月刊糖尿病(DIABETES) 発売日・バックナンバー

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【特集】健康長寿のための高齢者糖尿病のトータルマネジメント
企画編集/横野浩一

〈特集にあたって〉
 21世紀の本邦は世界に類をみない超少子高齢人口減少社会を迎えている.持続する小児人口の減少に伴い生産者人口は激減の一路をたどっている.一方で高齢者世代は多数を占めるが,昔のような三世代同居は望むべくもなく,高齢者夫婦の二人あるいは独居世帯が増加している.そのため高齢者を心身ともに支えるキーパーソンが不在となり,高齢者夫婦がお互いを支える,いわゆる老々介護が増加している.
 高齢者がこの難局を乗り切るためには健康長寿を目指さなければならない.今や日本人の平均寿命はほぼ世界のトップに位置する.一方で,健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる健康寿命も日本は世界一とされている.しかし問題は平均寿命と健康寿命の間に男女平均して約10年の期間があることである.この間が本人もつらく,家族が時間と労力を割き,国が資源を投入せざるを得ない不健康な期間ということになる.したがって,この10年という期間をできるだけ短縮することが肝要である.
 そのためには健康長寿の延伸を妨げる要因を制御する必要がある.身体面では骨格筋の量と質が低下するサルコペニアを予防する必要がある.サルコペニアは高齢者の身体活動を抑制し,転倒・骨折・寝たきり・認知症という,高齢者にとって最も好ましくない経緯の引き金となる.精神・心理面では認知症の予防であり,社会・経済面では孤立を防ぐことが重要といわれる.そして平均寿命と健康寿命の間の10年間に該当するフレイルの予防と改善が,活き活きとした高齢社会を過ごすための大きな手立てとなる.
 糖尿病そのものが健康長寿を脅かす最大の疾患の1つであることはいうまでもないが,最近その原因として糖尿病とこれらのサルコペニア,認知症,フレイルとの関連が注目され,数多くのエビデンスが集積されてきた.本特集ではこれらの問題に焦点を当てながら,高齢者糖尿病のトータルマネジメントの重要性につき各分野の第一人者の先生方に執筆をお願いした.

横野浩一
(北播磨総合医療センター 病院長)

〈目次〉
1. 超高齢社会における糖尿病と健康長寿
2. 高齢者糖尿病の特性からみた血糖コントロール目標
3. 高齢者糖尿病における低血糖の特徴とその予防に向けて
4. 糖尿病とサルコペニア
5. 高齢者糖尿病とフレイル
6. 高齢者糖尿病におけるアルツハイマー病の発症機構と病態特性
  ~脳インスリンシグナル関与の可能性~
7. 糖尿病性認知症の発症機構と病態特性
8. 高齢者糖尿病における『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』の使い方
9. 高齢者糖尿病の血圧管理
10. 高齢者糖尿病の脂質管理
11. 高齢者糖尿病のトータルマネジメントのための地域包括ケアシステム
12. J-EDITからみた高齢者糖尿病のトータルマネジメント
3,520円
【特集】糖尿病足病変Up to date ~下肢救済・再発予防編~
企画編集/菊池 守

〈特集にあたって〉
 糖尿病足病変を診察していると,外来管理可能な軽症例から血行再建や感染管理を含めた下肢救済治療が必要な重症例まで,さまざまな症例が飛び込んできます.これまで下肢救済治療においては全身の評価と治療までチームで取り組まなければならない(multidisciplinary team approach)ことが強調されてきましたが,糖尿病足病変には血行障害や神経障害,足の変形などさまざまな要素が複雑に絡みあっており,一度下肢救済すればその治療が終わるわけではありません.いったん治癒した後も,再発を予防し続けるためのスタッフの不断の努力ならびに患者さんの理解と協力が必要になります.
 そのため「下肢救済・再発予防編」では下肢救済の最前線を紹介するとともに,とくに再発予防に必要な内容を取り上げました.再発を予防するためにはさまざまな取り組みが必要ですが,外来でのケアや免荷方法,歩行指導,フットウェアの選択などは,医師だけでなく多職種の連携が必須となります.さらに本特集では,神経障害を伴う糖尿病足病変が最も進行した状態であるシャルコー足や糖尿病足病変の最も積極的な再発予防である外科的免荷についても取り上げさせていただきました.また,地域包括ケアの構築が叫ばれるなか今後は糖尿病足病変においても在宅で管理していく必要性も高まってくるでしょう.
 チーム医療で再発予防し続けるためには,それぞれの職種に丸投げするのではなく,チーム全員がそれぞれの意図と役割を理解したうえで連携して診療できるようにならなければなりません.今回の特集では,糖尿病内科外来で足病変を見つけてから「どの科,どの職種とどのように連携し,どのようにこの患者にかかわっていけば足を救い続けることができるのか?」の答えを見つけていただきたいと思います.

菊池 守
(下北沢病院 院長)

〈目次〉
1. 糖尿病足病変患者の末梢動脈疾患に対する診断と治療
2. 糖尿病足感染・下肢救済における感染のコントロール~「とりあえず抗生剤」入れてませんか?~
3. 糖尿病足感染の形成外科的管理と創傷治療
4. 糖尿病足病変における予防的手術
5. シャルコー足に対する保存的治療と外科的治療
6. 下肢救済後の歩行へのかかわり~創傷再発予防と身体および活動の再構築~
7. 潰瘍治療のための装具療法,再発予防のための義肢・装具療法
8. 糖尿病足潰瘍治療におけるフェルト・プラスタゾートを用いた免荷治療
9. 糖尿病内科医としての再発予防
10.いかに糖尿病患者のセルフケアへのモチベーションを維持するか
11.在宅におけるフットケア~在宅でのフットケアのニーズ~
12.看護の立場からみた創傷ケアと再発予防
3,520円
【特集】糖尿病足病変Up to date ~メカニズム・発生予防編~
企画編集/菊池 守

