歴史評論 発売日・バックナンバー

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 近年の歴史研究では、グローバル・ヒストリー研究を中心に、世界が一体化に向かい始めた時代として、モンゴル帝国時代や、一六世紀から一八世紀の近世期にあらためて大きな関心が寄せられています。この時代、世界各地で人の移動とモノや情報のやりとりが、地域の枠を超えて拡大しました。なかでも、ヨーロッパとアジア諸地域との間の交流、そして、交流の合間に見られた政治的、文化的摩擦については、これまでも様々に論じられてきています。その一方で、それぞれに特徴的な文化をもったアジア諸地域間の交流のあり方については、充分に論じられてきているとは言えません。ヨーロッパの視点に立つ「大航海時代」という時代認識が見えにくくするアジア域内の活発な交流と、それを担った現地の人々にも目を向ける必要があります。アジア諸地域の文化変容を考察する上で、アジア域内の異なる文化との交流を視野に収めることが重要であるからです。
 本特集では、一四世紀から一八世紀のユーラシアの東半分を舞台とした、異なる文化の間の接触の具体的な事例を紹介します。いずれの事例も、イスラーム教徒や彼らが多数を占める地域で成立、発展した文化や物産と密接に関わっています。この時代のアジア域内の交流において、イスラーム教徒が重要な役割を担っていたことの現れとも言えるでしょう。近代以前の世界の歴史発展を、ヨーロッパ、あるいは、日本が位置する東アジアからとは異なる視座で捉え直す手掛かりに、本特集がなることを期待します。 (編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
論  文 アジアにおける『ハムザ物語』―イスラーム、ペルシア語、フロンティア―
The Romance of Amir Hamza in Asia 近藤信彰
KONDO Nobuaki
論  文 明末清初の激動と中国ムスリム
Chinese Muslims in Transformation during the Late Ming and Early Qing Period 中西竜也
NAKANISHI Tatsuya
論  文 近世日本におけるイラン・インド染織品の輸入とインド洋交易
Import of Iranian and Indian Textiles in Pre-Modern Japan and the Indian Ocean Trade 阿部克彦
ABE Katsuhiko
論  文 南インド宮廷文学にみるムスリム表象
Representations of Muslims in South Indian Courtly Literature 太田信宏
OTA Nobuhiro
論  文 14世紀イランに伝えられたインドの歴史
A Note on the History of India as Depicted in Two Persian Chronicles in Fourteenth Century Iran 小倉智史
OGURA Satoshi
論  文 日中戦争と対独賠償問題―一九三七―三八年の南京におけるドイツ被害から―
The Sino-Japanese War and the Problem of the War Loss Indemnity to Germany 清水雅大
SHIMIZU Masahiro
文化の窓 〔リレー連載 風土と向き合う―私の現場から⑥〕
「沖縄のなかの世界史発掘プロジェクト」の実践紹介
池上大祐
書  評 鈴木靖民著『古代日本の東アジア交流史』
赤羽目匡由
書  評 藤森馨著『古代の天皇祭祀と神宮祭祀』
榎村寛之
書  評 宮古文尋著『清末政治史の再構成』
田中比呂志
書  評 橋本伸也編著『せめぎあう中東欧・ロシアの歴史認識問題』
鈴木健太
紹  介 今泉隆雄著『古代国家の地方支配と東北』
永田一
 
 日本列島の約七割が森林に覆われています。これは伐採と造林とをうまく循環させた結果です。しかし現在は木材価格の低迷や過疎により、林業に従事する人も減りました。その結果、森林の保全・維持が更新されず、放置される森林が増えて荒廃が進んでいます。一方で、人びとが管理・利用することで維持されてきた集落に近い山を「里山」として重視し、その保全や活用が見直されてもいます。ただしこれも、森林を生業の場として利用するわけではありません。
 翻って江戸時代の社会では、森林は重要な生業の場でした。たとえば百姓にとって、家屋の建材や暖房などに必要な薪炭、耕作に不可欠な肥料などを生産・採取する場として、森林は貴重な資源でした。したがって、ときに過度の森林利用が荒廃の危機を招くこともありました。森林や「里山」保全の現状を理解するには、歴史的な経緯の検討が不可欠なのです。
 そこで本特集では、江戸時代の山里(山間の村)の社会構造を個別具体的に検討し、その特質を明らかにすることを目指します。こうした作業は、日々を暮らす民衆に視座を据えて、地域や村内部の社会のありかたを踏まえた上で、地域の全体像を総合的に明らかにしようとする近年の研究動向を視野に入れています。そのため、それぞれ対象とする地域を限定して、山里の実態を描くことに努めました。これによって、時代や地域により、それぞれ固有な山里のありようを理解していただけたら幸いです。(編集委員会)

