月刊糖尿病(DIABETES) 発売日・バックナンバー

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特集●糖尿病患者の救急医療・急性期医療
企画編集/亀井 望

<特集にあたって>

 糖尿病患者数は増加を続けており,急性期病院の救急外来を受診する患者のなかに占める糖尿病患者の割合も同様に増えていると考えられる.意識障害や全身状態の悪化などで救急搬送される患者は,まず救急医や総合診療医,当直医などが診療することが多い.糖尿病を有していない救急患者とは異なり,糖尿病患者の救急診療においては特有の鑑別診断や初期治療があり,血糖管理にも注意を要する.糖尿病専門医のみならず,急性期医療にあたるすべての医師と医療従事者にこれらの注意すべきポイントについて知っていただきたいと考え,今回の特集を企画した.
 糖尿病に特徴的な急性合併症や急性期病態として,高浸透圧高血糖状態(HHS),糖尿病性ケトアシドーシス(DKA),乳酸アシドーシスなどがある.高齢患者は感染や脱水などを契機として容易にHHSとなるため,適切に診断を行い早期に治療を開始する必要がある.また,SGLT2阻害薬による臓器保護作用にはケトン体の関与も考えられているが,一方でsick dayなどに適切な休薬がなされないと正常血糖ケトアシドーシス(euglycemic DKA)を引き起こすことがあり,救急の現場で診療する機会が増えている.euDKAは,これまでの1型糖尿病でみられたDKAとはやや異なる病態を示し,治療においても早期からブドウ糖投与を開始する必要があるなどのポイントがあり,知識をUpdateしたい.
 2型糖尿病治療の中心が低血糖を起こしにくい薬剤へと変わりつつあること,1型糖尿病でも血糖モニタリング機器やインスリン製剤が進歩していることから,低血糖で救急搬送される患者数は今後減少していくことが期待される.しかし現時点では,低血糖による救急受診はまだまだ非常に多く,その対策と適切な治療は重要である.救急の現場では,低血糖はブドウ糖の静脈注射で容易に改善するものの,帰宅後に再度意識障害を起こすなどの事例もあり,注意を要する.
 糖尿病に特有の病態ではないが,その経過に糖尿病と血糖管理が大きく影響する疾患もあり,糖尿病専門医による治療介入が重要である.心血管疾患・心不全は糖尿病患者において特徴的な病態を示し,また近年の治療の進歩も目覚ましい領域である.同様に急性腎障害や慢性腎障害患者の病態悪化にも対応できる臨床力が求められる.
 糖尿病患者には易感染性があることが知られており,感染症は糖尿病で非常に多い急性併存症である.糖尿病に特有の感染症もあり,診断が困難であることも多い.治療においても糖尿病患者における抗菌薬使用の方法を十分理解しておきたい.また,COVID-19 感染症は血糖コントロール不良の糖尿病患者において予後が悪いことが示され,糖尿病専門医が積極的に治療に関与すべき病態である.
 急性期病院の糖尿病専門医は,外傷や周術期および悪性腫瘍治療に関する血糖管理に多くの時間を割いている.外科手術において血糖管理が不十分であると創部感染などの術後感染症のリスクが高まり,予後の悪化や入院日数の延長につながる.悪性腫瘍の治療においてもステロイドによる高血糖や免疫チェックポイント阻害薬による1型糖尿病発症リスクなど,糖尿病専門医がいないと高度な医療ができない時代になっている.しかし,これらの病態に対する専門的な血糖管理には現時点で加算がない.これは非常に大きな問題であり,保健医療制度のなかできちんと評価されるべきであると考える.日本糖尿病学会は,糖尿病専門医による適切な急性期の全身管理は術後合併症などを減らし医療費の抑制につながることを厚生労働省に訴えており,重症度や医療・看護必要度の項目に糖尿病専門医によるインスリン管理を加えることを要望している.
 本特集では,慢性の管理や合併症・併存症が注目されることの多い糖尿病診療において,救急や急性期医療の重要性にスポットライトを当てた.エキスパートの先生方に最新の知見をわかりやすく解説いただいており,実践的な内容になっているため,明日からの診療にすぐに役立つことと思う.本特集が日本における糖尿病患者の救急・急性期医療のレベルアップにつながり,多くの糖尿病患者の生命予後が改善することを願っている.

亀井 望(広島赤十字・原爆病院 内分泌・代謝内科 部長)


<目次>

1. 意識障害・救急搬送/岩岡秀明
2. 1型糖尿病/山本あかね,齋藤修一郎,廣田勇士
3. 高浸透圧高血糖状態/角谷佳則,森岡与明
4. 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)/佐藤大介,久米真司
5. 乳酸アシドーシス/牟田芳実,川浪大治
6. 低血糖/志熊淳平,鈴木 亮
7. 心血管疾患・心不全/佐藤達也,古橋眞人
8. 腎障害/山尾有加,金﨑啓造
9. 感染症/山本たける,細川直登
10. COVID-19/大杉 満
11. 外傷・周術期/細井雅之,藥師寺洋介
12. 悪性腫瘍/北澤 公
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特集●食(食事,食品,食欲,食生活習慣)と糖尿病・糖代謝,肥満との関係
企画編集/保坂利男

<特集にあたって>

 日常診療において最近までは食事療法を「食事制限」と感じ我慢できないと訴える糖尿病患者は多く,栄養に関わる私などは,「制限」でなく,今までが多すぎて「適正量」に戻すだけであると説明し,なんとかご理解いただいていた.近年の詳細な分析から,健常人と糖尿病患者でのエネルギー必要量は同程度であり,現体重あたり35 kcal前後のエネルギー必要量であることが報告され,今までの標準体重あたり30 kcal前後のエネルギー必要量の指導は,まさしく「食事制限」であったと悔悟している.「日本人の食事摂取基準(2015年版)」から,それぞれの年齢における推定エネルギー必要量は参考表とされ,エネルギーの摂取量および消費量のバランス(エネルギー収支バランス)の維持を示す指標としてBMIが用いられている.成人における観察疫学研究において報告された総死亡率が最も低かったBMIの範囲と日本人のBMIの実態などを総合的に検証し,目標とするBMIの範囲が提示されている.糖尿病患者に対して摂取エネルギーを決定後,それを目標値として指導することに対して,私自身も疑わなかった.日々の生活は,まったく同じでないのであれば,普通に考えると毎日目標値に近いエネルギーを摂取させることができないことは感じていても,一辺倒の指導を繰り返しており,BMIでエネルギー収支バランスを判断していく必要性を感じている.
 それらを踏まえて,2019年の糖尿病診療ガイドラインの改訂で新しく舵をきったのが食事療法である.総エネルギー摂取量の目標値が削除され目安となり,目安となる総エネルギー摂取量の算出時の体重は,標準体重から目標体重となった.食事の摂り方に関しては,「個々人の食事パターン(eating pattern)を考慮しながら,包括的に適正な食材の選択を促す.規則的に3食を摂ることが糖尿病の予防に有効である.」と個別化を図っての食事指導を行う必要がある.食事の摂り方の解説のなかには「野菜など食物繊維に富んだ食材を主食より先に食べ,よく噛んで咀嚼することによって食後の高血糖の是正が期待できる.就寝前に摂る夜食は肥満の助長,血糖コントロールの不良の原因となり,併発症をきたすリスクが高くなる.朝食を抜く食習慣が2型糖尿病のリスクになることが示されておりシフトワーカーでは2型糖尿病の発症リスクが増す.肥満症例には,総エネルギーの適正化のみならず,欠食あるいは就寝前の間食の摂取など,食事摂取行動への介入が望まれる.」と述べられている.
 糖尿病患者の食事療法は,血糖コントロールのためではなく,血糖悪化防止と目標体重を目安に肥満,やせを是正して,より生理的な血糖の変動の食生活に近づけるものとなるのであろう.それらから,私たち糖尿病診療,生活習慣病予防に関わる医療従事者は,食事療法だけでなく,食事の質,食生活としての食習慣や食欲についても知っておかなければならない.
 本特集においては,「食(食事,食品,食欲,食生活習慣)と糖尿病・糖代謝,肥満との関係」という特集タイトルで,第1章から第4章では,咀嚼,欠食,睡眠不足などの食生活習慣および時間栄養学と糖尿病・糖代謝,肥満の関係について,第5章から第7章では,栄養素,栄養成分について,最新の臨床,疫学,基礎的研究それぞれの面からご執筆いただいた.第8章から第12章では,実践と絡めて栄養指導や薬剤と食事との関係についてご執筆いただいた.

