巻頭エセー
安達祐実「落語と私 私と落語」
祝！新真打
三遊亭萬橘

林家正楽による今月の紙切り
＜十徳＞
「立てば衣のごとく、座れば羽織のごとく、ごとく、ごとくで十徳」

「十徳」っていう噺はあんまり寄席で聞かないけれど、オウム返しネタの典型で、とてもキレイな前座噺に思える。八代目春風亭柳枝の録音とか、高座では三遊亭円窓のを聞いたことがあるけど、五代目円楽一門の「両国寄席」なんかでも出ている。新真打のきつつき改め四代目萬橘もやっている。
ちなみに十徳（じっとく）っていうのは、僧の着る衣の脇を縫いつけたようなもので、前を羽織のように紐で結ぶ。鎌倉末に着始められ、武士は紐つき、小者などは紐なしを着用した。室町は旅装、江戸時代は医師や絵師などで剃髪している者が礼服として用いた。絽、紗などで黒色無紋、腰から下に襞をつけ袴を略した。

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