  *  天皇の代替わりと時代認識 池享
  *  特集にあたって 編集委員会
論    文 無高山村の支配と貢租 ―信濃国秋山をめぐって―
Taxation and Administration of ‘Mutaka’ (unassessed) Mountain Villages in Edo Period Japan 白水智
SHIROUZU Satoshi
論    文 近世後期の焼畑と村落構造
A Study of Social Relationships in Early Modern Japanese Slash-and-Burn Agricultural Regions 町田哲
MACHIDA Tetsu
論    文 町人地と山林用益権
Residential Areas for Townspeople and Usufructuary Right of Mountain and Forest at Iida District in the Edo Period 多和田雅保
TAWADA Masayasu
論    文 「山里」村落の社会構造 ―一七世紀の信州虎岩村―
Social Structure of a Village with “Hills and Plains” 牧原成征
MAKIHARA Shigeyuki
論    文 丘陵地帯の村と山
A Hill Country Village and Mountains 後藤雅知
GOTO Masatoshi
科学運動通信 荒井信一さんを偲ぶ会に参加して
齋藤一晴
書    評 市大樹著『日本古代都鄙間交通の研究』
渡部育子
書    評 田中秀樹著『朱子学の時代』
小川和也
書    評 五野井隆史著『キリシタン信仰史の研究』
大橋幸泰
書    評 須田努著『三遊亭円朝と民衆世界』
青木然
追    想 追想 北島万次氏
堀新
追    想 浜林正夫先生を追悼する
岩井淳
追    想 浜林正夫さんを偲ぶ
宮地正人
   二〇一八年『歴史評論』総目次
二〇世紀末以降、世界のグローバル化に伴い、「新しい世界史」や「グローバル・ヒストリー」を標榜する研究が続々と生み出されました。しかしこうした研究では、権力や資本、人やモノの移動などが主に論じられ、思想が正面から扱われることはほとんどありませんでした。
 これに対し現在、思想史研究に大きな変化が起こっています。「偉大な思想家」と彼らが遺した「名著」を対象としてきた思想史研究は、「国際論的転換」(アーミテイジ『思想のグローバル・ヒストリー』)という転機を迎えました。そこでは、長期的かつ世界的な視野のもとで、思想家やその著作、理念が国境や地域、さらには時代の壁を越えて、広範に受容される痕跡が追究されます。この「グローバル=インテレクチュアル・ヒストリー」とでも言うべき新潮流では、長らく著名な思想家の陰に隠れていた人物に光が当てられ、これまで近代化といった視点から語られてきた思想的運動が内包しているさまざまな側面が浮かび上がります。さらに、外来の思想と民衆との意外な接点が明らかになる一方、エリートたちの世界認識の実態について論じられます。
 現在進行形のグローバル化がもたらす困難がますます強く意識され、世界のあちこちで新しい壁が築かれつつあるようにみえる今日、グローバル化の歴史を思想史の観点から論ずることは重要でしょう。ともあれ、まずは驚きに満ちた思想史研究の最新の成果をご堪能ください。(編集委員会)

  *  特集にあたって 編集委員会
論 文 歴史の中のギュルハーネ勅令
The Historical Roots of the Gülhane Rescript 佐々木紳
SASAKI Shin
論 文 G・ボローテと国際政治経済学の誕生 ―『都市盛衰原因論』の国際思想史―
G. Botero and the Birth of International Political Economy 石黒盛久
ISHIGURO Morihisa
論 文 近世日本の清聖諭受容と民衆教化
Acceptance of the Qing Dynasty Sacred Edict and the Edification of Common People in the Edo Era 殷暁星
YIN Xiaoxing
論 文 風聞と紛争ー ―古賀精里の思想世界とロシア認識―
Rumor and Conflict: The Thought of Koga Seiri (1750-1817) and his Recognition of Russia 清水光明
SHIMIZU Mitsuaki
論 文 ヒューマニストたちの挑戦と運命 ―イタリア・イベリア両半島における―
The Renaissance Humanists between Politics and Cultures 根占献一
NEJIME Kenichi
論 文 パラケルスス、ゲーテ、ホムンクルス
Paracelsus, Goethe, and Homunculus 村瀬天出夫
MURASE Amadeo
歴史のひろば 女性の身体 ―フランスの女性史研究の歩みとダンの近著にみる歴史学の最前線―
上條敏子
文化の窓 【文化の窓/リレー連載 風土と向きあう――私の現場から⑤】
世界史に開かれる地域史 ―静岡歴史教育研究会の活動―
岩井淳
科学運動通信 淡輪ニサンザイ古墳陵墓営繕工事立会見学参加記
森岡秀人
科学運動通信 シンポジウム「歴史教科書いままでとこれからⅩⅣ」参加記
稲川絵実香
書 評 藤原敬士著『商人たちの広州』
新居洋子
書 評 平田雅博・原聖編『帝国・国民・言語』
新居洋子
書 評 伊藤定良著『近代ドイツの歴史とナショナリズム・マイノリティ』
鍋谷郁太郎
書 評 中村秀之著『特攻隊映画の系譜学』