保坂利男(静岡県立大学 食品栄養科学部 栄養生命科学科 臨床栄養学教室 教授)


<目次>

1. 咀嚼と血糖コントロール~食欲との関係~/福田正博
2. 食習慣と血糖コントロール/今井佐恵子,梶山靜夫
3. 睡眠と食欲,血糖コントロールの関係/塩見亮人,三宅映己,古川慎哉
4. 時間栄養学からみた食と糖代謝/柴田重信
5. 絶食・糖尿病状態におけるエネルギー産生栄養素代謝のダイナミズム/谷田亮太,篁 俊成
6. 発酵食品と血糖コントロール,糖代謝,肥満との関係/橋本善隆,福井道明
7. 食品成分と血糖コントロール,糖代謝,肥満との関係/齋藤従道
8. 目標体重,個別指導となった栄養指導の現状/原 純也
9. 糖尿病における加齢性筋障害と生活習慣/松久宗英
10. 情報通信技術を活用した食事指導~オンライン指導とアプリケーションの利用~/榛葉有希
11. SGLT2阻害薬使用中の食事・栄養サポート/土屋恭一郎
12. インクレチン関連薬と食事の関係/山口裕子,桑田仁司
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特集●糖尿病性腎臓病・腎硬化症の病態と診療
企画編集/和田隆志


<特集にあたって>

 日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」によると,透析患者数は近年患者数の伸びが鈍化しているものの,2020年は前年比3,031人増であった.新規透析導入患者の原疾患の第1位は糖尿病性腎臓病(糖尿病性腎症)で40.7 %であった.慢性透析患者数の増加は,70歳以上の患者数の増加によるものであると記載されている.関連して,2019 年に慢性糸球体腎炎に代わり腎硬化症が第2位となり,2020年では17.5 %をしめている.
 このような背景のもと,糖尿病性腎臓病,腎硬化症の病態の理解とその診療は日常臨床においても重要な課題である.超高齢社会,治療薬の進歩,統合的多因子介入を背景に,糖尿病に伴う腎病変の臨床病態は多様化している.そのため,糖尿病(性)腎症に加えて,糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease;DKD)という概念が用いられるようになってきた.超高齢社会においては高血圧症などによる腎硬化症の要素も加わる.糖尿病性腎臓病は典型的な糖尿病(性)腎症を含む,糖尿病の病態が関与するCKD全般を包括した概念である.正常アルブミン尿かつ腎機能低下している糖尿病例の増加が国内外で示され,腎硬化症による病態の修飾が推測されている.この超高齢社会における糖尿病性腎臓病や腎硬化症の病態の理解とそれに立脚する診療は,日常臨床においても重要な課題である.糖尿病治療薬など薬のエビデンスが蓄積され,新規の薬の臨床試験も国内外で展開されている.また,最近になり慢性腎臓病,2型糖尿病合併CKDなどに対して,SGLT2阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬など日常診療に用いることができるようになった薬も増えてきた.加えて,糖尿病性腎臓病に対する統合的多因子介入もJ-DOIT3に代表されるようにその有効性が示されている.今後も糖尿病性腎臓病,腎硬化症のさらなる病態解明,さらに,治療が進歩することが期待される.包括的対策による糖尿病性腎臓病,腎硬化症,さらに,関連が深い全身臓器障害の予防,予後改善,克服など福音につながることを願っている.
 本特集では,糖尿病性腎臓病,腎硬化症の臨床と研究に焦点をあて,現時点での概念や考え方とそれに深く関連するエビデンスをまとめることを主眼とした.バイオマーカー,治療の進歩や今後の方向性も含めて,当代のトップリーダーの皆様に解説をお願いした.この場をお借りして執筆を担当いただいた皆様に厚く御礼を申し上げる.


<目次>

1.糖尿病性腎臓病と糖尿病性腎症の病態と変遷/古市賢吾
2.リアルワールドデータからみた糖尿病性腎臓病/柏原直樹,岸 誠司,山内 佑,山本稔也
3.超高齢社会における糖尿病とCKDの現状と課題/馬場園哲也
4.糖尿病性腎臓病のゲノム解析とバイオバンク/平川陽亮
5.腎硬化症の病態と分子機序/小豆島健護,田村功一
6.腎生検からみた糖尿病性腎臓病・腎硬化症の共通点と相違点/清水美保
7.糖尿病性腎臓病の分子機序/久米真司
8.糖尿病性腎臓病・腎硬化症のバイオマーカー/大西康博,和田 淳
9.糖尿病性腎臓病と腎硬化症の血圧管理/増田貴博,長田太助
10.糖尿病性腎臓病の治療の進歩/川浪大治
11.(糖尿病性腎臓病・腎硬化症を含む)CKD診療におけるevidence-practice gap/岡田浩一
12.糖尿病性腎臓病の新規治療の展望と可能性/菅原真衣,南學正臣
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特集●認知症予防を考慮した糖尿病の治療
企画編集/荒木 厚

<特集にあたって>

 糖尿病の治療では合併症の予防のみならず,糖尿病で多い併存疾患の対策を講じることが重要となってきている.認知症は疫学研究によって近年増加していることが明らかになった糖尿病の併存症の1つである.また,軽度認知障害の段階の認知機能障害も高齢者糖尿病できたしやすい老年症候群の1つである.これらには糖尿病の病態であるインスリン分泌不全・抵抗性,高血糖,低血糖などが関与するとされている.
 こうした糖尿病における認知症・認知機能障害をどのようにスクリーニングし,MRIなどの画像も含めて診断し,また,どのように予防・治療していくかは高齢者糖尿病の診療において必要なスキルとなりつつある.さらに,糖尿病における認知症を防ぐためにはどのような食事療法,運動療法,薬物療法をすべきか,これらの多因子介入は有効かなどについて活発に議論や研究の対象となっている.
 糖尿病に認知症や認知機能障害が合併すると,糖尿病のセルフケアである食事・運動,服薬,注射が困難になり,社会サポートを確保する必要がある.そのためには治療を単純化し,サポートを受けやすいような環境作りが大切となる.
 研究においても動物モデルによる認知症発症機序や新しい治療薬の開発が試みられている.
 本特集では,この領域の診療や研究において我が国の最前線にいる先生方にご執筆いただき,「糖尿病と認知症」における集大成としてまとめることができた.この分野における知識を深め,臨床に活かしていただけば幸いである.