〈特集にあたって〉
 糖尿病足病変を診ていると「どうしてこんなになるまで」とつぶやきたくなる患者さんにもしばしば出会います.糖尿病足病変は一度発生してしまうとその治療に長い治療期間と多額の医療費が必要となりますが,そうなる前には必ず前兆があり早期介入ができるポイントがあるはずです.最も重要なのは発生予防と高リスク患者への早期からの介入であり,そこを担っていただけるのは今まさに糖尿病診療の現場におられる皆さんしかいないのです.
 今回の特集では,糖尿病足におけるさまざまな障害により足病変が発生するメカニズムとその発生予防に関する知識について,臨床実地の場で活躍するそれぞれの専門家にご執筆いただきました.糖尿病足病変発生予防を行うためには,血行障害や神経障害,易感染性といった糖尿病足病変の基礎となる病態を理解するのはもちろんですが,そもそも糖尿病患者の足の評価方法や,皮膚,精神状態に何が起こってくるのかを知らなければ糖尿病足病変の患者を理解することはできません.
 特集の前半では足の診察の基本から血行障害,神経障害,皮膚疾患,糖尿病患者のセルフネグレクトなどについて説明していただいています.
 また実際にフットケア外来を運用し,発生予防していくためには多職種と連携したチーム医療をリーダーとしてマネジメントする必要があります.後半では看護師,リハビリテーション,義肢装具士の立場から糖尿病足病変患者にできること,そして糖尿病内科医としてのフットケア外来,足病変に対するプライマリケアの現実と将来を語っていただいています.
 本特集が日本中で糖尿病足病変の予防と治療に携わる方々のお役に立てることを祈念しています.

菊池 守(下北沢病院 院長)

〈目次〉
1. 足の診察の基本~糖尿病足病変を診る前に~
2. 糖尿病足病変における血行障害と疫学
3. 糖尿病性神経障害~メカニズム・アセスメント・マネジメント~
4. 糖尿病性壊疽の予防のために知っておくべき皮膚疾患の知識
5. 糖尿病足病変とセルフ・ネグレクト
6. 糖尿病専門医からみたフットケア外来運用の壁
7. 透析患者における末梢動脈疾患
8. 糖尿病患者の足部と歩様の特徴~予防的リハビリテーションの観点から~
9. フットウェアによる発生予防
10. 足病変予防のためのフットケア~ゲートキーパーとしての看護師の役割~
11. 糖尿病足病変の積極的予防~プライマリーケアにおける足病内科の必要性~
3,520円
【特集】『時間』を軸に考えた糖尿病治療の新展開
企画編集/野出孝一

〈特集にあたって〉
 1997年に最初の哺乳類の時計遺伝子が発見されてから,概日時計(約24時間をはかる体内時計)の本体は時計遺伝子の発現振動であることが明らかにされてきた.4種類の時計遺伝子が中心的に機能してフィードバック回路を形成することでこの発現振動が細胞自律的に発生する.しかし,単一細胞レベルの時計は精巧ではないため,全身の細胞の時計のずれを修正するために,小さな神経核である視交叉上核がペースメーカーとして機能する.時計遺伝子の発見以降概日時計のメカニズムの理解は急速に進んできたが,“なぜ約24時間になるのか”“どのように自律振動を保つのか”“温度補償のメカニズムとは何か”などの核心的な部分は謎に包まれたままである.急速に室内照明が普及した結果,私たちは慢性的な時差ぼけを日常的に経験しており,多岐にわたる疾病のリスクを背負うようになった.概日時計研究の発展による貢献が期待される.
 夜間交代制シフトワーク,夜更かし,夜食,朝食抜きといった不規則な生活をしたり,夜間に携帯やスマートフォンなどで光を浴びたりすると,睡眠障害も手伝い「体内時計」は撹乱し,血栓ができやすく溶解しづらい状態になり心筋梗塞発症につながりうる.若年期からすでに冠動脈硬化は進んでいることから,若年期から可能なかぎり規則正しい食生活を心がけるのがよいと思われる.心血管疾患既往のある者や高血圧や糖尿病などの危険因子(リスクファクター)をもつ者はできるだけ夜間交代制シフトワークを避け,夜は光を浴びることなく質のよい十分な睡眠をとり,朝日を浴び,朝食をとり,夜食をやめることで,生体に備わった「体内時計」の「概日リズム」を取り戻すことが好ましい.
 心筋梗塞の発症が早朝に多いことは多くの研究から明らかである.早朝には交感神経系やレニン・アンジオテンシン系が活性化され血圧や心拍数が増し心収縮が亢進し酸素需要が増加する一方で,冠動脈の血管抵抗も上がるため冠血流は減少し酸素需要に見合うだけの供給がなされない.早朝は血小板凝集能が亢進し凝固因子活性も亢進する一方,線維素溶解(線溶)系は活性低下する.すなわち早朝に血栓ができやすくなる一方,できた血栓は溶解しにくい状態である.
 心血管障害の抑制のための血糖管理は,平均血糖だけではなく,血糖変動の改善が必要である.またIGTの病態では,インスリン分泌の量的異常に加えて,インスリン分泌が後方にシフトすることによる食後高血糖や遷延性低血糖が起こることも知られている.
 心血管イベントの発症にも日内・週内・季節変動がある.また,睡眠と生活習慣病の関連,分子レベルでの体内時計の役割や,インスリンが体内時計であるPER2の活性を変動させるという報告もある.量的な治療に加えて質的な治療を達成するためには,「時間」を軸とした生活習慣病治療を考える必要がある.本号では時間を考慮した糖代謝・循環器疾患治療という観点から,時計遺伝子と糖代謝・循環疾患とのかかわりといった基礎的側面と,血糖変動や時間を考えた運動薬物治療などの臨床的側面について,第一線の先生方にご執筆いただいた.本特集が読者にとって糖尿病治療の一助になれば幸いである.