紹 介 吉浜忍著『沖縄の戦争遺跡』
佐治暁人
紹 介 下垣仁志著『古墳時代の国家形成』』
森田喜久男
紹 介 木村直樹、牧原成征編『十七世紀日本の秩序形成』
藤方博之
紹 介 中野敏男・板垣竜太・金昌・岡本有佳・金富子編著『「慰安婦」問題と未来への責任』
土野瑞穂
 
 二〇世紀は「極端な時代」だったと言われます。アジアやアフリカにおける西洋列強や日本による苛烈な侵略戦争、大量死をもたらした二度の世界大の戦争やその後の様々な独立戦争、冷戦期における「熱い戦争」、そしてまた、いまだにその死者数の概要すらも分からない白色や赤色の国家テロがありました。その反面、人類史上かつてない程の多くの人々が、いわゆるリベラル・デモクラシーや物質的な豊かさを享受しました。最大数の殺戮に十分な反省が示されない中で、最大数の幸福を実現しようとしたのが二〇世紀の夢だったと言えるでしょう。 
 ところが、最大数の幸福という功利主義的な楽観とともに、より深淵で人間らしい営みも生まれました。人々が暴力をもたらした責任を追及した時代だったのです。「ラッセル法廷」をはじめとする民衆法廷、ルワンダやユーゴスラヴィアの国際刑事法廷、ラテンアメリカや南アの真実委員会など、様々な形での正義の追求がなされました。これらの営みは、曲がりなりにも暴力に対する反省と平和への希求という普遍的価値を下支えしてきました。
 二一世紀の今日、対テロ戦争という新たな戦争が生じ、暴力は多様化し、民主主義は後退し、非暴力という理念は否定されつつあります。だからこそ、暴力に対する責任追及の軌跡を追ってみたいのです。そのような探求を通してこそ、この新たな戦争と暴力の時代を脱する方向性を見出すことができるでしょう。(編集委員会)

  *  特集にあたって 編集委員会
論    文 ラッセル法廷から半世紀 ―世界は正義とどう向かい合ってきたか―
Half Centennial of the Russel Tribunal and How the World has Tackled with the Issues of International Justicey 中野聡
NAKANO Satoshi
論    文 ラッセル法廷と国際反戦運動の胎動―「ベトナムにおける戦争犯罪調査日本委員会」と民族的抵抗への共感を中心に―
The Russell Tribunal and the Rise of International Anti-war Movement 藤本博
FUJIMOTO Hiroshi
論    文 東京裁判の個人責任論
Individual Responsibility at the Tokyo Trial 戸谷由麻
TOTANI Yuma
論    文 民衆法廷を継承する精神 ―原発民衆法廷の経験を手掛かりに―
The Spirit of International Criminal Tribunals: from the Vietnam War to the Fukushima Daiichi Nuclear Disaster 前田朗
MAEDA Akira
論    文 ニュルンベルク裁判とラッセル法廷
The Nuremberg Trials and the Russell Tribunal 芝健介
SHIBA Kensuke
書    評 マイケル・ビルトン、ケヴィン・シム著、藤本博、岩間龍男監訳、葛谷明美、後藤遥奈、堀井達朗訳『ヴェトナム戦争ソンミ村虐殺の悲劇』
生井英考
第52回大会準備号
歴史における危機と復興の諸相Ⅲ 大会テーマの設定にあたって
全国委員会
第52回大会準備号
歴史における危機と復興の諸相Ⅲ 《第1日目 占領と復興》米軍基地下の京都 ―占領から日米安保体制へ―
大内照雄
第52回大会準備号
歴史における危機と復興の諸相Ⅲ 《第1日目 占領と復興》中東における占領と復興 ―イスラエル建国とイラク、そして日本―
田浪亜央江
第52回大会準備号
歴史における危機と復興の諸相Ⅲ 《第2日目 首都の戦乱と復興》戦国京都都市論 ―首都の社会変動と戦乱―
仁木宏
第52回大会準備号
歴史における危機と復興の諸相Ⅲ 《第2日目 首都の戦乱と復興》二度の開封陥落と中心性の移動 ―中国都城史の転換点としての靖康の変―
久保田和男
第52回大会準備号
歴史における危機と復興の諸相Ⅲ 《第2日目 首都の戦乱と復興》三十年戦争と帝国都市アウクスブルク ―二宗派共存都市の危機と復興―
高津秀之
紹    介 関口裕子著『日本古代女性史の研究』
森田喜久男
紹    介 児玉幸多先生論集慣行委員会編『近世史研究遺文』
野尻泰弘
紹    介 アジア民衆史研究会・歴史問題研究所編『日韓民衆史研究の最前線』
三ツ井崇
紹    介 杉並歴史を語り合う会・歴史科学協議会編『隣国の肖像』
嶽本新奈
   加盟組織の活動報告