<目次>

Ⅰ-1.糖尿病と認知症の疫学:久山町研究/三野原敏文,小原知之,二宮利治
Ⅰ-2.糖尿病と認知症/梅垣宏行
Ⅰ-3.糖尿病における認知症の危険因子/田村嘉章
Ⅰ-4.糖尿病における認知機能障害のスクリーニング/赤坂 憲
Ⅰ-5.糖尿病網膜症と認知機能障害,認知症/勝俣 悠,千葉優子,池上靖子,荒木 厚
Ⅰ-6.糖尿病における認知機能障害の画像:PET/石井賢二
Ⅱ-1.食事療法と糖尿病/府川則子,荒木 厚
Ⅱ-2.多因子介入による認知症予防:社会サポートも含めて/杉本大貴,櫻井 孝
Ⅱ-3.多職種連携による在宅糖尿病患者のケア/齋藤 透,野村和至
Ⅱ-4.未来の治療薬開発/大八木保政
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特集●妊娠糖尿病・糖尿病合併妊娠の管理
企画編集/杉山 隆

<特集にあたって>

 糖代謝異常合併妊娠は妊娠中の合併症のなかでは最も頻度が高い疾患です.インスリン分泌が低い我が国ゆえの背景や晩産化に加え,近年の生活習慣も糖代謝異常の増加の一因となっていると考えられています.
 妊娠糖尿病の診断基準が変更され,すでに10年以上が経過しました.ただし,我が国で現在使用している診断基準は,国際糖尿病・妊娠学会(IADPSG)が推奨する妊娠糖尿病の診断基準とは異なっています.その理由は,我が国の2000年ごろは妊娠糖尿病のスクリーニングが徹底されておらず,妊娠初期に未診断糖尿病や糖尿病に至っていないような糖代謝異常を見つける体制が整っておらず,あえて妊娠全期間,同じ診断基準を用いてきた経緯があります.現在,妊娠初期・中期において公費負担による耐糖能スクリーニングは徹底されるようになり,今後の管理の方向性について再考する必要があります.妊娠前半期における糖尿病に至っていない耐糖能異常の取り扱いについては,いまだ世界的にもはっきりしておらず,このような視点より,妊娠糖尿病に対する最新の知見を特集として組んだ次第です.
 一方,糖尿病合併妊娠もその管理においては依然悩ましい点があります.たとえば,2型糖尿病女性の計画妊娠がしっかりなされていない点や肥満が多いことにより,肥満そのものの妊娠への悪影響も大きいことがあげられます.1型糖尿病女性のBMI上昇傾向に加え,晩産化も妊娠高血圧症候群のリスクを上げる原因となります.一方,血糖コントロールのための各種ディバイスの開発の進歩により管理法のオプションも増え,ICTの進歩,食事療法や看護的支援,エンパワーメント,さらにはレコンセプションケアも糖尿病女性のみならず妊娠糖尿病女性に対する有効性が期待されます.
 また,子宮内環境が高血糖という一種の過栄養環境は出生後の児の長期的に悪影響を及ぼす可能性も疫学研究で明らかになっています.動物実験では,とくに子宮内環境の是正が有効であることを示唆する報告がある一方,出生後の継続的な生活習慣も重要であることも示唆されています.子宮内環境の児へのエピジェネティックな影響があることは確実ですが,管理法については依然不明です.このような背景下,今後,糖代謝異常合併妊娠の管理に関し,母体のみならず次世代の健康も見据えた妊娠前からのプレコンセプションケアは重要であり,今後さらに進む少子超高齢化時代に向けた成育医療の原点にも通じる重要な領域であると考えます.
 本特集では,本領域に造詣の深い先生方に原稿をお願いしています.読者の皆さんにとって本書が臨床現場で役に立てば望外の幸せです.


<目次>

1.妊娠糖尿病に関する周産期予後と管理のエビデンスについて/岩間憲之,齋藤昌利,杉山 隆
2.妊娠初期に診断される妊娠糖尿病の妊娠予後/中西沙由理
3.妊娠糖尿病:管理のポイントと課題/宮越 敬
4.妊娠糖尿病のフォローアップ/川﨑麻紀,荒田尚子
5.我が国における1型糖尿病と2型糖尿病の疫学/藤川 慧
6.糖尿病合併妊娠に対する食事療法とインスリン療法/黒田暁生,松久宗英
7.糖尿病治療におけるICT/IoTを用いた支援/萩原郁哉,脇 嘉代
8.糖代謝異常合併妊娠に対する看護支援/田中佳代
9.糖尿病女性,妊娠糖尿病既往女性に対するプレコンセプションケア/荒田尚子,川﨑麻紀
10.エピジェネティクスの視点からみた糖代謝異常女性に対する管理:今後の展望/春日義史
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特集●SGLT2阻害薬を極める~なぜ1stチョイスとしてSGLT2阻害薬が考慮されるのか?~
企画編集/柴田 玲

<特集にあたって>

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックは,感染症に負けない身体づくりの大切さを,社会に強く意識させました.とくに,肥満や糖尿病,高血圧などの生活習慣病,心不全や慢性腎臓病などの心腎疾患は,新型コロナウイルス感染症の重症化因子であることから,Withコロナ時代は,ますます生活習慣病や心腎疾患の管理が重要であると考えられるようになりました.そしてその管理のための最も有効なツールの1つがSGLT2阻害薬ではないかと思われます.
 2014年に糖尿病治療薬として上市されたSGLT2阻害薬は,単に血糖を下げるのみならず,非常に多面的な作用を有しています.血糖低下に加え,体重や血圧,心,腎によい影響を与えることが,さまざまな大規模試験の結果から示されました.その結果,2020年には,慢性心不全治療薬として,2021年からは,慢性腎臓病の治療薬として,一部のSGLT2阻害薬が承認され,現在では,SGLT2阻害薬は「糖尿病/心腎治療薬」に変化を遂げました.
 これまで,SGLT2阻害薬は,安全性などの観点から,若くて肥満を伴う糖尿病患者に対して,つまり,どちらかというと限定的な患者像での使用にとどまっていた傾向がありました.しかし,心血管イベントを抑える,腎アウトカムを改善させるといった大規模試験の結果,高齢者での安全性データなどが示されたこと,そして,糖尿病/心腎治療薬と用途拡大したことから,幅広い患者層へ,早期からSGLT2阻害薬が使用されるケースが増えてきました.
 人口の高齢化や医学の進歩とともに,糖尿病患者の寿命も着実に延びています.そのため,我々が糖尿病診療を行ううえでは,常にその方の10年20年先を見据えた治療を行う必要があります.目の前の血糖値を低下させることに加え,将来の合併症予防を常に見据えなければなりません.将来の心血管イベントを抑える,腎アウトカムを改善させるため,SGLT2阻害薬を早期に使用する,第一選択薬として選択する,このような攻めの治療が,今後増えてくると確信しています.
 そこで今回は,「SGLT2阻害薬を極める─なぜ1stチョイスとしてSGLT2阻害薬が考慮されるのか?」をテーマとし,「エビデンス」と「機序」と「診療」の3つの観点から,糖尿病,循環器内科,腎臓内科の専門医の先生方にご執筆いただきました.本誌を一読すれば,SGLT2阻害薬を極めることができる内容となっています.大変ご多忙のなか,ご執筆いただいた先生方に感謝申し上げるとともに,本特集が今後の診療に少しでもご活用いただければと祈念しています.