野出孝一
(佐賀大学 医学部 循環器内科 教授)

〈目次〉
1. 概日時計と動脈硬化
2. 生体時計と脂質代謝
3. 時計遺伝子と糖代謝
4. 体内時計と栄養
5. 睡眠改善による糖尿病治療
6. 糖尿病合併高血圧の時間治療
7. 概日リズムを考慮した糖尿病予防と治療
8. 時間を考慮した糖尿病運動療法
9. 時間を考慮した糖尿病薬物療法
10. 循環器疾患・糖尿病の時間治療
3,520円
【特集】はじめよう! 糖尿病診療リエゾンサービス~チーム医療の未来図~
企画編集/赤司朋之

〈特集にあたって〉
 糖尿病診療は,個々の患者の遺伝的・環境的な背景や年齢などを考慮した適切な検査や治療が求められている.また,健診で発見された境界型糖尿病や発症したばかりの患者に医療機関への受診を促すことも重要であり,糖尿病に関わる合併症の発症・重症化を防ぐこと,さらには重症化した合併症発症患者への治療を継続することなど,病期にあった糖尿病診療を行う必要がある.合併症も三大合併症と動脈硬化性疾患,さらには歯周病や肝疾患など多岐にわたるため,多くの分野の職種が,さまざまな医療機関で,その診療に関わることになる.
 糖尿病治療を1つの大きな医療機関で完結する体制を整えることは,集学的な治療を要する患者にとっては非常に重要なことであるが,すべての患者がその完結した体制の下で診療を継続すると,患者受け入れ数の限界という問題に直面する.地区全体という大きな括りのなかで糖尿病治療を円滑に行うためには,地域に存在している個々の機能を持ったさまざまな医療機関を活用して,地域全体で包括的な医療を行うことが必要とされる.
 個々の医療機関が適切な役割を果たすことができるようになるためには,医療機関同士での情報共有を円滑に行うことが重要になる.しかし,それぞれの医療機関のメディカルスタッフが正しい知識と技術を持たないことには連携は成立せず,連携を行う際にはメディカルスタッフの「疾患の理解」を高めることが前提となる.このように,地域包括的な連携構築には,多職種の医療スタッフの参加とその情報共有,さらには個々のスタッフの教育など,多くのことが必要とされる.
 さまざまなことが要求される多職種連携を円滑に行うために,すでに骨粗鬆症学会では,リエゾンサービスという概念が導入されている.リエゾンとは「連絡係」と訳され,診療におけるコーディネーター役を意味する.その目的は,最初の骨折への対応および骨折リスク評価と,新たな骨折の防止,また最初の脆弱性骨折の予防である.多職種連携を円滑に行うためにコーディネーターが活動し,多職種連携でハイリスク者の骨折抑制を推進することによって骨折発生率が低下し,医療費を削減することが狙いである(1).
 近年,糖尿病診療においても,各地でコーディネーターの機能を果たす新たな役割が登場した.さまざまなシステムを活用して,地域全体としてより多くの患者をより高い診療の質を持って診療できる体制が各地で構築され,実施されている.
 今回の特集では,地域医療を担う医療スタッフの教育や共有すべき情報について概説していただいた後,患者抽出とその後のトリアージ,地方型と都会型のリエゾンサービス,地方自治体を巻き込んだ取り組みについて,それぞれの実践例をもとに概説していただく.さらには,リエゾンサービスを実践する際に必要な共通のツールの紹介,そしてこれらの取り組みのアウトカムとその評価はどのようにすればよいのかも概説していただく.この特集を機会に,より多くの医療関係者がリエゾンサービスの概念を理解していただき,新たなチーム医療の未来図を描いていただくことができれば幸いである.

赤司朋之
(医療法人社団シマダ 嶋田病院 内科部長,佐賀大学 医学部 臨床教授)

(1)日本骨粗鬆症学会,骨粗鬆症マネージャー(リエゾンサービス)の取組について.http://www.josteo.com/ja/liaison/doc/0_1.pdf(2018年5月閲覧)

〈目次〉
〔総論〕
1. 「疾患の理解」を広めるためのチーム医療の底上げ~糖尿病療養指導士への期待~
2. 糖尿病患者の重症化予防,とくに腎症重症化予防に必要な層別抽出の項目とその意義
〔各論〕
3. 特定健診,国保データベース(KDB)システムを活用した糖尿病性腎症重症化予防の多職種連携
4. 多職種連携のリエゾンサービス実践例~地方型:コーディネートナースの医療機関訪問~
5. 多職種連携のリエゾンサービス実践例~地方型:地域全体の医療関係者の底上げを狙ったITネットワーク活用型リエゾンサービス~
6. 多職種連携のリエゾンサービス実践例~糖尿病地域医療における都会型リエゾンサービス~
7. 糖尿病専門医不在の地区での糖尿病性腎症重症化予防対策
8. 多職種協働で地域の糖尿病診療を支える~八幡浜市糖尿病サポーター制度~
9. 県市町村を巻き込んだリエゾンサービス実践例~県主導でのリエゾンサービス育成事業~
10. 生涯を通じた住民の生活を支えるためのリエゾンサービス~地域包括ケアシステム幸手モデルと地域糖尿病センターの取り組み~
〔まとめ〕
11. 疾患の理解の底上げに有効なツールや活動
12. チーム医療・地域連携のアウトカム評価
2,970円
【特集】糖尿病薬早期開始のベネフィット総ざらい
企画編集/平野 勉

