月刊糖尿病(DIABETES) 発売日・バックナンバー

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4,400円
特集●これからのWithコロナ時代の糖尿病診療
企画編集/山﨑真裕

<特集にあたって>

 2019年末に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が世界で初めて報告され,我が国においても2020年1月に初めての患者の報告後,世界でのパンデミック,我が国の社会における感染予防対策,新しい生活様式,医療における対応など,われわれは大きな影響を受けた.新しい生活様式は,人流を減らし,三密(密集,密接,密閉)の回避を求められ,生活と密接にかかわる糖尿病療養は大きな影響を受けることとなった.生活行動の変化は活動量の変化,食行動の変化につながり個々の血糖コントロールに影響を及ぼした.COVID-19の重症化因子として肥満や糖尿病などの持病がいわれ,日々流れる不安をあおるようなテレビやネット経由の情報は患者の不安を高め,それだけでなく仕事や人間関係の変化は生活していくことそのものにも不安を感じることもあり,精神的ストレスの増大は不眠などの生活リズムへの影響や,直接的に血糖コントロールにも影響したと考えられる.また私たちが行ってきた糖尿病診療,療養指導,療養支援は患者-医療者関係といわれる人と人との人間関係を基本としており,対面で行う診察,フットケアを含めた療養相談,栄養指導,集団糖尿病教室,患者会活動といった診療そのものが制限されるなかで治療を行うことがどのような結果をもたらすのか不安を感じながら,新しい診療様式を模索してきた.
 一時はある一定期間を耐え忍べば,もとの生活様式に戻ることができるという思いで,この新しい生活様式に合わせた特別対応として工夫をしながら診療を行ってきたが,ワクチン接種が進み,根本的な治療薬の出現を待つ状況がすでに2年になる.今までとは違う様式が続くことはストレスとなるが,違うことを試すことで見えてくることもあった.Afterコロナを目指していた困難を感じる時期は過ぎ,Withコロナの新しい様式を日常にして発展させていく未来に目を向ける時期である.
 今回の特集では,まず現時点で分かっているCOVID-19の最新の情報,知識の整理を行ったうえで,糖尿病との関連,COVID-19治療における血糖コントロールの現場の状況を取り上げる.そしてコロナ禍において制限された療養支援の工夫を病院,診療所においてどのように行っているのかの共有をし,参考にしたい.また糖尿病療養の基本となる運動療法,食事療法のコロナ禍における注意点の学びから今行っている治療をよりよいものとし,さらにはすでに現在行われている「withコロナ時代」に活用するべき診療方式の未来を知る機会としたい.
 もちろん糖尿病診療において,患者-医療者関係の基礎となる人間関係の重要性は変わることはない.しかしコロナ禍を経験したことで未来にもっていくべきもの,削ぎ落すべきもの,形を変えなければいけないものなどが見えてきた.「これからのWithコロナ時代の糖尿病診療」をそれぞれがそれぞれの場所で行っていく未来に思いを馳せる機会にしていただければ幸せである.


<目次>

〔特集〕
1.新型コロナウイルス感染症の最前線/大曲貴夫
2.新型コロナウイルスと糖尿病の関係/牛込恵美,福井道明
3.入院新型コロナ感染症患者の血糖コントロール/濵口真英
4.病院における糖尿病療養支援の工夫/久松 香
5.診療所における糖尿病療養支援の工夫/水野美華
6.新型コロナ禍での運動指導/石井美穂
7.新型コロナ禍における食事療法の注意点/松岡幸代
8.Withコロナにおける薬局での対策/岡田 浩
9.Withコロナにおける診療所での糖尿病診療対策/原島伸一,鳥飼和美,板橋莉佳,原島知恵,西村亜希子
10.Withコロナだからこそのチーム医療/井上 瑛,安西慶三
4,400円
特集●脂肪細胞・アディポサイトカインと糖尿病
企画編集/阪上 浩

<特集にあたって>

 脂肪組織は白色脂肪細胞を主人にもつ.この主人は中性脂肪を脂肪滴という特有の細胞内器官に存分に貯め込む.しかし一旦全身がエネルギーを必要とするや否や,中性脂肪をすみやかにグリセロールと脂肪酸に分解して全身に供給するのだが,この脂肪の分解を抑制するためのインスリンの作用はとても低濃度から発揮される.すなわち白色脂肪細胞は可能な限りエネルギーを中性脂肪として蓄積し維持するための分子機構を備えているようであり,この脂肪組織のおかげで我々人類は飢餓の時代を乗り越えられてきたと考えられる.とくに内臓周囲の脂肪組織は直接的に肝臓にグリセロールとともに脂肪酸を供給し,脂肪酸はβ酸化によってアセチルCoAを生成しATP産生に使われるのだが,さらに肝臓は,脂肪酸からケトン体を合成し,脳へと供給してアセチルCoAへと変化させて神経細胞のエネルギー源とさせる.
 このような脂肪組織とエネルギー蓄積・供給の関係は,過栄養や運動不足という現代社会においては,内臓脂肪組織への脂肪過剰蓄積という糖尿病や動脈硬化の共通基盤として基本概念,すなわち「メタボリックシンドローム」として松澤佑次大阪大学名誉教授らによって提唱されたのだが,当時きわめて先駆的な考えであった.一方で,自身に脂肪も蓄えながら,必要な時に迅速にβ酸化によって得たアセチルCoAを利用して熱を産生する褐色脂肪組織の存在も斉藤昌之北海道大学名誉教授らによってヒトにおいてもその存在が明らかとされ,さらには白色脂肪組織においてさえも,必要に応じて出現し熱を産生するベージュ脂肪細胞が存在することも明らかとされた.
 では一体何故,「内臓脂肪組織への脂肪過剰蓄積」が糖尿病などの生活習慣病を起こすのか,また実際,熱を産生する褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞を活性化させることで生活習慣病が改善させられるのか,基礎研究とともに臨床研究や疫学調査が車の両輪のごとく実施され,その分子機構が解明されて臨床応用への道筋ができてきた.その研究での大きな成果の1つが脂肪細胞特異的に分泌する生理活性物質,アディポサイトカインの発見である.編者は幸運にも,次々に発見されるアディポサイトカインの作用を研究の現場で直接的に観察する機会を得た.表現は難しいのだが,化学療法剤のようなものをマウスに投与したときのダメージとしての摂食抑制や血糖値の低下ではなく,健康で元気で走り回るマウスの表現型として,レプチンによる摂食抑制やアディポネクチンのインスリン抵抗性改善作用を目の当たりにして,当時とても感動したのを今も鮮明に覚えている.
 さて,日進月歩で膨大な数の新しい知見やエビデンスが集積される糖尿病研究において,脂肪細胞・アディポサイトカインと糖尿病に関してUp-Dateするために本稿を企画させていただいた.研究のみでなく臨床の最前線で活躍されている読者の皆様にも,現時点での研究内容が欠けることなく,わかりやすく解説する紙面になってくれれば,明日からの臨床にも役立つものになるに違いない.最後に,大変ご多忙のなかご無理を言って編者の意図をくみ取ってご執筆いただいた先生方にこの場を借りて感謝申し上げる次第である.