<目次>

I.SGLT阻害薬の歴史
 1.SGLT 阻害薬の歴史 The SGLT2 inhibitor;its history and future perspective/金井好克

Ⅱ.大規模臨床試験から学ぶSGLT2阻害薬
 1.大規模臨床試験から学ぶSGLT2阻害薬の血糖低下効果/的場圭一郎,西村理明
 2.大規模臨床試験から学ぶSGLT2阻害薬の心血管イベント抑制効果/井手友美
 3.大規模臨床試験から学ぶSGLT2阻害薬の腎イベント抑制効果/小田原 幹,菅原真衣,南學正臣

Ⅲ.SGLT2阻害薬の作用機序を考える
 1.SGLT2阻害薬の膵β細胞保護効果/伏見佳朗,金藤秀明
 2.SGLT2阻害薬の心保護効果/佐野元昭
 3.SGLT2阻害薬の腎保護効果/中野大介
 4.SGLT2阻害薬の肝保護効果/角田圭雄,木本 慧,坂本和賢,中出幸臣,伊藤清顕,米田政志

Ⅳ.積極的にSGLT2阻害薬を使用すべき患者像を考える
 1.糖尿病治療の側面から/森下啓明,神谷英紀
 2.心不全治療の側面から/城島昂太,田中敦史,野出孝一
 3.CKD治療の側面から/平田英生,深水 圭
 4.高齢糖尿病患者に1stチョイスとしてSGLT2阻害薬が考慮されるのか?/神原貴博,柴田 玲,室原豊明
 5.使用不適な患者像を考える/三好秀明
4,400円
特集●肥満・糖尿病・歯周病
企画編集/西村英紀

<特集にあたって>

 肥満や糖尿病は歯周病の増悪因子となることから歯周病は糖尿病の6番目の合併症と位置付けられ,その上流には高血糖や肥満に伴う高サイトカイン(アディポカイン)血症が存在すると考えられてきました.また,こうして重症化した歯周病が,軽微な慢性炎症としてインスリン抵抗性の進行促進要因となりえることも明らかになっています.
 近年,これらに加えインスリン抵抗性そのものが歯周病の増悪因子として作用する可能性が指摘されています.いうまでもなくインスリン抵抗性の最大の危険因子は肥満です.これらから,肥満・糖尿病やその合併症である歯周病の我が国における頻度を整理し,さらに肥満・糖尿病と歯周病の相互作用を分子レベルで正確に把握する必要があります.重症化した歯周病は菌血症や腸内細菌叢のかく乱,あるいは循環免疫細胞の活性化を介して,NASHやエネルギー代謝にも影響を与えると考えられています.これらから重症化した歯周病が遠隔臓器障害や腸内細菌叢へ与える影響,ひいては脂質代謝や肥満そのものに及ぼす影響についても理解しておく必要があります.これらを把握したうえで,分子基盤に基づいた分子標的療法の確立が望まれます.また,基本的な食事・運動療法を徹底するうえでも,分子基盤の理解はモチベーションの向上に資するのみでなく,治療効果をも左右することから必須の要件です.一方近年では,高齢者糖尿病が増加しつつあるものの,高齢者糖尿病と口腔の健康の関連性についてはほとんどわかっていません.超高齢社会をむかえる今日,この関連性を整理しておくことは非常に重要です.さらにこれらの関連性を理解したうえで,地域において医科歯科双方のかかりつけ医ならびにパラスタッフを交えたチームによる情報の共有は,肥満・糖尿病の管理の一環として必須です.厚生労働省による糖尿病性腎症重症化予防プログラムのなかでも,効果的な医科歯科連携システムの構築は,かかりつけ医と専門医の連携と並んで重要な評価対象の1つになっています.
 以上から,本特集では肥満・糖尿病と歯周病の最新の疫学,歯周病細菌や炎症の他臓器や組織への波及と遠隔臓器障害への影響,およびそれらを結び付ける分子間相互作用,治療標的の可能性のある薬剤,高齢者糖尿病と口腔の健康,そして医科歯科連携の実際と実践について,特集としてまとめてみました.すべての項目を網羅していることから,特集を通して読むことで,肥満・糖尿病と歯周病の関連性の理解が一層深まるものと確信しております.


<目次>

〔特集〕
1.大規模データに基づく糖尿病と歯周病/森野勝太郎,宮澤伊都子,前川聡
2.肥満と歯周病の分子疫学/竹下 徹,山下喜久
3.歯周病細菌由来菌血症による遠隔臓器への影響/今井千尋,大杉勇人,片桐さやか
4.歯周病感染による腸内細菌巣の攪乱と全身への影響/山崎和久,山崎恭子
5.歯周病局所におけるインスリン抵抗性~インスリン抵抗性の新たな展開/水谷幸嗣,中川佳太,竹村 修,小湊広美
6.インスリン抵抗性と歯周炎~新たな分子基盤/新城尊徳
7.CCL19/CCR7シグナルによる微細炎症とエネルギー代謝/岩下未咲
8.歯周炎とNAFLD/NASH/倉治竜太郎,沼部幸博
9.インクレチン制御薬による歯周病への影響/中村信久,成瀬桂子
10.高齢者糖尿病と口腔の健康/四釜洋介,松下健二
11.歯周病と糖尿病の医科歯科連携/赤司朋之
4,400円
特集●最新!糖尿病網膜症
企画編集/鈴間 潔

<特集にあたって>

 日本眼科学会から『糖尿病網膜症診療ガイドライン』が公開され糖尿病網膜症治療はますます注目されています.しかし糖尿病網膜症の治療において光凝固,手術,薬物の3つが三本柱であることは現在でも変わりません.
 光凝固はパターンスキャン方式による汎網膜光凝固が主流となり,疼痛の軽減,施行時間の短縮,通院回数の減少などの恩恵がもたらされました.ナビゲーション付きのレーザー装置も普及してきており安全で正確な治療ができるようになりました.
 硝子体手術は広角観察システムと極小切開により低侵襲で術後早期の社会復帰が可能となりました.またトリアムシノロンやブリリアントブルー Gなどのアジュバントや硝子体カッターなどの手術機器の進歩により昔は治療が難しかった重症の増殖糖尿病網膜症でも確実に視機能を温存できるようになりました.薬物治療抵抗性の糖尿病黄斑浮腫に対する網膜下灌流液注入術や,OCT付の手術顕微鏡などが最近の話題となっています.
 全身的な薬物治療としてはやはりまず血糖コントロールが重要ですが,高血圧,高脂血症に対する治療も網膜症の進行を抑制することを示す大規模臨床試験の結果も近年明らかとなりました.
 眼局所の黄斑浮腫に対する薬物治療ではVEGFに対する分子標的治療薬が複数のなかから選択可能となっています.分子生物学の進歩によりさまざまな増殖因子が糖尿病網膜症の血管病変に関係していると報告されてきましたが,これらの増殖因子のなかでもVEGFが最も重要であると考えられています.現在糖尿病黄斑浮腫に対して抗VEGF治療が主流ですが,繰り返し投与が必要であることが問題となっています.治療戦略のポイントとしてはレーザー治療と硝子体手術は術前術後の血糖コントロールが視力予後を左右するのに対し,抗VEGF薬は血糖コントロールの影響をほとんど受けないことが報告されています.すなわち血糖の高い人に糖尿病黄斑症がある場合はまず抗VEGF治療を優先して行い,血糖が落ち着いてからレーザー治療や硝子体手術に移行するといった治療戦略が考えられるようになりました.本特集ではこのような最近の糖尿病網膜症についての最新情報をお届けいたします.