〈特集にあたって〉
 糖尿病は進行性の疾患であり,膵島機能は経時的に低下する.膵島機能をできだけ長く温存させるためには生活習慣を改善する努力に加え,多くの場合薬物治療が欠かせない.近年糖尿病治療薬は多種多様化し,使用の順番も一様ではない.本特集では糖尿病における早期治療の重要性について,各種糖尿病薬の早期開始のベネフィットという観点でまとめていただくことにした.ここではベネフィットを糖尿病病態の改善と合併症予防とに大別してみることにした.
〔糖尿病病態の改善〕
 膵島機能は糖尿病発症時にはすでに半減しているとの報告がある.それを予防するためには糖尿病発症前から生活習慣介入に加え糖尿病薬が有効な場合がある.メタボリックシンドロームにチアゾリジン薬やメトホルミンを投与し新規糖尿病の発症を抑制する試みがなされている.持効型インスリンを空腹時高血糖(IFG),耐糖能異常(IGT)から導入して新規糖尿病の発症を抑制する試みもなされた.しかし実臨床では糖尿病発症前に使用することはできないため,糖尿病発症早期からの使用は進行を抑制できるかの試みとなる.糖尿病が発症した後は高血糖が膵島の機能を損なう悪循環を生じる危険性がある.早期からの薬物を用いた血糖管理はこの糖毒性を回避させ,膵島機能を長期に保全する有効な手段である.2型糖尿病は発症前からインスリン抵抗性を有している場合が多く,これが膵島を疲弊させる原因となる.ピオグリタゾン,メトホルミンは直接的にインスリン感受性を改善するが,GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬は体重減少などを介して間接的にインスリン抵抗性を低減する.インスリン分泌系薬は糖毒性を回避するには有効であるが,肥満を助長しインスリン需要の増大につながりやすい.早期からの使用については慎重な判断が必要とされる.インクレチン関連薬はタイムリーなインスリン分泌促進,グルカゴン分泌抑制により膵島に重い負担をかけず,膵島再生効果も期待されている.
〔合併症予防〕
 細小血管合併症の発症は血糖依存性であるが,大血管合併症は血糖以外の危険因子である高血圧,脂質異常がその発症に強く関与する.糖尿病薬による血糖低下作用は細小血管合併症の抑制にはきわめて有効であるが,大血管合併症への抑制は限局的であった.しかしながらUKPDS研究において,早期の糖尿病薬を用いた治療介入はそれを行わなかった対照と比較してその後の大血管合併症の発症を抑制した.遺産効果と言い表されている.
 糖尿病発症早期からの血管壁への高血糖の暴露はグルコースメモリーとしてとどまることが考えられており,早期の糖尿病薬介入が重要であることの根拠になる.血糖とは独立してインスリン抵抗性/高インスリン血症は動脈硬化の危険因子である.これを改善するメトホルミン,ピオグリタゾンは心血管疾患(CVD)を抑制することが知られている.最近ではSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬がCVDを著明に抑制することが発表された.これらの研究成果は血糖低下作用では説明できないものばかりであり糖尿病薬に多面的効果があることを示唆している.早期の薬剤開始でこの多面的効果がどのくらいCVD発症に影響を及ぼすか興味のもたれるところである.
 本特集は糖尿病薬早期開始のベネフィットを薬剤別に集めたユニークな試みである.基礎研究の成績や臨床のエビデンスから早期治療の重要性を理解できる一助となれば幸いである.

平野 勉
(昭和大学 医学部 内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科 教授)

〈目次〉
1.機を逸さないインスリン注射療法開始のベネフィット
2.GLP-1受容体作動薬早期開始のベネフィット
3.メトホルミン早期開始のベネフィット
4.ピオグリタゾン早期開始のベネフィット
5.DPP-4阻害薬早期開始のベネフィット
6.α-グルコシダーゼ阻害薬早期開始のベネフィット
7.SGLT2阻害薬早期開始のベネフィット
8.SU薬,グリニド薬早期開始のベネフィットとデメリット
2,970円
【特集】糖尿病における合併症としての消化器疾患
企画編集/中島 淳

〈特集にあたって〉
 糖尿病の死因を考える際にがんのトップは肝臓がんであり,肝硬変による死亡も非常に多く肝臓がんと肝硬変を合わせるとなんと糖尿病患者8名に1人が肝臓で死亡しており,肝臓疾患の最多の死因は肝臓病である.最近の糖尿病の治療の進歩で血糖コントロールは飛躍的に改善され,また古典的合併症である網膜症や神経障害,腎症への進展スピードは鈍化の兆しがみえている.しかし,その一方で多くの糖尿病患者が肝臓疾患で死亡している現実を直視するとその対策が急務であることは理解できる.さらには我が国における膵がん患者は増加しており,そのハイリスクグループは糖尿病である.まさに糖尿病は消化器がんで,なおハイリスクグループといって過言ではない.以上より糖尿病の合併症としてがんや肝硬変,すい臓がんなどその早期発見や予防対策,さらには治療をどうすべきかなど課題は多い.一方このような死に至る合併症とは異なり患者のQOLを著しく低下させる消化器疾患の合併症もある,その代表は機能性消化管疾患といわれる慢性便秘やGastroparesis,GERDなどさらには腹部膨満を訴えるSmall Bowel Bacterial Overgrowth(SIBO)の患者も糖尿病には非常に多い.患者満足度を上げるという視点では血糖コントロールに加え,このような機能性消化管疾患をどう診療するかも重要である.今号の特集はこれまで顧みられることのなかった糖尿病の合併症としての消化器疾患という視点で当該分野の専門家に旬な解説をお願いして読者にUp to dateな情報をお届けしたいと思う.

中島 淳
(横浜市立大学 肝胆膵消化器病学教室 主任教授)

〈目次〉
1. 糖尿病における合併症としての非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
2. 糖尿病と肝細胞癌
3. 糖尿病と肝硬変
4. 急性・慢性膵炎
5. 胃食道逆流症を中心とする食道機能異常疾患
6. 機能性ディスペプシアとGastroparesis~我が国と海外との比較も含めて~
7. 慢性便秘
8. 糖尿病における小腸細菌増殖(small bowel bacterial overgrowth;SIBO)は合併症か?
9. 糖尿病の合併症としての大腸癌とその対策
10. 糖尿病と膵癌早期診断
2,970円
【特集】今,明かされたSGLT2阻害薬の多面的作用と適正使用
企画編集/福井道明