<目次>

〔特集〕
I.脂肪細胞と糖尿病
 1.脂肪細胞機能不全と糖尿病/細岡哲也,小川 渉
 2.脂肪組織炎症と糖尿病/戸邉一之,瀧川章子,アラーナワズ,角 朝信,藤坂志帆
 3.脂肪細胞のエピジェネティック修飾と糖尿病/脇 裕典,山内敏正
 4.褐色脂肪細胞と糖尿病/黒田雅士,堤 理恵,阪上 浩

II.アディポサイトカインと糖尿病
 1.アディポネクチンと2型糖尿病/岩部真人,岩部美紀,山内敏正
 2.レプチンと2型糖尿病/日下部 徹
 3.アディポサイトカインと1型糖尿病/石垣 泰
 4.脂肪細胞由来non-coding RNA,エクソソームと糖尿病/喜多俊文

III.脂肪細胞を含む多臓器ネットワークと糖尿病
 1.NALFD/NASHと糖尿病/中司敦子,和田 淳
 2.腸内環境と糖尿病/菊地理恵子,入江潤一郎
 3.膵β細胞における脂肪酸シグナルと糖尿病/島袋充生
 4.アディポサイトカインとメタボリックシンドローム~アディポネクチンによるメタボリックシンドロームの発症リスク予測~/船木真理
4,400円
特集●経口血糖降下薬の温故知新
企画編集/駒津光久

<特集にあたって>

 今から約100年前に糖尿病の“特効薬”として登場したインスリンがさまざまな進化を遂げ多くの糖尿病患者に福音をもたらしている.一方,多くの2型糖尿病患者では経口血糖降下薬の進歩でインスリン投与なしで良好な血糖コントロールが可能な時代となっていることはまさに隔世の感である.
 1956年,SU薬であるトルブタミドの上市は初めての経口血糖降下薬として注目を集め,数年後にビグアナイド系としてフェンホルミン,ブホルミン,さらにメトホルミンが用いられるようになり新たな糖尿病薬物治療の時代が始まった.フェンホルミンは乳酸アシドーシスのリスクが高く市場から消え,現在ではメトホルミンが主に使用されている.トルブタミドは,のちに多くの批判を招いたUDGP研究でインスリンに比べ心血管イベントが多いとされ,UKPDS研究が発表されるまでは,他に選択肢がないために仕方なく使用され続けているような状況であった.現在,SU薬はCAROLINA試験において心血管イベントや認知機能に対する中立性が証明され,ついに正当な評価を受けるに至った.メトホルミンもUKPDSで確固たるエビデンスが確立され,今や海外では第一選択と位置づけられている.このように経口血糖降下薬は60年以上前に開発された製剤がいまだに重要なポジショニングを得ている.
 1990年代以降α-GI,チアゾリジン薬,グリニド薬と矢継ぎ早に新薬が登場し,それぞれの特徴を発揮し新たな経口血糖降下薬としてのポジショニングを築いてきた.2009年末に発売されたシタグリプチンを皮切りに一連のDPP-4阻害薬の登場は2型糖尿病の薬物療法を一変させ,その安全性や心血管イベントへの中立性も証明され,広く用いられている.そして,2014年から発売された一連のSGLT2阻害薬は大きく糖尿病の薬物療法を進化させた.当初,その安全性に関して慎重な対応がとられていたが,EMPA-REG OUTCOME試験がゲームチェンジャーとなり,各種SGLT2阻害薬による心血管イベント抑制効果,心不全の悪化抑制,腎に対する保護効果など,当初の予想をはるかに超えたエビデンスが積み上がり,使用上の注意点はあるものの主要な経口血糖降下薬へと躍進した.2021年には,注射薬としてエビデンスを蓄積していたGLP-1受容体作動薬に経口投与が可能となった経口セマグルチドが上市され,今後のキープレーヤーになると期待されている.メトホルミンの構造を変えることで新たな血糖降下作用を有するイメグリミンも上市され,経口血糖降下薬は新旧交えた百花繚乱の様相である.
 本特集では,それぞれの経口血糖降下薬について特徴や使用法,エビデンスなどを,その分野の専門家にご解説いただくことにより,経口血糖降下薬の温故知新をふまえ個別化治療に役立つことを願っている.さらに,海外で提唱されている2型糖尿病患者への薬物治療アルゴリズムの解説や経口血糖降下薬に関するエビデンスに対する正しい向き合い方に関しても解説していただく.

駒津光久

<目次>

〔特集〕
1.スルホニルウレア薬~エビデンスを正しく知って活用しよう~/古川慎哉,三宅映己
2.ビグアナイド薬~消化管作用を含めた新規の知見~/森田靖子,小川 渉
3.α-グルコシダーゼ阻害薬~知っておきたい本薬の効果~/田中 逸
4.チアゾリジン薬~“クセモノ”薬の活用術~/大森一生,八木稔人
5.グリニド薬~いま改めてその力に着目する~/鴫山文華,弘世貴久
6.DPP-4阻害薬~DPP-4の正体はT細胞表面抗原CD26だった~/麻生好正
7.SGLT-2阻害薬~期待を超えるイノベーター~/鈴木 亮
8.経口GLP-1受容体作動薬~胃粘膜から吸収されるGLP-1受容体作動薬~/窪田創大,加藤丈博,水野正巳,矢部大介
9.イメグリミン~ミトコンドリア機能を改善する経口糖尿病薬~/野村政壽,蓮澤奈央
10.経口血糖降下薬の配合剤をどのように活かすか/北澤 公
11.ADA/EASD合同ステートメントの高血糖管理アルゴリズムについて/住谷 哲
4,400円
特集●目標を見据えた高齢者糖尿病管理~実態の理解から薬物療法まで~
企画編集/齋藤重幸

<特集にあたって>

 日本糖尿病学会 編『糖尿病治療ガイド』の最新版での,糖尿病の「治療目標」は「健康な人と変わらない人生」の達成である.そのために「高齢者などで増加する併存症の予防・管理」を実践するとされている.また同時に糖尿病に対する「Stigma,社会的不利益,いわれのない差別」の除去が必要とされている.いわゆる健康寿命の延伸,個人の満足な人生の達成は,2020年高齢化率28.7 %の超高齢社会を迎えたわが国の喫緊の課題であり,困難な状況下にある高齢者糖尿病者ではより大きなテーマである.
 厚生労働省の平成26年国民健康・栄養調査結果によると,糖尿病が強く疑われる者の割合は,65~74歳の前期高齢者で18.3 %,75歳以上の後期高齢者では19.7 %と報告されており,高齢者では糖尿病が疑われる者が約5人に1人と推定される.一方,平成29年患者調査によると,わが国の糖尿病の患者数は328万9,000人と推計され,2014年調査の316万6,000人から12万3,000人の増加で過去最高となった.このうち65歳以上の高齢者は70 %程度を占め,糖尿病診療の中心は高齢者となっている.統計に上がる患者の多くは外来患者である.本統計では糖尿病が他疾患の併存疾患となっているものは糖尿病患者の数に含まれないと思われるが,最近のわが国の糖尿病者数は約1,000万人と推計されるので医療の管理下にない糖尿病者もまだ多数存在するものと考えられる.
 糖尿病者の生命予後は年々改善しているが,糖尿病学会の報告では2001~2010年間は,一般人の平均余命に比較して,糖尿病者の死亡時平均年齢は男性で8.2年,女性で11.2年短いことが示されている.さらに高齢者糖尿病では認知症,うつ,ADL低下,サルコペニア,転倒,骨折,フレイル,尿失禁,低Na血症などの老年症候群をきたしやすく,これが健康寿命の短縮につながる.
 高齢者での糖尿病の予防,管理に加え,壮・中年から持ち越している慢性疾患としての糖尿病の管理が重要である.高齢者糖尿病では年齢に加え,併存疾患の有無,罹病期間,合併症の程度などがさまざまである.個別診療が目標達成にはより重要である.2017年に日本糖尿病学会と日本老年医学会から『高齢者糖尿病診療ガイドライン2017』が刊行され,わが国における高齢者糖尿病診療のスタンダードが示されるようになった.そこで今回,ガイドラインから4年経った現在,高齢者糖尿病の実態はどのように変化したか,とくに上進著しい糖尿病薬物を絡めて,それぞれの専門家に論述いただくことにした.
 本特集では高齢者糖尿病を,(1)生命予後,機能予後を含めた疫学的Fact,(2)認知機能とADL評価を含めた診断,(3)食事・運動療法,(4)薬物療法,(5)心不全・脳血管疾患,(6)CKD,(7)サルコペニア・フレイル,(8)認知症,(9)糖尿病足,(10)低血糖,(11)薬物の合併症の病態,の観点から概説していただき,最後に(12)長寿遺伝子と糖尿病薬物療法について述べていただく.


