目次
〈特集にあたって〉
1型糖尿病の成因に関しては,1960年代より主としてウイルス感染症,双生児を対象とした疫学的手法により研究がされてきた.たとえば英国におけるPykeらの双生児研究がそのよい例であろう.双生児の糖尿病の発症率の違いから1型糖尿病と2型糖尿病が異なった遺伝的背景を有することが明らかになった.1974年Bottazzoらの膵島細胞抗体(ICA)の発見,NerupらのHLAとの関連の発見からは1型糖尿病の成因には自己免疫とこれに関連した遺伝子が関係するという概念も取り入れられ,この分野の研究は著しく進歩した.新しい自己抗体(マーカー)が発見されると,新しい疾患が発見されるのを常とするが,ICAもそのよい例であろう.我々も緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)を報告することができた.1980年代よりはNODマウスをはじめとするモデル動物での1型糖尿病の成因が研究されてきた.1990年代以降はヒトの1型糖尿病にも緩徐進行1型糖尿病,急性発症1型糖尿病,劇症1型糖尿病などのサブタイプに注目が集まり,ヒトの1型糖尿病研究も盛んとなった.Notkinsらの1型糖尿病患者でのコクサッキーB4ウイルスの同定など,ヒトウイルスの感染症に注目が集まってきた.さらに延長線上の研究としてのvon HerrathらのLCMVウイルスと1型糖尿病発症の知見も病因研究の新しい展開に示唆を与えている.
このような歴史を踏まえ,ヒトウイルス感染と1型糖尿病EMCウイルスモデル,LCMVウイルスモデルなどにつき永淵正法先生,栗崎宏憲先生,勝田 仁先生に寄稿いただいた.また,NODマウスの成因につき,日々新しい業績をあげている阿比留教生先生にNODマウス研究の現状をご紹介いただくこととした.ヒト1型糖尿病,特に劇症1型糖尿病,急性発症1型糖尿病ではエンテロウイルスと発症の関係が注目されており,会田 薫先生に成績をご紹介いただいた.さらにウイルス感染症に引き続きおこるケモカイン,サイトカイン,ネットワークも最近の1型糖尿病の成因のトピックスであり,田中昌一郎先生にお願いした.
Drug induced hypersensitivity syndrome(DIHS)と1型糖尿病の関係をはじめて発見された牧野英一先生,大沼 裕先生,大澤春彦先生にその最新の知見をおよせいただいた.
1型糖尿病のメカニズムで内因性の因子としてはNK cell,樹状細胞,T cell,マクロファージなどが,それぞれのステージではたらいている.この面をわかりやすく安田尚史先生,永田正男先生,島田 朗先生に解説いただいた.また,1型糖尿病のマーカーとして有用な膵島関連自己抗体につき川﨑英二先生にご紹介いただいた.さらに,新たな遺伝子が発見され,進歩が著しい分野のわかりやすい紹介を粟田卓也先生,馬場谷 成先生,池上博司先生にお願いした.小児分野では,牛乳をはじめとした食物因子と1型糖尿病の関連が報告されており,最近,次々と報告されている介入試験について浦上達彦先生にご紹介いただいた.さらに1型糖尿病の膵島病変の研究を行い,ユニークな成績を発表してこられた今川彰久先生,宇野 彩先生,花房俊昭先生にその新しい知見のご紹介をお願いした.
以上,今回の特集では現在明らかになりつつある1型糖尿病の最新の知見についてご紹介する.1型糖尿病治療に向けより具体的な疾患のアップデートなイメージが得られれば,幸いである.
〈目次〉
1.ウイルス糖尿病の発症機構とその制御-糖尿病誘発性ウイルス同定の重要性
2.NODマウスモデルにおける1型糖尿病の成因:定説と最近の知見
3.1型糖尿病発症とウイルス感染症,自然免疫
4.1型糖尿病の成因:サイトカイン,ケモカインネットワーク
5.1型糖尿病発症と薬剤:DIHSと1型糖尿病
6.1型糖尿病発症における樹状細胞,マクロファージ,NK細胞,NKT細胞,好中球の役割
7.1型糖尿病発症におけるT細胞の役割
8.1型糖尿病における膵島関連自己抗体とその診断的価値
9.1型糖尿病に関連した遺伝子研究の歴史と最近の流れ
10.1型糖尿病発症と関係する遺伝子(GWASその他により同定された遺伝子)
11.小児1型糖尿病発症に関係する食物因子と発症予防試験
12.1型糖尿病の膵島病変
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