〈特集にあたって〉
 我が国では,最初のSGLT2阻害薬が2014年の4月に発売されてから計6製剤が発売されている.当初糖尿病専門医の使用量も限定的であった.その背景には,脱水,尿路・性器感染症,インスリンとの併用時の低血糖,痩せの助長,あるいは皮膚症状などといった有害事象に対する危惧であった.本製剤の特徴は,血糖低下作用が尿糖排泄促進に基づくという既存薬とは一線を画すものである.糖毒性状態の解除や内臓脂肪の減少から,さまざまな代謝異常改善が示唆されており,血糖コントロールの改善のみならず病態進行抑制,そして合併症予防が期待される.2015年に発表された,エンパグリフロジンを用いた大規模臨床試験であるEMPA-REG OUTCOME試験の結果は,主要評価心血管エンドポイントの優越性および心血管死の低下,また2016年に発表された腎アウトカムで腎疾患の新規発症または悪化のリスクを低下させるというきわめて優れたものであったことから,SGLT2阻害薬の世界的評価は高まっている.また,その後発表された我が国における市販後調査の有害事象報告も,因果関係を問わない重篤な有害事象の発症率が比較的限定的であることも明らかになり,当初抱かれていた懸念も徐々に少なくなってきている.一方,正常血糖糖尿病性ケトアシドーシスの発症などが報告されており注意が必要であるが,ケトン体が増えることの意義,SGLT2阻害薬で筋肉量をはじめとした体組成がどのように変化するのか,SGLT2阻害薬投与時の最適な食事療法とはどのようなものか,またSGLT2阻害薬と糖質制限の違いなどにも興味がある.
 SGLT2阻害薬の経口糖尿病治療薬としての位置づけ,適する症例,合剤などを含めて適する併用薬,また長期投与により期待される多面的な効果などをさまざまな観点から網羅した本特集が,これからのSGLT2阻害薬の適正使用の一助になることを願うものである.

福井道明
(京都府立医科大学大学院 医学研究科 内分泌・代謝内科学 教授)

〈目次〉
1. SGLT2阻害薬の病態生理に及ぼす影響~とくにケトン体産生亢進の是非について~
2. SGLT2阻害薬に期待される臨床効果
3. SGLT2阻害薬の適する患者像とは~高齢者,腎障害患者,非肥満患者にも適応はあるのか~
4. SGLT2阻害薬のクラス~化学構造や効果・副作用の観点からみた薬剤間の差異~
5. SGLT2阻害薬による体組成,とくに筋肉量の変化
6. 糖質制限食の限界とSGLT2阻害薬の可能性
7. SGLT2阻害薬使用時の食事療法について
8. SGLT2阻害薬の最適な併用薬は?-配合錠を含めて-
9. SGLT2阻害薬使用時の治療満足度について
10. 循環器内科専門医からみたSGLT2阻害薬
11. 腎臓内科専門医からみたSGLT2阻害薬
12. 肝臓内科専門医からみたSGLT2阻害薬のポジショニング
【特集】糖尿病を有する慢性腎臓病患者のマネジメント
企画編集/柴垣有吾

〈特集にあたって〉
 糖尿病による腎障害は透析導入の原因として,20年近く第1位の座を維持している点で,医療費抑制を行いたい国も大いに注目する病態である.しかし,その予防や治療の進歩は,今までに行われた時間的・金銭的投資から考えれば,十分とは言い難い面がある.
 その原因のひとつは糖尿病患者における腎障害はきわめてヘテロな疾患群で構成されており,いわゆる結節性糸球体硬化症を特徴的病態とする“糖尿病性腎症”だけではないため,RAS抑制薬を中心とした降圧治療だけでは十分な成果を挙げられていないことがある.さらに,患者の多数派は動脈硬化が強く,多疾患を併存し,身体・認知機能も低下した高齢者であるため,積極的な治療が,合併症や副作用などにより,必ずしも患者の利益につながらないことも問題となっている.つまり,現在のガイドラインを中心とした死亡や心腎アウトカム改善だけの治療でなく,QOLやADL,嗜好を考慮した個別治療がより重要性を増している.
 その意味では,近年に開発された新規糖尿病治療薬は高齢者や高度腎障害患者でもより安全に使用が可能で,かつ,腎保護効果も期待できるものが出てきている.このような新たな武器を適切な時期(遅きに失せず)に導入することが必要であり,古い疾患ではあるが,常に知識のUpdateが必要であると考える.
 今回,このような特集を組む機会をいただいたことに感謝している.とくに,その分野の第一線の専門家に執筆を承諾いただいており,読み応えがあり,かつ読者の日常臨床にきわめて有用なUpdateとなると確信している.

柴垣有吾
(聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 教授)

〈目次〉
I.Heterogeneousな糖尿病患者の腎障害:糖尿病合併腎障害は“糖尿病性腎症”ではない?
 1.糖尿病患者の腎障害は糖尿病性腎症か?
 2.糖尿病性腎症の病理分類
 3.糖尿病合併腎障害における腎生検の意義:所見は治療・予後予測に有用か?
II.糖尿病合併腎障害に対するマネジメント総論
 1.糖尿病合併腎障害の疫学・自然経過
 2.糖尿病合併腎障害の早期診断法 -尿中L-FABPを中心に-
 3.糖尿病合併腎症における血糖コントロール
 4.糖尿病合併CKD患者の血圧管理
 5.糖尿病合併腎障害の食事・運動療法
III.糖尿病合併腎障害に対する血糖コントロール各論
 1.糖尿病を有する慢性腎臓病(CKD)患者の血糖コントロール指標とその目標
 2.腎障害時における血糖降下薬の注意点
 3.注射薬(インスリン,GLP-1受容体作動薬)
 4.経口血糖降下薬
 5.糖尿病治療薬の腎保護効果の可能性:基礎的検討
2,970円
【特集】糖尿病と歯周病 Up to date
企画編集/中川種昭