<目次>

〔特集〕
I. わが国の高齢者糖尿病の実態/荒木 厚
II. 高齢者糖尿病の診療の実際
 1. 高齢者糖尿病における診療の流れ/赤坂 憲
 2. 高齢者糖尿病における食事療法・運動療法の実際/髙橋佳大,水野正巳,山川顕吾,林 慎,村山正憲,矢部大介
 3. 高齢者糖尿病の薬物療法/伊藤禄郎,鈴木 亮
III. 高齢者糖尿病の薬物療法の実態
 1. 高齢者糖尿病の心不全・脳血管疾患を見据えた薬物療法/倉野美穂子,西尾善彦
 2. 糖尿病性腎症・透析導入予防を見据えた高齢者糖尿病の治療/馬場園哲也
 3. 高齢者糖尿病のフレイル・サルコペニアを見据えた管理/杉本 研
 4. 高齢者糖尿病の認知症を見据えた管理/井口真由香,神出 計
 5. 高齢者糖尿病の足病変を見据えた管理/澄川真珠子
IV. 高齢者薬物療法の注意点
 1. 高齢者の低血糖事故の実態/上村芙美,岡田洋右
 2. 糖尿病薬における皮膚合併/氏家英之
V. 糖尿病・血糖降下薬と長寿遺伝子サーチュイン/久野篤史
4,400円
特集●糖尿病診療における臨床検査
企画編集/佐藤麻子

<特集にあたって>

 我が国における糖尿病人口はいまだ増加の一途をたどり,すべての診療科の日常診療で頻回に遭遇する疾患となっている.糖尿病はその病域が広く,初期の高血糖から,長期の罹病期間を経て腎不全,大血管症などの合併症や併存疾患を発症したさまざまな病態を呈する.また,糖尿病患者の大多数を占める2型糖尿病は,その特徴の1つとして,重症化するまで自覚症状が乏しいことが挙げられ,積極的な検査による病態の把握が必要になる.
 臨床検査は,疾患の診断そして治療の効果判定に用いられ,医療の根幹をなす重要なものである.糖尿病診療に関連する臨床検査としては,糖尿病の成因と病態に関わる検査,糖尿病の診断のための検査,治療経過をみるための血糖コントロール指標,合併症(細小血管症,大血管症)を診断するための検査などが挙げられ,各々の糖尿病患者の病期や病態に応じた適切な検査を選択し,施行する必要がある.
 本特集では,「糖尿病診療における臨床検査」と題し,いつ,どのような検査が必要か,その検査でどのようなことがわかるのか,を糖尿病を専門としていない医師や看護師にもわかりやすく解説することを目指した.内容は,基本的な事項が中心であるが,最新の知見もわかりやすく紹介されている.糖尿病診療の基礎的知識の習得や確認のために網羅的に読んでいただくもよし,目の前の患者の病態に特化した部分を読んで診療に役立ていただくもよし.いずれの場合も,日常診療において糖尿病に関する臨床検査を有効に活用し,ひいては糖尿病の合併症に苦しむ患者が一人でも少なくなるために,本書が少しでもお役に立てば幸甚である.
 なお,本誌の出版にあたり,臨床の第一線で活躍されている多くの先生方に,ご多忙のなかご執筆いただいたことを,この場を借りて厚く御礼申し上げる.

佐藤麻子
(東京女子医科大学 臨床検査科 教授)


<目次>

〔特集〕
【Ⅰ 糖尿病成因と病態にかかわる検査】
1. インスリン分泌~IRI,Cペプチドの説明と測定の意義について~/田口昭彦,谷澤幸生
2. インスリン抵抗性/仲村武裕,益崎裕章
3. グルカゴン・GLP-1/小須田 南,石原寿光

【Ⅱ 糖尿病の病型分類】
1. 糖尿病の診断フロー・境界型の判定と意義/二木寛之,岩部真人,岩部美紀,山内敏正
2. 1型糖尿病/及川洋一,島田 朗
3. 単一の遺伝子で起こる糖尿病~インスリン作用にかかわる遺伝子異常を中心に~/高吉倫史,廣田勇士,小川 渉
4. 妊娠糖尿病/嶋田真弓,和栗雅子

【Ⅲ 血糖コントロール】
1. 血糖コントロール指標/杉山和俊,目黒 周
2. 血糖モニタリング~CGMの適応と結果の解釈,問題点,SMBG指導で注意すべきこと~/菅沼由佳,髙橋 紘,西村理明

【Ⅴ 合併症検査】
1. 糖尿病ケトアシドーシス/川村良一,大澤春彦
2. 神経障害/加瀬正人,麻生好正
3. 網膜症~網膜症の分類,検査時期~/北野滋彦
4. 糖尿病性腎症の検査/守屋達美
5. 糖尿病診療における血管障害評価検査/冨山博史
4,400円
特集●糖尿病診療における運動・身体活動
企画編集/勝川史憲

<特集にあたって>

 糖尿病治療において運動療法の重要性は明らかだが,その指導やフィードバックに関して,実際の臨床では課題も多い.今日,糖尿病診療における運動・身体活動の目的は,糖尿病の重症化・発症予防にとどまらない.目の前の患者は,肥満や他の生活習慣病など,それぞれ異なる運動の要件を必要とする疾患を合併していることが多く,高齢患者では,フレイル予防の観点からの運動指導も重要となる.こうした状況に伴って,運動処方は,従来の中強度運動を主体とするものから,強度が異なる他の有酸素運動・生活活動やレジスタンス運動(筋力トレーニング)・バランス運動を含む多様なものに変化している.
 糖尿病や合併する病態に関する知見は,運動処方の変化を上回って進展している.これらの基礎的知見を踏まえて,運動療法の概念・処方の修正・革新を図ることは,今後も必要だろう.本特集は,前半で運動の背景となる基礎的なテーマを扱い,後半で,運動療法の実際について取り上げる.
 前半ではまず,運動・身体活動の定義を踏まえて,糖尿病患者の身体活動の現状を理解する.次いで,血糖コントロールに寄与する体重変化を運動が規定する因子として,24時間のエネルギー基質の出納,食欲を介したエネルギー出納への影響について学び,運動が減量に貢献する機序の理解を進める.さらに,糖尿病が骨格筋量減少を合併する機序,マイオカイン研究の現状と展望など,運動に関連する糖尿病の病態に関する基礎研究の最新の知見をご紹介いただく.
 後半は,運動療法の臨床的な話題にフォーカスする.運動療法はその有用性に目が向くが,リスク管理としての開始時のメディカルチェックの理解も重要である.次に,肥満や他の生活習慣病の合併例におけるエビデンスに基づく運動療法の進め方について理解する.また,積極的に取り組む施設がまだ少ない腎症を有する患者のリハビリテーションや,高齢糖尿病患者のフレイル予防のための運動療法の実際についてご解説いただくこととした.最後に,運動は長期に継続してこそ効果を発揮する.そこで,運動・身体活動の実践・継続にかかわる心理学的・行動経済学的アプローチの理論と実際を学ぶ.
 「運動療法」という言葉では必ずしもくくりきれない,運動・身体活動科学の基礎研究や実践面の知見の集積の一端を本特集で共有し,日々進歩する糖尿病診療に貢献できれば幸いである.