<目次>

〔特集〕
1. 糖尿病網膜症の予防とスクリーニングにおける人工知能の活用への期待/川崎 良
2. 分子メカニズム Molecular Mechanisms/野田航介
3. 糖尿病網膜症・黄斑浮腫における眼循環動態/長岡泰司
4. OCTとOCTAにより進歩した糖尿病網膜症診療/村上智昭
5. 内服治療の可能性/兼子裕規
6. レーザー/野崎実穂
7. 硝子体手術/的場 亮,森實祐基
8. 抗VEGF治療のエビデンス/吉田茂生
9. リアルワールドの抗VEGF治療/杉本昌彦
10. 眼科と内科の連携/津田祐希,中尾新太郎
11. 糖尿病網膜症診療ガイドライン(第一版)2020の解説/村田敏規
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特集●糖尿病治療 次の一手を考える
企画編集/下野 大

<特集にあたって>

 「次の一手を考える」.日々の糖尿病診療のなかで,患者のおかれている状況を少しでもよくするために,新たなストラテジーを考える必要性に迫られることはよくあるのではないだろうか.たとえば,目の前の患者について血糖コントロールをよくするためにどうしたらよいだろうか,何か続けやすい食事の工夫や運動はないだろうか,きちんとコミュニケーションをはかれているだろうか,使用している薬剤は適切だろうか,患者のQOLを向上するために何か工夫ができないだろうか,私たちは日ごろからたびたび自問している.そしてその際に,次の一手が遅れてしまうClinical Inertiaを避ける努力も必要である.
 昨今,新型コロナウイルス感染症対策のため,生活をとりまく環境は大きく変化した.これまでの食事療法や運動療法が継続できなくなったり,生活における糖尿病治療のプライオリティ(優先順位)や心理的背景が変わってしまったりしている場合も多く見受けられる.このような変化をとらえるためには,診療のなかでしっかりと傾聴すること,対話をすることが大事である.生活環境が変わったとしても,その状況にあった治療法を提案できるかもしれない.本特集では,継続できる食事療法や運動療法,そして患者とのコミュニケーションにおいて大事なコーチングについてエクスパートの先生方に解説いただいている.
 また,糖尿病の薬物療法(薬剤の種類やデバイスなど)が進歩したことによって,目標とする血糖コントロールを達成することは以前よりやりやすくなったと考えられる.しかし,薬物療法をうまく活用するためには,適切なタイミングで適切な治療を行うことも重要である.薬物療法のなかでも比較的新しい知見が得られている,または薬剤や投与方法に工夫がなされ臨床的有用性が期待される,DPP-4阻害薬,SGLT2阻害薬,GLP-1受容体作動薬,そしてインスリン治療について詳しく解説いただいた.これから薬物療法を選択する際,ぜひ参考にしていただきたい.
 『糖尿病治療ガイド2022-2023』(日本糖尿病学会編著)において,糖尿病治療の目標は「糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL」の達成であるとされている.この目標を達成するためには,高齢化などで増加する併存症の予防・管理を行い,社会的不利益がないような取り組みを行うことも重要である.
 本特集では糖尿病診療における地域医療やアドボカシー活動について経験豊かな先生方に解説いただいている.診察室や一医療機関を超え,糖尿病治療の目標を達成するための活動につなげていただければと思う.
 本特集を日常の糖尿病診療における「次の一手を考える」際の一助にしていただけると幸いである.


<目次>

〔特集〕
1. 糖尿病治療におけるClinical inertiaとReverse Clinical Inertiaを考える/佐藤秀一
2. コロナが生活を変えた.管理栄養士が今すべきこと,とはなにか/小園亜由美
3. 実践できる,継続できる,運動療法/松田拓朗
4. コーチングで目標を達成する/松本一成
5. 広がった,糖尿病薬物療法の選択肢/下野 大
6. DPP-4阻害薬の臨床的有用性/寺脇悠一
7. SGLT2阻害薬の臨床的有用性/髙橋佳大,藤澤太郎,矢部大介
8. GLP-1受容体作動薬の臨床的有用性/窪田紗希,丸山貴子,山田浩司,矢部大介
9. インスリン治療の進歩/澤木秀明
10. 次の一手としての病診連携/赤司朋之
4,400円
特集●糖尿病患者に忍び寄る骨折リスクとその対応
企画編集/今西康雄

<特集にあたって>

 各種併存疾患の合併により骨折リスクが増大することが知られている.とくに2型糖尿病や慢性腎臓病,慢性閉塞性肺疾患などの生活習慣病においては,骨密度とは独立した骨折リスクである骨質の低下が示唆されている.骨質とは,骨密度以外の骨脆弱性に関連した事象の総和とも言い換えることができ,骨微細構造・骨代謝回転・微小骨折・石灰化状態といった,骨密度で評価できない骨強度の指標である.2000年のNIHコンセンサス会議においては,骨粗鬆症が再定義され,「骨粗鬆症とは,骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患,A skeletal disorder characterized by compromised bone strength predisposing to an increased risk of fracture」と謳われた.さらに「骨強度は骨密度と骨質の2要因からなり,骨密度は骨強度の70 %を,骨質は30 %に影響する.」とも説明されている.
 骨質の1つの要素として,骨コラーゲン架橋の異常が報告されている.生理的な環境で作られる善玉架橋と,病的環境下で合成される悪玉架橋の両者で,骨脆弱性が規定される.海綿骨スコア(TBS)は,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)の画像を用いた指標で,各画素の濃度変動(ばらつき)を用いて骨微細構造を解析し,骨強度を評価する.HR-pQCT(高解像度末梢骨用定量的CT)は,非侵襲的に生体の骨微細構造を解析することで,皮質骨多孔性などの評価が可能である.
 糖尿病の合併症として,糖尿病性腎症や糖尿病性網膜症,糖尿病性神経障害が生じる.糖尿病性腎症による腎機能低下により骨質がさらに劣化し,糖尿病性網膜症,糖尿病性神経障害により転倒リスクが増大する.また,フレイル・サルコペニアも重大な合併症であると,近年認識されるようになった.このような状態になると,転倒リスクを正しく評価し,転倒防止対策を講じることで,骨折リスクの減少に努める必要が生じる.
 糖尿病も骨粗鬆症も食事療法の重要性が高いが,糖尿病性骨症における食事療法や指導法についても,実地的な視点からみた指導が重要である.さらに糖尿病性骨症の薬物治療であるが,糖代謝と骨代謝両面から考えておく必要がある.また,糖尿病性骨症の診療は,医師のみで完結するものではない.骨粗鬆症マネージャーや糖尿病療養指導士が,どのように患者とかかわるべきか,重要な課題である.
 本号においては,これらのトピックスを最前線で診療・研究に当たられている先生方からご解説いただく.本号が日常臨床のレベルアップに寄与することを,切に希望したい.