   加盟組織の機関誌案内
 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、「観光立国日本」を目指す動きが加速化しています。そのような動きの中で、史跡や伝統的建造物群など歴史遺産について、保存を優先させるのではなく「観光資源」として活用すべきであるという意見が声高に主張されるようになりました。現在進行中の文化財保護法の改定は、その延長線上にあるものです。
 しかし、「観光資源」云々以前に、歴史遺産はこれまでも歴史を活かした地域づくりやまちづくりの場で活用されてきました。その際に、地域の博物館や文書館、教育委員会、大学などに籍を置く研究者と市民との協働があったという事実を忘れるわけにはいきません。
 この特集では、各地域に拠点を置いて研究に取り組んで来られた方々に、それぞれの地域社会に残されている歴史遺産をどのように掘り起こしてきたのか、それをどのように活用することで地域社会を活性化させることができるのか、こういった点について語っていただきます。同時に、地域社会の活性化を謳いながらも、体制がととのえられない状況下で文化財行政を進めざるを得ない現状についても明らかにし、歴史遺産の活用のあり方と、その中で歴史研究者が果たすべき役割について考えてみたいと思います。
 この特集を通じて、歴史遺産の活用のあるべき姿について議論が深まることを願います。(編集委員会)

  *  特集にあたって 編集委員会
論 文 歴史遺産と地域連携 ―飯田・下伊那での実践から―
Historical Heritage and Local Community 吉田伸之
YOSHIDA Nobuyuki
論 文 平泉・世界文化遺産の現場にて
Hiraizumi: On-Site Practice at a World’s Cultural Heritage 入間田宣夫
IRUMADA Nobuo
論 文 博物館・資料館とボランティア ―地域の歴史的・文化的資源と博物館・資料館を繋ぐ―
Museum and the Activities of Volunteers: Bridging Local Historic Cultural Resources and the Museum 谷口榮
TANIGUCHI Sakae
論 文 学芸員の情報発信 ―神話を活かしたまちづくりへの参加―
Museum Workers and the Method of Information Provision: Community Building Based on Local Myths 森田喜久男
MORITA Kikuo
論 文 学校資料と歴史学
History and Historical Sources of School 大平聡
OHIRA Satoshi
論 文 文化財保護行政の動向と地域の歴史遺産 ―文化財保護法の改定問題と文化財活用の方向性―
Trends of Cultural Property Protection Administration and Historical Heritage in a Region 吉田政博
YOSHIDA Masahiro
歴史の眼 限界に直面する博物館と学芸員
君塚仁彦
歴史の眼 在日朝鮮人の民族教育と自決権 ―朝鮮学校「高校無償化」排除と朝鮮民主主義人民共和国―
金誠明
科学運動通信 歴史学研究会総合部会例会「天皇の身体と皇位継承―歴史から考える―」参加記
草薙志帆
書 評 小川剛生著『中世和歌史の研究』
深津睦夫
書 評 今井勇著『戦後日本の反戦・平和と「戦没者」』
波田永実
書 評 ロジャース・ブルーベイカー著、佐藤成基、髙橋誠一、岩城邦義、吉田公記編訳『グローバル化する世界と「帰属の政治」』
小田原琳
紹 介 吉浜忍著『沖縄の戦争遺跡』
佐治暁人
紹 介 部落問題研究所編『身分的周縁と部落問題の地域史的研究』
後藤雅知
紹 介 ジョー・グルディ、D・アーミテイジ著/平田雅博、細川道久訳『これが歴史だ!』
源川真希
 