勝川史憲
(慶應義塾大学 スポーツ医学研究センター 教授)


<目次>

〔特集〕
1. 運動・身体活動と糖尿病/田中茂穂
2. 運動がエネルギー基質利用に及ぼす影響の理論と実際/岩山海渡,徳山薫平
3. 運動による食欲コントロール~食・動・脳連関~/吉川貴仁
4. 糖尿病とサルコペニア~分子メカニズムを含めて~/平田 悠,小川 渉
5. マイオカインと骨格筋分子生物学/藤井宣晴,眞鍋康子,古市泰郎
6. 運動療法開始時のメディカルチェック/河合俊英
7. 体重コントロールに向けた運動療法の実際/中田由夫
8. メタボリックシンドローム合併糖尿病患者の運動療法/細井雅之,薬師寺洋介,元山宏華
9. 糖尿病性腎臓病のリハビリテーション・運動療法/上月正博
10. 糖尿病患者のフレイル予防のための運動療法/野村卓生,近藤 寛
11. 運動における動機づけの理論と実践/松本裕史
4,400円
特集●糖尿病診療のピットフォール~二次性糖尿病の診断と治療~
企画編集/柳瀬敏彦

<特集にあたって>

 日々,多くの2型糖尿病患者を診療していると,私自身,ついつい惰性と思い込みに陥りがちである.忙しさにかまけて高血糖に何か別の原因が隠れている可能性をあまり詮索しなくなる.ある意味,「clinical inertia」である.その意味で,本企画の内容も反省と自戒の気持ちを込めて構成した.
 二次性糖尿病の定義は明確ではないが,一般的なイメージは「他の病気や薬剤など後天的な要因によって起こり,場合によっては可逆的な糖尿病」と思われる.また,これらの疾患,病態は2型糖尿病の増悪や治療抵抗性の要因にもなりうる.例外はあるが,二次性糖尿病は早期の原因治療により糖尿病が軽快,症例によっては治癒する場合がある.医療者側も二次性糖尿病であることに気づいていない場合もあり,往々にして糖尿病診療のピットフォールになっている.本企画では,遺伝子要因によるトピックスをやや少な目にして,後天的要因のほうに重点を置いた.
 痩せた糖尿病患者さんに遭遇した場合,1型糖尿病だけでなく,膵性糖尿病や脂肪萎縮性糖尿病を思い浮かべることは重要である.前者では飲酒歴やコレステロール低値が,後者では高度のインスリン抵抗性が疑うきっかけとなる.また,比較的,遭遇機会の多い肝障害を伴う糖尿病,とくに肝硬変の場合は,空腹時低血糖や食後高血糖をきたしやすく,病態の理解が適切な対処につながる.NAFLDからの肝がん発症にも注意が必要である.疑わないと気づかないのが内分泌性糖尿病である.サブクリニカルを含めたクッシング症候群,原発性アルドステロン症,褐色細胞腫,先端巨大症は,適切な治療によるホルモン過剰の是正で糖尿病を含むさまざまな病態の改善が期待できる.また,近年,GH分泌不全症,男子性腺機能低下症など,ホルモンの過少病態による肥満,糖尿病などの代謝異常も明らかになってきた.ステロイド糖尿病は,コンサルテーションも多い病態であり,その臨床的特徴の把握は専門医には欠かせない.また,最近の第二世代抗精神病薬には肥満や糖尿病の発症リスクを高めるものが増えてきた.免疫チェックポイント阻害薬の1型糖尿病発症リスクについては,かなり啓蒙が進んできた.糖尿病の急激な発症や増悪に遭遇した際に,病診・院内連携の観点からも,これらの薬剤の知識と病態の理解は,必要不可欠な時代となっている.
 ご多忙のなか,ご執筆いただいたエキスパートの先生方のおかげで,この分野の最新情報が余すことなくカバーされた大変充実した内容となっている.皆様の糖尿病診療の「気づき」のきっかけとなれば幸甚である.

柳瀬敏彦
(誠和会田病院 院長)


<目次>

〔特集〕
1.膵性糖尿病/新名雄介,伊藤鉄英
2.肝疾患に伴う糖尿病(肝性糖尿病)/岸川まり子,安西慶三
3.クッシング・サブクリニカルクッシング症候群に伴う糖尿病/方波見卓行
4.下垂体疾患と糖代謝異常―先端巨大症/成人GH分泌不全症/高橋 裕
5.原発性アルドステロン症と糖尿病/明比祐子
6.褐色細胞腫と糖尿病/阿部一朗
7.甲状腺疾患と糖代謝/西嶋由衣,村上 司
8.男性性腺機能低下症と糖尿病/田邉真紀人,川浪大治
9.外因性ステロイド投与時の糖尿病管理/森田浩之
10.抗精神病薬と糖尿病/本間健一郎,益崎裕章
11.免疫チェックポイント阻害薬と糖尿病/橘 恵,今川彰久
12.脂肪萎縮性糖尿病/海老原 健
4,400円
特集●糖尿病とNAFLD/NASH
企画編集/安西慶三

<特集にあたって>

 2014年に本誌で「肝臓に焦点を当てた糖尿病治療」の特集号を企画して,6年が経過した.その特集号ではウイルス肝炎と非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease;NAFLD)・非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis;NASH)の両方を取り上げた.現在ではC型肝炎の治療薬として抗ウイルス薬が飛躍的に充実し,C型肝炎は完治する疾患となり,肝がん死亡の背景肝疾患はウイルス肝炎からNAFLD/NASHに移行した.今まで肝炎・肝硬変・肝がんは肝臓専門医の領域であったが,NAFLD/NASHは肥満関連代謝性疾患群であり,糖尿病患者の中に多く存在することから,糖尿病医が診る機会が増え,肝硬変,肝がんへの進展抑制や適切なタイミングでの肝臓専門医紹介が我々糖尿病医に求められている.さらにNAFLD/NASHは肝がんで死亡に至るまでに動脈硬化が進行し,心血管系疾患や慢性腎臓病(CKD)が発症することも多く,循環器科,腎臓内科との連携が重要である.このことは同時に肝臓専門医がC型肝炎ではほとんど合併しない心血管系疾患や腎疾患の領域を診ることを意味している.
 NAFLD/NASHの診断に関しては肝生検における病理診断が確定診断となるが,全国で1,000万人以上いると考えられている患者数では困難であり,スクリーニング検査や線維化が評価できるバイオマーカーや画像診断が求められ,新しい検査法が開発され,エビデンスも積み重ねている.
 一方で,NAFLD/NASH治療についてはメタボリックシンドロームが背景にあることから食事療法・運動療法が基礎となっているが,脂肪肝,脂肪肝炎,肝硬変,肝がんの進行に伴ってどのような食事療法・運動療法を行うかについてはエビデンスが十分に確立されていない.さらに薬物療法についてはガイドラインに明示されているチアゾリジンやビタミンE,ACE阻害薬,ARBはエビデンスが認められているが,いまだNAFLD/NASHに適応を有する薬剤はなく,糖尿病治療薬として既存の薬剤であるGLP-1受容体作動薬やSGLT2 阻害薬の効果が報告され,脂肪肝炎から線維化を抑制する効果が期待できる.さらにNAFLD/NASHに対する特異的治療薬の開発が盛んに行われている.最新の薬物療法も生活習慣の改善などの療養指導が基礎にあり,医師だけでなく管理栄養士,看護師,薬剤師,理学療法士など多職種での取り組みが重要であり,今後糖尿病療養指導士や肝炎コーディネータとの協働で治療チームを構築する必要がある.
 本企画では,NAFLD/NASHについてステージを考えた診断や治療を,糖尿病医だけでなく肝臓内科,循環器内科,腎臓内科,歯科医,メディカルスタッフなど多方面の医療職に最新の情報をもとにわかりやすく解説する.