<目次>

〔特集〕
1. 糖尿病性骨症の疫学/笹子敬洋,植木浩二郎,門脇 孝
2. 糖尿病性骨症におけるDXA評価/山本昌弘
3. 糖尿病性骨症における骨質劣化機序/斎藤 充
4. 糖尿病性骨症における皮質骨劣化機序/千葉 恒,尾崎 誠
5. 糖尿病性腎症におけるビタミンD代謝異常/山形雅代
6. 糖尿病性腎症における骨脆弱性とその対策/中川洋佑,駒場大峰
7. フレイル・サルコペニアと糖尿病性骨症/元山宏華
8. 糖尿病性神経障害と転倒リスク評価/細井雅之,元山宏華
9. 糖尿病患者における転倒防止対策/櫻井真由美,大野良晃
10. 糖尿病性骨症における栄養指導/中川公恵
11. 糖尿病性骨症の治療/井上玲子,井上大輔
12. 骨粗鬆症マネージャーと糖尿病療養指導士の役割/鈴木敦詞
4,400円
特集●糖尿病患者の心・腎・肝を診る11のポイント
企画編集/土屋恭一郎

<特集にあたって>

 糖尿病治療の目標は,合併症の阻止および抑制により,糖尿病患者に健康な人と変わらないQOL(生活の質)と生命予後を確保することである.心血管疾患と糖尿病性腎臓病の予防は,この目標を達成するうえで極めて重要な中間目標であることはいうまでもない.さらに近年は,2型糖尿病において非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の罹患率は最大70 %に達し,2型糖尿病は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に進展する強力な危険因子であることも明らかとなっている.肝疾患も糖尿病の合併症の1つとして認識されつつある昨今,糖尿病患者のQOLと生命予後を見据えたトータルケアを実践するためには,血糖値や各種危険因子の管理のみならず,「心・腎・肝」も診るスキルが必要とされている.加えて,腎機能の低下が心血管疾患のリスクとなり,心血管疾患もまた腎機能低下を促進することや,NAFLDが心血管疾患ならびに慢性腎臓病のリスクを上昇させることも示されており,糖尿病診療において,臓器連関の理解に立脚した複眼的・俯瞰的な視点はますます求められているといえる.
 実診療においては,心・腎・肝疾患の進展に応じて,適切な時期に循環器内科,腎臓内科,肝臓内科の専門診療と連携することが重要である.しかし一方で,続々と明らかになっている糖尿病治療薬の「心・腎・肝」における興味深くインパクトのあるエビデンスを鑑みると,今や「心・腎・肝」の診療は糖尿病診療の重要かつ主要な一部分となりつつある.したがって,糖尿病診療においてこれらの臓器を診る力の必要性が高まっていることに加えて,循環器内科,腎臓内科,肝臓内科との連携についても,改めて考えるべき時期といえるかもしれない.
 本特集では,このような糖尿病診療を取り巻く変化を踏まえて,糖尿病患者の「心・腎・肝」を診るポイントについて,11のトピックをエキスパートの先生方にご執筆いただいた.臓器連関に関する詳細なご解説を皮切りに,糖尿病診療において頻繁に遭遇する「心・腎・肝」に関するトピックを選定し,できるだけ実践的な内容を意識したつもりである.また,診療科間の連携のあり方を改めて整理するために,ご執筆の先生方には,「どこまで診て,どこからコンサルトするか」についても各学会の指針を含めてご解説いただいた.本企画が明日からの糖尿病診療における有益な情報源となり,質の高いトータルケアの実現により糖尿病患者のQOLと生命予後の向上に少しでもつながることを願っている.

土屋恭一郎
(山梨大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科 病院准教授)


<目次>

〔特集〕
1. 糖尿病における心・腎・肝連関/宮地康高,小川佳宏
2. 糖尿病外来における心不全の診断・フォロー法と専門医紹介のタイミング/坂東泰子
3. 糖尿病外来における動脈硬化の診断・フォロー法と専門医に紹介すべきケース/多田隼人
4. 糖尿病外来における不整脈の診断・フォロー法と専門医に紹介すべきケース/大西勝也
5. 糖尿病外来におけるCKD/DKDのフォローのポイント/久米真司
6. DKDの生活・食事指導/斎藤知栄,山縣邦弘
7. 糖尿病外来での腎性貧血の診療ポイント/中川輝政,柿添 豊
8. 糖尿病に合併する肝機能障害の鑑別/井上 瑛,安西慶三,高橋宏和
9. 非肥満の脂肪肝へのアプローチ/正田純一,矢部義人,押田夏海
10. 糖尿病外来での脂肪肝のフォロー法と専門医紹介のタイミング/鈴木雄一朗,榎本信幸
11. NAFLD合併2型糖尿病における抗糖尿病薬の使い分け/河合俊英
4,400円
特集●これからのWithコロナ時代の糖尿病診療
企画編集/山﨑真裕

<特集にあたって>

 2019年末に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が世界で初めて報告され,我が国においても2020年1月に初めての患者の報告後,世界でのパンデミック,我が国の社会における感染予防対策,新しい生活様式,医療における対応など,われわれは大きな影響を受けた.新しい生活様式は,人流を減らし,三密(密集,密接,密閉)の回避を求められ,生活と密接にかかわる糖尿病療養は大きな影響を受けることとなった.生活行動の変化は活動量の変化,食行動の変化につながり個々の血糖コントロールに影響を及ぼした.COVID-19の重症化因子として肥満や糖尿病などの持病がいわれ,日々流れる不安をあおるようなテレビやネット経由の情報は患者の不安を高め,それだけでなく仕事や人間関係の変化は生活していくことそのものにも不安を感じることもあり,精神的ストレスの増大は不眠などの生活リズムへの影響や,直接的に血糖コントロールにも影響したと考えられる.また私たちが行ってきた糖尿病診療,療養指導,療養支援は患者-医療者関係といわれる人と人との人間関係を基本としており,対面で行う診察,フットケアを含めた療養相談,栄養指導,集団糖尿病教室,患者会活動といった診療そのものが制限されるなかで治療を行うことがどのような結果をもたらすのか不安を感じながら,新しい診療様式を模索してきた.
 一時はある一定期間を耐え忍べば,もとの生活様式に戻ることができるという思いで,この新しい生活様式に合わせた特別対応として工夫をしながら診療を行ってきたが,ワクチン接種が進み,根本的な治療薬の出現を待つ状況がすでに2年になる.今までとは違う様式が続くことはストレスとなるが,違うことを試すことで見えてくることもあった.Afterコロナを目指していた困難を感じる時期は過ぎ,Withコロナの新しい様式を日常にして発展させていく未来に目を向ける時期である.
 今回の特集では,まず現時点で分かっているCOVID-19の最新の情報,知識の整理を行ったうえで,糖尿病との関連,COVID-19治療における血糖コントロールの現場の状況を取り上げる.そしてコロナ禍において制限された療養支援の工夫を病院,診療所においてどのように行っているのかの共有をし,参考にしたい.また糖尿病療養の基本となる運動療法,食事療法のコロナ禍における注意点の学びから今行っている治療をよりよいものとし,さらにはすでに現在行われている「withコロナ時代」に活用するべき診療方式の未来を知る機会としたい.
 もちろん糖尿病診療において,患者-医療者関係の基礎となる人間関係の重要性は変わることはない.しかしコロナ禍を経験したことで未来にもっていくべきもの,削ぎ落すべきもの,形を変えなければいけないものなどが見えてきた.「これからのWithコロナ時代の糖尿病診療」をそれぞれがそれぞれの場所で行っていく未来に思いを馳せる機会にしていただければ幸せである.