 かつて古代史研究では、「大化改新」があったのかについて激しい論争が展開された時期がありました。明治維新と並ぶ王政復古として大化改新を位置づける官学アカデミズムの議論に真っ向から異議を唱え、『日本書紀』に記された「改新詔」の信憑性それ自体を問題とする議論は、古代史の画期だけでなく、史書の史料批判のあり方についても考えさせる大きな契機となりました。
 近年、発掘調査の進展にともない、出土文字資料の検証や前期難波宮の解明が進められ、さらに『日本書紀』の史料批判の積み重ねにより、大化改新が起こったとされる孝徳期の評価は大きく様変わりしています。考古学の成果とこれまで蓄積されてきた史料批判の成果とを対比させ、どのような形で七世紀の時代史像を描くべきなのか、大化改新の内容や評価を含め議論する動きが出てきています。これらの動きは大化改新を大局的な視座から捉え返すものであり、新たな時代史像をつくるものとなるでしょう。
 本特集では、大化期の“時代性”を具体的かつ多面的に理解するために、主要な論点を整理しました。これにより七世紀の転換のすがたを描き出すことができるでしょう。あわせて歴史教育や「年号」といった視点を取り上げることにより、現代的な問題としても提起します。この特集が「大化改新」という古代史の大きな論点を捉え直し、次なるステップに向かう契機となることを願ってやみません。(編集委員会)
 

  *  特集にあたって 編集委員会
論 文 大化改新研究の新潮流と七世紀史研究のこれから ―吉川真司氏の研究を中心に―
Present Issues of Studies on the Taika Reforms and the Challenges Regarding Studies of 7th Century Japan 熊谷公男
KUMAGAI Kimio
論 文 大化期の王権構造
The Structure of Kingship in the Taika Period 古市晃
FURUICHI Akira
論 文 日本古代王宮の原点 難波長柄豊碕宮
The Naniwa-Nagara-Toyosaki Palace as the Original Form of the Japanese Ancient Palace 積山洋
SEKIYAMA Hiroshi
論 文 公民制の成立と大化改新
The Formation of Komin sei and the Taika Reforms 市大樹
ICHI Hiroki
論 文 大化改新の対外関係
Japanese Foreign Relations in the Period of the Taika Reforms 河内春人
KOCHI Haruhito
論 文 指導要領・解説と主要教科書の中の「大化改新」
The Taika Reforms in the Curriculum Guidelines and School Textbooks 藤森健太郎
FUJIMORI Kentaro
歴史のひろば 年号にみる漢籍の受容
野村朋弘
歴史の眼 忘れられた映画フィルム―福田英子の『我が恋は燃えぬ』によせて―
林彰
書 評 豊島悠果著『高麗王朝の儀礼と中国』
廣瀬憲雄
書 評 前田勉著『江戸教育思想史研究』
ニールス・ファン・ステーンパール
書 評 茂木謙之介著『表象としての皇族』
富永望
書 評 庄司俊作編著『戦後日本の開発と民主主義』
沼尻晃伸
紹 介 梶原義実著『古代地方寺院の造営と景観』
柳田甫
紹 介 須田努著『吉田松陰の時代』
小田真裕
紹 介 友田昌宏編著『東北の近代と自由民権』
徳竹剛
紹 介 古瀬奈津子編著『東アジアの礼・儀式と支配構造』
服藤早苗
 一九四五年に日本が敗戦してから、七三回目の夏を迎えます。戦争体験者が次々と世を去るなか、教育現場をはじめとした社会のいたるところで、風化しつつある体験の継承が行われています。戦争を知らない世代の私たちにとって、戦争の悲惨さを学び、語り継いでいくことは非常に大切ないとなみです。 とはいえ、いつの間にか、教育現場などで戦争の悲惨さ、あるいは日本の加害行為が語られる際に、「平和な時代に生まれてよかった」、「今が平和な社会でよかった」という感想ばかりが生み出されていないでしょうか。これらの感想は、戦争の本質を理解しているようでいて、新たな戦争を十分に抑止する力とはなりえないように思います。戦争を現代社会とは切り離された過去の出来事、海の向こうの出来事とせず、今を生きる私たちの問題としていかに捉えていくのかということが、語る側にも受け手の側にも問われています。これが本特集の企画の出発点です。
 本特集では、凄惨さそのものに焦点を当てるのではなく、銃後や占領地・植民地の戦時体制の構築過程、そして戦争体験が社会に定着する過程に注目しました。暮らしの延長線上に戦争を見つ めるという本特集の試みを通じて、いかにして戦争を私たち自身の問題として語り、捉えていくのかを、読者の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。 (編集委員会)