安西慶三
(佐賀大学 医学部 肝臓・糖尿病・内分泌内科 教授)


<目次>

〔特集〕
1.NAFLD/NASHの病因と病態/宮澤 崇,小川佳宏
2.肝線維化に伴う糖尿病/川口 巧,鳥村拓司
3.健診受診者集団におけるNAFLDの疫学/杉山 文,栗栖あけみ,田中純子
4.NAFLDから肝がんまでの診断と経過観察の方法/今城健人,米田正人,中島 淳
5.NAFLDにおける心血管疾患リスク管理/小関正博
6.DKDとNAFLD/吉嶺陽仁,小田耕平,井戸章雄
7.糖尿病合併NAFLDにおける歯周病/畑佐将宏,吉田澄子,片桐さやか,岩田隆紀
8.糖尿病合併NAFLDに対する栄養療法/澤田実佳,窪田直人
9.糖尿病合併NAFLDに対する運動療法/岡田倫明,高橋宏和
10.NAFLDに対する薬物療法の可能性/飛田博史,石原俊治
11.NAFLDにおけるかかりつけ医・糖尿病専門医・肝臓専門医・メディカルスタッフの役割(1)/清家正隆
12.NAFLDにおけるかかりつけ医・糖尿病専門医・肝臓専門医・メディカルスタッフの役割(2)/永渕美樹,高橋宏和,安西慶三
4,400円
特集●1型糖尿病アップデート~その成因から治療まで~
企画編集/島田 朗

<特集にあたって>

 1型糖尿病の大部分は,膵β細胞を標的とする自己免疫疾患であり,その亜型として,劇症1型糖尿病,急性発症1型糖尿病,緩徐進行1型糖尿病がある.その遺伝背景としては,やはりHLAが最も重要であるが,近年,劇症1型糖尿病の遺伝背景について新たな知見が我が国から発信され,世界で注目されている.1型糖尿病の多くは,細胞性免疫異常によって起こると考えられているが,末梢血リンパ球を用いてのこの評価は,世界的にも確立していない.そのようななか,膵島関連抗原に対するリンパ球の反応性について,前述の3つの亜型別に検討した知見が我が国から発信されている.
 臨床現場では,膵島関連自己抗体の測定が1型糖尿病の診断に重要であるが,近年変更になった新しい自己抗体測定法の意義について新たな知見が報告されている.また,病理組織学的検討においては,劇症1型糖尿病の成因に迫る知見,また,緩徐進行1型糖尿病における膵外分泌組織の病変を含めた知見など,多くの情報発信がなされている.
 1型糖尿病の3 つの亜型のうち,劇症1型糖尿病の臨床像として発症することの多い免疫チェックポイント阻害薬関連1型糖尿病も,近年とくに重要な病態である.また,緩徐進行1型糖尿病については,前述の自己抗体測定法の変更の影響を最も受けており,その診断,そして,インスリン依存状態になる前の段階での治療介入についてはまだディベートがあるものの重要な課題である.
 治療に関しては,日本糖尿病学会でもカーボカウントを積極的に取り上げるようになり,その普及が進んできたこと,また,インスリン療法についても,次々に新しいインスリン製剤が市場に出てきたこと,さらに,低血糖対策で重要なグルカゴンについても,点鼻での投与が可能になったこと,などは特筆すべきことであろう.持続皮下インスリン注入ポンプについても,複数のメーカーが参入するようになり,連続皮下ブドウ糖濃度測定(CGM)についても,間歇的なもののみならず,リアルタイムのものも登場し,血糖コントロールは新たな時代に入ったと言える.とくに,従来HbA1cを血糖コントロールのゴールドスタンダードとしてきた状況から,目標血糖範囲内にどのくらいの割合が入るのかを示す指標,“time in range(TIR)”の概念も出てきており,今後,CGMの精度の向上とともに,血糖コントロール指標の中心となる可能性がある.そのTIRを増やす可能性が指摘されている,SGLT2阻害薬のインスリン療法との併用についても1型糖尿病治療の新しい展開である.さらに,最近では,膵島移植が保険適用となり,1型糖尿病における移植療法についても新たな展開を見せている.
 以上に加え,小児科から内科へのトランジションの問題,1型糖尿病合併妊娠の管理の問題についても重要な課題として議論されている.この特集では,成因に関する最新の知見から新規治療の展望まで,それぞれ,エキスパートの先生方にご執筆いただいており,読者の皆様の明日からの診療の一助になることを確信している.

島田 朗
(埼玉医科大学 内分泌・糖尿病内科 教授)


<目次>
〔特集〕
1. 1型糖尿病の遺伝背景/川畑由美子,池上博司
2. 1型糖尿病における細胞性免疫異常~病態と治療法開発の可能性~/中條大輔
3. 1型糖尿病における膵島関連自己抗体~測定法の切り替えで明らかになったことを中心に~/川﨑英二
4. 1型糖尿病における病理組織学的検討/小林哲郎
5. 1型糖尿病の動物モデル(ヒトとの異同)/安田尚史
6. 劇症1型糖尿病の最新知見/米田 祥,今川彰久
7. 緩徐進行1型糖尿病~診断から治療介入まで~/及川洋一,島田 朗
8. 1型糖尿病治療におけるカーボカウントの意義と実際/川村智行
9. 1型糖尿病合併妊娠をどう管理するか/三浦順之助
10. 1型糖尿病のインスリン頻回注射治療/松久宗英,黒田暁生
11. 1型糖尿病におけるCGM,持続皮下インスリン注入ポンプの実際/廣田勇士
12. 1型糖尿病におけるインスリン療法へのSGLT2 阻害薬併用の意義と実際/堀井剛史
13. 小児1型糖尿病の現状と今後の課題/浦上達彦
14. 1型糖尿病における膵臓移植,膵島移植の現状と課題,今後の展望/粟田卓也
4,400円
特集●心腎連関から考える2型糖尿病の治療戦略~SGLT2阻害薬を中心に~
企画編集/東條克能