〈特集にあたって〉
 口腔は,腸管,皮膚とともに,多くの細菌と共存している組織であり,その細菌叢の量的,質的なバランスが崩れることで,う蝕や歯周病といった疾病が発症する.本特集のテーマとなる歯周病の発症は,口腔内細菌の集合体であるデンタルプラーク(デンタルバイオフィルム)の量的増加,質的変化が生じ,Porphyromonas gingivalisなどのグラム陰性菌を主体とした細菌が増えることで,歯周組織に炎症が生じ,歯と歯周組織の付着を失うなどの組織破壊が生じると考えられる.一方,局所の感染だけで歯周病が成立するわけではなく,免疫応答,メタボリックシンドロームと呼ばれる糖尿病や肥満,高血圧などの全身的な因子もリスク因子として注目されている.さらに,喫煙やストレス(環境因子),咬合力の問題(咬合因子)も重要視され,多因子疾患という捉え方もなされている.
 歯周病は糖尿病の第6の合併症と言われるほど,その関連性が注目されてきている.糖尿病患者は歯周病に罹患しやすく,重症化しやすいことが明らかにされる一方,歯周病原細菌が引き起こす炎症は全身にとって軽微な炎症として影響を与えると考えられ,歯周病が糖尿病へ影響を及ぼすと考えられるようになっている.
 本特集では,糖尿病と歯周病 Up to dateと題して,歯周病とはどのような疾患なのか,糖尿病患者は歯周病を発症しやすいのか,そのメカニズムはどう考えられているのか,血糖コントロールの良否が歯周病の進行に重要なのか,歯周病治療により糖尿病が改善するのか,などの情報共有が必要な項目について,現時点で明らかになっていることをまとめていきたい.本特集が,今後の積極的な医科歯科連携を行うための基礎的な知識となっていくことを期待している.

中川種昭
(慶應義塾大学医学部 歯科・口腔外科学教室 教授)

〈目次〉
1.歯周病という疾患を知る
2.糖尿病になると歯周病になりやすいのか ―疫学的研究成果から―
3.歯周病があると糖尿病になりやすいのか ―疫学的研究成果から―
4.糖尿病と歯周病の関連性を科学する
5.血糖コントロールによって歯周病は改善するのか
6.歯周病治療は血糖コントロールの改善に有効なのか
7.糖尿病を有する患者に対する歯周病治療の実際
8.医科歯科連携の重要性と実際
9.超高齢社会に向けた糖尿病と口腔機能の連関
2,970円
【特集】高齢者糖尿病診療 Up to date
企画編集/横手幸太郎

〈特集にあたって〉
 糖尿病治療の目標は合併症の発症予防と進展阻止を通じて患者の生命予後とQOLを向上することにある.現時点において,その最も有効な手段は,血糖や血圧,脂質,体重などを理想的な値にまんべんなく治療する「包括的リスク管理」と考えられている.しかし,その手法が,我が国で急増する高齢糖尿病患者に当てはまるのかどうかは,十分に明らかにされていない.
 2型糖尿病は,加齢とともにその発症頻度が高まる.このため,高齢社会を迎え,国民の1/4以上が高齢者となった我が国では,糖尿病患者の2/3が60歳以上,半数は70歳以上であるとされる.糖尿病は,古典的な大小血管障害以外にも,認知症やある種のがん,骨粗鬆症など,加齢に付随する種々の合併症をもたらすことが明らかになり,その合併は高齢患者の精神・心理的ならびに身体的機能を低下させる.また,これら機能の低下は,高齢糖尿病患者における血糖や服薬の管理を困難にする.さらに,過度な治療の結果としてもたらされる低血糖は,高齢患者における合併症の増悪やさまざまな心身機能の低下を惹起することがわかってきた.このように,高齢糖尿病患者の治療は,若年患者とは異なる注意点を必要とする.
 欧米では過去数年来,高齢糖尿病患者のための血糖や血圧管理目標値とそれに基づく管理法が提案されてきた.しかし,人種差や社会状況の違いなどから,そのまま日本人に当てはめられるものではない.日本における高齢者糖尿病の診療の質向上と患者の健康寿命延伸を目指し,高齢者糖尿病の診療ガイドラインを策定すべく日本糖尿病学会と日本老年医学会による合同委員会が設置された.本特集では,同委員会における議論と成果を踏まえ,高齢者糖尿病診療に資する話題を各領域ご専門の先生方からわかりやすくご解説いただいた.日常診療にお役立ていただくとともに,今後の日本の高齢者医療について考える一助となれば幸いである..

横手幸太郎
(千葉大学大学院 医学研究院 細胞治療内科学 教授)

〈目次〉
1.高齢者糖尿病の特徴
2.低血糖の問題点と対策
3.認知機能の評価と対応
4.身体機能と評価
5.高齢者糖尿病の血糖コントロール目標 ~そのエッセンスと活用方法~
6.食事・運動療法
7.薬物治療(経口薬,GLP-1受容体作動薬,インスリン,服薬管理)
8.血糖以外のリスク管理:高血圧,脂質異常症
9.介護施設や終末期ケアにおける糖尿病診療
10.海外における高齢者糖尿病ガイドラインの動向