  *  特集にあたって 編集委員会
論 文 日常生活と戦争 ―銃後社会史研究の課題をめぐって―
War and Everyday Life: Major Issues in Social History of the Home Front 大串潤児
OGUSHI Junji
論 文 ドイツ占領下ワルシャワの売買春
Prostitution in Warsaw under German Occupation 田野大輔
TANO Daisuke
論 文 戦時日本農村と満洲移民
Rural Society in Wartime Japan and “Japanese Colonists in Manchuria” 細谷亨
HOSOYA Toru
論 文 戦時期植民地朝鮮における防空体制の構築 ―警防団を中心に―
Construction of the Air Defense System in Colonial Korea during the Wartime 松田利彦
MATSUDA Toshihiko
論 文 「戦争体験論」の成立
The Formation of “War Experience” Discourses 赤澤史朗
AKAZAWA Shiro
投 稿 朝鮮・琉球国の地位の変遷と確定 ―幕末「通信国」観の前史として―
The Changing Status of Joseon and Ryukyu in Early Modern Japan 木土博成
KIDO Hironari
歴史の眼 二つの天皇代替わりをめぐる論説
後藤致人
書 評 伊藤聡著『神道の形成と中世神話』
太田直之
書 評 山本明代、パプ・ノルベルト編著『移動がつくる東中欧・バルカン史』
戸谷浩
書 評 望戸愛果著『「戦争体験」とジェンダー』
松原宏之
  * 二・一一集会 ―各地の記録②―
  *
 二〇一七年度末までに、各校種の次期学習指導要領が『官報』に告示されました。方針には、単なる知識の習得にとどまらない「子供たち一人一人の豊かな学び」を実現するとあります。この点は、近年多くの歴史学関係者も参加して積み重ねられてきた、歴史教育改革の動向にも合致します。しかし、その内実は、道徳を「特別の教科 道徳」とし、他のすべての教科・科目も道徳教育に関連づけた上で、学習内容だけでなく学習方法をも詳細に記述するものでした。これは教科書検定基準にも反映されます。閣議決定による政府見解を書かせること等を可能にした「新教科書検定基準」(二〇一四年)と合わせれば、社会科歴史教育の場は、権力に都合よく統制される危険性が高まったと言えるでしょう。
 本特集は、昨今の「豊かな学び」を標榜する教育改革が歴史教育にもたらす問題性を、新自由主義時代における世界の歴史教育改革の動向や、現在の道徳教育や歴史教育の問題点から明らかにしたうえで、対抗的な実践の可能性を追求する論考を集めました。今回の企画が、さまざまな困難が生じている教育現場についての理解を深め、読者各々の立場から、平和と民主主義を希求する歴史教育の課題を考えていく機会となることを願います。(編集委員会)