<目次>

〔特集〕
1.新型コロナウイルス感染症の最前線/大曲貴夫
2.新型コロナウイルスと糖尿病の関係/牛込恵美,福井道明
3.入院新型コロナ感染症患者の血糖コントロール/濵口真英
4.病院における糖尿病療養支援の工夫/久松 香
5.診療所における糖尿病療養支援の工夫/水野美華
6.新型コロナ禍での運動指導/石井美穂
7.新型コロナ禍における食事療法の注意点/松岡幸代
8.Withコロナにおける薬局での対策/岡田 浩
9.Withコロナにおける診療所での糖尿病診療対策/原島伸一,鳥飼和美,板橋莉佳,原島知恵,西村亜希子
10.Withコロナだからこそのチーム医療/井上 瑛,安西慶三
4,400円
特集●脂肪細胞・アディポサイトカインと糖尿病
企画編集/阪上 浩

<特集にあたって>

 脂肪組織は白色脂肪細胞を主人にもつ.この主人は中性脂肪を脂肪滴という特有の細胞内器官に存分に貯め込む.しかし一旦全身がエネルギーを必要とするや否や,中性脂肪をすみやかにグリセロールと脂肪酸に分解して全身に供給するのだが,この脂肪の分解を抑制するためのインスリンの作用はとても低濃度から発揮される.すなわち白色脂肪細胞は可能な限りエネルギーを中性脂肪として蓄積し維持するための分子機構を備えているようであり,この脂肪組織のおかげで我々人類は飢餓の時代を乗り越えられてきたと考えられる.とくに内臓周囲の脂肪組織は直接的に肝臓にグリセロールとともに脂肪酸を供給し,脂肪酸はβ酸化によってアセチルCoAを生成しATP産生に使われるのだが,さらに肝臓は,脂肪酸からケトン体を合成し,脳へと供給してアセチルCoAへと変化させて神経細胞のエネルギー源とさせる.
 このような脂肪組織とエネルギー蓄積・供給の関係は,過栄養や運動不足という現代社会においては,内臓脂肪組織への脂肪過剰蓄積という糖尿病や動脈硬化の共通基盤として基本概念,すなわち「メタボリックシンドローム」として松澤佑次大阪大学名誉教授らによって提唱されたのだが,当時きわめて先駆的な考えであった.一方で,自身に脂肪も蓄えながら,必要な時に迅速にβ酸化によって得たアセチルCoAを利用して熱を産生する褐色脂肪組織の存在も斉藤昌之北海道大学名誉教授らによってヒトにおいてもその存在が明らかとされ,さらには白色脂肪組織においてさえも,必要に応じて出現し熱を産生するベージュ脂肪細胞が存在することも明らかとされた.
 では一体何故,「内臓脂肪組織への脂肪過剰蓄積」が糖尿病などの生活習慣病を起こすのか,また実際,熱を産生する褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞を活性化させることで生活習慣病が改善させられるのか,基礎研究とともに臨床研究や疫学調査が車の両輪のごとく実施され,その分子機構が解明されて臨床応用への道筋ができてきた.その研究での大きな成果の1つが脂肪細胞特異的に分泌する生理活性物質,アディポサイトカインの発見である.編者は幸運にも,次々に発見されるアディポサイトカインの作用を研究の現場で直接的に観察する機会を得た.表現は難しいのだが,化学療法剤のようなものをマウスに投与したときのダメージとしての摂食抑制や血糖値の低下ではなく,健康で元気で走り回るマウスの表現型として,レプチンによる摂食抑制やアディポネクチンのインスリン抵抗性改善作用を目の当たりにして,当時とても感動したのを今も鮮明に覚えている.
 さて,日進月歩で膨大な数の新しい知見やエビデンスが集積される糖尿病研究において,脂肪細胞・アディポサイトカインと糖尿病に関してUp-Dateするために本稿を企画させていただいた.研究のみでなく臨床の最前線で活躍されている読者の皆様にも,現時点での研究内容が欠けることなく,わかりやすく解説する紙面になってくれれば,明日からの臨床にも役立つものになるに違いない.最後に,大変ご多忙のなかご無理を言って編者の意図をくみ取ってご執筆いただいた先生方にこの場を借りて感謝申し上げる次第である.


<目次>

〔特集〕
I.脂肪細胞と糖尿病
 1.脂肪細胞機能不全と糖尿病/細岡哲也,小川 渉
 2.脂肪組織炎症と糖尿病/戸邉一之,瀧川章子,アラーナワズ,角 朝信,藤坂志帆
 3.脂肪細胞のエピジェネティック修飾と糖尿病/脇 裕典,山内敏正
 4.褐色脂肪細胞と糖尿病/黒田雅士,堤 理恵,阪上 浩

II.アディポサイトカインと糖尿病
 1.アディポネクチンと2型糖尿病/岩部真人,岩部美紀,山内敏正
 2.レプチンと2型糖尿病/日下部 徹
 3.アディポサイトカインと1型糖尿病/石垣 泰
 4.脂肪細胞由来non-coding RNA,エクソソームと糖尿病/喜多俊文

III.脂肪細胞を含む多臓器ネットワークと糖尿病
 1.NALFD/NASHと糖尿病/中司敦子,和田 淳
 2.腸内環境と糖尿病/菊地理恵子,入江潤一郎
 3.膵β細胞における脂肪酸シグナルと糖尿病/島袋充生
 4.アディポサイトカインとメタボリックシンドローム~アディポネクチンによるメタボリックシンドロームの発症リスク予測~/船木真理
4,400円
特集●経口血糖降下薬の温故知新
企画編集/駒津光久

<特集にあたって>

 今から約100年前に糖尿病の“特効薬”として登場したインスリンがさまざまな進化を遂げ多くの糖尿病患者に福音をもたらしている.一方,多くの2型糖尿病患者では経口血糖降下薬の進歩でインスリン投与なしで良好な血糖コントロールが可能な時代となっていることはまさに隔世の感である.
 1956年,SU薬であるトルブタミドの上市は初めての経口血糖降下薬として注目を集め,数年後にビグアナイド系としてフェンホルミン,ブホルミン,さらにメトホルミンが用いられるようになり新たな糖尿病薬物治療の時代が始まった.フェンホルミンは乳酸アシドーシスのリスクが高く市場から消え,現在ではメトホルミンが主に使用されている.トルブタミドは,のちに多くの批判を招いたUDGP研究でインスリンに比べ心血管イベントが多いとされ,UKPDS研究が発表されるまでは,他に選択肢がないために仕方なく使用され続けているような状況であった.現在,SU薬はCAROLINA試験において心血管イベントや認知機能に対する中立性が証明され,ついに正当な評価を受けるに至った.メトホルミンもUKPDSで確固たるエビデンスが確立され,今や海外では第一選択と位置づけられている.このように経口血糖降下薬は60年以上前に開発された製剤がいまだに重要なポジショニングを得ている.
 1990年代以降α-GI,チアゾリジン薬,グリニド薬と矢継ぎ早に新薬が登場し,それぞれの特徴を発揮し新たな経口血糖降下薬としてのポジショニングを築いてきた.2009年末に発売されたシタグリプチンを皮切りに一連のDPP-4阻害薬の登場は2型糖尿病の薬物療法を一変させ,その安全性や心血管イベントへの中立性も証明され,広く用いられている.そして,2014年から発売された一連のSGLT2阻害薬は大きく糖尿病の薬物療法を進化させた.当初,その安全性に関して慎重な対応がとられていたが,EMPA-REG OUTCOME試験がゲームチェンジャーとなり,各種SGLT2阻害薬による心血管イベント抑制効果,心不全の悪化抑制,腎に対する保護効果など,当初の予想をはるかに超えたエビデンスが積み上がり,使用上の注意点はあるものの主要な経口血糖降下薬へと躍進した.2021年には,注射薬としてエビデンスを蓄積していたGLP-1受容体作動薬に経口投与が可能となった経口セマグルチドが上市され,今後のキープレーヤーになると期待されている.メトホルミンの構造を変えることで新たな血糖降下作用を有するイメグリミンも上市され,経口血糖降下薬は新旧交えた百花繚乱の様相である.
 本特集では,それぞれの経口血糖降下薬について特徴や使用法,エビデンスなどを,その分野の専門家にご解説いただくことにより,経口血糖降下薬の温故知新をふまえ個別化治療に役立つことを願っている.さらに,海外で提唱されている2型糖尿病患者への薬物治療アルゴリズムの解説や経口血糖降下薬に関するエビデンスに対する正しい向き合い方に関しても解説していただく.