連載:【糖尿病の運動療法】糖尿病運動療法の現状と将来展望
2,970円
【特集】二次性糖尿病といかに向き合うか
企画編集/野見山 崇

〈特集にあたって〉
 糖尿病とは,インスリン作用不足による慢性高血糖状態を主徴とする代謝疾患群であると定義づけられ,主に血糖の高値や慢性的な高血糖状態を反映するHbA1c値で診断される.しかし,血糖値というのは“糖の流れ”に関与する種々の臓器やホルモンの作用が奏でるハーモニーの総和であり,血糖が高い状態には千差万別なバックグラウンドが隠れ潜んでいる.
 主に自己免疫性の膵β細胞破壊によって発症する1型糖尿病,生活習慣病の一種として発症する2型糖尿病とは異なり,二次性糖尿病はそれぞれ固有の糖尿病発症要因を有しており,それを早期に発見することが診断の糸口になるばかりか,治療に直結することもある.目の前の糖尿病患者を,一般的な2型糖尿病として治療し,血糖値を下げることだけに専念するのではなく,二次性糖尿病の病態や治療法,対処法を知り尽くし,可能性を考え,疑い検索することが,患者の予後を変える可能性もある重要な疾患群である.また,糖尿病の2大病態であるインスリン分泌能の低下とインスリン抵抗性は,種々の遺伝的疾患や外的要因によっても引き起こされ,原因の究明が糖尿病の根本的な治療につながる.また,MODYは厳密には二次性糖尿病ではないが,日常診療で見落とされがちな遺伝性の糖尿病であり,疑って遺伝子検索をすることで早期に的確な対応ができる重要な疾患群である.すなわち,二次性糖尿病を深く理解することで,糖尿病診療の幅が大きく広がるといえる.
 本特集では二次性糖尿病の治療法や対処法を中心に,最新のトピックスに加え,実臨床ですぐ応用できるプラクティカルな内容を,国内のエキスパートの先生方にご執筆いただきまとめた.本特集が読者の先生方の臨床現場に少しでも貢献できることを期待する.

野見山 崇
(福岡大学 医学部 内分泌・糖尿病内科 准教授)

〈目次〉
1.膵性糖尿病
2.肝疾患に伴う糖尿病
3.クッシング・サブクリニカルクッシング症候群に伴う糖尿病
4.甲状腺疾患と糖代謝異常
5.Prader-Willi症候群に伴う糖尿病
6.Wolfram 症候群の臨床像と遺伝的特徴
7.遺伝子異常による糖尿病 ?MODYについて
8.ミトコンドリア病に伴う糖尿病
9.B型インスリン抵抗症:インスリン受容体抗体による糖尿病
10.グルココルチコイド(ステロイド)投与に伴う糖尿病
11.がん免疫療法:ヒト型抗PD-1モノクローナル抗体に伴う1型糖尿病
12.Hyperglycemic disorders in pregnancy
  ~妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus;GDM)を中心に~

2,970円
【特集】糖尿病の「体質」:発症する人としない人の違いはなにか?
企画編集/安田和基

 病気に限らず,身体・健康に関するさまざまな特徴について,「体質」という言葉が用いられる.そこには一般に「個人による違い」と「生まれながらに(あるいは幼少期から)変わらない」というニュアンスが込められているが,その本体は複雑でさまざまな現象が含まれる.一方で臨床では「個別化医療」すなわり「個人の体質に合った」治療が求められている.個人の生まれながらの「体質」を決める最も大きな要因は,遺伝素因,すなわち「ゲノムの個人差」(ゲノム多様性)である.近年のゲノム医学の急速な進歩により,ゲノム多様性は従来予想されたよりはるかに大きいことがわかってきた.ゲノム多様性は外見や性格,能力も含めた個人差の大きな決定要因であるとともに,疾患の原因,あるいは感受性ともなりうる.では個人差を決める本体はどこまで解明され,医療への応用の見通しはどうなっているのだろうか.
 さらに個人の「体質」には,ゲノム多様性以外の因子の関与もわかりつつある.ひとつは「エピゲノム変化」であり,とくに胎生期~乳幼児期は栄養など環境因子によりエピゲノム変化を受けやすい時期と考えられている.また腸内細菌は100兆個以上と,ヒト細胞(60兆)を凌ぐほど多いとされるが,宿主であるヒトと相互に影響を与え合う「超生命体(superorganism)」であり,糖尿病・肥満などさまざまな疾病の感受性にも寄与していることがわかってきた.  本特集では,糖尿病の「体質」を中心として,現在の到達点や,臨床における課題,今後の展望などをまとめた.これにより,糖尿病患者から「体質」についての質問を受けても曖昧にはぐらかすことなく,かつ正確な言葉で対応できることになると期待している.

安田和基
(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター 代謝疾患研究部 部長)

Ⅰ.オーバービュー
1.I糖尿病における「体質」:「世界に一つだけの花」から臨床へ
Ⅱ.糖尿病の遺伝素因:単一遺伝子病
1.MODY
2.ミトコンドリア糖尿病
3.Wolfram症候群
Ⅲ.糖尿病の遺伝素因:多因子疾患
1.1型糖尿病
2.2型糖尿病
3.糖尿病性合併症の遺伝素因
Ⅳ.「体質」の解明の展望とその発展
1.遺伝因子から創薬へ
2.遺伝環境交互作用
3.DOHaD説からみた糖尿病の体質
4.糖尿病と腸内細菌
5.ゲノム医療への期待と世界の状況
6.糖尿病の遺伝子診断の現状と展望
2,970円
【特集】糖尿病の日本人特異性 ~日本的糖尿病学の確立へ~
企画編集/岩瀬正典

