目次
企画編集/齋藤重幸
<特集にあたって>
日本糖尿病学会 編『糖尿病治療ガイド』の最新版での,糖尿病の「治療目標」は「健康な人と変わらない人生」の達成である.そのために「高齢者などで増加する併存症の予防・管理」を実践するとされている.また同時に糖尿病に対する「Stigma,社会的不利益,いわれのない差別」の除去が必要とされている.いわゆる健康寿命の延伸,個人の満足な人生の達成は,2020年高齢化率28.7 %の超高齢社会を迎えたわが国の喫緊の課題であり,困難な状況下にある高齢者糖尿病者ではより大きなテーマである.
厚生労働省の平成26年国民健康・栄養調査結果によると,糖尿病が強く疑われる者の割合は,65~74歳の前期高齢者で18.3 %,75歳以上の後期高齢者では19.7 %と報告されており,高齢者では糖尿病が疑われる者が約5人に1人と推定される.一方,平成29年患者調査によると,わが国の糖尿病の患者数は328万9,000人と推計され,2014年調査の316万6,000人から12万3,000人の増加で過去最高となった.このうち65歳以上の高齢者は70 %程度を占め,糖尿病診療の中心は高齢者となっている.統計に上がる患者の多くは外来患者である.本統計では糖尿病が他疾患の併存疾患となっているものは糖尿病患者の数に含まれないと思われるが,最近のわが国の糖尿病者数は約1,000万人と推計されるので医療の管理下にない糖尿病者もまだ多数存在するものと考えられる.
糖尿病者の生命予後は年々改善しているが,糖尿病学会の報告では2001~2010年間は,一般人の平均余命に比較して,糖尿病者の死亡時平均年齢は男性で8.2年,女性で11.2年短いことが示されている.さらに高齢者糖尿病では認知症,うつ,ADL低下,サルコペニア,転倒,骨折,フレイル,尿失禁,低Na血症などの老年症候群をきたしやすく,これが健康寿命の短縮につながる.
高齢者での糖尿病の予防,管理に加え,壮・中年から持ち越している慢性疾患としての糖尿病の管理が重要である.高齢者糖尿病では年齢に加え,併存疾患の有無,罹病期間,合併症の程度などがさまざまである.個別診療が目標達成にはより重要である.2017年に日本糖尿病学会と日本老年医学会から『高齢者糖尿病診療ガイドライン2017』が刊行され,わが国における高齢者糖尿病診療のスタンダードが示されるようになった.そこで今回,ガイドラインから4年経った現在,高齢者糖尿病の実態はどのように変化したか,とくに上進著しい糖尿病薬物を絡めて,それぞれの専門家に論述いただくことにした.
本特集では高齢者糖尿病を,(1)生命予後,機能予後を含めた疫学的Fact,(2)認知機能とADL評価を含めた診断,(3)食事・運動療法,(4)薬物療法,(5)心不全・脳血管疾患,(6)CKD,(7)サルコペニア・フレイル,(8)認知症,(9)糖尿病足,(10)低血糖,(11)薬物の合併症の病態,の観点から概説していただき,最後に(12)長寿遺伝子と糖尿病薬物療法について述べていただく.
<目次>
〔特集〕
I. わが国の高齢者糖尿病の実態/荒木 厚
II. 高齢者糖尿病の診療の実際
1. 高齢者糖尿病における診療の流れ/赤坂 憲
2. 高齢者糖尿病における食事療法・運動療法の実際/髙橋佳大,水野正巳,山川顕吾,林 慎,村山正憲,矢部大介
3. 高齢者糖尿病の薬物療法/伊藤禄郎,鈴木 亮
III. 高齢者糖尿病の薬物療法の実態
1. 高齢者糖尿病の心不全・脳血管疾患を見据えた薬物療法/倉野美穂子,西尾善彦
2. 糖尿病性腎症・透析導入予防を見据えた高齢者糖尿病の治療/馬場園哲也
3. 高齢者糖尿病のフレイル・サルコペニアを見据えた管理/杉本 研
4. 高齢者糖尿病の認知症を見据えた管理/井口真由香,神出 計
5. 高齢者糖尿病の足病変を見据えた管理/澄川真珠子
IV. 高齢者薬物療法の注意点
1. 高齢者の低血糖事故の実態/上村芙美,岡田洋右
2. 糖尿病薬における皮膚合併/氏家英之
V. 糖尿病・血糖降下薬と長寿遺伝子サーチュイン/久野篤史
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