<特集にあたって>

 医学は専門分化を進めることで目覚ましい進歩を遂げてきたが,一方で,疾病を全体として捉え,生体内の臓器を複眼的な視点から捉え,疾病の全体像を考察することの重要性が強調されるようになった.この流れは脳と腸,腸と肝臓など種々の臓器連関が発見され,こうした臓器間のメッセージのやりとりが生体の恒常性を維持することから当然の帰結であった.さまざまな臓器連関のなかでも全身を巡る血液の恒常性維持に関与する腎臓と,その運搬に関与する心臓の連関は臨床上の知見として早くから注目を集め,心腎症候群と呼ばれるようになった.とくに全身の血管病である2 型糖尿病では,心血管系合併症の発症・進展における病態基盤として早くから心腎連関の重要性が認識されている.糖尿病性腎症において,GFRの低下は心不全のリスクとなり,微量アルブミン尿が動脈硬化を惹起することなどが知られており,糖尿病の治療においてはこうした心腎連関をいかに断ち切ることができるかが重要となる.
 2型糖尿病における心腎連関には,従来よりインスリン抵抗性とレニン・アンジオテンシン系(RAS)が血管の炎症および動脈硬化の進展に深く関与することが知られている.交感神経系の病態的意義も重要で,心不全では遠心性に腎交感神経が活性化されて腎血流の低下を招き,逆に腎神経の活性化は,尿細管におけるナトリウム再吸収を増加させて体内へのナトリウム貯留を生じ,さらに心不全を悪化させることが明らかになっている.
 近年,SGLT2阻害薬が心・腎機能障害患者の予後を改善するとの報告が相次いでいる.米国では2019年版の糖尿病診療ガイドラインにおいて,腎機能保護と心血管イベント予防にSGLT2阻害薬が推奨された.SGLT2阻害薬の心不全・腎臓病への適応拡大を目指した研究も進むなど新たな展開をみせている.このSGLT2阻害薬の登場によってミトコンドリアが豊富に存在する心臓・腎臓のエネルギー代謝面での共通性に着目した研究をはじめ,腸内細菌叢との関連,腎臓局所内での臓器連関など心腎連関に関するきわめて斬新な報告が相次いでいる.以上のように,心腎連関に関する最新の知見が集積しつつある現状を踏まえ,2型糖尿病に対する治療戦略を心腎連関の観点から改めて考えることは時宜を得たものと考えられ,この領域で先進的な研究を進めておられる先生方にご執筆いただいた.
 最後に,大変ご多忙のなかご執筆いただいた先生方に感謝申し上げるとともに,本特集が明日からの臨床に役立つことを願うものである.

東條克能
(東京慈恵会医科大学 客員教授,慈恵看護専門学校 学校長)


<目次>

〔特集〕
1. 糖尿病における心腎連関~そのKey Playerは?~/加藤 徹,野出孝一
2. 心腎連関におけるRASの関与とSGLT2阻害薬/西山 成
3. インスリン抵抗性と心腎連関/田辺隼人,島袋充生
4. 心腎連関に影響を与える,中枢と末梢の交感神経活動亢進/熊谷裕生,大島直紀,今給黎敏彦,山城 葵,田之上桂子,後藤洋康
5. 体液調節異常から考える心腎連関/増田貴博,長田太助
6. 血管内皮機能障害と心腎連関/東 幸仁
7. エネルギー代謝から考える心腎連関/久米真司
8. 高尿酸血症と心腎連関/益崎裕章,本間健一郎,照屋大輝
9. 炎症と心腎連関/田中君枝,佐田政隆
10. 心腎連関から考える心不全治療/坂東泰子
11. 腸内細菌叢と心腎連関/菊地晃一,阿部高明
12. 尿細管糸球体連関/長谷川一宏
4,400円
特集●チーム医療による糖尿病患者の支援~これまでとこれから~
企画編集/浜野久美子

<特集にあたって>

 今日の医療における「チーム医療」の意義は改めて言うまでもない.良質・安全さらに効率的な医療の提供には,さまざまな専門技能をもった多職種のスタッフの参画・協調が必要とされる.糖尿病は,いかに時代が進もうとも患者自身の理解に基づいた日々の療養の実践が治療の成否にかかわる領域である.多岐にわたる自己管理を長期間にわたって継続するためは,心理的なサポートを含めた支援が一生涯を通して必要であろう.これを医師ひとりで担うのは不可能である.また,糖尿病患者は合併症・併存症の予防や治療のために多数の診療科の受診を必要とする.異なる診療科・医療機関の連携も必要であり,この場合にも広い意味でのチーム医療がキーとなる.高齢者糖尿病患者の増加もあり,個々の患者のライフステージに応じて,病院や診療所から在宅診療,介護施設などへと支援の場も変遷するため,地域連携,介護福祉行政との連携も必要となる.2000年発足の日本糖尿病療養指導士機構は,20年間に2万人にものぼるCDEJ(日本糖尿病療養指導士)を輩出し,チーム医療のエキスパートとしての機能が期待される.
 さて,ここまではチーム医療の理想,光の部分を述べてきたが,病院の機能分化が推進され,多忙を極める医療現場では理想のチーム医療が円滑に機能しない場合も多々ある.たとえば,チーム医療の最終責任者は我が国では医師とされるが,医師の交代,異動などに際してチーム医療の継承は問題ないか?医師の診療行為に対してチームはものいえる存在であるか?CDEJの更新率は高くないとも聞いているが,熱意ある専門職がその資格,専門性を活かせる職場に配属されているか?
 教育入院のスタイルも,20年前は長期間入院をして同病の患者と共通体験をし,チームによる分担講義を受けることが主流であったが,診療報酬の低い教育入院については経営側の理解が得られない,などチーム医療の影の部分も少なからずある.
 この特集ではチーム医療の実践において実績のある施設を選ばせていただき,施設ならではの特徴,セールスポイントを述べていただく一方で,注意点,失敗事例,他職種にちょっと本音で言いたいひとことなども具体的に挙げていただくこととした.
 これからチーム医療を構築していく医療スタッフに限らず,すでにチーム医療を実践している方には従来の療養指導の手法がマンネリ化せず,一歩先にブラッシュアップするためのアドバイスが得られる特集となれば幸いである.


<目次>

I. 総論
 チーム医療のこれから/瀬戸奈津子,村内千代

II. 専門職の立場から
 1. 管理栄養士/吉井雅恵
 2. 理学療法士/浅田史成
 3. 心理職(公認心理師・臨床心理士)/花村温子
 4. 薬剤師/稲野 寛,厚田幸一郎
 5. 臨床検査技師/成田和希

III. 専門外来の創設について
 1. 糖尿病透析予防外来/安田浩一朗,藤井淳子,川崎直美,上田真澄
 2. フットケア外来/愛甲美穂

IV. 他科との連携におけるチーム医療の果たす役割
 1. 歯科の立場から糖尿病チームに対して望むこと/平田貴久,両角俊哉,栗林伸一,三辺正人
 2. 眼科の立場から糖尿病チームに対して望むこと/小林 博
 3. 産科の立場から糖尿病チームに対して望むこと/谷垣伸治,近藤琢磨,對馬可菜,竹森 聖,北村亜也,
   小林千絵,田嶋 敦,下田ゆかり,中村未生,小林庸子,関田真由美,近藤由理香,安田和基,小林陽一
 4. クリニックでのチーム医療/戸谷理英子
 5. 地域連携/谷合久憲
4,400円
特集●グルカゴン(膵α細胞)はどこまでわかったか
企画編集/北村忠弘