  *  特集にあたって 編集委員会
論 文 新自由主義改革と歴史教育の課題
Issues of History Education under Neoliberal Reform 近藤孝弘
KONDO Takahiro
論 文 「特別の教科 道徳」の危険性と向き合う―〈真正の教科〉という選択について―
The Risk of Teaching “Morality” as a Special Subject:
Consideration on the Validity of Making Moral Education an “Authentic Subject” at School 神代健彦
KUMASHIRO Takehiko
論 文 社会科歴史教育論からみた新学習指導要領―小中高を通じた歴史学習の課題―
The New Course of Study as Seen from the Standpoints of Social Studies and History Education 鈴木哲雄
SUZUKI Tetsuo
論 文 高校世界史のゆくえ
The Future of High School World History Education 日髙智彦
HIDAKA Tomohiko
論 文 「もやい直し」の経験を考える
Reconsidering Experiences of Moyai-Naoshi in Minamata 坂本敦
SAKAMOTO Atsushi
歴史のひろば 二〇一七年教育勅語問題と教育史研究
米田俊彦
歴史のひろば 『資本論』の現代的意義
柴田努
歴史の眼 憲法と政治の相克―首相大権化した衆議院解散権の課題―
加藤一彦
書 評 加藤圭木著『植民地期朝鮮の地域変容』
松本武祝
  * 二・一一集会 ―各地の記録―
  *
2017年11月25、26日、早稲田大学早稲田キャンパスにおいて、統一テーマ「歴史における危機と復興の諸相Ⅱ」のもと、第51回大会が開催されました。本号はその報告特集です。この大会テーマは、災害などにともなう社会的危機からの「復興」を、幅広い視野から検討しようとした前回大会の問題設定を継承したものです。  第1日目は、「「共謀罪」・治安体制強化の今日的意味」と題し、現安倍政権の治安政策の反動的・復古的な性格を検討すると同時に、現在進行している新自由主義との関係を考えることを課題としたものです。「共謀罪」法の性格を分析し現代日本における「治安」の構造を考察した報告、「共謀罪」型と「ヘイトスピーチ」規制型の二つの統制を対比して論じた報告からなっています。  第2日目は、「災害・復興と社会の変容」と題し、復興のあり方に対する社会の規定性、災害を招くおそれがある開発のあり方、それに災害を大規模化させる社会的要因を考え、災害と社会の関係を追究しました。報告は、中近世日本の開発と災害の連鎖の考察、17世紀ロンドン大火大規模化の社会的要因の分析、第二次大戦後日本の「闇市」を媒介とした、戦災と体制転換による危機と復興の関係についての問題提起の三本です。  現代社会を考える意味でも、歴史学の論点を深める意味でも意義ある報告と活発な議論のようすをお伝えいたします。(編集委員会)
* * *
* 特集にあたって 編集委員会
論   文  《第1日目テーマ 「共謀罪」・治安体制強化の今日的意味
  Present-Day Implications of "Conspiracy Law" and Other "Peace and Order" Measures》
現代日本における「治安」の構造
The Structure of “Peace and Order” in Current Japan 大日方純夫
OBINATA Sumio
論   文  《第1日目テーマ 「共謀罪」・治安体制強化の今日的意味
  Present-Day Implications of "Conspiracy Law" and Other "Peace and Order" Measures》
共謀罪と差別扇動規制――社会統制をめぐる国家の変容――
Conspiracy Law and Regulation of Hate Speech: Transformation of Japanese State and Its New Form of Social Control 木下ちがや
KINOSHITA Chigaya
* 大会第1日目 討論要旨 新川綾子
論   文  《第2日目テーマ 災害・復興と社会の変容 Social Changes and the Disaster Life Cycle》
連鎖する開発と災害
Chain of Development and Natural Disasters 榎原雅治
EBARA Masaharu
論   文  《第2日目テーマ 災害・復興と社会の変容 Social Changes and the Disaster Life Cycle》
一六六六年ロンドン大火の要因の再検討
――「大火」化の社会的背景と復興過程における変容――
Revisiting the Great Fire of London and Social Change in its Aftermath 菅原未宇
SUGAHARA Miu
論   文  《第2日目テーマ 災害・復興と社会の変容 Social Changes and the Disaster Life Cycle》
第二次世界大戦後日本の闇市に見る危機と復興
Crisis and Reconstruction in Postwar Japan: Perspectives from Yami-ichi (Black Market) 初田香成
HATSUDA Kosei
* 大会第2日目 討論要旨 村田遼平
* 《第51回大会報告を聞いて》
歴史学界の大会において、現代の実践的なテーマを掲げること自体が意味のあることなのか 中嶋久人
* 《第51回大会報告を聞いて》
災害被害史にみる復興の原動力 北原糸子
* 第51回大会参加記 松崎瑠美
* 第51回大会参加記 大岡聡
* 第51回大会参加記 水林純
* *

* *

歴史の眼 川の傍の暮らしを守るための川辺川ダム反対とは
森明香
歴史の眼 国立歴史民俗博物館「「1968年」」展を見て
西田慎
紹   介  福島恵著『東部ユーラシアのソグド人』
服藤早苗
【特集】
●近代日本政治史入門
  立憲政治の源流と動態

