「10代の頃から音楽や文学、映画といったカルチャーにどっぷりとハマっていました。2002年から03年まではイギリスに留学してい て、帰国してから今の会社に入社したのですが、もともと出版業に就きたいと思っていたので、とにかくきっかけはどんな雑誌でもよかったんです。しかしまさ か、健康雑誌に関わるとは夢にも思っていませんでしたが(笑)」
健康にさほど興味はなく、知識ゼロからのスタートだった。「誌面で紹介した健康法で実践しているものは」と尋ねると「正直、ほとんどありません。体は結構ガタがきているんですけどねえ(笑)」と笑う。ヘビースモーカーだという。しかし、゛朝バナナダイエットや゛白湯飲みダイエットなど、誰もが一度は耳にしたことがあるこれらのダイエットは、もともと佐藤さんが『はつらつ元気』の記事として企画し掲載したものだ。
「朝バナナの場合、たまたまmixiで見つけて「これはおもしろい!」と思い、すぐにコミュニティの管理人にメッセージを送って次の号では特集していました。雑誌はおもしろいと思ったものをすぐに載せられる、そういう機動力があるところも魅力ですね。情報はネットだけに頼らず、ありとあらゆるところから収集しています。別の企画やプライベートで出会った人から、思わぬ話が聞けたりすることもありますね。あ る時は、小田原市内にあるごく普通の中華料理屋で食事をしていたんですが、そのお店にペットボトルに詰まった白い飲み物のようなものが置いてあったん です。気になってお店のご主人に聞いてみると、それがご主人の作ったタマネギジュースで、それを常連のお客さんに振舞っていて、評判だというので、後 日さっそく取材させていただきました。タマネギは血液をサラサラにしてくれるといわれ、生活習慣病に役立つと考えられています」
発案者が専門家であろうが一般人であろうが「実用的でおもしろいネタはないか」常にアンテナを張り巡らせる。編集者にとって重要な仕事だが、佐藤さんはネタ集めのためにガツガツとしているという印象はなく、自身も楽しんでいるようにみえる。「どんな事に対しても、もう一歩、さらに一歩踏み込んで見てみたいという気持ちが強いんでしょうね」と自らを分析する。今、世の中は空前の健康・ダイエットブームだ。できるだけ楽をしてスマートで健康な体を手に入れたいというのは誰もの願いだが、決して容易いことではない。
「新しい健康法は次々と生まれています。逆に古くからの民間療法も多数あります。たくさんの方法がある中で、自分にあったものを選んで実践 するのがよいのではないでしょうか。ただ、どんな簡単な方法でも継続できなければ成果はでません。これまでの取材の経験上、成功している人とそうじゃない 人との違いは、「よくなりたい」という思いの強さではないかと感じています」

現在『はつらつ元気』とムック本の編集に携わり忙しい毎日を送る佐藤さんだが、休日も頭を空っぽにする瞬間はない。
「基本的にオンオフをあまり分けないタイプで、わざわざ『癒し』を求めに行くみたいなことはしないですね。よく『息抜き』と言いますが、『息を抜いてい いものか!』と無意味に思ってしまって。。仕事以外のオフの時間も常に何か考えてないと気がすまない。そういう生活のほうが性に合ってるというか、そうし ていないと不安になるんですよ(笑)」
多くのブームを世に送り出してきた佐藤さんだが、「自分がブームを作った」というような思いはないという。
「健康雑誌の良いところは、どのページを開いても゙ポジティヴな気持ちになれることです。体験談もすべて『これで元気になった』という前向きなものばかり。こんな雑誌ってほかのジャンルにはあまりないですよね。数 年前のことですが、バナナ酢というダイエットが大きなブームになりました。話題になる以前からバナナ酢のページを担当していて、当初はバナ ナ酢とインターネットで検索しても、本当に少ない件数しかヒットしなかったのが、2倍、3倍になり、いつしか3万件以上ヒットするようになりました。 「『はつらつ元気』に掲載されていて試しました」というブログやmixiの日記を見つけて、取材のアポを入れるということも多々ありましたね。自分が取り上げた記事で体調が良くなったという人に実際に会って笑顔を見ると、その人の生活の質の向上に少しでも寄与できたのかな、と嬉しく思います」
誰かを幸せにする雑誌作り、それが佐藤さんの原動力になっている。
(2009年08月)