<特集にあたって>

 グルカゴンはインスリンが発見された2年後に発見され,2023年に100周年を迎える古いホルモンであるが,これまで長くインスリンの脇役に甘んじてきた.この状況が一変したのが10年前である.膵α細胞やグルカゴン受容体の欠損マウスに対し,ストレプトゾトシンで膵β細胞を破壊してインスリン分泌を阻害しても,血糖値はほとんど上昇しないことが明らかになったからである.すなわち,血糖値が上がる前提としては,インスリンがないことよりもグルカゴンがあることのほうが重要であることになる.基礎研究も膵β細胞中心に行われ,インスリン分泌機構は分子レベルで解明されたが,膵α細胞については未解明なことが多い.膵α細胞の発生,分化,さらには再生医療も視野に入れた膵β細胞への分化転換についての最新知見を,氷室先生,宮塚先生,古山先生にご解説いただいた.また,グルカゴンは肝臓における糖産生促進作用以外にも,脂肪分解,熱産生,食欲抑制など多くの生理作用を持ち,それらは必ずしもインスリン作用と拮抗しているわけではない.さらに最近では,グルカゴンは糖代謝のみならず,アミノ酸代謝とも密接にかかわっていることが判明したので,林先生にご解説いただいた.
 一方,糖尿病におけるグルカゴン(膵α細胞)の異常に関しては意見が分かれてきた.まず,2型糖尿病における膵α細胞異常について,病理学的な見地から水上先生にご解説いただいた.次に,グルカゴン研究を遅らせてきた最大の原因である測定系の問題と,新しいグルカゴン測定系の開発,それを用いた2型糖尿病患者の血中グルカゴン濃度の解析結果について,企画者らが概説させていただいた.また,新しい測定系を用いてさまざまな臨床検体のグルカゴン濃度を評価した結果を,インスリン抵抗性,低血糖の観点から河盛先生,細江先生に,妊娠糖尿病や性差の観点から堀江先生,阿比留先生に,肥満度の観点から米田先生にそれぞれご解説いただいた.
 現在使用されている糖尿病薬はグルカゴン分泌に対する影響がさまざまであるが,SGLT2阻害薬がグルカゴン分泌を促進する機序,薬剤間の違いなどについて,企画者らが概説させていただいた.また,新たな糖尿病薬としてグルカゴン受容体拮抗薬が開発中であるが,その効果と問題点,およびアミノ酸輸送体とのかかわりについて岡本先生にご解説いただいた.最後に,低血糖に対する薬剤として,従来の注射剤に加え,点鼻グルカゴン製剤が臨床応用されたので,そのデバイスの特徴を高橋先生,西村先生に,有効性や安全性について,国内第Ⅲ相試験の結果を踏まえて松久先生にご解説いただいた.
 本特集では,現時点でグルカゴン(膵α細胞)についてわかっていることを,基礎,臨床の両面からエキスパートの先生にご解説いただいた.しかしながら,グルカゴンは未解明なことが多く残っており,今後の研究のさらなる発展が期待される.本企画が医学研究者と糖尿病診療に携わる医師にとって有益な情報源となることを願っている.


<目次>

〔特集〕
1. 膵α細胞の分化と可塑性/氷室美和,宮塚 健
2. ヒト膵α細胞を材料とした膵β細胞作製~糖尿病に対する分化転換療法~/古山賢一郎
3. グルカゴンの生理作用~アミノ酸代謝調節~/林 良敬
4. 2型糖尿病における膵α細胞の異常~病理学的観点から~/水上浩哉
5. 正確なグルカゴン測定法の開発と,それを用いた2型糖尿病のグルカゴン評価/小林雅樹,北村忠弘
6. 糖尿病における膵α細胞機能異常の実態は?~“bi-hormonal disorder”から“bi-directional disorder”へ~/河盛 段,細江重郎
7. グルカゴンと妊娠糖尿病,性差との関連/堀江一郎,阿比留教生
8. グルカゴンと肥満の関連~在米日系人医学調査の成績から~/米田真康
9. SGLT2阻害薬とグルカゴン/須賀孝慶,北村忠弘
10. グルカゴン受容体拮抗薬と膵α細胞増殖,アミノ酸輸送体との関連について/岡本はるか
11. 点鼻グルカゴン製剤~デバイスの特徴を中心に~/高橋 紘,西村理明
12. 点鼻グルカゴン製剤~有効性,安全性を中心に~/松久宗英
4,400円
特集●小児・思春期糖尿病患者の治療と支援
企画編集/菊池 透

<特集にあたって>

 小児・思春期糖尿病の治療と支援は,成人後の慢性合併症の予防だけでなく,患児が自立した成人になるためにも重要である.また,学校検尿を利用した糖尿病の早期発見や学校教育での食育による肥満・糖尿病予防は,成人の糖尿病予防対策としても重要である.
 小児・思春期糖尿病に関する最近のトピックスは,hybrid closed loop pumpなどのインスリンポンプや較正不要の連続血糖モニターのテクノロジーの進歩,新しい超速効型インスリンや点鼻グルカゴンなど新しい薬剤の登場である.さらに,time in rangeという新しい血糖管理指標も提唱されている.今後は,このような新しい技術や指標をいかに治療に取り入れ,患者の予後,QOLを改善させるかが課題である.このように1型糖尿病の治療技術は進歩しているが,その技術を実際に使うのは患者自身である.技術が進めば進むほど,それを使いこなす高度な知識や動機が必要になる.幼少期は,治療の主体は保護者であるが,思春期になると治療の主体は本人に移っていく.しかし,その時期に,適切な療養行動を継続することは容易なことではない.したがって,将来,成人科へ診療移行することも踏まえ,精神的・社会的に自立するように,学校生活や糖尿病キャンプ,患者会活動での療養行動の支援や仲間作りなどが必要である.
 一方,1型糖尿病に比べて2型糖尿病の治療の進歩は停滞している.成人では多くの新しい薬剤が承認されているが,小児・思春期糖尿病を対象にした薬剤の治験はなかなか進まない.2型糖尿病を発症する肥満小児は,生活習慣の問題のほか,基礎疾患を有している場合も多く,治療や支援がより困難である.しかし,日本には学校糖尿病検診というすばらしいスクリーニングシステムがある.このシステムを有効活用し,2型糖尿病の早期発見,食育の推進による肥満の指導,予防を進めていくことが重要である.
 小児・思春期糖尿病では,新生児糖尿病やMODYなどの単一遺伝子異常による糖尿病がまれではない.近年,それらの研究が進んでおり,正確な診断が治療方針に大きな影響を与えることもある.とくに,非肥満2型糖尿病の診断の際には留意が必要である.
 近年,毎年のように大規模自然災害が発生している.患児家族,医療者,医療機関ともに,大規模自然災害を想定した小児患者に対する種々の備えをするべきである.
 今回の特集にあたり,現在のトピックスと課題をエキスパートの方々に執筆いただいた.本特集が,小児・思春期糖尿病の診療の向上および患児の予後,QOLの改善につながれば幸いである.