 ◇近代日本政治史研究の現在地
   源川真希
 ◇公論世界と政党・名望家
   三村昌司
 ◇議会と予算審議
   伏見岳人
 ◇政党政治と専門官僚
   若月剛史
 ◇政党組織と後援会
   手塚雄太
 ◇総力戦と議会・政党政治
   官田光史
 ◇政治史における「宮中」
   茶谷誠一


【歴史のひろば】
◆三谷太一郎『日本近代とは何であったか――問題史的考察』
  原田啓一


◆京都「奉祝踊」考
  松村啓一


【歴史の眼】
◆自衛隊と文民統制の現段階
  纐纈厚
[特集]
●日本中世の神道的世界を探る

◆中世神道・中世日本紀研究の現状/伊藤聡
◆中世前期の病気治療における神とモノノケ/小山聡子
◆女性の穢の成立/片岡耕平
◆生まれ死ぬるけがらひ/水谷類
◆中世以降における神社林の変遷/小椋純一


[歴史の眼]
◆歴史から隠されたクラシックの女性作曲者たち
 ――音楽史教科書では女性作曲者はどう扱われているか?/小林緑
◆「特別の教科 道徳」の教科書と安倍教育再生のねらい/俵義文
[特集]
●歴史のなかの〈異国人/日本人〉の子ども

◆「〈異・外国人〉との子ども」研究の整理と「からゆきさん」事例
 /嶽本新奈)
◆中世の国際交流から生まれた子どもたち
 /関周一
◆「日本人」と〈異・外国人〉の子どもの処遇
 ――江戸期から明治期にかけて――
 /嘉本伊都子
◆「内鮮結婚」の子どもたち
 ――内地人と朝鮮人の狭間で――
 /李正善
◆「混血児」をめぐる境界策定
 /田口ローレンス吉孝 


◆スペインとポルトガルの日本征服論をめぐって
 /平川新 


【歴史の眼】
◆宗教改革500周年
 /高津英之
◆『アルゼンチン、沖縄移民100年の歩み』とその後
 /澤恭子


【文化の窓】
◆福島の風土と地域研究
 /小松賢司
[特集]
●天皇制・君主制をめぐる現代歴史学の諸課題

◆古代王権論の成果と課題
 ――女帝・譲位・太上天皇の成立――/仁藤敦史
◆中世ヨーロッパの王位継承・選挙制と世襲制
 ――フランス中世を中心として――/渡辺節夫
◆「天皇退位問題」と象徴天皇制
 ――戦後思想史の視角から――/安田常雄
◆女帝統治の背景/美江明子
◆「平成の終焉」と象徴天皇制/瀬畑源

[小特集]
●吉見裁判運動を振り返って

◆吉見裁判とは何か/加藤圭木
◆歴史科学運動としての吉見裁判/高田雅士
◆「他者化」しない姿を模索する
 ――日本軍「慰安婦」問題解決運動と吉見裁判――/永山聡子

[文化の窓]
◆「曝涼」に学ぶ
【特集】
●はじめて学ぶ日本近世史

◆はじめて古文書を読む人のために/野尻泰弘
◆はじめて近世史料集を使う人のために/山口和夫
◆近世都市の成り立ち/上田長生
◆江戸時代の政治と武士の学び/小関悠一郎
◆生産者の暮らし方/東幸代
◆全国に広がる商い/青柳周一
◆「民間宗教者」が居た近世/梅田千尋
◆“境界地域”蝦夷地の眺め方/松本あづさ


【歴史の眼】
◆歴史研究者からみた千葉県文書館問題/宮間純一

【文化の窓】
◆村山と南仙/岩田浩太郎
【特集】
●明治維新史研究のいま

◆明治維新論の現状と課題/奈良勝司
◆明治維新史と天皇制研究/吉岡拓
◆明治維新政治史研究の現在/宮間純一
◆幕末期対外関係史研究の現在
 ――外圧論争を振り返る――/後藤敦史
◆明治維新期のジェンダー研究の課題/松崎瑠美
◆板垣退助と戊辰戦争・自由民権運動/中元崇智


【歴史のひろば】
◆『資本論』は「後進国」変革の指針となりうるか?/小谷汪之
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歴史科学協議会が編集する歴史学の学術専門誌。戦後間もない1946年に創刊され、現在は歴史科学協議会の機関誌として毎月発行されています。歴史教育から実証的な歴史研究、時代ごとの鋭い論考までを深く追求。長きにわたり日本の歴史学界をリードし、議論と探究の場を提供し続けるバイブルです。

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