〈特集にあたって〉
 糖尿病は遺伝と環境の2つの要因から発症するので,日本人の遺伝素因と生活習慣は糖尿病の発症や経過に影響を与える.本特集では,日本人の特性に注目して糖尿病の日本人特異性を明らかにすることを目的とする. (1)2型糖尿病の日本人特異性  日本人はインスリン分泌能が元来低いとされており,日本人の膵β細胞異常についてインクレチン分泌を含めて解説していただく.一方,日本人2型糖尿病ではインスリン抵抗性は軽いとされている.肥満の程度が欧米人より軽いためと考えられるが,糖尿病発症へのインパクトは大きい.各組織におけるインスリン作用の違いの可能性も考えられ,メタボリック症候群を含めて日本人のインスリン抵抗性について解説していただく.また,2型糖尿病の遺伝素因は多くの一塩基多型(SNP)が報告されているが,オーダーメイド医療を進めるにあたり,予防や治療に占める遺伝情報のウェイトは十分には理解されていない.日本人2型糖尿病の遺伝素因の現状について解説していただく.
(2)1型糖尿病の日本人特異性
 我が国の1型糖尿病は遺伝素因の違いなどにより欧米と比べ発症頻度は低いが,劇症1型糖尿病は我が国で見いだされた疾患である.一方,LADA(Latent autoimmune diabetes in adults)は海外での頻度は高いが,我が国ではSPIDDMとの異同を含めて,その頻度や病態は十分には解明されていない.日本人1型糖尿病(SPIDDMを含めて)の特異性について解説していただく.
(3)治療法の日本人特異性
 日本人は米を主食とする民族であり,独自の食文化がある.一方では,米の摂取量は減少傾向にあり,食の多様性も広がっている.このような状況のなか,日本人糖尿病の食事療法の特異性について解説いただく.また,日本には独自の文化や社会構造に由来する心理・社会的要因があり,患者の心理・社会的要因を考慮することは必須である.心理・社会的要因の日本人特異性について解説していただく.我が国の2型糖尿病治療薬の選択アルゴリズムは欧米のそれとは大きく異なっている.欧米の大規模研究の結果はどこまで日本人に当てはめることができるのかを含めて,薬物療法の日本人特異性について解説していただく.
(4)疫学研究からみた日本人糖尿病の特異性
 我が国には地域住民や通院患者を対象とした優れた前向きコホート研究が多く存在する.各コホート研究より日本人糖尿病の特異性について解説していただく.また,最後に,日本人糖尿病患者の死因は欧米の糖尿病患者とは大きく異なっている.日本人糖尿病患者の死因について,時代的変遷を含めて解説していただく.
 本特集より「日本人の日本人のための糖尿病学」,日本的な糖尿病学の確立を目指したい.

岩瀬正典
(社会医療法人財団白十字会 白十字病院 糖尿病センター/臨床研究センター 副院長・センター長)

〈目次〉
1.日本人2型糖尿病の膵β細胞異常の特異性
2.日本人2型糖尿病のインスリン抵抗性の特異性
3.日本人2型糖尿病の遺伝素因の特異性
4.日本人1型糖尿病の特異性 ~臨床像の違いからみえる背景因子~
5.日本人糖尿病患者における食事療法の考え方
6.日本人糖尿病の心理・社会的特性
7.日本人2型糖尿病の薬物療法の特異性
8.久山町研究からみた日本人糖尿病の特徴
9.JDDM・横山研究からみた日本人糖尿病の管理・予後に関する特異性
10.多目的コホート研究JPHC Studyからみた日本人糖尿病の特性
11.日本人糖尿病合併症の特徴
12.日本人糖尿病患者の死因の特異性
2,970円
【特集】腸内細菌と生活習慣病
企画編集/小川佳宏

〈特集にあたって〉
 今,腸内細菌が注目されている.次世代シークエンサーによるメタゲノム解析の進歩により,腸内細菌叢の網羅的解析が比較的容易になり,近年,腸内細菌に関する知見が増えている.腸管には1000種以上の腸内細菌が生息するが,総数は100兆個を超え,総重量は1~1.5 kgであるとされる.腸内細菌は宿主であるヒトと共生し,食事中の栄養成分と相互作用することにより腸内環境の恒常性維持に関与することが明らかになってきた.たとえば,腸内細菌は難消化性多糖類を分解し,酢酸,プロピオン酸,酪酸などの短鎖脂肪酸を産生し,これらは腸管を病原菌から保護して炎症反応を抑制する.また,インクレチンなどの消化管ホルモンの分泌を亢進させて全身の糖脂質代謝の制御にも関与する.腸内細菌は宿主であるヒトと共生し,食事中の栄養成分と相互作用することにより腸内環境の恒常性維持に関与することが明らかになってきた.たとえば,腸内細菌は難消化性多糖類を分解し,酢酸,プロピオン酸,酪酸などの短鎖脂肪酸を産生し,これらは腸管を病原菌から保護して炎症反応を抑制する.また,インクレチンなどの消化管ホルモンの分泌を亢進させて全身の糖脂質代謝の制御にも関与する.
 多くの動物実験により腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)は局所の腸内環境のみならず,全身の糖脂質代謝に大きな変化をもたらすことが示唆されている.しかしながら,臨床現場では腸内細菌検査はルーチン化されておらず,糖尿病や肥満などの生活習慣病における腸内細菌の病態生理的意義には不明な点が多い.非侵襲的に得られる糞便を用いて解析できるため,糖尿病や肥満症診療において腸内細菌をターゲットにした新しい診断法や治療法の開発が期待される.
 本特集が,糖尿病専門医の知っておくべき腸内細菌研究の基礎と最近の進歩,生活習慣病における臨床応用の可能性,腸内細菌をターゲットとした新しい医療を考える機会になれば幸いである.

小川佳宏
(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学分野 教授,
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 分子細胞代謝学分野 教授)

〈目次〉
1.腸内細菌と疾患
2.腸内細菌によるエネルギー代謝制御
3.腸内細菌と肥満・メタボリックシンドローム
4.腸内細菌と循環器疾患
5.腸内細菌と食事療法
6.肥満症・2型糖尿病治療における腸内細菌
7.糞便微生物移植法の現状と展望
8.プロバイオティクスによる生活習慣病予防作用と将来に向けたビフィズス菌の基礎研究

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【糖尿病の運動療法】糖尿病運動療法の保険適応
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  • 出版社:医学出版
  • 発行間隔:隔月刊
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糖尿病は研究や臨床面での進歩も著しい。 糖尿病の重要な遺伝子が同定され、 糖尿病や合併症の発症の分子機構の解明も大きく進み、 iPS細胞を中心とした糖尿病や合併症の再生医療への展望も切り開かれつつある。 糖尿病治療薬についても期待される新薬の臨床使用・開発が続々と進んでいる。 そこで、糖尿病の質の高い診療を行なうためには、 日進月歩で集積される膨大な数の新しい知見やエビデンスをその重要度に従って、 評価・選別し、その内容の深さをそこなうことなく、 わかりやすく解説する場が必要となってくる。 『月刊糖尿病』は、まさにこのような切実なニーズに応えることを意図したものである。

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