<目次>

〔特集〕
1. 血糖管理指標における個人別評価とその課題:グリコアルブミン(GA)/ヘモグロビンA1c(A1C)比の活用/武者育麻,雨宮 伸
2. インスリンポンプの進歩/柚山賀彦,川村智行
3. CGMの進歩/志賀健太郎
4. 薬物療法の進歩/鈴木潤一
5. 単一遺伝子異常による糖尿病/奥野美佐子
6. 学校糖尿病検診の有効活用/山本幸代
7. 肥満2型糖尿病へのアプローチ/田久保憲行
8. 心理社会的支援へのアプローチ/大津成之
9. 学校での療養行動の支援/松井克之
10. 糖尿病キャンプと患者会活動/小川洋平
11. 成人科への移行期医療の実際/平井洋生
12. 大規模自然災害へ備える/藤原幾磨
4,400円
特集●低血糖の病態と対策
企画編集/山田研太郎

<特集にあたって>

 糖尿病の薬物療法の歴史は低血糖リスクとの戦いでもあった.近年は低血糖をきたしやすいスルホニル尿素薬に代わってDPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬など低血糖リスクの低い経口血糖降下薬が広く使われるようになり,インスリン治療においても,2型糖尿病の場合はその一部がGLP-1受容体作動薬に置き換えられるようになってきた.しかし,一方では低血糖に対して脆弱な高齢者が増加し,糖尿病患者の多数を占めるようになったことから,低血糖予防の重要性はこれまでになく増大していると言うことができる.
 低血糖は急性合併症として不快な自律神経症状や意識障害をきたすだけでなく,転倒による骨折や交通事故の原因ともなる.心血管イベントや網膜症悪化の誘因としても知られ,重症例では脳障害の後遺症をきたしうる.さらに,高齢者においては認知症との双方向性の関連も示されている.ADLを維持し寝たきりを予防するためにも,低血糖の回避が重要である.また,高齢者において問題となっているポリファーマシーは,薬剤の重複や相互作用により薬剤性低血糖のリスクを高めると考えられ,注意が必要である.
 最近,低血糖の診療に大きな進歩をもたらしたのは持続血糖測定器(CGM)の普及である.24時間の血糖プロファイルを評価することで,多くの低血糖が気づかれないまま見過ごされていることがわかり,これまで考えられていた以上に低血糖が多いことが明らかになった.現在用いられているCGMは血糖値を正確に測定できるほど精度が高いとは言えないが,低血糖が起こりやすい時間帯を明らかにし,治療を適正化するうえできわめて有用である.
 1型糖尿病のインスリンポンプ療法では,CGMを組み合わせた低血糖予防機能が搭載されるようになった.低血糖を予測するとインスリンの基礎注入を一時的に中断する機能で,とくに夜間低血糖のリスクを下げることができる.このようなテクノロジーの進歩は,低血糖に対する不安感の軽減とQOLの向上につながると期待されている.
 低血糖には糖尿病以外の内分泌代謝疾患に伴うものや,インスリン自己免疫症候群,腫瘍随伴症候群としての低血糖などさまざまな病態がある.また,体脂肪分解を伴う高ケトン性低血糖とインスリン作用過剰による低ケトン性低血糖では病態が大きく異なっている.本特集は,各分野の専門家によって低血糖という古いテーマに新しい光を当て,その今日的な意義を明らかにすることを目指している.


<目次>

1. 糖尿病治療に関連する重症低血糖の実態と対策/松久宗英
2. 高齢者糖尿病の低血糖/荒木 厚
3. 腎不全を伴う糖尿病における低血糖の予防/田中小百合,金﨑啓造
4. 心血管イベントおよび細小血管障害の危険因子としての低血糖/矢口雄大,曽根博仁
5. 低血糖脳症とその後遺症について/犀川理加,山田穂高,原 一雄
6. 無自覚性低血糖の病態と対策/山本あかね,廣田勇士
7. PLGM機能を備えたインスリンポンプによる低血糖予防/中山ひとみ
8. 反応性低血糖の病態と治療/千葉ゆかり,土屋博久,山川 正
9. 糖尿病治療薬以外の薬剤性低血糖およびアルコール性低血糖/鈴木優矢,長澤 薫,森 保道
10. 内分泌疾患,および腫瘍に伴う低血糖/橋本重厚
11. インスリン抗体により引き起こされる低血糖/内潟安子
12. 低血糖症の病態の多様性~高ケトン性低血糖症と低ケトン性低血糖症~/山田研太郎
13. 糖尿病治療に伴う低血糖の予防と低血糖時の対処法/岩倉敏夫
4,400円
特集●令和時代のインスリン療法
企画編集/弘世貴久

<特集にあたって>

 インスリンの発見は1型糖尿病を死の病から合併症の病に変えた.それからおよそ100年,インスリン療法はさまざまな要素において,すばらしい進歩を遂げてきた.まず,何よりも製剤自体の進歩は重要である.①ブタやウシの膵より抽出・精製,②遺伝子工学に基づいて作成されたヒト型インスリン,そして③アナログインスリンの登場,という進化があった.今後期待される製剤は週1回のインスリン,経口インスリンや血糖応答性インスリンといったところだろうか?もちろん注射剤として必要な注射器の進歩も忘れてはいけない.さらに持続血糖モニターに代表される血糖測定法の進歩,ポンプ療法の進歩などもきわめて重要である.さらにインスリン導入やステップアップに伴う療養指導の充実は,現実にインスリン療法を行っていく場面,場面において最も重要な要素である.洗練されたインスリン療法チームが少なくなくなったのはとても喜ばしいことで,そしてもう一点忘れてはならないのは,専門医の職人芸であったインスリン療法が,多くの糖尿病患者も診ている医師によって実践されるようになったことだと思う.製剤の進歩,注射器の進歩,モニター法の進歩のすべてがこのことに貢献してきた.インスリン療法の一般化はcommon diseaseである糖尿病診療にとってきわめて重要であり,筆者の長年の想いでもあったのでより感慨深い.さらに注目すべきは注射薬GLP-1受容体作動薬がもう1つの糖尿病注射薬として加わったことである.インスリンとの使い分け,あるいは併用において多くの議論があると思う.とくに発売されたばかりの両者の配合剤については,これまで考えられてきた「配合剤」の考え方とは頭を入れ替えて使用していく必要があると思われる.
 本特集では,令和時代を迎えたインスリン療法の現状について,第一線の診療にあたっておられる専門医の先生方に無理を言って原稿執筆をお願いした.エビデンスだけでは見えてこないさまざまな臨床シーンにおけるインスリン療法の実践について,ご自身の経験も踏まえて踏み込んだ執筆をしていただけたのではないかと考える.


<目次>

Ⅰ インスリン導入のキホン
1. 現在使用可能なインスリン製剤と海外のガイドライン/中村宇大
2. 外来でのインスリン導入(BOTとそれ以外)/釣谷大輔
3. 入院でのインスリン導入/仁科周平,山本恒彦
4. インスリン導入時・導入後のサポートのコツ/福井宗憲

Ⅱ インスリン療法のステップアップ
1. BOTからのステップアップ/北澤 公
2. 内服薬を用いた治療強化~インスリン抵抗性改善薬~/中西修平
3. 内服薬を用いた治療強化~インスリン分泌促進薬~/谷口晋一
4. 内服薬を用いた治療強化~DPP-4阻害薬~/岡島史宜
5. 内服薬を用いた治療強化~SGLT2阻害薬~/白神敦久
6. 配合薬を用いたステップアップ/北島浩平,駒津光久

Ⅲ インスリン療法のステップダウン
1. インクレチン薬を用いたステップダウン/佐藤雄一,内薗祐二,布井清秀
2. SGLT2阻害薬を用いたステップダウン/鳥本桂一,岡田洋右
3. グリニド薬を用いたステップダウン/田蒔基行

Ⅳ 新しいインスリン療法とその周辺
1. SGLT2阻害薬と1型糖尿病のインスリン療法/阿比留教生
2. インスリン注入器アップデート/朝倉俊成
3. インスリンポンプ療法,血糖モニターをしっかり生かす/池原佳世子
4. 配合剤を用いた新しい注射療法の導入/渕上彩子,弘世貴久
5. 開発中のインスリン製剤/細井雅之
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商品情報・内容

  • 出版社:医学出版
  • 発行間隔:隔月刊
  • 発売日:毎偶月20日
  • サイズ:A4変型判

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