―ヤフーの「Xブランド」に参加されていますが、評判はいかがですか。

タイムリーなテーマでは増刊も

使える付録も充実
お陰さまでいい評価をいただいています。ページビューでいうと「an・an」や「美的」とトップを競っている感じですね。クライアントにも評判がよくて、広告はいまやwebとセットが基本になっていますから、その意味でもありがたいことだと思っています。
「Xブランド」は本誌とはまた読者が違っていて、女の子ものに人気が集まったりしているようですね。本誌で各号連載している「巷的流行美女図鑑」などは常に上位にいます。それと意外にクルマの記事が好評です。本誌ではそれほどでもないんですけど。トレンド系の読み物のニーズが高いこともわかります。テレビ局が注目してくれて、取材が来たりもするんです。
―紙とwebとの読者の棲み分けがうまくいっているようですね。
そう思います。本誌は20~40歳代の「ビジネスパーソンのためのトレンド情報誌」とうたっていますが、現状は40歳くらいの読者がメインになってきています。若い読者はやはりwebのほうに集まりがちですね。
―紙は年齢を高めにして若い人をwebや携帯に誘導するというのは、広告戦略としても重要ですね。
そうなんです。若い読者を積極的に掘り起こしたいとは思っているのですが、紙の雑誌のほうはやはりじっくりと記事を読む人に支持されるので、自然に年齢が高くなります。広告のクライアントさんはそこに注目されているようですね。
「DIME」の人気企画のひとつに“家”の特集があって、理想のエコ住宅や、生活を便利にする最新家電などをとりあげています。こういう企画はやはり家を持つ世代の読者向けなので、あまり読者年齢を下げる企画ばかりはできないんですね。ただ、トレンドはやはり若い人たちが引っ張っていくものです。ですから、そこはwebでキャッチしていこうと、いま「DIGITAL DIME」(http://www.digital-dime.com/)というサイトを運営しています。
―競合というとどういう雑誌になるのでしょうか。
「Get Navi」(学研マーケティング)、「日経トレンディ」(日経BP)、「モノマガジン」(ワールドフォトプレス)あたりが競合誌と思われているようですが、うちはモノ雑誌ではなく、トレンドを扱っているので、厳密にいうと競合誌ではないんじゃないかな。
iPhoneなどをとりあげるのも、モノそのものではなく、生活やビジネスのなかでトレンドとしてのモノの使い方を読者と一緒に考えていくというスタンスなんです。ですからライフスタイル誌といったほうが、雑誌のコンセプトに近いかもしれません。
創刊当時はいろいろなトレンドを網羅して紹介するという感じでしたが、いまは特集を組んでさまざまな角度からトレンドを検証するという内容にしています。
―水野さんは、もともとこういった雑誌をやりたかったのですか。
いえ、私は「an・an」を読んで育った世代ですのでファッション誌のエディターにあこがれてたんです。でも入社したらいきなり「ビッグコミック」編集部(笑)。漫画の編集がスタートでした。それから「Be-Pal」(笑)。スポーツは好きでフィールドに出るのも好きでしたので、ソーラーカーのレースに参加したり、いろいろ楽しいお仕事をさせていただきました。それからテレビ誌経由で「DIME」です。
でも漫画編集者の経験も役に立っていて、この9月からはコーヒーをめぐる恋愛モノのコミックがスタートします。原作があの「神の雫」の原作者で、タイトルは神の雫ならぬ「琥珀の雫」(笑)。マクドナルドさんの協賛です
―そういえばいろんな企業とコラボされています。

ユニクロとのコラボで好評だったバッグ

大好評だった男子スイーツ部とのコラボ企画
はい。雑誌の販売や広告だけだと限界がありますので、企業とコラボして商品開発などを積極的に推進しています。ユニクロさんとバック作ったり、吉本興業の家電芸人さんと共同企画でフリーペーパーを作ったり・・・。ユニクロさんとのバックは10万個作って完売。先方が自社のチラシなどで宣伝してくださり、雑誌のPRにもすごい効果がありました。秋にバージョンアップしてもう一度販売する予定です。
森永乳業さんとはプリンつくったりもしました。これもすごく売れたんですよ。ニフティさんと共同企画で作った「男子スイーツ部」のメンバーで商品開発したんです。その延長企画としてニフィティ内にお酒のコミュニティも立ち上げました。「酒コミュ」(https://eq.nifty.com/webeq/pub/swcd_00/sake)といいます。いま参加者募集中ですのでよろしかったらぜひ!(笑)。
―どんな流れで仕事をされているのですか。
いま編集部には私を入れて10人スタッフがいるのですが、基本的には編集部員が副編集長と編集長代理にプランをあげるところから始まります。それを私も入って一緒に決めていく。季節モノの決め撃ちネタ以外はだいたいこんな感じで企画~取材が始まります。
記事はライターさんが書くのが中心です。私は進行状況をみながら、結構細かいチェックなどもします。
それ以外に広告タイアップなどがかなりはいってきますので、みんなで営業もバンバンしますよ(笑)。
―女性編集長であることのメリット、デメリットはなんですか。