駒津光久

<目次>

〔特集〕
1.スルホニルウレア薬~エビデンスを正しく知って活用しよう~/古川慎哉,三宅映己
2.ビグアナイド薬~消化管作用を含めた新規の知見~/森田靖子,小川 渉
3.α-グルコシダーゼ阻害薬~知っておきたい本薬の効果~/田中 逸
4.チアゾリジン薬~“クセモノ”薬の活用術~/大森一生,八木稔人
5.グリニド薬~いま改めてその力に着目する~/鴫山文華,弘世貴久
6.DPP-4阻害薬~DPP-4の正体はT細胞表面抗原CD26だった~/麻生好正
7.SGLT-2阻害薬~期待を超えるイノベーター~/鈴木 亮
8.経口GLP-1受容体作動薬~胃粘膜から吸収されるGLP-1受容体作動薬~/窪田創大,加藤丈博,水野正巳,矢部大介
9.イメグリミン~ミトコンドリア機能を改善する経口糖尿病薬~/野村政壽,蓮澤奈央
10.経口血糖降下薬の配合剤をどのように活かすか/北澤 公
11.ADA/EASD合同ステートメントの高血糖管理アルゴリズムについて/住谷 哲
4,400円
特集●目標を見据えた高齢者糖尿病管理~実態の理解から薬物療法まで~
企画編集/齋藤重幸

<特集にあたって>

 日本糖尿病学会 編『糖尿病治療ガイド』の最新版での,糖尿病の「治療目標」は「健康な人と変わらない人生」の達成である.そのために「高齢者などで増加する併存症の予防・管理」を実践するとされている.また同時に糖尿病に対する「Stigma,社会的不利益,いわれのない差別」の除去が必要とされている.いわゆる健康寿命の延伸,個人の満足な人生の達成は,2020年高齢化率28.7 %の超高齢社会を迎えたわが国の喫緊の課題であり,困難な状況下にある高齢者糖尿病者ではより大きなテーマである.
 厚生労働省の平成26年国民健康・栄養調査結果によると,糖尿病が強く疑われる者の割合は,65~74歳の前期高齢者で18.3 %,75歳以上の後期高齢者では19.7 %と報告されており,高齢者では糖尿病が疑われる者が約5人に1人と推定される.一方,平成29年患者調査によると,わが国の糖尿病の患者数は328万9,000人と推計され,2014年調査の316万6,000人から12万3,000人の増加で過去最高となった.このうち65歳以上の高齢者は70 %程度を占め,糖尿病診療の中心は高齢者となっている.統計に上がる患者の多くは外来患者である.本統計では糖尿病が他疾患の併存疾患となっているものは糖尿病患者の数に含まれないと思われるが,最近のわが国の糖尿病者数は約1,000万人と推計されるので医療の管理下にない糖尿病者もまだ多数存在するものと考えられる.
 糖尿病者の生命予後は年々改善しているが,糖尿病学会の報告では2001~2010年間は,一般人の平均余命に比較して,糖尿病者の死亡時平均年齢は男性で8.2年,女性で11.2年短いことが示されている.さらに高齢者糖尿病では認知症,うつ,ADL低下,サルコペニア,転倒,骨折,フレイル,尿失禁,低Na血症などの老年症候群をきたしやすく,これが健康寿命の短縮につながる.
 高齢者での糖尿病の予防,管理に加え,壮・中年から持ち越している慢性疾患としての糖尿病の管理が重要である.高齢者糖尿病では年齢に加え,併存疾患の有無,罹病期間,合併症の程度などがさまざまである.個別診療が目標達成にはより重要である.2017年に日本糖尿病学会と日本老年医学会から『高齢者糖尿病診療ガイドライン2017』が刊行され,わが国における高齢者糖尿病診療のスタンダードが示されるようになった.そこで今回,ガイドラインから4年経った現在,高齢者糖尿病の実態はどのように変化したか,とくに上進著しい糖尿病薬物を絡めて,それぞれの専門家に論述いただくことにした.
 本特集では高齢者糖尿病を,(1)生命予後,機能予後を含めた疫学的Fact,(2)認知機能とADL評価を含めた診断,(3)食事・運動療法,(4)薬物療法,(5)心不全・脳血管疾患,(6)CKD,(7)サルコペニア・フレイル,(8)認知症,(9)糖尿病足,(10)低血糖,(11)薬物の合併症の病態,の観点から概説していただき,最後に(12)長寿遺伝子と糖尿病薬物療法について述べていただく.


<目次>

〔特集〕
I. わが国の高齢者糖尿病の実態/荒木 厚
II. 高齢者糖尿病の診療の実際
 1. 高齢者糖尿病における診療の流れ/赤坂 憲
 2. 高齢者糖尿病における食事療法・運動療法の実際/髙橋佳大,水野正巳,山川顕吾,林 慎,村山正憲,矢部大介
 3. 高齢者糖尿病の薬物療法/伊藤禄郎,鈴木 亮
III. 高齢者糖尿病の薬物療法の実態
 1. 高齢者糖尿病の心不全・脳血管疾患を見据えた薬物療法/倉野美穂子,西尾善彦
 2. 糖尿病性腎症・透析導入予防を見据えた高齢者糖尿病の治療/馬場園哲也
 3. 高齢者糖尿病のフレイル・サルコペニアを見据えた管理/杉本 研
 4. 高齢者糖尿病の認知症を見据えた管理/井口真由香,神出 計
 5. 高齢者糖尿病の足病変を見据えた管理/澄川真珠子
IV. 高齢者薬物療法の注意点
 1. 高齢者の低血糖事故の実態/上村芙美,岡田洋右
 2. 糖尿病薬における皮膚合併/氏家英之
V. 糖尿病・血糖降下薬と長寿遺伝子サーチュイン/久野篤史
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月刊糖尿病(DIABETES)の内容

  • 出版社:医学出版
  • 発行間隔:隔月刊
  • 発売日:毎偶月20日
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これまでなかった“糖尿病に特化した月刊専門誌”
糖尿病は研究や臨床面での進歩も著しい。 糖尿病の重要な遺伝子が同定され、 糖尿病や合併症の発症の分子機構の解明も大きく進み、 iPS細胞を中心とした糖尿病や合併症の再生医療への展望も切り開かれつつある。 糖尿病治療薬についても期待される新薬の臨床使用・開発が続々と進んでいる。 そこで、糖尿病の質の高い診療を行なうためには、 日進月歩で集積される膨大な数の新しい知見やエビデンスをその重要度に従って、 評価・選別し、その内容の深さをそこなうことなく、 わかりやすく解説する場が必要となってくる。 『月刊糖尿病』は、まさにこのような切実なニーズに応えることを意図したものである。

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