベルローダ』(2025年1月号)『みずうみおばけ』(2022年9月号)などがある。鳥取県在住。
野坂勇作 作
■内容のご紹介
ヤブガラシは植え込みに紛れ込み、伸びていくことができる「雑草」です。繁殖力が強く、いちど定着するとなかなか駆除は出来ません。
嫌われることの多いヤブガラシですが、可憐な花をいくつも咲かせて、その蜜で多くの昆虫を養います。
駆除しようとしても、地中に根が残っている限りまた伸びます。ヤブガラシは、嫌われても強く生きる人生のお手本のような植物です。
■編集部より
ヤブガラシは植え込みの中をすっくと伸びていき、植え込みを突き抜けて花を咲かせていく雑草です。繁殖力が強く、いちど定着するとなかなか駆除出来ません。他の草を枯らしたり、庭が貧相に見えたりと、嫌がられがちなヤブガラシですが、可憐な花を咲かせて、多くの昆虫を養います。最初は小さな昆虫がやってきて、徐々に大きな昆虫がやってくる様子を見ていると、ヤブガラシが小さくて弱いものを優先する慈母のようにも思えてきます。
道ばたや植え込みをよく見ると、どこにでも咲いているヤブガラシは、人間に切られても切られてもまた伸びてきます。嫌われても強く生きる人生のお手本のような植物です。園の行き帰りに植え込みがあったら、ヤブガラシもいないか見てみましょう。
■作者のことば
「藪を枯らすもの」 野坂勇作
2020年4月9日と日付の入っているスケッチ。ぼくが暮らす小さな団地の一角にある公園から持ち帰って描いた、やぶがらしのスケッチです。ちなみに「やぶがらし」という名は、藪(雑木が繁っているところ)を枯らしてしまうほどの勢いがあるというところから、付いたようです。
この作品は2026年の6月号として出版されましたから、初スケッチから6年余りがたったことになります。では、あえてこれほどまでの年月をかけて作ったのかと問われれば、そうではなく。それならば、かかってしまったのかと尋ねられると、そういうわけでもありません。どうやら作品というものには、その作品ごとに、世に出るまでに定められた『時』というものがあるようです。
ただ一方で、年月をかけることに意味のあることも事実です。6年余り、毎日手を動かしていたわけではありません。やぶがらしの枯れる冬場には手を休めることも多く、この間は一度作品を手放し、他人事としているので、その結果再び手を動かす時には、客観的に俯瞰して見直すことができるのです。また別の言い方をすると、この間はいわば「寝かせている」状態にもなるわけですから、そこでは静かに熟成、発酵が進んで、作品に深みや味わいがでてくるのです。
この「寝かせては起こし」をくりかえす作品の作り方、仕方は、やぶがらしの生命力のリズムに似ています。あれほど繁茂していても、秋の深まりとともに訪れる霜の朝には、すっかりしなびて、まもなく地上から姿を消してしまいます。けれども地下の根はしっかり栄養を蓄え、太り、縦横に伸ばして、前の年よりも多くの春芽を準備して『時』を待つのです。
そうそう、言い忘れてはなりません。この作品の中に登場した花の特徴について、知っておいていただきたいことがあります。植物の専門的な言葉では、本文中の「はなの ふさ」と表現したところは「花序」といいます。
雑草とひとくくりに呼ばれているどの植物にも、じっくり目をこらして見つめると、地球上の生命全体のサイクルの中で、それぞれがしっかりその役割を果たしていることに気づかされます。これらのものを厄介者だと遠ざけている人間のほうが、案外このサイクルから、はみ出しているのかもしれませんね。
■著者情報
1953年、島根県松江市生まれ。広島で育つ。多摩美術大学工業デザイン科を卒業直前に中退。その後、佐渡ヶ島で農業に従事するかたわら、ミニコミ誌「まいぺーす」を創刊。地域雑誌にもかかわらず全国から購読者が現れる。絵本『ちいさいおうち』(岩波書店)に再会することで絵本を描きはじめる。主な作品に『にゅうどうぐも』『しもばしら』『あしたのてんきは はれ? くもり? あめ?』『どろだんご』、「かがくのとも」に『うきくさ』(2020年10月号)『もやし』(2018年5月号)、「たくさんのふしぎ」に『津津浦浦』(2023年3月号)、「こどものとも年少版」に『ちいさなショベルローダ』(2025年1月号)『みずうみおばけ』(2022年9月号)などがある。鳥取県在住。
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