編集者が取材中のため静かな編集部
そうですねぇ、私はいわゆる女性目線のトレンドは得意ですね。テレビもよく見てますし。ですからいま誰がキテルとか、次はこの人がクル、とかはなんとなくわかります。「DIME」では人をなるべく出すようにしてるんです。
モノを上手に使うことによって、生活が楽しく豊かになるっていう見せ方なんです。そういう意味でライフスタイル誌なんですが、そんなトレンドは男性とは多少違った感性が出ているかもしれませんね。
デメリットは、私もそうですが、全般に女性は機械モノにはうといですよね。だから私にわからないことは書かないで(笑)と。それが分かり易いといわれる誌面の理由です。それと、男心が分からない(笑)。
―なるほど(笑)。トレンド大賞を毎年開催されていますが、今年はどんな感じですか。去年はデフレ・トレンドで990円ジーンズとかでしたよね。
11月開催ですのでまだわかりません。今年はこれまでとは違った趣向にと思っているところなんですが、まだ内容は未定です。
9月にネットで読者投票やりますので、いましばしお待ちください。
―これからますますデジタル対応が迫られてくるのでしょうが、「DIGITAL
実際この7月から独立した部署になっていますが、「DIME」から副編集長が専任で行って、広告部スタッフやネット戦略室のメンバーといっしょに新たな展開を考えている状態です。これからオリジナル企画を作ったり、広告と連携した企画なども増えていくでしょうから、忙しくなると思います。
中味はモノの紹介よりトレンドをアピールする内容になっていくと思います。「DIGITAL DIME」を見るといまのトレンドがひと目で分かる、といったようにしていかねばと思っています。
―編集長がパワフルなら大丈夫でしょう(笑)。
私は犬と一緒に遊んだり旅をしたりすることが大好きで、ゴルフもするのですが、そんなゆったりした生活の時間をもう少し増やしたい。そういう暮らしが仕事へのエネルギーをチャージしてくれて、新しい企画の糧になったりすると思うんです。
編集長になってから会食の機会もすごく増えて太るし(笑)。家にいるときくらいは犬と運動して、さらにプチ断食もしようかな、なんて思ってます(笑)。
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1.RETRIVER(えい出版)
私自身がゴールデンレトリーバーを飼っているということもありますが、写真、レイアウトがキレイで見ていて癒されます。
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2.ELLE・DECO(アシェット婦人画報社)
海外の家の色と光の取り入れ方が、インテリアの参考になるので。
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3.週刊文春(文藝春秋)
個人的に今井舞さんの辛辣なテレビ評のファンです。
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4.クロワッサン(マガジンハウス)
生活に役立つ実用情報が重宝してます。
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5.週刊ゴルフダイジェスト(ゴルフダイジェスト社)
トイレに常備して読んでます。もっとうまくなりたい!!
(2010年7月)
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- モノが溢れてるイメージのある「DIME」で、なんでおシャレな「山ガール」が特集されているんだろう、と思っていたら水野さんはもと「Be-Pal」編集部の出身の方でした。
アウトドア好きのスポーティな女性が40代男性読者に送るメッセージとしては、けっこう分かりやすくっていいなと思います。
モノや情報が多い雑誌はとかくテイストが内向きになりがちですが、そこにおおきな開放感のある窓をしつらえた編集部が「DIME」なのかもしれません。
男子スイーツ部の存在なども、正直、今回初めて編集長から話を伺ってその活動を知りました。面白いし、こんなところに新商品やサービスのヒントがたくさん眠ってそうです。このトレンドをうまくキャッチして形にしていくことこそ、トレンド・プロデューサとしての編集長の仕事なんでしょう。
のんびりされたい気持ちもわかりますが、まだまだ出来そうもないですね。
インタビュアー:小西克博
大学卒業後に渡欧し編集と広告を学ぶ。共同通信社を経て中央公論社で「GQ」日本版の創刊に参画。 「リクウ」、「カイラス」創刊編集長などを歴任し、富士山マガジンサービス顧問・編集長。著書に「遊覧の極地」など。
